191 前大戦中の連合軍が使用したVT信管についてご教示願いたく、質問致します。
ネット上で検索した結果、VT信管の使用周波数について、70MHz帯と180~220MHz帯という二つの情報があります。
質問ですが、
1、前大戦後期に日本軍航空隊が苦しんだ米海軍使用のVT信管はどちらの周波数なのでしょうか?
2、日本の軍事技術者はVT信管についての知見はあったのでしょうか。これについての公式文書などが残っていますようなら、ご教示願いたく思います。

仮に知見があったとすると、このような簡単な仕掛けへの妨害手段を実現出来ないほど低い技術レベルであったとは考えにくいので質問した次第です。ただ、周波数によっては、知見があっても実現出来なかった可能性は否定出来ませんが・・・
elebras

  1. 横から失礼します。
    >簡単な仕掛けへの妨害手段を実現出来ないほど低い技術レベル
    >周波数によっては、知見があっても実現出来なかった可能性は
     仰る意味が全く理解できませんが・・・・失礼ながらレーダー及び電子妨害の基礎はご存じでしょうか? 1.及び2.の回答が得られたとしてもそのようなことの判断材料にはなりませんが。

    艦船ファン

  2. elebrasさんの方が専門であると思うので、回答は控えておりましたが、
    1.について、あくまで呼び水として、数点、書いておきます。

    Proximity-fuze、いわゆるVT信管はティザード使節団によってイギリスからもたらされた技術を基に
    アメリカで開発がスタートするのですが、これには大戦中、数多くのタイプが存在していました。
    海軍だけでも、5"/38 6"/47 5"/54 3"/50の各砲用に開発されて
    正式なナンバリングは恐らくMk.32から始まり、33、41、45、47、53、56と
    サイズ、あるいは使用周波数によってかなりのタイプが造られています。
    陸軍、さらには英軍向けまで含めると、どれだけあるんだかよくわからん、という感じなのです。
    なので、当時の海軍がどれを対日本戦に投入していたのか、から特定する必要があるのですが、この点の情報を私は持っていません。

    とりあえず、この中で私に周波数が特定できるのは、Mk.45の225MHzのみです。
    これは当時、Proximity-fuzeの開発、製造を担当していたPye Telecomのホームページに解説があります。
    http://www.pyetelecomhistory.org/prodhist/military/military.html

    ついでにこの点は完全に推測ですが、これだけ種類があると、
    その周波数の特定、対策は容易ではなかったように思われます。

    中途半端ではありますが、私にわかるのは、ここまでです。
    アナーキャ

  3. >1
    私も難しいと思っていたのですが
    http://www.warbirds.jp/ansq/41/D2001519.html
    カンタニャック

  4. >3.
    VT信管は原理的には簡単なもので、CW波を使用してそのドップラー信号を処理しているだけですから、これに対する妨害も今日の電子戦レベルからすれば理論的には極く初歩的なものです。 ですからご紹介の記事にあるように実験レベルとしては充分成功するはずのものです。

    問題はその実用化です。 一体妨害波をどの様に発信するか、つまり電力とアンテナの問題であり、どの範囲“以遠”でVT信管を自爆させるのか、ということです。 これらを決定するための要素の中には、単に周波数のみならず、使用砲弾の有効断片密度曲線や使用VT信管のローブ・パターンなどのデータも必要になってきます。

    そしてその上で、一体それを何に積んでどの様に使うのか、と。 これが決まってくると、当該装置がどの程度の重量・容積かも決まってくるでしょう。

    端的な例を申し上げれば、VT信管(即ち砲弾)の長軸方向からは妨害は利きません。 即ち実験のように砲弾を標的からわざと外すことによる横方からの妨害は有効ですが、直撃に近くなればなるほど利かないことになります。 もし無理にでもやるとすると、極めて強力な電力で、かつ無指向性又は半球程度の指向性であることが必要になってきます。 この問題をどう処理するか。

    これらを考えるならば、何故現在までに実用化されたこの種装置が無いのかが判ってくると同時に、質問の1.2.に対する回答だけでは質問者本来の疑問解決に繋がらないことは明らかでしょう。
    艦船ファン

  5. ご質問に私で回答できる範囲で。

    1.公表されている周波数帯は後者の方です。 なお、弾体をアンテナとして使用しましたので、それを1/2波長でお考えいただければよろしいかと。 それ以上のデータは私もここでは資料取扱の関係上公開できかねますのでご容赦を。

     ご参考までに、米海軍が使用したVT信管で実戦投入したのが判っているのは、Mk32、40、45、47、58、59の6種類です。 それぞれにModがありますが細部は省略します。

    2.昭和20年3月に艦本及び技研で電波信管の研究を開始しておりますので、何等かの情報を持っていたことは確かでしょう。 ただし、これに関する直接の史料は現存していないはずです。 また戦後に第2復員省で纏めた 『旧海軍技術研究に関する報告』 に電子関係の部があるはずで、この中に上記研究についても記載されているものと考えますが、この報告書自体が現在ではどこにあるのか不明ですので詳細は判りません。
    艦船ファン

  6. 皆様、ご回答いただき感謝致します。
    周波数についての質問は、私が当たる事が可能な資料はMk36とMk56だけでして、これには周波数の記載が無く、お聞きした次第です。弾体サイズによる輻射効率問題のみならず、ドップラー偏移量の問題も含めて、70MHzはちょっと無理かな?という感じはあったのですが、確認したかった次第です。Mk45のこのサイトは見たのですが、1940〜1942だったので、マリアナ戦とは時間的に差がありましたので、別の資料があれば、と思いお聞きしました。

    妨害に付いては簡単で、周波数さえ判れば、それなりの出力を持った、変調された電波を飛行機から発射するだけで妨害になります。真空管の数から言って、おそらく、超再生受信に思えますので、選択度を考えれば、必ずしもまったく同一の周波数である必要もなく、周波数安定も厳しく無いと思いますので、原理的には非常に簡単に妨害できるはずです。また、自爆させる事は必ずしも必要ないのでは、とも思います。近接信管としての働きを阻害するだけで、被害を相当に減少させる可能性が大きいのですから。
    もっと言えば、それが可能なら、力技で受信真空管を飽和させてしまえば、ドップラー検知は出来なくなるわけで、IIP3(三次混変調積)が40dBを超えるようなアンプならいざ知らず、現代のアンプですら入力で0dBmまで扱える高周波アンプなど、簡単に実現できるものではないのですから、信管の作動範囲で信管アンテナ入力端で1V程度の電圧が誘起できる出力があれば妨害は可能です。
    ちなみに距離10m、周波数200MHzで50Ω入力で計算した場合、141W強になります。

    知見があっても実現出来なかった可能性は、往時に実現出来る回路、素子(真空管)で220MHz連続出力がどこまで可能だったのか、に疑問があるからです。
    日本海軍のレーダー、1号3型で200MHz、パルス尖頭出力10KWですから、パルス幅にもよりますが、この回路で可能な連続出力は数ワット、良くて10W程度と思います。その上で、種々の公開データーを見れば判ると思いますが、サイズはとても航空機、特に単発航空機に搭載可能な大きさではありません。少なくとも、1式空3号無線電話レベルのサイズで50W程度の変調された連続出力を出せる程度の実力は必要かと思われます。
    ただ、資料によれば、時期は不明ですが、TR1501という空冷式3極管が存在しており、電源と回路をきちんと考察すれば、可能だったかも知れません。

    ご回答は大変参考になりました。再度お礼申し上げます。ありがとうございました。
    elebras

  7. >>6.
    >妨害に付いては簡単で、周波数さえ判れば、
    >被害を相当に減少させる可能性が大きい
     失礼ながら、理論面の知識はともかくとして、実際面ではやはりご理解
    いただけていないようですね。
    艦船ファン

  8. >8
    何が理解できていないのか、書いてもらわなければ判らないのですが?
    レーダーに対する虚偽目標を作るような話しではないはずですが?反射物への接近を計測しているのは反射波のドップラー偏移量「だけ」ですから、それを測れなければ、信管は作動しないはずですが?
    elebras

  9. >8.
    既に 4. でヒントの一部は示していますが、お判りになりませんか?
    艦船ファン

  10. >9
    貴重なご回答を戴けましたので、失礼と思い厳しいことは書いていませんでしたが、そうおっしゃるなら、失礼を承知で厳しい事を書かせていただきます。

    まず、あなたはどの程度無線技術をご存知なのでしょうか。
    >端的な例を申し上げれば、VT信管(即ち砲弾)の長軸方向からは妨害は利きません。
    これについて、具体的な説明をいただけますか。相当に周到に設計されたアンテナでも、アンテナ最減衰点で30dBの電力差を達成するのは難しいことをご理解されて書き込まれているのでしょうか?
    上位の事が発生するためには、アンテナの指向性による減衰が不可欠ですが、少なくともMk56の公開されている構造から見た場合、上記が成り立つためには、相当な偶然が必要で、これは製造段階で制御できるようなものではありません。抵抗の足の曲げ方一つで指向性が大きく変化するようなアンテナ構造ですので。
    残念ながらあまり無線技術の実際にお触れになっていらっしゃらないようにお見受けするのですが、アンテナと言うものは、きちんと展張されたダイポールのようなものでなければ動作しない訳ではありません。私どもが中波/短波無線機器の試験に使用する場合、数MHzオーダーの周波数でも、長さ1.5m程度の銅線を整合器に取り付けて行う場合がままあります。これでも整合は取れますし、1000Km程度の交信は可能です。あなたがお考えのような「都合のいい」事はあまり起きません。

    もう一つ、近接信管の最大の効果は、直撃することにはない事をお忘れになっていませんか?直撃する弾道であるなら、近接信管など必要ないわけです。最接近点で爆発、その飛散する破片、あるいは爆風の効果で航空機に損害を与えるための信管です。その最接近点を測定するためにドプラー偏移量を計測しているわけで、信管起爆以前にそのドップラーが計測不能になった場合、信管はどういう挙動を取るのでしょうか?その時点で信管が起爆するか、ドップラー偏移が再計測できるまで起爆しないかのどちらかだと思うのですが?その状態の近接信管に何か意味があるのでしょうか?

    どうでもいいことですが、あなたは多分、現在市販されている日本製民生使用の航海レーダーが80年代の小型艦艇用ECMでは妨害を受けない、などと書いてもお信じにならないのでは?と推測しますが、間違いでしたら誤ります。
    elebras

  11. 訂正
    >上位の事が発生するためには、ー>上意の事が発生するためには、
    >間違いでしたら誤ります。ー>間違いでしたら謝ります。
    elebras

  12. 以前、東芝の社史のような本を観ていたところ、昭和19年ころには女学生に真空管を作らせてもまだ全然生産が追いつかない云々とありました。

    常時強い振動がある航空機に搭載してVHFで数百Wの出力を出せるタマは欲しくても供給できなかったのではないでしょうか。

    わんける

  13. >10.
    >妨害に付いては簡単で、周波数さえ判れば、
     その論で行けば、対空ミサイルも含めてVT信管は無用の長物になっていましたね。 周波数などはその原理から必然的にある範囲内限定されたわけですし、どのみちスイープ妨害になりますから。 そして、ソ連の対艦ミサイルも、そして米海軍の空母艦載機も、その妨害装置を装備して相互の艦隊の対空砲火をくぐり抜けることが可能だったわけで。 もちろん、現実は全く違いますが。

    >近接信管の最大の効果は、直撃することにはない事をお忘れに
     はい、忘れていませんよ、そのようなことは書いてもいませんから。 と言うより、ご主張のようにもし妨害が可能であるとするなら、直撃するものも含め、MDが近ければ近いものほど弾片有効範囲以前に自爆(誤作動)させる必要があると言うことであって、どうでもよい遙かに離れたものに妨害が有効であっても何の役にも立たないと言うことを先に書きましたが、ご理解いただいていないようで。

     単に回路だけの話なら既に書きましたように、あれこれ持てる知識を披露いただかなくてもその原理から妨害は簡単なことです。 ただし実際にどのようにその妨害を実施するかの実用化となるとそんな簡単な話ではないことも既に書きましたし、そして現実問題として満足するようなものは実現されなかったわけで。

    >どうでもいいことですが
     はい、全くどうでもいいことですね。 ご自分の知識の高さ(らしいもの)をひけらかそうとする以外には。 もっとも、書き方で単なるエンジニアさんらしいことが判りましたが。

     ここは議論ボーではありませんし、本来のご質問にはお答えしておりますので私の方はこれ以上の無駄なことはやめにします。 ここをご覧いただいた方々には、お目汚しになってしまい申し訳ありませんでした。

     が、既に書きましたように、VT信管に対する妨害の実用化は本質問者が考えているような簡単な話ではないことは、ご理解いただけたと思います。 それはなによりも現実が証明していますので。

     それにしても、うっかりほいほと詳細データを提供しなくてよかったと思いますね。 単なる電子機器(回路というべきか)に固執せずに、もう少し妨害を含めた電子戦の実際について素直に理解していただけないかぎり、無駄になるだけですから。
    艦船ファン


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