173 第2次大戦中の米護衛駆逐艦の備砲についてお伺いしたいことがあります。

米護衛駆逐艦には備砲が5インチ砲2門のものがありますが、これらの艦は公算射撃をあきらめ、近距離砲戦用と割り切っていたのでしょうか?
また、対空射撃はどの程度考慮されていたのでしょうか?

ご存知の方がいらっしゃいましたらよろしくお願いいたします。
どん

  1. こんにちは。
    どん様がどの程度のところまで御自分でお調べになったか明確ではないですが、
    3インチ×3にしろ5インチ×2にしろ、ちゃんと本格的な射撃指揮装置と連動しており決して「近距離砲戦用と割り切っていた」わけではありませんよ。
    超音速複葉機

  2. 横から便乗質問で申し訳ありません。
    >どんさん
    米海軍の“公算射撃”とはどのようなことを言うのでしょうか?
    >超音速複葉機さん
    “本格的な射撃指揮装置と連動しており”とは具体的にどの様なことを
    言うのでしょうか?
    艦船ファン

  3. >超音速複葉機様
    ご回答ありがとうございます。
    そうでしたか。
    相応の距離で公算射撃をするには3門以上の砲が欲しい(なので各国の大型艦は交互射撃を前提に6門以上、日本では水雷艇や海防艦でも3門搭載)ものと思っていたため、遠距離砲戦にはかなり不利なのではないかと思いました。
    ...「公算射撃をあきらめ」という言い方は筆が滑りすぎだったかもしれませんが。

    >艦船ファン
    すみません、質問の意図が読みきれませんでしたが、私の感じた疑問をもうすこし具体的に述べると上記のとおりとなります。
    どん

  4. >艦船ファン様

    すみません、敬称が抜けていました。
    失礼いたしました。
    どん

  5. >3 どんさん
    一般的にいう「公算射撃」や「公算射法」とは、旧海軍が生み出したその独特な統計確率、即ち公算学の学理に基礎を置く射法のことを言います。 これには試射・本射の組み立てから射弾指導までの一切が含まれます。(ただし、旧海軍自身がこれらの用語を公的に使ったことはありませんが。)
    そこでお聞きしたかったのは、米海軍がこのような射撃を実施していたのでしょうか? ということでした。
    “3門以上の砲が欲しい”と書かれたところからすると、多分誤解されているのではないかと感じる次第です。
    結論を申し上げると、米海軍の射撃は、単純に弾着点の中心(必ずしも斉射による弾着の射心とは限りません)を目標に合わせる如く修正しいてくのが標準的なやり方です。 特にレーダー測距が使えるようになってからは殆どこの方法のみです。 いわゆる「階梯射」の様な試射のやり方もあることはありましたが、その射弾修正の方法は同じです。
    ですから、“公算射撃をあきらめ”云々ということそのものが始めから成立しません。
    本来のご質問からは離れてしまいましたが、ご参考までに。
    艦船ファン

  6. >2
    >“本格的な射撃指揮装置と連動しており”とは具体的にどの様なことを言うのでしょうか?

    艦船ファンさん毎度お世話になります。記述が足りませんでした。
    「一例を挙げればDET型はMk26射撃レーダー付きMk52方位盤を艦橋上に装備…」と詳細に書くべきでしたね。


  7. >6 超音速複葉機さん
    >Mk26射撃レーダー付きMk52方位盤
    ご存じのとおり、この射撃指揮装置はMk52方位盤(Gun Director)にMk15照準器(Gun Sight)を装備したもので、主体はこの照準器になります。 そしてMk26は元々単なる測距用のレーダーで、米海軍でも射撃用とは言っていないものです。
    したがって、この装置全体は米海軍では正式には「Mk52 Gun Fire Control System」とは言いません。
    このMk15照準器ですが、中・近距離の対空用に計算を極めて簡略化した角速度式の見越計算装置で、これに基づきMk16射撃盤(Gun Computer)で弾道計算をします。 これによる対空射撃は、350ノット以内の近接目標に対し7500ヤード以内の射撃計算が可能です。 (遠対勢は誤差が大きすぎてVT信管使用でも実用になりません。)
    また、水上射撃の場合はMk6射撃盤(Gun Computer)を使いますが、これは単に弾道計算のみの簡易・応急用のもので、かつ照準器そのものが水上射撃用に出来ておりませんので、その能力はこれも極めて限定的です。
    (因みに、海自の「あさひ」「はつひ」などにもこのMk6が装備されていましたが、その能力の低さからとても使い物にならなかったと聞いています。)
    即ち、射撃指揮装置としてはとても“本格的な”と言える代物ではありません。 このMk15照準器は初期のMk63射撃指揮装置にも一部用いられておりますので、その能力は推して知るべきかと。
     ということで、本来のご質問である米海軍の護衛駆逐艦の砲装能力としては、艦そのものがそうであるように、極く簡易型の駆逐艦程度と考えていただければ宜しいかと思います。
    艦船ファン

  8. >7
    済みません、ミスタイプです。
    Mk16射撃盤 → Mk13射撃盤
    艦船ファン

  9. >6 名前がちゃんと入らなかった…
    >7・8
    艦船ファンさん詳細乙です。
    自分のリサーチ能力ではこの程度までが限界でした。勉強になりました。
    超音速複葉機

  10. >艦船ファン様

    ご教授ありがとうございます。
    "公算射撃"は弩級戦艦の発達史の解説などでよく見かける言葉のように感じていたので、一般的な用語かと思っていました。

    お手数ですが、もう少し教えて頂けないでしょうか。

    >単純に弾着点の中心(必ずしも斉射による弾着の射心とは限りません)を目標に合わせる如く修正しいてく

    とは、例えば砲1門であっても、何回も射撃を繰り返していくうちに「このパラメータで打ったら弾着点の中心(散布界の中心)はここになる」というようなあたりを付けていく、というようなことでしょうか?

    また、最初の質問に戻りますが、
    ・この方法では2門だから遠距離砲戦が特に不利になるということはない(射撃指揮装置の件は別にして)
    ・対空射撃についても同様
    と思っていいのでしょうか?
    どん

  11. >10. どんさん
    >例えば砲1門であっても、何回も射撃を繰り返していくうちに
     極論を言えばそういうことになります。 ですから沢山撃って弾着中心を見極めて、その弾着中心が目標位置になるように修正すれば良いわけで、簡単と言えば簡単な方法です。

    >この方法では2門だから遠距離砲戦が特に不利になるということはない
     どの様な状態・状況であろうとも、門数の少なさは圧倒的に不利です。
     ご承知のように、砲の射撃は多かれ少なかれ射弾の誤差、即ち弾着の散布が生じて絶対に1点には弾着しません。 したがって、この散布の中に目標を置いて命中弾が得られるのを期待するしかありませんから、同時に撃つ門数が多ければ多いほど有利です。 
     更に、例え多少1発(1斉射)の命中率や射弾精度は低くとも、同時に出来るだけ沢山撃った方が単位時間当たりの命中弾数が多く(=命中速度が高く)なります。
     米海軍はこの方式を採り入れて、出来るだけ多くの砲(艦)で、かつ出来るだけ高い発射速度で短時間に多数の弾を撃って、全体としての単位時間当たりの命中弾数を多く得ることを戦術的に求めました。
     極端な例で言えば、命中率10%の砲x1門で10分間に10発撃つと、その間に1発の命中弾(命中速度0.1発/分)が期待できるわけですが、命中率2%の砲x4門で10分間に各門40発、合計160発撃てば、命中弾3発以上(命中速度0.32発/分)が期待できることになります。 この様なことは、まさに持てる国だからこそ採り得る戦術です。

    >対空射撃についても同様
     ミサイルと異なり艦砲の対空射撃は要するに先の射弾散布による弾幕射撃ですから、目標の速度と射撃時間の短さの点から水上射撃よりももっと典型的な話しになり、門数の少なさは圧倒的に不利です。
     したがって、護衛駆逐艦の場合は個艦の門数の少なさは、隻数の多さでカバーするしかありません。 それが出来るのが米海軍だったわけですが。
    艦船ファン

  12. ご回答ありがとうございました。

    >極端な例で言えば、命中率10%の砲x1門で10分間に...

    この計算はつまり、砲門数の多寡が一門当たりの命中速度を大きく左右するわけではない、ということですか。
    お互いが動いている水上砲戦では一回の斉射毎に弾着の中心がはっきりとわかるかどうかは効率の1つの分かれ目になるのかと思っていた(用語の厳密な用法はともかく、3門以上云々はそういうイメージでした)ので意外でした。
    どん

  13. >12. どんさん
    >砲門数の多寡が一門当たりの命中速度を大きく左右するわけではない
     砲門数の多寡は1門当たりの命中速度(=命中弾数/分/門)も、また命中率(=命中弾数/発射弾数)をも左右するわけはありません。 砲門数の多寡や発射速度の大小は、全体としての“命中速度”(=命中弾数/分)を左右します。

    >水上砲戦では一回の斉射毎に弾着の中心がはっきりとわかるかどうかは効率の1つの分かれ目
     弾着中心が正確に判定できるという意味では斉射が遥かに有利です。 しかしその為には発砲管制や弾着観測に時間を要し、全体としての発射速度が低下します。 これはつまり「命中率」は向上させられるでしょうが、逆に「命中速度」の低下をもたらすことを意味します。
     したがって、斉射がいいのか、連続発射するのがいいのかは、一重に使う砲種や射撃指揮装置、対勢や距離、天候などのその時の状況、あるいは射撃指揮官以下の乗員の技量、などなどによって総合的に決定されるべきものです。
     ただし、旧海軍のように射撃指揮官の弾着観測に基づいて「命中率」に重点を置くよりは、米海軍のようにレーダー測距に基づく「命中速度」に重点を置いた方が、太平洋戦争の“結果”としては成功したといえるでしょう。 特に夜戦に関しては。 (ただし昼間の戦艦対戦艦などは生起しませんでしたので、これを以て水上射撃総てを結論付けるのは早急と考えます。)
     本題の米海軍の護衛駆逐艦の場合ですが、そもそもがこれに乗艦指定されるはずの乗員の技量(特に砲術長などの士官や主要下士官)や艦の用途、つまり置かれる戦術状況(作戦形態)を考えるならば、5/3インチ2〜3門であろうともその速射性とレーダー測距を活かせれば充分であるというのが、その砲装の思想ではないでしょうか?

    艦船ファン

  14. 艦船ファン様

    重ねてのご回答ありがとうございました。

    まず、斉射しないのなら砲門数に特別な意味はなく、見るべきは全体の発射速度だ、ということですか(10発/minの砲2門と5発/minの砲4門はおおよそ等価)。
    過去ログに、砲門数と1門当たりの発射速度は単純には置換できない旨の解説がありましたが、それは斉射の場合の話なんでしょうね。

    >砲門数の多寡は1門当たりの命中速度(=命中弾数/分/門)も、また命中率(=命中弾数/発射弾数)をも左右するわけはありません

    これは、素人考えでは、単位時間あたりの発射弾数は単位時間あたりの取得情報量に直結し、急速に変化する状況下では命中率に影響する要素に思えますが、実際はもっと単純である、ということですか。

    射撃方式(斉射/連続発射)についてはそれぞれ得失があるということですね。
    特にレーダーが使えると斉射で交通整理(?)するメリットが薄れるのでしょうか。

    >本題の米海軍の護衛駆逐艦の場合ですが...5/3インチ2〜3門であろうともその速射性とレーダー測距を活かせれば充分である...

    雰囲気がつかめたような気がします。
    そもそも当時の艦砲射撃=斉射と思っていたので、だいぶイメージが変わりました。
    どん


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