34  こんばんは。お久しぶりです。何年ぶりかくらいになると思います。

 長門の改装後の垂直防御について教えてください。
 機関部については中央断面図を見て把握できるのですが、弾薬庫部は各砲塔ごとに傾斜甲板の傾斜角度が違っていたり、弾薬庫部側壁に直接装甲を張ってあったりなかったりして複雑で理解できません。傾斜甲板1つをとっても76oなのか127oなのか177oなのか280oなのか、はたまた356oなんて説も目にして混乱しています。同じフレームの断面でも舷側装甲305o部分を経由してきた弾が当たる部分と229o部分経由で来た弾が当たる部分とで違うという話も見たことがあります。

 一言で「こうだ」とは答えがたい質問なのかもしれませんが、ここは1つ皆様のお力をお貸しください。
因幡

  1.  こういうご質問のさいには「わたしは第○砲塔の装甲配置について、こう理解していますが、資料を持ち合わせている方がおられましたら、ご教授ください」のように、内容を絞ったほうが回答を得られるように思います。

     私は傾斜装甲3インチの上に、単に8〜11インチの追加装甲を上張りしているものと理解していました。
     弾薬庫部側壁に直接装甲というのは聞いたことがないですね。

     日本戦艦は(私が理解している範疇では)金剛型から、傾斜装甲でも舷側上部のやや薄い部分を通過した弾が当たるであろう、上部のみを、分厚くするという装甲配置が多いようです。長門型もそうなのかもしれません。
     参考にもならない回答で恐縮ですが、参考までに。
    高村 駿明

  2.  旧海軍資料を基にされているという「日本の戦艦パーフェクトガイド」の中で、弾薬庫部最大11インチとありますね。
     元々が3インチのはずですから、つまり76.2ミリ+203.2ミリで279.4ミリが傾斜甲板最大厚なのだと思います。8〜11インチ張り足しはないですね。すみません。
     垂直12インチ+傾斜11インチとは、信じがたいほどの重装甲ですが、11インチ部分はごく一部だと、こちらの過去ログで拝見したことがあります(検索したのですが、引っかからず……)。 
    高村 駿明

  3. >高村 駿明様
     はい。確かに質問内容が漠然としているとは思います。
     できれば各砲塔全部、ないし前後砲塔それぞれについて、装甲配置と厚さを教えてほしい、という考えでいます。

    >弾薬庫部側壁に直接装甲というのは聞いたことがないですね。
     「軍艦メカニズム図鑑 日本の戦艦(上)」のP224とP225に改装後の陸奥の様々な部分の断面図が記載されていて、この図では装甲部分が太線で書かれている(しかし中甲板や機関部の傾斜甲板は細線)のですが、この図を信用するならば後部砲塔では傾斜甲板を貫通した砲弾が、さらに内側にある垂直装甲に当たるように見えます。これは前部砲塔には見られません。また前部砲塔の傾斜甲板は太線であるのに対し、後部砲塔は機関部と同様、細線で書かれていることにも何か意味があるのかもしれません。
     いずれにせよこの図には厚みが一切書かれていません。ただ水中防御隔壁が奥まった位置に置かれているだけかもしれません。

    >垂直12インチ+傾斜11インチ
     私は11インチ部分は一番砲塔近辺の、大落角砲弾が舷側上部などを通らずに傾斜甲板を直撃する部分限定で、垂直防御ではなく水平防御の一環として装備されたものと推測しています。が、資料に基づいたものではなく確証はありません。
    因幡

  4.  「軍艦メカニズム図鑑 日本の戦艦(上)」が手元にないので、ちょっと判断できません、と前置きした上で。

     記憶モードで申し訳ないのですが、長門型の傾斜甲板部分は改装後に5〜11インチという記述をどこかで見たことがあります。わたしはこの記述を元に「舷側上部229ミリを抜けた弾は傾斜装甲上部の11インチ部分で受ける」「舷側装甲305ミリを抜けた弾は、傾斜甲板下部の127ミリで受ける」と概ね解釈していたのですが、どうやら違うようですね。

     一番砲塔舷側部には、舷側上部229ミリ部分がないというのであれば、その部分のみ11インチというご説には、個人的には納得がいきます。

     11インチ部分も元々が3インチだったのだとすれば、8インチもの増加装甲を上に載せているわけで、相当な構造強化が必要だったのだな、などと思っているわけですが。
    高村 駿明

  5.  改装後の長門は追加装甲として単に傾斜部に同一厚の装甲を張り足した訳では無く、各部位で装甲厚及び張り方自体を変えています。部位によっては弾火薬庫部の垂直隔壁側に装甲追加を実施しているのも事実です。

     より細かい内容をチェックされたいのであれば、先年石橋先生が並木書房から出された「日本帝国海軍全艦船1868-1945 第1巻 戦艦・巡洋戦艦」の購入をお勧めしておきます。装甲厚の誤記等内容に一部問題はありますが、各改装戦艦の装甲追加の様式がどんなものであったかについては概ね把握出来ます。
    大塚好古

  6.  どうもありがとうございます。
     「日本帝国海軍全艦船1868-1945 第1巻 戦艦・巡洋戦艦」、読んでみたいです。ただ、29,400円ですか。購入はしばらく先になりそうですね。
    高村 駿明

  7. >大塚好古様
     当方は時間はあるがお金はなく三万円の出費はかなり辛い状況にあるので、私は長門の防御について以下のように推測しているのですが、大雑把にでもその当否についてだけでもお教えいただければ嬉しく思います。

     一番砲塔:舷側上部なし、水線12in、傾斜甲板11inから8in、弾薬庫側壁なし
     二番砲塔:舷側上部9in、水線12in、傾斜甲板3inから8in、弾薬庫側壁なし
     三番砲塔:舷側上部9in、水線12in、傾斜甲板3in、弾薬庫側壁?in
     四番砲塔:舷側上部なし、水線12in、傾斜甲板3in、弾薬庫側壁?in
     「舷側上部なし」とは、舷側上部がバーベット前端にむかって艦内に引き込まれている部分のことです。

     それにしても疑問に思うのは、長門の安全距離はいったい何mで造られていたのだろう? ということです。自艦主砲に対し20000mでいいならば、新造時の舷側12in+傾斜甲板3inで十分ではないかと思います。仮に12in+8inとすれば、12000mでも耐えられそうです。
    因幡

  8. >7
    http://www.warbirds.jp/ansq/22/B2002085.html

     にて、

     長門型・弾火薬庫部 2万m〜2万8千m(対九一式41cm徹甲弾)
     長門型・機関部   2万m〜2万8千m(対九一式14in徹甲弾)

     とありますね。
     実際、五号徹甲弾では距離20,000mで垂直271ミリの貫通力が、九一式では454ミリと、大幅に威力が増加しています。14インチ45口径砲でも、五号徹甲弾では距離20,000mで垂直193ミリが、九一式で307ミリ(五号徹甲弾使用時の41センチ50口径砲に匹敵する貫通力です)に向上しております。
     従って垂直305+76ミリでは、新造時の35.6〜41センチ砲弾は防げても、九一式の41センチ砲ではバイタルパートを破られる結果となりますね。
     
     米国でも14インチ50口径で18,300mでは、新造時170ミリ/改装後349ミリ、16インチ45口径で同条件だと292ミリ/412ミリと大幅に向上しています。
     新型戦艦のSHSだと16/45で448ミリ、16/50で509ミリですから、新造時の長門型では、対敵姿勢を考慮しても、決戦距離で主要防御区画に敵弾の突入を許す可能性が高いのは、間違いないものと思います。
    高村 駿明

  9. >8
     コロラド級戦艦の16inMK1の、大戦時の貫通力が20000mにおいて約390oとされていますから砲弾重量と初速が同程度である長門も390o前後であると推測できます。日本軍の公称値は米海軍のそれよりやや高いことが多いので、長門が公称450oであっても不思議はなく、実態は同程度であると考えられます。
     舷側305o+傾斜甲板76oの垂直防御は、単純に垂直一枚板に換算して合計すれば一枚板の370oから400o程度の防御効果となりますから、確実に貫通するためには攻撃側に余裕が必要であること、垂直防御には対敵姿勢が関わってくることを考えればちょうど20000m前後で防ぎうると、私は考えています。

     もちろん長門が本当に20000mで450oの貫通力を発揮可能な場合、もしくは長門の古い材質で作られた装甲が額面通りの防御効果をもたらさない場合にはこの限りではありませんが、長門の近距離側の安全距離20000mというのは比較的弱体な機関部のもので、弾薬庫はそれ以下の距離、バーベット部と同程度の15000mくらいでも耐えるのではないかと推測しています。
    因幡

  10.  九一式・一式徹甲弾の性能については、疑問点も多いわけですが、私は日本側の実測値が当てにならず、米側が正しいという立場に立ちません。

     砲弾形状の違いもありますし、長門型の主砲弾はコロラド級よりもやや貫通力で勝り、SHSにはやや劣る、でいいものと考えています(長門型主砲はコロラド級より口径で4ミリ勝り、初速も768m/Sに対して、790m/sと高く、砲身も25センチとはいえ長いですから、垂直側の貫通力がやや勝っても不思議ではないかと)。

     また、防御力は「自国の砲弾を基準」に考えるのが当然であり、因幡様の「自艦主砲に対し20000mでいいならば、新造時の舷側12in+傾斜甲板3inで十分」という見解は、実測した九一式に抜かれると想定している以上、成立し得ないものと思います。

     あと、305+76が垂直で370〜400ミリという見解にも賛同できかねます。
     長門型の傾斜甲板は概ね40度程度の傾斜が設けられていますが、この角度は通常の舷側傾斜装甲とは逆に設けられているものです。
     ですから、予想される砲戦距離での命中弾の落角を想定するなら、この傾斜角度の存在は防御力増強にはあまり寄与しないものと思います。

     また、傾斜甲板で止まったとしても、艦内で敵主砲弾の爆発を許すことは間違いなく、その場合はビスマルクの戦例のように、爆風や大きな弾片などにより、戦闘能力がじわじわ阻害される危険性も高いと思います。

     新KGV級のように垂直381ミリで1枚板ができるなら(そんな装甲が作れないからああなったわけですが)、その方が防御力に優れることも明白だと思います。
    高村 駿明


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