42 Q1:ロシアの戦車はドラム缶燃料を車体後部に取り付けています。
軽油の引火点は、約50℃、すなわち、50℃以上の時に火元があると燃えます。よって「敵の砲弾の直撃を受ければ燃焼するが、破片程度なら燃えない」故に車体後部に取り付けていても危険は少ないという解釈になるのでしょうか?
それとも最近はAPFSDSが主流なので直撃を受けても安心。でもHEAT弾なら燃えてしまうのて危険と考えるべきなのでしょうか?
Strv103のサイドスカートも同様の解釈でよいのでしょうか?

Q2:ところでT-55やT-62がドラム缶燃料を車体後部に取り付けている写真はよく目にしましたが、最新のT-90なんかもドラム缶燃料を搭載するのでしょうか?
写真を見たことがないもので気になって質問してみました。

よろしくお願いします
NEC

  1. Q1Ans
    ロシアに限らず日本の61式戦車、74式戦車も車体後部にドラム缶を取り付けます。
    また、イギリスのチャレンジャー戦車も付けてますよね。
    アメリカのM48戦車も一部のタイプにありました。
    これらは、単なる増加燃料タンクなので、基本的には戦闘加入時前に外します。
    Strv103のサイドスカートは主効果として対HEAT弾防御向上、オマケで航続距離向上です。

    HEATジェットを阻害する手段として、空間装甲内に何も入れない(つまり空気)、水、燃料(軽油)では
    軽油が一番メタルジェットの阻害に効果があるようです。
    メルカバ戦車の車体前部やレオパルト2戦車の車体弾薬架などは軽油が入っています。
    空間部の有効利用ですね。一粒で二度美味しい的な。

    Q2Ans
    T-72もT-80も標準でドラム缶燃料を車体後部に取り付けます。
    T-72のアップグレードタイプであるT-90も当然、標準仕様はドラム缶燃料を車体後部に取り付けます。
    確かにドラム缶を付けている写真はちょっと見つからなかったんですが、取付ラックが確認できる写真はありますよ。
    はいどーも

  2.  熱源が高温であっても熱が伝わる速度には限界があります。軽油が高温にさらされたとしても、すべてが一気に引火点や発火点になることはなく、熱源に接している部分から徐々に加熱されていきます。加熱され、他と温度差が生じると熱膨張を起こして比重が軽くなり、対流によって移動していきます(多くの場合、これによって熱源から遠ざかり、他の冷たい燃料と混ざって冷却される)。
     砲弾の炸裂によって飛び散り、飛沫化した軽油は体積当たりの表面積が増え、加熱されやすくなり、それゆえに引火もしやすくなります。また、熱源に接して引火点まで加熱し、かつ熱エネルギーを更に加えられれば、引火点以上になった分だけは引火しやすくなります。これらの場合でも、引火するのはごく一部であって、全体ではありません。砲弾が爆発する際の熱エネルギーは一瞬で、温度は高くても持続性が無いため火災を起こすには至らない可能性の方が高いと考えられます。
     無論、一部の燃料に引火することで残りの燃料もじわじわ加熱され、結果的に全部が燃えてしまう可能性は少なからず残っています。しかし、榴弾等の砲弾(曳光弾や照明弾、焼夷弾のような砲弾自体が長時間燃焼し続けるものを除く)によって引火した場合、着火してしまった一部の燃料が他の冷たい燃料によって冷却され、自然鎮火してしまう可能性の方が高いように思われます。
     よって、砲弾の直撃等の場合でも、燃料タンクの燃料すべてが一気に燃焼する事は考えにくいものがあります。

     酷暑地や真夏の日向で長時間放置され、燃料タンク全体が既に引火点近くまで熱せられていた場合は話が違ってきます。
     また、タンクの中の燃料が少ない場合も火災の危険性が高まるでしょう。
    おうる

  3. ●日本の戦車もドラム缶を搭載しメルカヴァやレオパルト2も軽油で防御を図っているとは知りませんでした。驚きました。
    ●加熱→熱膨張→対流→冷却
    砲弾の爆発エネルギーは一瞬で持続性が無いため火災を起こすには至らない−ですね。
    はいどーもさん、おうるさん。
    具体的で分かりやすい解説をいただきありがとうございました。
    感謝いたします。

    (う〜む、アイオワ級の舷側防御を重油タンクとした理由もそういうことだったのか…)
    NEC

  4. >3
     船のタンクは浸水対策もあります。
     穴があいても、重油が入ってるタンクなら、外の水が入ってきません(もちろんタンクが空なら浸水しますが)
     またアイオワでは想定していたかどうか不明ですが、空母大鳳では重油タンクを魚雷命中時に発生するメタルジェットを阻害するための防壁として扱う防御構造になってました。
    SUDO

  5. 浸水対策即ち重油が衝撃波を吸収してくれるという意味でしょうか?
    それから第二次大戦の魚雷にも成形炸薬弾頭式があったとは知りませんでした。
    SUDOさん、回答いただきありがとうございます。
    NEC

  6.  衝撃波吸収は主眼ではありません。
     艦船の場合は、穴から海水が入ってくることが困るのです。
     タンクに穴が出来ても、重油があるので水は中々入って来れませんし(もちろん重油が抜ければ水が代わりに入ってきます)重油を置換して水が入っても、元々そこは油でいっぱいになることを前提として船体は設計されてますから、船の重量が危険なほどに重くならない、つまり浸水し辛く浸水しても比較的安全ということになるのです。
     また当時の魚雷は成形炸薬ではありません。でも魚雷頭部の火薬の爆発で粉砕された船体構造材がメタルジェットと化して船内を破壊するということが既に戦前の段階で確認されてます。
     まあ、このメタルジェットは本職の成形炸薬ほどの威力は有してませんが、魚雷の場合はメタルジェットに削られた船内隔壁を、大炸薬の齎す爆圧や、浸水が齎す水圧が、続けて叩いてくるので(いうならばタンデム弾頭ですな)メタルジェットを殺すことで隔壁の耐力を維持するというのも大事なことだったのです。
    SUDO

  7. 浸水対策の意味が分かりました。それから、通常の火薬の爆発でも船体構造材がメタルジェット化して超高圧力で貫通するのですね。
    SUDOさん、再度の回答いただき感謝いたします。
    NEC

  8. >6
     メタルジェットの意味をわかって使っているのでしょうか?
     御説に従うならば、すべての爆発物でメタルジェットが発生することになりますが。
     それをそのま受け取っているほうも問題ですが。
    モニター

  9. 素人考えですが、エネルギーが収束されるとはいえバズーカなどたかだか数百グラムの炸薬でメタルジェットが発生できるのですから、数百キログラムに達する魚雷の弾頭ならモンロー効果抜きでメタルジェットが発生しても不思議はないように思えるのですけれども・・・。
    expery


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