57  装甲のアルミ化について質問です。

 アルミ合金の装甲は鋼鉄に比べ比重が1/3と軽いが耐弾性も1/3なので3倍の厚さにせねばならず、装甲自体の重量はアルミ合金化しようと鋼鉄製と殆ど差は無い。しかし、装甲厚が増えた分だけ剛性が高くなるため、フレームが不要になるため、フレームを無くすことで車両全体の重量を軽減できる。

 という話を何かの本で読みました。
 で、あるならば、元々フレームに該当する部品が無く、基本構造が装甲板の組み合わせだけで成り立っているような戦車の砲塔部分は装甲をアルミ化してもコストがあがるだけでメリットが何もないように思われます。
 空挺戦車等一部の車両に限られますが、戦車の砲塔等にアルミ合金装甲を採用する理由は、本当に軽量化だけなのですか?
 軽量化が目的であるならば、どういう理由で、どの程度軽量化できるものなのですか?
おうる

  1. 詳しい方の回答が無いようなので、一般的な話を。

    アルミ装甲は質問のとおり、同じ重量で鋼板に比べ約3倍の厚みとなります。
    それを採用する利点は、元々低い耐弾性で、鋼板だと薄くなる車体の剛性を補強材なしで確保できる事にあり、補強材分の重量の節減を図れる事、補強材が無い分、構造が簡単になる事(製造やメンテが楽。但し損傷部分の補修が難しいという話を聞いた事がありますが)、車体の内部空間を広く確保できる事(その分外形を小さくできる)などです。
    重量軽減効果は、大雑把には補強材の重量分ですから、せいぜい車体構造重量の数割というところでしょう。(以前M113APCでの試算を見た事があるのですが具体的な数値は忘れてしまいました。)
    重量軽減だけでなく、上記の他の利点も含めて採用されたのだと思います。

    従ってアルミ装甲の利点を発揮できるのは、APCや空挺戦車(輸送機での輸送や空中投下のため重量軽減が必要で、現在の装甲戦闘車程度の装甲)など軽装甲で、比較的低い耐弾性の車体に限られます。

    一方で、アルミ装甲は、高温に弱く被弾時の熱や火災で大幅に強度が低下すること(ぼろぼろに燃え崩れてしまう)、高速な徹甲弾や地雷などの衝撃に弱いという欠点が中東戦争などの実戦で露呈した結果、最近の装甲車両では殆ど使われなくなっています。

    同じく、アルミ装甲を艦橋などの上部構造物に一時大幅に採用していた艦艇も、フォークランド紛争で上記の脆弱性が露呈し、既設艦では鋼板への改造が行われたり、その後の新規採用が中止されています。
    (陸上自衛隊のAPCや海上自衛隊の艦艇も同じ経過を辿っています。)
    maron

  2. >1 に追記しておきます。

    空挺戦車(M551シェリダン)の場合、砲塔はアルミではなく圧延防弾鋼板の溶接で作られています。
    また私見では、M551はパラシュートとパレットによる空中投下ができる事が前提ですから、その着地の衝撃に耐えるため、一般のAPCなどより車体にかなり高い剛性が要求されると思われ、その点でアルミ装甲の利点がよりはっきりと出てくるため、最初のアルミ装甲採用に至ったのではないかと推察しています。
    maron

  3. maronさんに補足する形で

    M113系に使用された5000系防弾アルミ合金(Al-Mg系)は防弾鋼と同様の耐弾力を付与しようとすると3倍の厚さが必要であるので補強材の重量軽減としかなりません。

    M2BFVに使用される7000系防弾アルミ合金(Al-Zn-Mg系)は約2.4倍の厚さで防弾鋼と同一耐弾能力を持つので防弾鋼よりも軽量な装甲板となります。

    車体剛性は鋼の5倍あり、製造工程は鋼に対し30%減少できる利点があるアルミ装甲ですが、大口径弾に対する耐弾能力が鋼に劣る面があるので軽量・軽装甲の車両に主に用いられます。
    また、耐腐食性などのメンテナンス費用は鋼に対し30%増しといわれています。
    はいど

  4.  ありがとうございました。参考になりました。
    おうる


Back