115 はじめまして。質問させて頂きます。
軍艦ではしばしば「x番艦」という表現がなされますが、これはなにか定義があるのでしょうか。
というのもネームシップに絡んで見かける表現として一番艦とネームシップが一致しない場合があると言うものがあり、例示がある場合に高雄型の愛宕やコロラド型のメリーランド等竣工の早い艦の例があげてあったりします。
そうなると
1.高雄型の場合一番艦はそもそも愛宕なのか?(高雄型二番艦が高雄?)
2.仮に一番艦が愛宕だとする場合、三番艦はどうなるのか(鳥海と摩耶は同日竣工なため竣工順では決められず、入籍順など別の基準になってしまうのでは?)
と言う疑問が発生します。
しかし、実際には高雄型の一番艦は高雄とされている場合もありますし(愛宕がそうであるとする場合とで定義自体に揺らぎがある?)、米海軍の場合ハルナンバーが艦名に付随するのにx番艦という言い方自体が必要なのか(逆に混乱しそう)と言う疑問もあります。

そうするとx番艦と言う表現自体があやふやで怪しいものである様に思えるのですが、これは海軍等でなにか定義された表現なのか、さらに言うとそもそも日本以外でも一定の定義がある言葉(=該当する言葉がある)なのかご教授頂ければ幸いです。

余談ですが加古型が竣工順で正式呼称とするということで古鷹型に変った経緯がありますが加古型の頃の一番艦はどっちだったのかなど疑問はつきません。
長文失礼いたしました。
minerba

  1. 一般論としては、一番先に予算が成立した艦に付けられた名前が1番艦というのが原則なのですが、何かの都合で2番艦が先に完成というのは良くある話です。
    なので、1番艦とは予算上で1番なのか、起工で1番なのか、竣工で1番なのかという問題があります。この辺りはケースバイケースだと思います。

    日本海軍においては「○○型」というのは「類別等級表」に書いてある「艦型」が公式になります。そしてそこに記載されている順番=公式な×番艦でしょう。
    なお、編制上の序列では、どの艦を何番艦にするかは指揮官の所定であることが多いので、必ずしも旗艦=1番艦とは限りません。

    「類別等級表」は内令で改定されますので、内令を追えば個々のケース、例えば「加古型ヲ古鷹型ニ変更」された日付が判明するかもしれません。
    ただし、「類別等級表」は頻繁に改定されるものですし、一部には違和感がある場合があります。
    例えば「類別等級表」の「金剛型」は「金剛」「榛名」「霧島」となっていて、「比叡」は「艦型」が空欄の「練習戦艦」に類別されていて「敷設艦」の後に記載されていますし、「最上型」「利根型」は二等巡洋艦に類別されています。
    ですから「類別等級表」によれば「金剛型」戦艦「比叡」も一等巡洋艦「最上型」も存在しません。
    なお、「類別等級表」以外の書き方をしている公式資料があることを付言しておきます。

    ちなみに昭和16年の「類別等級表」では「古鷹型」「高雄型」は以下の通り記載されています。
    軍艦:巡洋艦:一等:古鷹型
    「古鷹」「加古」

    軍艦:巡洋艦:一等:高雄型
    「高雄」「愛宕」「鳥海」「摩耶」
    出沼ひさし

  2. >日本以外でも一定の定義がある言葉(=該当する言葉がある)なのか

    定義とかではなく同型艦・準同型艦識別における各海軍ごとの原則みたいなモノではないでしょうか
    公文書に当ったワケではありませんケド前ド級〜WWI期の英海軍の場合
     ネイムシップ: ポォツマスなど海軍工廠建造艦
     N番艦(ファンネルバンド): 艦名のアルファべチカルに1st, 2nd, 3rd〜
    の原則があるようデス
    なおベルロフォン級と聖ヴィンセント級は外観近似のため両級通しのファンネルバンドとされてました
    また米独軍艦は戦隊or小隊N番艦としてのファンネルバンドとされてました 
    以上ご参考まで
    駄レス国務長官

  3.  アメリカは基本的に予算上で最初の艦番号が付けられた艦が「一番艦」となります(メリーランドが先に就役したのに、コロラド級と呼称されるのはこれの代表例です。但し事実上メリーランドが一番予算支出年が若いこともあるため、同級をメリーランド級と呼称する例も見受けられます)。艦番号付与の場合、「何番艦」の呼称は固定されますから、エセックス級等の大量建造が行われた官の場合、竣工順が入れ替わっても書類上の変更や混乱が生じないという利点がありました。

     なお、米海軍の場合、近年までネームシップであった該当艦が喪失等の理由で艦籍から消えた場合、その時点で就役している同型艦のうち、艦番号が一番若い艦に艦型の類別名称が変更される事になっていました。
    大塚好古

  4. ありがとうございます。
    ということは、日本海軍の場合「高雄型」に対して一番艦が「愛宕」(竣工が早い)という表現は記述している方の立場の都合はあっても、海軍自体の類別等級表の分類に則っているわけではない。(仮にそのように表記した公式資料があったとしても例外的表記と考えた方がいいと思うので)
    米海軍の場合も、艦番号順で「何番艦」であるから、コロラド型一番艦がメリーランド、になるわけではない。
    ちょっとはずれますが、globalsecurity.orgの解説では公式にはコロラド級であり、竣工順に呼びたい人はメリーランド級とありますのでこれも例外的な呼び方という考え方でよいのでしょうか?
    WWIの英海軍については全く気付きませんでした。
    英軍の場合はネームシップとN番艦は全く別の順序であると言うことですか?
    ベレロフォンではBなのでわかりづらいですがオライオン級だとネームシップとは別に一番艦はコンカラーになるということでしょうか?(それともオライオンは別扱いで同型艦の1stと言う意味で実質二番艦がコンカラーになる?)
    minerba

  5. 「正式な艦型が決まっていはいるが、全員がそれに則って文書を作成しているわけではない。」というところでしょうか。
    文書と言っても「内令」「達」のような「艦型について厳密な記述が要求されるもの」と「戦時日誌」「参考資料」のような「艦型について厳密な記述が要求されないもの」があります。
    後者では書いた人によって「艦型」の表記にブレがあるということです。
    「高雄型」については「鳥海型」と表記されている文書を見たことがあります。
    出沼ひさし

  6. >4.
    >英軍の場合はネームシップとN番艦は全く別の順序であると言うことですか?

    そのようであります
    オライオン級だとコンカラァ(C)、モナァク(M)、オライオン(O)、サンダラァ(T)の順です
    なお例外的にアイロンデュウク級・・・アイロンデュウク(I)、マァルバラ(M)、ベンボウ(B)、エンペラァオブインディア(E)・・・などがあります
    駄レス国務長官

  7. > なお、米海軍の場合、近年までネームシップであった該当艦が喪失等の理由で艦籍から消えた場合、その時点で就役している同型艦のうち、艦番号が一番若い艦に艦型の類別名称が変更される事になっていました。
     スレッシャー級の1番艦SSN-593スレッシャーが事故で喪失して以後、2番艦SSN-594パーミットの名からパーミット級と称するようになった例がありましたね。
    余談ですが。
    オハイオ級のSSBNは核軍縮で最初の4隻がSSGNへと改造されたのに、級の呼び名には変更がないので、オハイオ級SSBNとオハイオ級SSGNの二つがあってややこしいです。
    便利少尉

  8. >4

     コロラドの就役前までメリーランド級という呼称が一般的に使用されたせいもあって、コロラド級をメリーランド級と呼称することは特例として認められたようです。実際海軍公式資料でも、コロラド級の退役まで同級を「メリーランド級」として記したものが少なからず存在しています。
    大塚好古

  9. >5
     実例としては妙高級を那智級と書いてある昭和12年1月の文章(アジ歴リファレンスコード:C05110848600)や、古鷹級である所を加古級と書いてある昭和12年7月の文書(C05110858900)等でしょうか。
     他にだと倫敦軍縮会議での資料で華府軍縮会議以降の日本海軍の予算を記した資料(B04122587100)で7千噸級巡洋艦を加古級と記していますが、同じ倫敦軍縮会議の会議内容の資料(B04122602800)では「喪失ノ場合ニ於ケル古鷹級代換」と記されていたりしてますね。
    予算については予算資料作成の元資料が加古級になっていたからだとも思います。


  10. ありがとうございました>各位
    大変参考になりました。
    艦船の書籍を見ていても意外とはっきりとは書いていなくて推測はできても確証が持てなかったことだったので謎が氷解しました。
    minerba


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