459  大戦中の重巡は魚雷を廃止しましたが、戦後米海軍自身はこの決断を正しかった認識したのでしょうか?
でんじゃー

  1.  重巡洋艦に限らず、オマハ級を別とすると、今次大戦に参加したアメリカの巡洋艦で魚雷発射管を搭載したのはアトランタ級だけです。これは、駆逐艦部隊の指揮艦を兼ねるという構想があったからですが、中期型の一部以降は搭載していません。魚雷の攻撃力よりも、誘爆の危険性のほうが重視したからです。そして、この考え方は正しかったというのが、彼等の考え方であり、戦後も、対潜用を別とすると、魚雷を搭載しておりません。
     日本の巡洋艦では航空機の攻撃を受けて沈没したものが大半ですが、魚雷発射管を搭載していなければそのような結果にならなかったものもあるのではないかと思います。特に、鈴谷の場合は、わずか1発の至近弾で発生した火災が、魚雷に誘爆して沈没しています。また、巡洋艦ではありませんが、駆逐艦秋月は、雷撃を受けて沈没したことになっておりますが、実際には自軍の打ち上げた対空砲火の破片が魚雷発射管に当たって、誘爆、爆沈したといわれます。
     これに対して、アメリカ巡洋艦で魚雷の直撃を受けて沈没したものはありますが、砲撃により沈没したのは戦艦の砲撃も受けたアトランタだけです。これ以外の場合、魚雷1本程度の命中で沈没したものはなく、かなりの防御力を発揮しています。しかし、もし、魚雷発射管を搭載していた場合は、かなり、それが低下するというのがアメリカ側の認識だったと思います。そして、大戦後、日本艦の損失状況を知るにつれ、それが正しかったとしたのではないかと思われます。
     
    hush

  2.  必ずしも正しかったと思ってないから、デ・モインなんてバケモノを作ったのではないかと。
     つまり魚雷を積まないということは打撃力がないということですから、それで良しともしてないと。

     また日本重巡は誘爆対策をしてます。残念ながら最上型はその対策を台無しにする船体構造強化改造をしてるので、あのような結果になってしまいましたが、鈴谷や三隈の事例を日本中順は魚雷があるから脆い等と簡単に結論してしまうのも乱暴な話でしょう。
     そして日本重巡も魚雷一本で沈んだ例はありませんし、砲撃だけで沈んだのも古鷹ぐらい(軽巡含めても神通と川内ぐらいですから猛烈な集中射撃が必要なようです)
     あのクラスの艦が魚雷一本では沈まず、砲撃では容易には仕留められないというのは普通のようで、両軍巡洋艦の防御耐久性に顕著な違いがあったとは言いがたいでしょう

     米軍は魚雷装備による危険性を打撃力よりも重視した。結果として魚雷誘爆による損害はなかったが、水上打撃力は常に不足していた。
     日本は魚雷誘爆は対策できるとして重雷装に走り相応に戦闘で結果を残したが、対策できなかった艦では致命傷になる弱点となった。どっちもどっちでしょうね。
    SUDO

  3. 不勉強ながら米海軍自身がどのように認識していたか確実な答えは持ち合わせておりませんが、反面教師として日本海軍重巡洋艦の例を挙げてみるのも一考かと思います。

    1 妙高 …17年1月ダバオ。米陸軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    2 三隈×…17年6月ミッドウェー。米海軍機の爆撃で沈没。魚雷の誘爆を確認。
    3 最上 …17年6月ミッドウェー。米海軍機の爆撃で損傷。発射管付近に被弾するも投棄成功。
    4 鳥海 …17年8月第一次ソロモン。米水上艦の砲撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    5 青葉 …17年8月第一次ソロモン。米水上艦の銃撃で損傷。発射管室付近が炎上するも消火成功。
    6 加古 …17年8月第一次ソロモン後。米潜水艦の雷撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない。
    7 青葉 …17年10月サボ島沖。米水上艦の砲撃で損傷。魚雷の誘爆なし
    8 衣笠 …17年10月サボ島沖。米水上艦の砲撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    9 古鷹?…17年10月サボ島沖。米水上艦の砲撃で沈没。魚雷の誘爆は不明(誘爆を生じたとする説もあるが、航行不能から沈没まで約2時間あり長すぎるので怪しい)。
    10 筑摩 …17年10月南太平洋。米海軍機の爆撃で損傷。発射管付近に被弾するも投棄成功。
    11 衣笠 …17年11月第三次ソロモン。米海軍機の爆撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない。
    12 摩耶 …17年11月第三次ソロモン。米海軍機の爆撃で損傷。発射管付近に被弾するも投棄成功。
    13 愛宕 …17年11月第三次ソロモン。米水上艦の砲撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    14 那智 …18年3月アッツ島沖。米水上艦の砲撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    15 青葉×…18年4月カビエン泊地。米陸軍機の爆撃で大破着底。魚雷の誘爆を確認。
    16 熊野 …18年8月ソロモン海域。米潜水艦の雷撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    17 羽黒 …18年11月ブーゲンビル島沖。米水上艦の砲撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    18 愛宕 …18年11月ラバウル泊地。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    19 高雄 …18年11月ラバウル泊地。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    20 摩耶 …18年11月ラバウル泊地。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    21 最上 …18年11月ラバウル泊地。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    22 筑摩 …18年11月ラバウル泊地。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    23 摩耶 …19年6月マリアナ沖。米海軍機の爆撃で損傷。発射管付近に着弾するも投棄成功。
    24 青葉 …19年10月フィリピン沖。米潜水艦の雷撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    25 愛宕 …19年10月フィリピン沖。米潜水艦の雷撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない。
    26 摩耶 …19年10月フィリピン沖。米潜水艦の雷撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない。
    27 高雄 …19年10月フィリピン沖。米潜水艦の雷撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    28 妙高 …19年10月フィリピン沖。米海軍機の雷撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    29 最上 …19年10月フィリピン沖。米水上艦の砲撃及び米海軍機の爆撃で沈没。艦の放棄決定まで魚雷の誘爆は確認されていない。
    30 羽黒 …19年10月フィリピン沖。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。 
    31 鳥海 …19年10月フィリピン沖。米水上艦の砲撃及び米海軍機の爆撃で沈没。詳細不明なるも魚雷の誘爆は確認されていない。
    32 熊野 …19年10月フィリピン沖。米水上艦の雷撃及び米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。
    33 鈴谷×…19年10月フィリピン沖。米海軍機の爆撃で沈没。魚雷の誘爆を確認。
    34 利根 …19年10月フィリピン沖。米海軍機の爆撃で損傷。魚雷の誘爆なし。 
    35 筑摩 …19年10月フィリピン沖。米海軍機の雷爆撃で沈没。詳細不明なるも魚雷の誘爆は確認されていない。
    36 那智 …19年11月マニラ湾。米海軍機の爆撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない。
    37 熊野 …19年11月ルソン島沖。米潜水艦の雷撃で損傷。魚雷の誘爆なし(恐らく非搭載)。
    38 熊野 …19年11月ルソン島沿岸。米海軍機の雷爆撃で沈没。詳細不明なるも魚雷の誘爆は確認されていない(恐らく非搭載)。
    39 足柄 …19年12月ミンドロ島沖。米陸軍機の爆撃で損傷。発射管付近に被弾するも投棄成功。
    40 羽黒 …20年5月ペナン島沖。英水上艦の砲雷撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない(非搭載)。
    41 足柄 …20年6月ジャワ島沖。英潜水艦の雷撃で沈没。魚雷の誘爆は確認されていない(非搭載)。
    42 利根 …20年7月瀬戸内海。米陸海軍機の爆撃で大破着底。魚雷の誘爆は確認されていない(非搭載)。
    43 青葉 …20年7月瀬戸内海。米陸海軍機の爆撃で大破着底。魚雷の誘爆は確認されていない(非搭載)。
    44 高雄 …20年7月シンガポール。英潜水艇の攻撃で損傷。魚雷の誘爆は確認されていない(非搭載)。

     以上、衝突を除く被害例44件のうち、魚雷の誘爆が確実なものは3件(三隈、青葉、鈴谷)のみで、発生率は約6.8%。に過ぎません。それに対して日本巡洋艦(軽巡のもちと混じる)の魚雷による撃沈例は、ジャワ沖のデ・ロイテルとジャワ、第一次ソロモンのクインシーとヴィンセンス、それにキャンベラ(アストリアは砲撃のみらしいので除外)の5隻に上るので、十分リスクに対するペイはできたものと評価しても間違いではないでしょう。

     上にも結構ありますが、実際には魚雷誘爆の危機に瀕しても緊急投棄などで回避した例はあまたあり、これらもダメージコントロールの成功例として再検討すれば、日本艦艇に対する厳しいダメコンの評価もおのずと違ったものになるはずです。
     とくに三隈は魚雷の誘爆を生じたのは被弾の累積後と言われており、乗組員の死傷等で満足に対処できなかった事情を考慮すれば、日本重巡の中で魚雷搭載が沈没理由に直結したのは初動のダメコンに失敗した鈴谷ただ1件に限られることになります。

     なお欧州方面では、英巡洋艦が魚雷を搭載したまま独伊空軍の爆撃に長年月曝され、複数の沈没艦(グロスターやフィジー等)を出していますが、こちらも搭載魚雷の誘爆や沈没理由に直結したものは管見の限り見受けられません。

     したがって私としては>1よりも>2の見解が実態に即したものであるとしたうえで、「この決断を正しかった」と認識することは、恐らく米海軍の当事者としても悩ましい命題であるに違いないと申し上げます。
    加賀谷康介


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