880 よく重巡洋艦に批判的な意見の中にコスト面での問題を挙げたものを見ます。巡洋艦とは本来低廉で数が揃えやすいため護衛や哨戒といった雑用任務に投入しやすいところに強みがあった艦種だと聞きます。しかしワシントン条約以後に生まれた重巡洋艦は船体サイズの急激な肥大化のために建造費・運用コストが嵩み、巡洋艦本来の雑用に投入しずらくなったという意見です。しかしその点に限ればロンドン条約時代に生まれた最上型やブルックリン級のような大型軽巡洋艦も同じコスト面の肥大化問題を抱えていそうに思えてなりません。そこで疑問なのですが同規模の排水量で比べた場合に6インチ巡洋艦と8インチ巡洋艦とではどちらの方が建造費や運用コストがかかったのでしょうか?
caesius

  1. 1.建造費(海軍軍備沿革に拠る)
     艦型           建造費(円) 噸当り(円) 時期
     一万噸巡洋艦(妙高型)  28,378,000  2,878    大正14年補充計画
     8,500噸 〃 (最上型)  26,141,000  3,075    昭和5年補充計画
    ですから排水量同等なら建造費は同等以上ですね
    2.運用コスト
     人件費・燃料費・弾薬費が支配的と思われます
     排水量同等なら乗組員も同数、速力・航続力同等なら燃料費も同等でしょう
     弾薬費は8インチ10門と6インチ15門で1門当り定数同一だったら後者のほうが高いかも知れませんね

    ようは華府条約で保有数制限が掛かった主力艦(戦艦・巡洋戦艦)の補完目的で巡洋艦と言う艦種が性格変化を求められたのですから従来任務の一部に不適合を生ずるのは或るイミ仕方の無いことかと
    駄レス国務長官

  2. なるほど。排水量が同程度なら建造費運用費とも誤差レベルと。しかし妙高型と最上型の場合は世代が離れているのが気になります。ニューオリンズ級・ウィチタ級とブルックリン級のように整備年月日が近い艦種同士で比べた場合はどうなるのでしょう
    また6インチ砲弾と8インチ砲弾の当時の製造・維持コストも気になるところです

    それにしても
    >従来任務の一部に不適合を生ずるのは或るイミ仕方の無い
    こうなってしまうと大型巡洋艦をコスト度外視で雑用に投入できた豊かな国(米海軍)と出来なかった貧しい国(日海軍)の格差がより一層広まったように見えますね。特に巡洋艦は艦隊の手足となる艦種ですからその影響も大きそうです。
    caesius

  3. >2.
    大正末期より昭和初期に掛けては不況の時代で物価はほとんど上がってませんので前記両型の中間の高雄型も建造予算は1隻28,370,000円で妙高型とほぼ同額です
    (一般論で言えば小型艦ほど噸当り単価は増大)
    砲弾は重量が6インチは8インチの約半分で材料費もそれなりですが同一構造であれば加工費は大して違わないと思われます
    米艦については残念ながら手元に資料がありません  
    駄レス国務長官

  4. 門外漢が横から失礼します。

    軽巡洋艦が従来やってきた雑用は、大型化して航洋能力も大きくなってきた駆逐艦がかなりの部分で代行できる、という見方はできますか?
    超音速

  5. 確かにコスト面から考えるとそれが理想ですが…巡洋艦の本分たる哨戒を始めとした雑用は敵側の同様部隊と会敵する可能性があるため駆逐艦ではいくら航続距離が伸びようと戦力的に不足な面は否めないでしょう。特に米海軍はこのテの雑用のためにクリーヴランド級などというバケモノ巡洋艦を数十隻投入してますので…
    caesius

  6. 質問者は、2種のコストを混同なさっていらっしゃるのではないでしょうか。
    まず、第1に必要な隻数をそろえる為のコストです。重巡洋艦は、8インチ砲を搭載する為、当然軽巡洋艦に比べて建造費が高くなります。従って、隻数を重視する英海軍は、あまり建造していません。実際、第2次世界大戦では、主力艦に余裕があったこともあり、必要であれば、惜しげもなく戦艦や巡洋戦艦を投入しています。
    第2に、戦力あたりのコストです。第1次世界大戦から第2次世界大戦までのころは、大凡8インチ砲は6インチ砲の3倍の威力があるとされていました。従って、戦力を重視する我国は、重巡洋艦の整備に力を入れていました。古鷹はオマハを制圧するために20センチ砲を搭載しました。
    但し、重巡洋艦そのものが多分に人為的あるいは軍縮条約に縛られてできた艦種であるため、種々の問題が在りました。このため、条約失効後は、各国においてはより大型化する、建造せず大型軽巡洋艦を建造する等の対処がなされました。
    UK

  7. 隻数辺りのコストは大型軽巡洋艦に分がある
    コスト辺りの砲戦力は重巡洋艦に分がある
    しかし巡洋艦の任務を考えると重巡の個艦戦力は過剰→隻数の勝る大型軽巡の方が汎用性が高かった。
    こういう認識でよろしいでしょうか?
    caesius

  8. その軍隊の軍事教義がどのようなものかによって最適な装備が決まるという原則に立ち返らないと。
    護衛も哨戒も重要な任務であり「雑務」と意味されるものではありません。
    「艦隊決戦」に特化した日本海軍の教義に照らせば主力艦代用として巡洋艦の個艦戦力を最大化する事は合理的なのです。
    にも。

  9. 護衛や哨戒を雑用と総じて表現したのは便利さ故の言葉のアヤであり、別にそれら任務を蔑視したわけではないので悪しからず。むしろそれら任務は防護巡洋艦時代から受け継がれた巡洋艦の大事な本分だというのは理解しているつもりです。

    そこで別の疑問なのですが、条約時代の巡洋艦建艦競争を重巡洋艦の準主力艦化として捉えている資料を時折見るのですが…重巡洋艦をそうした主力艦代用として運用することはそもそも現実的な話だったのでしょうか。
    抑止力としては言わずもがな。本格的な艦隊決戦においては戦艦には決して敵わないため大した戦力足りえない。上述の巡洋艦としての任務に投入した場合は大型軽巡洋艦との戦略的な差異がほぼなくなる。
    結局のところ重巡洋艦が仮に準主力艦としての活躍をするためには「重巡洋艦艦隊同士の大規模昼間砲撃決戦」が起こる必要があるのでは。でもそんなものが実際に生起する可能性はどれだけあったのか
    日本の場合は特型駆逐艦の夜襲突撃を先導するという特殊な役割を想定して建造されたので多少事情は異なるとは思いますが…
    caesius

  10. 〉日本の場合は特型駆逐艦の夜襲突撃を先導するという特殊な役割を想定して建造されたので
    それが答えだと思います。
    にも。

  11. 日本海軍は特型駆逐艦による戦艦襲撃を最終的には諦めたわけですが…そうすると重巡洋艦の存在意義もその時点で喪失したということでしょうか
    米英にはそもそも日本に対抗する以外の建造理由が無かったとも聞きましたし
    caesius

  12. 日本海軍が特型駆逐艦による戦艦襲撃を諦めた時期を私は識りませんが、
    夜襲突撃の際に敵の大型軽巡と遭遇した時に
    我水雷戦隊に先導艦と限らず重巡が護衛として付いていれば助かると考えられたのでは。
    ですから「重巡洋艦の存在意義」は直ぐには無くなりません。

    巡洋艦の本務へ回帰しようとしたのが日本では一連の航空巡洋艦だと考えます。

    にも。

  13. 一般的にはロンドン条約で特型駆逐艦の保有制限を受けてからだと聞きますね。そこから漸減作戦の中心が航空機と潜水艦にシフトしていくという流れ
    caesius

  14. ロンドン条約直後の建艦計画は最上型4隻、初春型12隻に対し空母0、潜水艦各型合計9隻であることより見て一般的には水雷戦隊重視の姿勢は変わってないと思いますけど
    あと最初のご質問から論点が大幅に変わるのであれば別に質問スレを立てられたほうが宜しいんじゃないでしょうか
    駄レス国務長官

  15. ロンドン条約は日本海軍の夜襲計画をピンポイントで規制した内容ですのでその影響は確かに致命的なものではありました。しかし最上型や初春型という新たな条約逃れの方策へと方向修正した所をみる限りロンドン条約の時点では諦めていない。
    本当の意味で諦めたのはポスト条約時代の建艦競争に壊滅的敗北を喫してからでしょうね。なにせ37〜41年の間での日米の駆逐艦・巡洋艦の建造着手数は10倍近い開きがありますから。結果的に対米保有隻数比率は条約時代の7割から5割まで一挙に低下します。これじゃ従来の夜襲計画など当然実行不能になる。
    Cたま

  16. 条約下での建造でコストは重要な問題ではありません。
    条約の制限下でどれだけの軍備が可能かといった話ですので、条約型巡洋艦に対してコスト問題で論評しても適切なお話にはならないでしょう。

    また、15のように「ロンドン条約は日本海軍の夜襲計画をピンポイントで規制」などといった話も妄想のようなののです
    当時の海軍軍令部は夜襲を重視していません。ロンドン条約による補助艦艇の決定的な劣勢によって「夜襲」という選択肢が生まれているのです。
    BUN

  17. 条約時代は最大保有トン数が決まっていましたので建造コストの問題はそこまで大きくならないというのは分かります。しかし現実問題として条約は巡洋艦サイズの世界的な肥大化を招き、ポスト条約型巡洋艦も同様の基準で設計されるようになる→予算の都合で条約失効後の巡洋艦戦力整備に困難を生じた、という解釈は誤っているのでしょうか。
    caesius

  18.  条約型重巡は、ワシントン条約前に旧装甲巡洋艦の代艦として、米仏等で検討されていた偵察巡洋艦兼務の8インチ砲搭載型装甲巡洋艦より小型ですから、第一次大戦後にあり得た巡洋艦のさらなる肥大を抑えた、とも言える内容ですよ。実際にその目的もあって、あの排水量1万トン、備砲を上限8インチという制限が決定されています。
    大塚好古

  19.  あと条約型の備砲8インチ上限も、第一次大戦の戦訓で、巡洋艦に8インチ級の砲が必要とされたことを反映して決めていますので、訳なく決めたわけでありません。

     またロンドン条約が生み出した、と言える大型軽巡と比べて、戦力的に大きな差異は無い、と意見は確かに戦前時期に海外ではありましたが、日本海軍は戦闘力に看過できない差があると見做しています。実際に戦前に最上型や利根型が主砲換装を実施することは、最上型で対重巡・大型軽巡と戦闘力した場合の、主砲威力の不足を懸念した艦隊からも要望されていたことですしね。
    大塚好古

  20. 装甲巡洋艦は発展系の巡洋戦艦含めてWW Iの戦訓より存在意義が消滅した筈では?条約型巡洋艦は防護巡洋艦の系譜として捉えるべきでしょう。防護巡洋艦的な艦種として考えれば条約型巡洋艦は前級のホーキンス級、加古級より急な大型化を遂げていると見て間違いないように見えますね
    Cたま

  21. >18.
    >米仏等で検討されていた偵察巡洋艦兼務の8インチ砲搭載型装甲巡洋艦

    計画年次・計画番号をお知らせ願います
    駄レス国務長官

  22. >20 条約型は艦隊作戦用の軽巡から発達した艦ですが、条約前の1920年/1921年のの段階で、既に米海軍では1万トン級、及びそれを超える大型巡洋艦の研究・検討を実施している状況にありますので、条約が巡洋艦が大型化を促した、とは言えないでしょう。ワシントン条約で英が1万トンの規制を提案したとき、米が特に異を唱えず賛同したのは、当時の研究で既に研究中だった8インチ砲搭載巡洋艦はその程度の艦となるし、その程度のサイズの艦であれば、相応の性能の艦が纏められることが予想できたこともあります。

     なお、第一次大戦の戦訓で、艦隊対決型の装甲巡洋艦は消滅しゆく艦種となりますが、通商路保護任務では一定の評価を受けてもおり、その中で通商路保護艦としての能力を維持しつつ、艦隊での前衛等を含めた偵察艦等にも使用出来る高速で必要な攻防力を持つ1万トン超えの大型(装甲)巡洋艦の系譜と言える艦の研究も行われていた、と言うことです。 

     あと元要求が「通商路保護用の巡洋艦」と、旧装甲巡洋艦の系譜とも言える内容で出された艦でもあるホーキンス級は、満載一万二千トン超えの大型巡洋艦ですので、後の条約型と排水量面では大きく見劣りはしない艦ですけど。

    >21 計画はされていませんよ。将来そう言う艦の整備を考慮して検討している、とフランスが条約の規定に当初賛同しなかったとか、米海軍がBiG-10の代艦となる大型巡洋艦を検討していて、その中に先の1万トン超えを含めて、そういった艦の予備研究をしている、と言う案配の話です。
    大塚好古

  23. >22.
    1920〜21年の予備研究作業の中で複数の試案が生じた際に識別用に記号番号を付していたと思いますのでそれのことの意味です
    駄レス国務長官


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