456 |
英戦艦キングジョージ5世級の艦首形状「スターンバウ」に関して質問させていただきます。 検索したところ、「凌波性が劣っていた」というデメリットの記述しか見つけられませんでしたが、これは結果論であり、設計段階で「凌波性に劣る艦首にしよう!」などと思って採用したはずもありません。 いうまでもなく本級は、英国が軍縮条約明け最初に建造した戦艦ですから、艦首の形状も含めて、相当の期待と野心が込められていたものと推測するのですが、英国側はこの艦首形状にどのような狙いを持っていたのでしょうか? そして、実際の運用面で、メリット的なものはなかったのでしょうか? 駆逐艦ユキカベ |
- http://www.warbirds.jp/ansq/21/B2001610.html の7の記述に従えば、威容のためです。もっとも、これは第2次世界大戦時の勃発時のドイツ戦艦についての記述でありますので、イギリス戦艦について援用できるかどうかは分かりませんが、KGVだけでなく、ネルソン級も垂直艦首ですので、そのように考えてもいいように思います。他に考えられる理由としては、被弾面積を小さくすることができる、艦の全長を短くすることにより、利用できる船渠の数を増やせる等が考えられます。
凌波性については、その必要性があまりなかったという可能性があります。KGV設計時に、直近の戦闘は第1次世界大戦のものであり、中でもジュットランド沖海戦が重要視されていたはずです。しかし、この海戦は大西洋の荒波をかき分けてという種類のものではなく、北海という英国の庭のようなところで行われています。また、フォークランド沖海戦を別とすると、北海以外では、地中海、黒海ぐらいでしか主力艦同士の戦闘というのはなく、外洋で行われたものはありません。
したがって、KGVの設計に当たっては、凌波性というものはあまり考慮されずに、ネルソンの設計を踏襲したとも考えられるのですが、実際には、戦闘範囲は北極海まで広がったので、ヴァンガードの場合は、大きなシアーを持つ長大な傾斜艦首に変更されたのだろうと愚考しております。
しかし、そうなると、グナイゼナウ級のように艦首構造を改めなかったのはなぜかという疑問が当然生じるのですが、このあたりはよくは分かりません。ただ、艦首重量が増えるというような問題以外にも、船渠の長さだとか、改修により戦艦の不足が生じるというような、もっと巨視的な問題が発生する可能性があるという点だけ指摘させて戴きます。
hush
- 第一次世界大戦後の英海軍はアジアでの対日戦を大艦隊維持の理由しています。想定された日本海軍主力部隊との決戦海面はシンガポール沖だったりします。
BUN
- >2
御指摘多謝。
すっかり、そのことを忘れておりました。
ただ、第2次世界大戦後期にKGV級の何隻かは、太平洋戦線への回航を前に改修工事を行っておりますが、その際に艦首はいじっていないようです。それだと大規模に過ぎて改修期間が延びるからというような理由もつけられるとは思うのですが、ならば、ブルワークぐらい設置してもいいのではと思います(前方射界を確保するために水平甲板にしたということは無視しておりますが)。艦名のことしか知りませんので、もし、付加されていたら御免なさいですが、それもなされていないということは、凌波性はこの程度でよいと考えていたのかもしれません。
もっとも、戦間期と大戦後期では、戦艦というものの果たしうる役割が大きく変わっておりますので、同一に考えるのはおかしいのですが。
hush
- スターンバウ導入に積極的な理由があったかどうかは別として、想定された戦闘海域と実際の戦闘海域が違っていたため、デメリットが目立ってしまった、という一面もあるのですね。
「威容」についてはまったく思い至らず、興味深く感じました。
40年近く前、「宇宙戦艦ヤマト」から戦艦に興味を持つようになった結果、海面に対して斜めでない艦首は即「格好悪いモノ認定」していたかつての少年としては、あの垂直艦首に美しさや威容を感じることはできないのですが、艦に対する美的感覚も、お国柄や時代によって変わるのでしょうね。
hush様、BUN様、ご回答ありがとうございました。
駆逐艦ユキカベ
- キングジョージ5世クラスの艦首が非常に素っ気ない形態である最大の理由は艦容を整える為ではなくA砲塔が前方への無仰角射撃を行うからです。
凌波性に劣ることは開戦前にも予想されていて、ライオンクラスでは若干改善されていますが、最終的な改良はヴァンガードで実施されます。
これは実際に前方へ向けての主砲射撃を行ったビスマルク追撃戦の戦訓を反映したもので、主砲のブラストによる損傷が激しいことが実戦で確認されて設計方針が変わった結果です。
また、ヴァンガードでバルバスバウが採用されなかった理由は低速時に抵抗が増大して航続力の低下を招くというものです。
前方無仰角射撃という要件が無くなると、船としてあるべき形になって行くという比較的単純な話です。
BUN
- 建造過程における重量超過により乾舷が計画値よか約3フィート減ってしまったのも凌波性低下の一因かと
ソースはBurt著British Battleships 1919-1939
♯スターンバウ
「スターン」(stern)とは船尾、とも(艫)のコトですから、用語の適否について再度ご確認をお願いします
駄レス国務長官
- 御質問は、なぜ、KGVは垂直艦首を採用したのかというものだと、勝手に読み間違えておりました。5の御回答を見て、今一度、御質問を見直し、初めて自分の間違いに気づきました。3で前方射界を確保するために水平甲板にしたとあるように、この艦首形状は射界確保のためのものです。まったく、5と6が正しく、私の書いたものは、思いっきり外れております。お忘れください。
>6
提督がそうお書きになられるということは、やはり、スターンバウという言い方はしないということですね。実は、WikipediaのKGVの項にその言葉が使用されていて、これは何だろうとずっと悩んでいたのです。そこで、これはvertical stem bowからステム・バウという言葉を考え、それが変形したものと考えたのです。そして、それが頭にあったもので、艦首形状ではなく、垂直艦首についての御質問だと思ったわけです。
hush
- 横から便乗失礼します。
明確な根拠があるわけではありませんが、垂直な艦首になっているのは水線長をなるべく長くとるためという話をどこかで聞いたような覚えがあるのですが、そうした要素は無いですか?
おうる
- >8.
WWI英主力艦のクリーヴァー・バウcleaver bowみたいに艦首材の頂部よか水線部のほうが前方に突き出ていないと水線長増大の意図有りとは看做されないんじゃないでしょうか
ちなみにネルソン、KGV両級とも艦首材は垂直でなくやや前傾してます
駄レス国務長官