508 1920〜30年代の巡洋艦で判らない事がありましたので書き込ませていただきます。

日本海軍の球磨型〜川内型は162m×14.2mで9万馬力、4軸推進で36ノットの速度を発揮します。
これに対し同程度の艦体規模と排水量、出力を持つイタリア海軍のアルベルト・ディ・ジュッサーノ級及びルイージ・カドルナ級は2軸推進で36ノットを発揮しています。
高速性能の発揮には軸数が多い方が良いと記憶しているのですが、イタリアの軽巡洋艦は最後まで2軸推進で34〜36ノットとなっているようです。
これはイタリア海軍の機関技術が優れていた、という事なのでしょうか?
同時期の他国巡洋艦を見ても35ノット前後の速度を持つ艦は殆どが4軸推進となっており、奇異に感じた次第です(参考にしたのは世界の艦船別冊「近代巡洋艦史」です)。

宜しくお願い致します。
薩摩

  1. 球磨型〜川内型の機関は基本的に同一で、球磨起工の1918(大正7)年頃の機関技術によるものです(蒸気性状は18.3キロ、飽和蒸気)
    一方の伊軽巡は最初のディ・ジュッサーノ起工が1928(昭和3)年ですから10年の開きがあります(蒸気性状は25キロ、飽和蒸気)
    この間に欧米では電力需要の急増により火力発電所の据置タービンland turbineが急速に発達し、蒸気性状も高温高圧に向かいます
    (1925年前後が発達カーブの急激に立ち上がる変曲点)
    なので比較に際してはまず時間軸を合わせてみては如何でしょうか
    駄レス国務長官

  2. 追記
    欧米海軍では民間メーカー主導開発のland turbineの技術が艦艇用に水平展開されますが、日本海軍の艦本式タービンは海軍部内開発ですから国鉄蒸気機関車と同様ガラパゴス化の傾向が避けられず、島風(二代)の40キロ400℃にしたところで、すでに川崎と三菱で出雲丸(飛鷹)と橿原丸(隼鷹)が同等以上の蒸気性状を先に採用しています
    駄レス国務長官

  3. 言葉足らずで申し訳ありません。
    竣工時期が10年違うのでボイラー性能の違いがあるのは当方も理解しており、この場合の機関技術は推進軸に関してです。
    船体形状、機関出力、排水量がほぼ同等なのに2軸で同程度の速力を維持している部分が疑問だったもので……。
    年代を広げても5000トン〜10000トン級の高速艦は殆どが4軸なので、余計イタリアの高速艦が2軸なのが奇妙だな、と。
    薩摩

  4. 一般論として同一性能ならば構成要素が少ないほうがベターです
    また伊海軍の場合は伝統的に「缶機缶」の缶室分離配置や「缶機缶機」の交互配置が好まれてます
    まず華附条約型のトレント級が1925年に起工されてますが、機関区画は「缶缶機缶機」で、主缶と主機は各室に4基・4基・2基・4基・2基収納です(蒸気性状は21キロ、飽和蒸気)
    一方の軽巡は最初のディ・ジュッサーノ級が上記を縦に2分割した片側分で、主缶と主機は各室に2基・2基・1基・2基・1基収納です
    (同一計画主任により着想されたものと推測)
    んで排水量・船型・速力等の関係で主機1基の力量は37.500shpより47,500shpに27%増大が必要なため、使用圧増大により+19%、その他改正により+8%で対応したものと思われます
    (それほど無理なジャンプアップではない)
    駄レス国務長官

  5. ここWARBIRDSでは軸数が少ないほど効率的との書き込みが多いようですが、それは置いておいて『高速性能の発揮には軸数が多い方が良いと記憶している』とありますが、何か前提条件がついていませんでしたか?
    例えば『2軸船でも4軸船でも同じスクリュープロペラを使うとすると』などといった条件です。

    お題にあるイタリアと日本の軽巡洋艦では、この前提条件が崩れると思いますよ。2軸であるイタリア艦は4軸である日本艦に比べて、大直径のプロペラを備えていた可能性はないでしょうか。吃水もイタリア艦の方が大ですし。

    つまり、2軸船と4軸船で同じような性能がでても驚く必要はないかと。

    以下は所感ですが。
    伴流の影響は2軸船でも4軸船でも大して変わらないのかもしれません。
    次のHPの2軸船の伴流係数曲線から求まる値と
    http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1996/00277/contents/133.htm
    次のPDFファイルの4軸船の伴流値(方形係数5.7、table.8)は同じようなものともみなせます。(若干違いますが)
    http://www.nmri.go.jp/main/publications/paper/pdf/12/15/06/PNM12150601-00.pdf

    要は、推力とプロペラ直径がプロペラ単独効率につながり、2軸船も4軸船もプロペラ単独効率に(同じ船体ならば)同じような係数を掛けたものが、推進効率になるのではないかと思います。

    太助

  6. >>5
    PDFファイルに記載の船の方形係数は約0.57です。
    失礼しました。

    太助

  7. 推進器を比較すると
     球磨型 直径3.35m ピッチ3.43m 回転数380rpm
     ディ・ジュッサーノ級 直径4.4m ピッチ不詳 回転数270rpm
    と当然大直径の推進器を比較的低速で回してます

    蒸気性状にせよ主機にせよ推進器にせよ不思議に思えることは特に無いです
    駄レス国務長官

  8. プロペラ単独の効率はプロペラ荷重度が小さいほど理想効率があがるので、プロペラ荷重度を略計算して比較してみました。

    イタリア艦≒95000馬力÷2軸÷(4.4m)の自乗÷(π/4)÷動圧
    日本艦≒90000馬力÷4軸÷(3.35m)の自乗÷(π/4)÷動圧

    >>5の通りに2軸船と4軸船で伴流率が同じようなものと考え、(π/4)×動圧を同じ係数とみなすと

    イタリア艦≒2453×係数
    日本艦≒2004×係数

    となり、イタリア艦の方がプロペラ単独効率が低いことが予想される、もう少し正確に言えば、イタリア艦のプロペラはより効率の出にくい領域で設計されていることになります。
    イタリア艦はこういう損失を、馬力の大きさでカバーしているのかなとも思いました。

    太助

  9. 球磨型の推進器は展開面積比、斜影面積比とも条約型以降に比べて小さい、簡単に言えば翼が細いのも影響してるんじゃないでしょうか
    駄レス国務長官

  10. 駄レス国務長官様、太助様、ありがとうございました。
    薩摩


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