440 艦載の対空ミサイルについての質問です。
セミアクティブレーダー誘導の対空ミサイルは基本的には対レーダーミサイルと同じ原理なのでしょうか。その場合自身と目標の距離はどのようにして知るのですか?
はるび

  1. >同じ原理
    指定された特定のレーダー波(電磁波)に対してホーミングする、ということでは同じですが、それ以上の細部についてはそれぞれ異なります。

    >自身と目標の距離はどのようにして
    両方式の原理をお考えいただけばお判りいただけると思いますが、距離は測りません(測れません)。

    基本的に、両方式とも特定レーダー波の受信方向が一定となるよう、即ち衝突コースを保つように飛翔制御されます。 昔は受信方向を真正面に保つよう、即ち犬追いコースとなるようになっているものもありましたが、現在ではまずありません。

    艦船ファン

  2. 横から失礼します。
    セミアクティブレーダーの場合、誘導電波は連続波といえど妨害を避けるためには何らかの変調をかけることが必須ではないかと思います。したがって直接波と反射波をとらえて比較すれば距離は分かるのではありませんか。
    実際には測っていないのかもしれませんが、少なくとも原理的には可能であると思います。
    VV

  3. 具体的にどうぞ

    艦船ファン

  4. >2

    送信側(発射母艦)と受信側(ミサイル)をどうやって同期させるのですか?
    ミサイル側で距離を知るためには変調された送信波の内容をリアルタイムで把握する必要がありますが、レーダーは送信と受信が同じところにいるからそれが可能であって、送信と受信が分離されていた場合、受信側単独で距離を正確に測定することはできません。(バイスタティク・レーダーの技術的課題が正にここですね。)

    勿論、ESMやRWRといった受信のみのシステムにおいても、目標のある程度の距離は掴めるのですが、とても高精度なものとは成り得ません。

    また、艦船ファン氏が仰るとおり、現在の対空ミサイルの誘導は比例航法が主体であり、比例航法で必要なのは目標との角度情報であって、距離情報を知る必要はありません。

    HPS-106

  5. >2
    艦船ファンさんやHPS-106さん(おお!HPS-106はP-1哨戒機の4面AESAレーダーですね)が書かれている通りに距離の測定とかはしないし、原則できないですね。角度情報だけで命中しますから距離情報はなくてもよいのです。
    HPS-106さんが書き込まれる前に私も時刻同期はどうするのかと思いました。

    VVさんが書かれている「直接波と反射波」の直接波と言うのはセミアクティブ誘導ミサイル等の後部に付いているアンテナで母艦や母機のイルミネーターからの照射波を直接受けるレファレンス・レシーバーの受信信号のことなんでしょうかね?
    でもこの受信波は、ミサイルのシーカーアンテナが受信する目標からの反射波を信号処理する際に必要なミキシング用の基準波として利用するためのものが元々で、これを距離判定に利用しようとかの話は私は聞いたことがありません。
    対空ミサイルのリヤアンテナ(サイドアンテナがあるものも)のその他の利用としては、ミサイルによっては母艦や母機からのコマンド受信やデータリンク用の送受などもあるでしょうね。
    MK@2004-

  6. HPS-106 さん、MK@2004- さん、ありがとうございます。

    お二人はお判りと思いますが、元々の質問の主旨に対して、もう少しSARH方式そのものの原理について説明して置いた方がよいと思いますので、少々補足を。

    そもそもSARH方式において何故誘導波のフロント(シグナル)とリア(レファレンス)の両方を受信するのかという目的の一つが、両波を比較してドップラー周波数を計出することにあります。 このドップラー周波数が予め(発射前に)設定された数値以内にあることをチェックして、受信した反射波が確かに所期の目標からのものであることを確認し、この受信を保持するするためです。

    様々なノイズや近傍にある他目標からの反射波などの中から、目標からの反射波のみを確実に拾い出して受信するためには、極めて重要な機能であることはお判りいただけるでしょう。 特に中射程以上のSAMにおいては。

    したがって、このドップラー検出のためには、誘導用のCW波は変調どころか極力変動の少ない綺麗(プレーン)な正弦波であることが求められるます。

    そして、>2.の方がどのようなタイプの妨害をどの様にかけると考えておられるのか判りませんが、この様なプレーンなCW波に妨害をかけると結果としてどのようになる(ようになっている)かをお考えいただけばよろしいでしょう。 つまり妨害の意味をなしません。

    つまり、SARH方式においては誘導波は変調しませんしその必要もありません。 逆に邪魔になるだけです。

    したがって始めから考慮されてもいないし、現行機能を阻害するだけでしかない機能を“付加すれば可能”と言われても、それをSARH方式の原理とは言わなことは申し上げるまでもありません。

    もちろん、変調をかけるようなSARH方式の艦載SAMがあるとするならば、是非ともご教示いただきたいところですが。

    艦船ファン

  7. 便乗質問失礼します。

    >この様なプレーンなCW波に妨害をかけると結果としてどのようになる(ようになっている)かをお考えいただけばよろしいでしょう。

    これはレファレンス信号に妨害成分が重畳されるので意味がない(妨害成分がミックスされた信号を基準波として処理してしまう)ということでしょうか、それとも綺麗な正弦波なレファレンスと妨害波の識別が容易ということなのでしょうか。
    つかだ

  8. >7.
    変調も何もないCW波に対する妨害形式は、ほとんどの場合そのままのCW波の形式になります。 ところが先にも書きましたように、SARH方式の場合、SAMはこの誘導波の目標(ターゲット)からの反射波であるシグナルと発射艦(誘導艦)からのレファレンスの2つを受信してドップラー信号を検出します。

    となると、ターゲット自身でない限り、このドップラー成分も含めた周波数の妨害のCW波を出すことはまず不可能です。(SAMの速度又はSAMとターゲット間の近接速度のドップラー成分を知ることが必要になるからです。)

    そしてそのターゲットにしても、受けたCW波をそのまま増幅して自身からの反射波以上の電力にして返す以外には方法はありません。 したがって、逆にSAMにとってはその様な妨害波は単に強いシグナルでしか無く、ARMと同じことになりますので、もしやろうとするとSAMの受信器を飽和するか焼き切るような強い妨害波が必要となります。

    ところが、ターゲットは誘導波を照射する発射艦の方向は判りますが、飛んでくるSAMの方向は判りませんし、判りようがありません。 ターゲットと発射艦を結ぶ直線上をSAMが飛翔して来るわけではありませんので。 となると、SAMに対して指向性の強い(=ビームを絞った)妨害はかけられませんので、無指向性のとんでもなく強いものが必要になります。

    結局、SARH方式のSAMに対抗するための電子妨害は、発射艦の追尾レーダーのロックオンを外す(=結果として誘導波の照射から外れる)タイプのものの方が遥かに効率的・効果的ということになります。

    つまり、妨害を避けるためにCWI波に変調をかける必要は全く無い、ということです。

    艦船ファン


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