524 日本海軍は155mm砲以上の艦砲にしか徹甲弾を用意しませんでしたが、152mm砲以下に徹甲弾を用意しなかったのは何故でしょうか?
152mm砲以下では、徹甲弾を用意しても装甲貫徹力に期待できないと判断したのでしょうか? 駆逐艦主砲以下はともかく、軽巡主砲や戦艦副砲から徹甲弾が撃てないとなると、巡洋艦クラスとの交戦に問題が有るように思えるのですが。駆逐艦以下の撃退しか考えていなかったのでしょうか? それとも、徹甲弾が無くても巡洋艦との戦闘に問題は無いのでしょうか?
装甲貫徹力が期待できないとしても、152mm砲ならば155mm砲の7割程度の砲口エネルギーが有るので、1万トン級の大型巡洋艦の装甲(100mm以上)は無理としても、5〜7千トン級の比較的小型の巡洋艦の装甲(76mm程度)ならば貫徹できそうですが。仮想敵である米海軍の巡洋艦の大半が大型巡洋艦になってしまったので、大して有効ではないと判断されてしまったのでしょうか。

また、阿賀野型軽巡洋艦は何故、徹甲弾の無い152mm砲を主砲にしたのでしょうか?
152mm砲では連続発射が難しいが、140mm砲ならば問題ない、むしろ時間当たりの投射弾量で勝る、というのが20年前の判断だったはずですが。
艦型を大きくして155mm砲を搭載する、従来と同じ140mm砲で艦型縮小などの選択肢が有ったように思われるので、152mm砲を搭載したのが中途半端に思えるのです。

きっど

  1. 前半は他に適任者が居られますので後半のみ

    >阿賀野型軽巡洋艦は何故、徹甲弾の無い152mm砲を主砲にしたのでしょうか?

    1. 同型は5,500トン型をリプレースする水雷戦隊旗艦として軽快性が求められ、史実以上の艦型増大は不可と判定された
    2. 軍令部要求が15p(以上)で、当時15.5p連装砲塔も試作されていたが、砲塔1基が15pの72トンに対し106トンとなり、重量過大と判定された(砲塔が重くなれば支持する船体側も強化が必要)
    ・・・からではないでしょうか
    駄レス国務長官

  2. 「適任者」が来られる前に、古い過去ログですが、
    http://www.warbirds.jp/ansq/2/B2000384.html
    抜粋
    「〜日本海軍は対軽巡洋艦射撃においての廃艦所要弾数は徹甲弾とその他の弾種では全く同数が必要とされると見ており、同効果であるとされている〜」
    この場合、大砲は敵艦を撃沈するためではなく無力化・沈黙させるための武器という考え方になっています。

    14センチ有利という考え方も結局は20年前の結論でして、軽巡のあり方については20年間研究が続けられてきた結果の軍令部要求だったというわけです。
    阿賀野は砲装備に関しては妥協の産物なので、中途半端という批判は忍んだうえで、水雷や航空兵装が重視された艦と見るべきだと思います。
    超音速

  3. 同じく適任者が来られる前に、旧海軍史料に書かれていることからご参考までに。

    ご承知のとおり、砲装にどれだけのものを要求するかについては上を見ればキリがありませんで、実際の設計・建造は常に用兵者の要求と予算や技術的なこととの妥協の産物となります。

    とはいっても、旧海軍における砲装の基本的な考え方は、同型艦種に対抗することを主としています。

    したがって、軽巡は重巡に、駆逐艦は軽巡に対抗することを目的として設計・建造されておりませんし、水雷艦艇として装甲艦艇に対しては雷撃をもって対抗することが主任務だからです。

    つまり軽巡及び駆逐艦はその主たる用途は水雷戦隊を編成して艦隊前衛となり魚雷戦を遂行することです。 そして砲戦はその任務遂行を助けるためのことと考えられていました。

    水雷戦隊旗艦を前提とした5500トン型軽巡の砲装などは、その主任務遂行のための妥協の産物といえるでしょう。

    このため、旧海軍の砲術でもこれら中口径砲についてはその射撃指揮兵器も含めて、砲術学校における射法研究においてまともに相手にされていなかったと言えます。

    そして1艦の砲弾薬の搭載量には当然限りがありますので、あれこれ多種類の弾種を搭載することはできません。 したがって、主たる弾種を絞ることになります。

    これらのことから、旧海軍では艦砲の弾薬については、大正9年にその主たる用途、つまり水上射撃について“単一弾種”とすることが決定され、以後この方針が堅持されます。 大口径砲は「徹甲弾」、中口径砲については「通常弾」です。

    軽巡や特に駆逐艦には、艦隊決戦以外にいわゆる馬車馬としての汎用性が求められていますので、限られた搭載数の中に重巡などの装甲艦艇を対象とする徹甲弾を含めることは無理ですし、無駄です。

    同じく戦艦の副砲についても、長門型までは非装甲の水雷艦艇用が主とされ徹甲弾の必要性は全く考えられていませんでした。

    ここに通常弾単一とされた理由があります。

    なお、その後の戦闘様相の変化により、条約明け後の新戦艦の副砲については20糎砲を適当とするのが用兵者側の判断でしたが、大和型でさえ妥協の産物となったことはご存じのとおりです。

    したがって開戦後に生起した、例えばソロモン諸島などを巡る戦闘様相などは開戦前には全く考慮されていませんでしたし、ましてや開戦後は対空戦闘能力を如何に高めるかが重要課題となりましたので、新たに徹甲弾の採用・搭載などは論外のことです。

    とは言っても、日本海軍の通常弾は(たぶんご質問者さんの頭にあるような)HCやHEなどのいわゆる“榴弾系”ではなく、明治期の鍛鋼榴弾の流れを汲んだ半徹甲弾に近いものです。

    したがって、弾着時の衝撃力及び即動着発信管による比較的大きな弾片とにより、駆逐艦及び軽巡程度にはこれで十分であり、逆に非装甲艦艇に対しては戦闘上はこちらの方が有利と考えられていました。

    なお申し上げるまでもなく、最上型は劣勢な重巡勢力を補うために計画・建造されましたので、15糎5砲に徹甲弾が採用されたのは当然のことです。

    以上が15糎5砲を除く中口径砲に徹甲弾を採用・搭載しなかった理由です。

    阿賀野型については既に回答がついていますので省略いたします。

    艦船ファン

  4. wikipediaによれば阿賀野の砲塔は機力装填とのことですので、人力装填において砲弾重量の問題から有利とされた14センチ砲を選択する必要はないでしょう。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E8%B3%80%E9%87%8E%E5%9E%8B%E8%BB%BD%E5%B7%A1%E6%B4%8B%E8%89%A6
    れん太

  5.  古鷹の開発に於いては14センチ砲弾でも各種装甲を射撃して検討してますが、2インチは何とかなっても3インチに全く歯が立たなかったんです。
     つまりご質問にある76mmぐらいになら・・・は最初から否定されちゃってるんですね(だから古鷹が76mm装甲なんですな)
    SUDO

  6. >4.
    残念ですが、装填は人力ですね。

    艦船ファン

  7. wikiの書き方が変ですな。
    機力装填と読み取れる記述のあとに、手動装填と書いてあるんだから。
    超音速

  8. >6
    ご指摘ありがとうございます。

    弾庫から砲室への揚弾だけが機力のようですね。
    失礼しました。
    れん太

  9. 皆さんのご回答、ありがとうございます。

    彩香堂本舗さんの「フランス海軍 1922年計画の駆逐艦」にて、
    (http://www.din.or.jp/~yamapan/html/military/frenchships/1922torpilleur.html)
    フランスの大型駆逐艦の13cm砲には徹甲弾が用意され、距離1万mで80mmの装甲を貫通する、との記述を見て、小中口径砲でも徹甲弾が有れば軽巡洋艦の装甲を貫通できるのならば、なぜ日本海軍は152mm砲以下に徹甲弾を用意しなかったのか不思議に思ったので質問させていただきました。

    ・徹甲弾を用意しなかった理由について
    旧海軍は基本的に、大口径砲は徹甲弾、中口径砲は通常弾しか搭載していなかったのですね。
    確かに廃艦所要弾数表を見ると、軽艦艇に徹甲弾を使用してもかえって所要弾数が多くなる様子がうかがえるので、搭載弾数に限りが有ることも考えれば合理的だと判断できます。
    中口径砲用の「通常弾」というのは、比較的炸薬量が少なめで弾底に信管を有した砲弾、と考えれば良いのでしょうか?(日本海軍は、対空用の砲弾も「通常弾」と呼称しているので混同する)
    信管が短延期ならば、程よく貫通して艦内で炸裂してくれそうですが、瞬発信管のものも有った様なので、その場合は弾底信管でも表面で炸裂するのでしょうか?

    >SUDOさん
    古鷹の開発時に14センチ砲となると、上記のフランス大型駆逐艦とほぼ同時期かつ似たような口径になるかと思いますが、当時の日本だと無理だったのですか。
    砲口エネルギー的には抜けるかと思ったのですが、想像以上に減衰が大きいのか、それとも砲弾が耐え切れなかったのか(155mm砲弾は152mmより10kgも重いので、その分頑丈なのか)

    ・阿賀野型が152mm砲を装備した理由について
    やはり、史実より艦型を大きくすることは出来なかったのですね。よって、重い155mm砲を搭載するのは断念されたと。
    問題は、阿賀野型の主砲は人力装填であるとする説と、機力装填であるとする説の両方を見たことがあるので、どちらか判断出来なかったのです。人力装填だと、以前の射撃速度の問題が出てきたはずなので、それでもより大口径が望まれた理由が有るのかと思ったのですが。
    全周を装甲砲室に囲まれ、旋回・俯仰・揚弾が機力で装填が人力だとすると、以前の軽巡洋艦よりは砲員の負担は軽減されているということでしょうか?
    きっど

  10. 阿賀野は、6m測距儀と方位盤の装備を見てもわかるとおり遠距離砲戦が要求に入っています。
    射撃速度を気にしておられるようですが、たとえば射距離1万5千mでは弾着までに30秒以上かかります。さらに弾着観測して諸元修正して、というプロセスが次弾発射までに必要なので、15センチと14センチの射撃速度の違いなんてのはまったく関係なくなってしまうのです。
    超音速

  11. >9
     射撃速度ですが、実際のところは14センチ砲でも艦の動揺に同期させて打つので、カタログ上の最大毎分10発なんてのは演習でも出てないのです。せいぜい4〜5発前後でして、これは15.2センチ砲の演習結果と変わらない範囲です。
     また阿賀野型では砲弾をトレーに乗せて押し込みます。つまり機力装填式と構造的には似ており、単純に一人が抱えた砲弾を薬室に押し込んでるわけではないようですので、そこまで射撃速度が厳しいということもないでしょう。
     つまりは14センチは開発時に狙ったほどの射撃速度が安定して発揮できていたというわけでもないので、15.2にしたからって射撃速度が極端に変化するというものでもありません。
     また14センチ砲での試験は、徹甲弾なんか持ってない砲ですから被帽通常弾であろうと想像します。
    SUDO

  12. >9.
    五十口径三年式十四糎砲の通常弾は元々「被冒通常弾」しかありませんでした。 その後これを改良した「同改一」「改二」となり、また被冒をなくした「二式通常弾」が出来ています。 

    これらは鍛鋼榴弾→通常榴弾→通常弾の流れを汲む対水上用のもので、信管は弾底・即動の「一三式一号信管」「同改一」です。

    同じ通常弾でも榴弾(HC、HE)系の「通常弾」「四号通常弾」「零式通常弾」が出来たのは、戦闘・戦術様相の変化に伴う後からのもで、主用途は対水上用ではありません。 もちろんこれらは弾頭信管となります。

    被冒通常弾の装甲貫通能力は、「被冒通常弾改二」の場合で、均質装甲板のNVNCに対して距離11200m、撃角20度、撃速331m/秒で25mmです。 「二式通常弾」でもほぼ同じです。

    なお、穿入実験の場合は正式な砲弾ばかりではなく、各種の試験弾、例えば徹甲実弾など、も使用しますので、それぞれのデータを見ないとなんとも言えないものがあります。

    「阿賀野」型がトレーに載せて装填するのは、砲塔形式にしたための砲尾直下の床形状の問題(俯仰のため開口部となっており装填手が直接砲尾に砲弾を挿入できない)で、装填速度の改善のためではありません。 どちらにしても装填棒で挿入することには同じですので、これについての装填速度そのものはほとんど変わりません。

    ただし、実際の水上射撃での射撃速度はひとえにその時の射法に左右されますが、対空射撃のような最大発射速度での乱射などはあり得ません。 したがって元々が“開発時に狙ったほどの射撃速度が安定して発揮”などはありえないわけです。

    艦船ファン

  13. >12.
    被冒 → 被帽 m( )m

    艦船ファン


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