27 いつも勉強させて頂きまして有難うございます。

英海軍やビスマルク型戦艦で採用されている艦中央部幅全長に渡る固定式カタパルトと、米海軍や日本海軍で採用していた小型の回転式カタパルトについて、各々の長所及び短所をご教授下さい。
大型固定式カタパルトにせずとも、米重巡のように艦中央部両舷に小型カタパルト×2基で事足りるのではと思うのですが。

よろしくお願いいたします。
Ranchan

  1.  艦中央部の横方向固定カタパルトには、

    ○艦の中央部にあるので、動揺が少なく波浪の影響も受けにくいので航空機運用が容易
    ○前後の上構により主砲射撃時の爆圧がある程度遮られるので、砲戦時でも発艦作業の
      実施が比較的容易
    ○主砲・副砲・高角砲の射界を遮らない

     という利点があります。その一方で

    ○艦中央部に航空艤装を置く分主要区画長が伸びる(排水量抑制上不利)
    ○艦上構に軽防御の格納庫を置くことになるが、これは艦の防火対策を含めて防御上不利
    ○副砲・高角砲を含めた諸装備の舷側配置に影響が出る

     という欠点があります。艦尾装備の得失はこれを逆に返せば概ね理解出来るかと。
    因みに米巡式の艦中央部両舷に旋回式カタパルトを設けるのは、後にアラスカ級で
    問題にされたように、舷側装備の高角砲等の射界を遮るという欠点が生じます。
    大塚好古

  2. 日本の艦載水上機搭乗員の手記で、「機体が超過荷重状態で発艦するので、艦速を大きめに迎え風を多くして欲しい」と艦橋に頼みに行った、というものがありました。
    艦真横方向固定の射出機ではこういう融通は利きませんね。


  3.  大塚好古様
     確か…、米重巡で中央部の航空設備に被弾して、大破か沈没に至る重大な火災を生じた例があったと思うのですが、如何でしょうか?

     また、日本の重巡のように後部主砲塔群の直前に搭載機とカタパルトを置く配置は、主砲の爆風の影響は受けるは、機械室の上に引火物があるは、おまけにその間や近くに、魚雷発射管と被弾時の投棄が困難な予備魚雷まではあるという、上記二者の欠点を併せ持つ危険極まりない配置だと思うのですが、実戦での被害事例はあるのでしょうか?

                                 09.3.20記
    NG151/20

  4.  上は米巡式の艦中央配置では、固定式の欠点の上に「カタパルトが砲の射界を遮る」という欠点も加わる、と言うつもりで書いたんですが、あの文章ではそう取れませんね。失礼しました。当然ながらあの配置の場合、格納庫は防御の弱点になります。
     航空艤装に命中して大きな被害が出た、というのは第一次ソロモン海戦の事例だと思いますが、あれは確かに被害拡大には影響を及ぼしたものの、艦自体の沈没は多数の砲弾・魚雷命中によるものであって、「航空艤装への被害が主要因で」大破・沈没したとは言えないと思います。

     日本重巡は砲戦時の爆風でカタパルト上・甲板上の搭載機が損傷した事例や、発射管内魚雷の誘爆により大火災・機械損傷が発生した事例はありますが、搭載機及び航空艤装が原因で魚雷が誘爆したため、大損傷を受けたという例はありません。
    大塚好古

  5. >3 中央部の航空設備に被弾して、大破か沈没に至る重大な火災

     英艦の例ですが、艦橋直後に航空艤装を設けたタイプには同部への被爆が致命的な火災を誘発したケース(サウザンプトン、グロスター等)があるので、防御上問題のある配置であることに誤りはありません。

    加賀谷康介

  6.  大塚様
     即答いただきありがとうございます。重ねて伺います。

    >搭載機及び航空艤装が原因で魚雷が誘爆したため、大損傷を受けたという例はありません。

     実は、この点に対して私は、魚雷発射管の上に航空艤装=強度を担わない通常のシェルターデッキよりは頑丈であろう航空甲板とその支柱という箱を被せたことで、魚雷誘爆時の爆圧を上方に逃すことができず被害を拡大させたのでは、との疑問を持っています。

     日本の重巡の雷装は、被弾誘爆時の被害を低減させるため、中甲板(古鷹〜妙高)→上甲板上のシェルターデッキ内の極力舷側より(高尾型)→艦橋への被害を減らすため、より後方の後部主砲塔群の前=航空艤装の下(最上型以降、改装艦を含む)と配置場所を変えています。

     爆圧が主船体に向かわないよう魚雷を極力露天に近い場所に配するという防御概念から見ると、数トンの航空機を複数載せられる頑丈な甲板と、その支持構造の中に置くという最上型以降の実装は、矛盾するように思うのです。

     改めて思い起こすと最上型は、三隈、鈴谷と魚雷の誘爆が致命傷になっているようですが、上記による影響はあったのでしょうか? 原質問からは少々ずれてしまっていますが、よろしくお願いします。

    NG151/20

  7.  三隈は二発の爆弾で機械室が先に破壊され、それにより発生した火災が魚雷発射管室に延焼して魚雷誘爆に至ってますから、前提条件に当てはまらないでしょう。
     鈴谷は至近弾で右舷前部発射管の魚雷弾頭が誘爆し、消火に失敗して10分後に魚雷発射管室内部の魚雷複数が更に誘爆した結果、その一層下の装甲甲板が破られて機械室に被害が波及しています。但しこの爆発で飛行甲板部と両舷の後部高角砲も破壊されるに至っていますから、飛行甲板の存在により爆圧が上方向に逃げられなかった、と断定するのも無理があるように思えます(因みに三隈も魚雷誘爆時に飛行甲板部が破壊されています)。
    大塚好古

  8.  大塚様
     重ね重ねの拙問にもかかわらず、詳細な解説ありがとうございます。

     鈴谷の最後に関しては、書店の立ち読みモードで確か福井静夫氏の
    >至近弾のみによって沈んだ唯一の巡洋艦という不名誉な記録を持つ
    という記述を読んだだけだったので、勉強になりました。

     今回の質問は、米空母フォレスタルが、ロケット弾の暴発から多数の爆弾が誘爆した事故の際、爆発が露天だったため致命傷にならずに済んだ、との説があるのを聞いていたので伺ってみたのでしたが、詳細を読む限り、巡洋艦クラスの船型では、酸素魚雷の500kg炸薬が複数誘爆してしまっては、露天であろうが、屋根=圧力蓋があろうがなかろうが、致命的な被害を受けることに変わりはなさそうです。

     またこちらに来る前は
    >発射管や予備魚雷のある部分の床に装甲を張っては
    と思ってもいましたが、SUDO様の「魚雷は大人になってから」シリーズで、水平防御は広い範囲を覆う必要があって、充分な防御は重量的に不可であることを知り、今回、一甲板下の装甲甲板もあえなく破られているとのことで、無効性を再認識しました。

     改めて、大塚様と質問の機会をいただいたRanchan様には感謝します。ありがとうございました。

    NG151/20

  9. 遅ればせながら、皆様ご回答有難うございます。

    ・航空施設の設置場所にはそれぞれ利害得失がある
    ・設置場所により固定式カタパルト・旋回式カタパルトを使い分けている
    と理解致しました。

    皆様のご回答を拝読するうちに一点疑問に思ったのですが、日本で固定式カタパルト導入が検討されたことはあったのでしょうか?
    もし宜しければ、ご教授頂けますと幸いです。
    Ranchan

  10. >9
     5500t型巡洋艦は、当初は艦橋から前方に向かって、旋回しないカタパルトで発進させてましたね。
    SUDO


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