73  いつもお世話になっております。
 「やっぱり勝てない? 太平洋戦争」において、昭和12〜16年度における、日本戦艦の昼間甲(乙)種射撃演習実施記録を拝見し、下記のように感じましたので質問致します。

1)目標の的速が10〜16ノットと、現実の敵艦よりも明らかに低速のようですが、なぜこの速度だったのでしょうか。実戦的ではないと、問題とはされていなかったのですか?

2)「昼間」射撃演習記録とありますが「夜間」射撃演習は行われなかったのでしょうか。行われたのであれば、どのような成績だったのでしょうか。

 ご多忙のところ、お手数をおかけ致しますが、よろしくお願い致します。
高村 駿明

  1. 1)
    曳航標的なので高速にすると姿勢不安定となったり曳索が切れちゃったりするんじゃないでしょうか

    2)
    夜間もやってますよ
    S5〜15年の40cm, 36cm砲の射距離と命中率
    15,000m 4.5%
    10,000m 11%
    5,000m 21%
    程度だそーです
    (艦砲射撃の歴史P236に拠る)
    駄レス国務長官

  2.  どうもありがとうございます。

     「アメリカの戦艦」177−178ページにて、「日本の徹甲弾の信管遅動秒時が長すぎるきらいがある。実弾射撃演習で、標的艦の水平装甲を貫徹した後、反対舷の舷側装甲を貫通して、海中で炸裂した例もある」との記述があります。で、日本で水平装甲と舷側装甲を備えた標的艦と言えば「摂津」しかありませんから、「戦艦時で20ノット、標的艦時でも17.4ノット発揮可能な摂津が、随分と船足を押さえているものだな」と感じた次第です(あ、摂津に毎回実弾射撃を行っていたと考えていたわけではないのですが)。

     なんであれ、曳航標的では高速が無理ということであれば、巡洋艦や駆逐艦も10-16ノットの目標に撃ち込んでいたということなのでしょうか。実戦と状況が違いすぎて、訓練効果が減りそうなのですが。
     重ねての質問でご迷惑をおかけ致しますが、よろしければご教授ください。

     夜間砲撃についてもありがとうございます。演習とはいえ、かなりの命中率を挙げていたのですね(的速が低いのかもしれませんが)。
    高村 駿明

  3. >2.
    >実戦と状況が違いすぎて、訓練効果が減りそうなのですが。

    実戦との最大の違いは相手よりタマだの何だのが一切飛んで来ないコトで、これに比べりゃ目標が多少遅いくらい何てコトも無いのではと思われ
    駄レス国務長官

  4.  S14の記録を見る限り、戦艦の標的は12.5ノット程度、高速戦艦と巡洋艦のは13〜16ノット程度で移動しています。

     なお、「反対舷で云々」は実艦的になった廃艦の調査報告に基づく物で、「摂津」に撃ち込んだ事例ではありません。
    大塚好古

  5. >3
     ご教授ありがとうございます。
     では、サマール沖海戦の立ち上がりのように「相手が反撃してこない段階の砲撃は、演習に近い命中率が見込めるはず」なのに、全然当たらなかったのだから、技量が悪い、というような解釈をすべきなのでしょうか。
     それとも、演習は「目標が回避運動を取ることもないし、視界良好の日に行われる(のですよね?)」のだから、やはり実戦とは違うと解釈したほうがいいものでしょうか。
     何とも答えがたいようにも思われますが。
     
    >4
     どうもありがとうございます。廃艦ということは、1924年に行われた「土佐」や「安芸」に対する実弾射撃試験の話なのでしょうか。
     日本海軍が水中弾効果を重視して、非常に調停秒時の長い大遅動信管(0.4秒)を装備したのは、この実験成果を反映した、六号弾(八八式徹甲弾)からと考えていたのですが、違うのでしょうか。
     それとも、信管の調停秒時を何種類も調整して試験していた、ということなのでしょうか。もしそうなら「標的艦の水平装甲を貫徹した後、反対舷の舷側装甲を貫通して、海中で炸裂した例もある」ことは問題とされなかったのでしょうか。
     よろしければ、ご教授ください。
    高村 駿明

  6. #演習と実戦

     だから連合艦隊は開戦前の図演で「実戦を想定して、命中率は演習時の1/3で判定」と言う訳です。砲校でも当時入手していたジャットランドの間違った命中率数値から、「実戦でも演習時に匹敵する命中率は発揮できる」と主張する若手の教官に対し、「お前ら少し頭を冷やして考え直せ」と砲校のトップクラスが宥めた事があった、と言う話があります。

    #廃艦への実射

     これは六号徹甲弾制式化の後に実施された試験の結果です。その結果を見て第二艦隊側が暗に「巡洋艦にこんな砲弾は不要。それより軽装甲目標用の弾底信管式通常弾寄越せ」と言っているとか、艦隊側からは長秒時信管付きの砲弾については少なからぬ数の不満が出ています。
    大塚好古

  7.  大塚先生、ありがとうございました。よくわかりました。
    高村 駿明

  8. >5 そういうけんか腰とも取れる言葉で書いていると、誰も教えてくれなくなりますよ。

     少し古い資料ですが、アジ歴で『臨時砲術講義録』と言うのがあるから読んでみれば良いかと。
    大正7年の段階で砲校では「標的は速度が速い方が良い。今のだと遅いから改良中」とか言っているのが判ると思います。



  9.  伸様、ご助言ありがとうございます。
     発言にはより注意致します。
    高村 駿明

  10. >6 「頭を冷やせ」と言われた側には黛元大佐なんかも含まれるのでしょうか?
    経歴では横須賀海軍砲術学校教頭なぞもされた方ですが、著書の「海軍砲戦史談
    」において、
    ・日本海軍の砲命中率はアメリカ海軍の3倍
    ・しかし秘密保持と、訓練意欲を傷つけないようにする必要から、軍令部はアメリカ海軍と同等の砲力点とした。

    という意の記述がありますので。
    黛元大佐はどういった評価をされている人物なのでしょうか?
    横道にそれますが、よろしくお願いします。

    太助

  11.  艦砲射撃の場合、標的は実艦と同じ速度である必要はないです。自分が動いてますから、実戦に即した速度差を自分で作りだすものです。
    ・30ノットで走りながら30ノットの標的を同航/反航で撃つ
    ・15ノットで走りながら15ノットの標的を同航/反航で撃つ
    ・30ノットで走りながら15ノットの標的を同航(追い越し)/反航で撃つ
    どれが一番実戦的で、自分だったらどの訓練を一番したいかです。
    自分の最高速度の半分くらいの標的速度だったら、一番バリエーションがつくれるので、10〜16ノットという速度に決めたのではないかと思います。
    IWA

  12. >10

     黛大佐は「頭を冷やせ」組の急先鋒ですね。

     大佐の当時の評価については、本職は寡聞にして知りません。
    大塚好古


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