93 成形炸薬弾の英語表記はHEATで、ATはAnti-Tankの略だそうですが、戦車以外の目標を攻撃する目的で作られた成形炸薬弾もHEAT弾と呼んでさしつかえないでしょうか?
きゅう

  1. ATがAnti-Tankの略と判っているのであれば、単純にHE弾で検索してしらべてみたら?
    それと、「戦車以外の目標を攻撃する目的で作られた成形炸薬弾」の実物の載っているHPで略語をしらべるとか。
    少し態度が安直すぎますよ。
    あたりまえの作業

  2. HE は High Explosive、日本語では「高性能炸裂弾」と呼んだりもしますが、要するに「普通の爆弾」です。タマのなかに火薬が詰まっていて、目標に当たると火薬が爆発し爆風と鉄片を撒き散らすことで着弾地周辺の人馬を殺傷するタイプの砲弾です。ザクロのように弾けることから「榴弾」と呼んだりもします。

    ふつう、HE弾は装甲目標を攻撃するのには向きません。爆風も鉄片も装甲表面で跳ね返されてしまうからです。なので装甲目標を攻撃するためには、装甲の硬さに負けず食い込んでぶち抜く鉄の塊である徹甲弾(Armor Piercing, AP)を使います。

    純粋な AP は運動エネルギー弾(Kinetic Energy, KE)とも呼ばれ、装甲を抜いたあと変形した弾体破片が目標内を跳ね回ることで内部の機器や人員を破壊殺傷します。AP に焼夷材や炸薬を仕込み、装甲を抜いたあとで爆発したり燃えたりするタイプの弾は APHE(Armor Piercing High Explosive, 徹甲榴弾)や SAP(Semi Armor Piercing, 半徹甲弾)や API(Armor Piercing Incendiary, 焼夷徹甲弾)などと呼ばれます。

    さて HEAT は AP 弾と異なり、薄く柔らかい弾殻にたくさんの火薬が詰まったタイプの弾です。しかし装甲に衝突し爆発したとき、爆発エネルギーが一点に集中して高温によって装甲を溶かし貫通するように仕組んであり、それゆえ炸裂弾としては例外的に高い装甲貫通力を持ちます。なので「HE だけど対戦車に効果があるよ」という意味で HEAT と呼んでいるわけで(高熱=HEAT とのゴロ合わせの意味もありますが)、対装甲目標に効果の薄い炸裂弾を「HEAT」と呼ぶことは無意味であることがお判りいただけるかと思います。

    なお対装甲目標に効果のある HE 弾には HESH (High Explosive Soft sHell、粘着榴弾)と呼ばれる弾種もあります。ここから先に興味があるようでしたら、御自分でお調べになることをお勧め致します。
    回答書こうぜ

  3. 成形炸薬弾は英語ではHigh Explosive Shaped Chargeでは。
    HEATに対応するのは対戦車榴弾です。
    marderhund

  4. 正直どうしようか迷ったんですが、余りにも酷かったので。

    ※2の方
    >しかし装甲に衝突し爆発したとき、爆発エネルギーが一点に集中して高温によって装甲を溶かし
    >貫通するように仕組んであり

    何をリファレンスにしてのこの解説なのか非常に好奇心が沸きますが、この部分はほぼ完全な嘘です。まあ、確かにライナーの崩壊によりひねり出された金属流体はその変形による内部摩擦により数百度程度の温度があり、それが装甲に接しているため、熱の影響は絶無では無い程度はあります。ただし、侵徹現象中における穿孔現象への寄与率は1〜2%あるかないかというレベル、完全な0ではないというだけのものです。

    これについては、以下に示す二つを考えてみればいいでしょう。1)もし、数百度程度の温度差で1000m/sを遙かに超える熱流速度が発生できるのであれば、宇宙はとっくに熱的平衡に達していますし、何よりフライパンは瞬時に全体が熱くなるでしょう。2)古今東西のあらゆる論文、簡易式を見ても密度、断面積、長さ(微分方程式として分析される事が多いため)、速度、強度程度のパラメータで計算されていること、その計算においてはライナーから発生した細長く、かつ速度に偏りのある粒の固まり(微分方程式として以下略)が侵徹したというモデルに基づいている事、からも分かるでしょう。

    ※3の方
    その通りです。厳密には"弾”も付きません。なお、学術的(弾道学/終末弾道)にはHigh Explosiveも付きません。成形炸薬/Shaped Chargeになります。
    sorya

  5.  本来の質問に対する回答がないので、まったく任ではありませんが、一応の回答を。お詳しい方の叱正をお待ちしております。

     まず、Soryaさんもちょっと触れてますが、「弾」ぬきの成形炸薬/Shaped Chargeと、対戦車榴弾/HEATは、明確に違います。
     成形炸薬は油田やガス田の掘削などにも使用されていますが、これをHEATというのはちょっと無理でしょう。(「HEATと同じ効果を使用する」といった説明ならいいかも知れませんが)
     ただし弾頭であっても成形炸薬/Shaped Chargeを使用して起爆する核兵器もHEATということは出来ないでしょう。(これも「HEATと同じ効果を利用して核反応を起こす」なら可でしょうが)
     
     砲弾やミサイル弾頭に使用されている成形炸薬弾については、HEAT弾を直訳して「対戦車」に拘るのではなく「モンロー/ノイマン効果を使用する炸薬弾」の意味だと理解するなら、成形炸薬弾=HEAT弾という用法も可能でしょう。
     ただ、HEATはその名が示すように対戦車戦闘手段の研究開発から生まれた言葉です。ですからHESHやAPやAPDSやAPFSDSなどとの関係のなかで使用される場合は有意義でしょうが、これらの言葉と一緒に(あるいは比較対象として暗に想定して)使うのでなく、単に「成形炸薬弾」といえばいいときに、あえて「HEAT」を使用する必要はないように思えます。

     ただしHEATをあきらかに戦車や装甲車両以外を目標とする弾頭に使用している用例はあります。そのことを間違いというつもりもありません。
     要は弾頭の特性をモンロー/ノイマン効果で説明するか、成形炸薬で説明するかHEATで説明するかの問題で、私は成形炸薬が一番明快なような気がするのですがHEATの方が簡単(または格好がよい)と思われる方もいるのでしょう。

    一例
    http://ja.wikipedia.org/wiki/Mk50_(%E9%AD%9A%E9%9B%B7)
    カンタニャック

  6. HESHも普通はHigh-Explosive Squash-Headの略のはずですよね。
    とおりすがり

  7. 終わってるっぽいんですがいちおう使う側の人から・・・

    まあ、要するに"HEAT"というのはそれに付いている看板で、「成形炸薬」というのはそれがナニモノかをあらわすもんです。
    「今日の朝ご飯」と言われてコーヒーとトーストか、ご飯とみそ汁か、別にどっちでも「朝食」に変わりはないしお腹は満ちますよね。
    よって"High Explosive / Anti Tank"と言われて、成形炸薬の弾頭か、粘着りゅう弾か、どっちを持って来てもようは「対戦車りゅう弾」なんです。乱暴に言えば。
    さらに乱暴に言えば、対戦車用途にもちいる榴弾として効果があるなら、別にどっちでもいいんです。使う側としては。
    ですから、成形炸薬弾=HEAT=対戦車榴弾という呼び方はあまり適切ではないような気もします。

    なお、多用途に用いられる成形炸薬弾に似合う看板を探すとすればMPAT(多用途対戦車弾)なる一見矛盾してそうな(笑)呼び名があります。
    うちの部署では戦車の砲弾から小銃てき弾まで成形炸薬つかっていて、装甲・非装甲目標両方を撃つ場合にはMPATと言い習わしたりします。どこまで広く使われてるのかは知りませんが・・・
    居眠り将軍


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