401  皆様、明けましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いします。
2013年元旦、武器装備全般への初質問です。

 AK47系は、機関部のトリガー系のスプリングが鋼線を糸状に撚った上で改めてスプリング状に
整形するトーションスプリングとなっていますが、他の列強で採用されていない同スプリングを
何故採用しているのでしょうか? また同スプリングにはどんな長所、短所があるのでしょうか?

 そもそも日本では、トーションスプリングの使用自体が少ないようで、同名で検索しても、
自動車や戦車の足回りのトーションバースプリング関連ばかり出てきて困ります。
日本の工業製品での使用例はあるのでしょうか?
                           2013.1.01.元旦 19:05記
NG151/20@謹賀新年

  1. 小職はスプリングの専門家ではありませんが呼び水として回答致します。
    御質問のスプリングをJIS規格用語(JIS B 0103)では「より線ばね」(英:stranded wire helical spring)と呼称します。
    撚ったワイヤーでコイル状スプリングを製作する事により 通常の単一線材製作の物より耐久性が向上するものと聞いております。
    何十年も昔は日本国内でも見られたスプリングですが、専用スプリング製造機が必要な事やCOST-UP な割りに、
    著しい性能向上するでもないので近年はあまり見かけませんね。

    さて、AK47のトリガー系のスプリングは、3本の細線材を撚ったねじりコイルばね(トーションスプリング)ですが、
    ベトナム激戦のその昔、極東某国の自衛陸戦軍にも米軍の厚意により鹵獲品のAK47の実物が持ち込まれ、
    その専門関係者内で分解・研究しました時に、この撚り線スプリングの使用にも注視した。と聞きおよんでおります。
    注視の意味⇒低コスト大量生産イメージの共産圏主力小銃に、あえてCOST-UP覚悟で撚り線スプリングを使用しているという事は
    逆の見方をすれば、この部位が設計上 或いは 耐久性上苦しく、撚り線スプリングを使用せざる得ない
    ⇒この銃のウィークポイント・弱点なところだな。 という解釈をしたそうです。

    参考HP  ttp://www.spring-makers-resource.net/advanced-spring-design.html

    項目 "Advanced Spring Design: Stranded Wire Springs"
    "Long springs with many coils subjected to high rates of load applications, as in automatic weapons, encounter shock-wave motion or displacement of spring coils. The spring can be literally torn apart. Stranded wire springs are often the solution to such problems. This is because of the frictional resistance set up by the selective movement between strands."

    以上です。 続けてばねに詳しい方のフォローを待ちましょう。
    ところで新年早々質問乱発しておりますが、今年はNG151/20さんが
    「蜂取らず」となられないことを願ってやみません。

    軌跡の発動機?誉

  2. おぼろげな記憶なので、お邪魔でしたらごめんなさい。
    そうとう昔の熊谷清一郎さんか富塚清さん、もしくは
    曾田範宗さんの本に、ご指摘のスプリングについて記
    述があったような気がするのですが。

    名称がトーションスプリングというのか分かりません。
    第二次世界大戦中、またはそれ以前に発動機のバルブ
    スプリングとしてソビエトで開発されたそうです。
    質の低い原材料でも耐久性を確保する為だとか。

    伸縮する際に、二本のワイヤー間に生じる摩擦抵抗が
    作用してヘタりにくいそうです。
    なぜ耐久性が上がるのか本質的には解っていない、
    よい材料が手に入るなら普通に作ったほうが早い、
    とあったような・・・

    陣徒しん

  3. >軌跡の発動機?誉 
     あけましておめでとうございます。
     今年もよろしくお願いします。
     毎年、拙問、駄問に懇切丁寧に対応いただき感謝に堪えません。

     まず
    >ところで新年早々質問乱発しておりますが、
    >「蜂取らず」となられないことを願ってやみません。
    の件ですが、自分の生業は、正月三が日を明ければ年度末まで超多忙となってROMが精一杯、質問をしても、回答への返信が亀ならぬ蝸牛レスになって回答者への礼を欠く、を毎年繰り返し申し訳なく思っております。

     これは、ひとえに生業(勤務先、取引先)への対応を優先させているからであって、誉様ご懸念の事態にならないよう務めている所存です。その分、皆様へのレスが遅れご迷惑をお掛けしますが、何卒ご容赦くださいませ。
     また「質問の乱発」は、昨秋以来各コーナーで聞きたかったことを、下書きで書き溜めていたものを一斉放出したもので、(対応上失敗もありましたが)正月を過ぎればまた鎮静化しますのでご安心ください。

    NG151/20@謹賀新年

  4.  本題に戻って、貴重な情報の掲示ありがとうございます。
    >極東某国(中略)この撚り線スプリングの使用にも注視した。
    >逆の見方をすれば、この部位が設計上或いは耐久性上苦しく
    以前「GUN」誌にてターク高野御大が、耐久性が売りのはずのAKに対して米軍関係者の
    >撃針が弱くて折損し易く、世評ほどの耐久性はない。
    との証言を紹介し、同氏自身も「確かに華奢な作りで弱そうだ」と記述していました。
     AKの撃針が、他の銃同様スプリングで保持されているか否か(前作SKSには復座バネがなく、撃針は発射時の包底圧で戻る)は承知していませんが、今回ご紹介の話しと通じる部分があり、AK系の隠れた弱点なのかもしれません。


    >陣徒しん様
     初めまして、よろしくお願いします。

    >バルブスプリングとしてソビエトで開発されたそうです。
    >質の低い原材料でも耐久性を確保する為だとか。
     Wikipediaによると、AK系の撚り線スプリングは、ドイツのMG42を範に採ったものとされています。MG42も大量生産向けのコストダウン銃なので、低質材料でも確実な作動を目指した点で共通点があるのかもしれません。

    NG151/20@謹賀新年

  5. 既に他の皆様の回答にもあります様に『耐久性』の問題かと考えます。
    ただしこの場合の耐久性は『折損』による撃発機能の喪失を意味しております。

    では何故折損が起きるかと云うと、製鋼時に粗鋼に含まれる不純物(介在物)の塊が応力集中の起点となり疲労破壊を起こします。

    ですから現在でも特に高い信頼性が求められる部位に使うスプリングには、
    鉄鋼メーカーが特別に管理したバネ鋼材を使用しております。

    当時のソ連の製鋼技術が格別に高かった訳ではありませんのである確率でバネの折損は起きると考えられ、
    その確率を下げる為に3本の撚り線を用いたと考えられます。

    例えば1/100の確率で応力集中が起きるレベルの介在物があった場合、
    3本全てが折れる確率は1/100の3乗で100万分の1まで低減出来ると云うことです。
    papanambu

  6. >5.papanambuさま、何かご存知でしたら教えてください。

    より線バネのワイヤーの内、一本が折れても機関銃や発動機は動き続ける
    事が出来るものなのでしょうか。
    私には「どれかひとつが折れてもいいように3本にしよう」的な発想とは
    思えないのです。

    「カラシニコフ自伝」(朝日新書)によるとカラシニコフ氏がAK47の
    原型を作ったのが1945年ごろのようです。それより少し前の昭和18
    年2月11日に機関銃の複座ばねの設計に利用するため池田正二氏によっ
    て関係者の間で発表された論文があります。

    http://ci.nii.ac.jp/naid/110002349011

    この論文の結論は、同じバネ定数で同じサイズにした場合、より線バネは
    単線バネより折れにくい、ヘタりにくい、と私は解釈しました。(解釈が
    間違っていたらすいませんっ!そのときは正しい解釈を教えてください)

    より線のうち一本でも折れたらバネ定数は変化しますから、複座バネに
    限っては作動停止してしまうと思うのです。それともバネ定数の変化は
    大した事なく、「調子が悪い」で済むくらいでしょうか。

    私の疑問は当時の各国軍隊が、機関銃の複座バネの「折れ」に悩んでいた
    のか、「ヘタり」に悩んでいたのか、になりました。


    陣徒しん

  7. >1.を補足
    AK47,AKM, Dragunovそして現代のAK74についてもトリガー系(ハンマーばね兼用)スプリングは撚り線であり、
    他小物スプリング:シァースプリング、エキストラクタースプリング、AKMのリターダースプリング(遅延用)、
    マガジンキャッチスプリング 等は普通の単一線材で製作されているという事実があります。
    又、西側のAKコピーと言えるイスラエル IMI GALIL に於いてもハンマースプリングのみ、より線スプリングだという事実です。
    (GALILはハンマー専用ばねです。トリガーばね兼用していません)
    ttp://www.polygunbag.com/GalilFireControlPartsLargerView.html

    言うまでもなくマガジンキャッチスプリング以外はどれも折損すれば即・銃機能の停止を意味しますが、
    諄いですがより線スプリングはトリガー系のみです。←ガリルについてはハンマー用。

    さて、ナム戦鹵獲AK47の極東某国での分析の続きとして、AKはボルト(ボルトASSY)が軽量な為、
    "ボルトの後退速度が速く、その対処として弾薬全長の割にボルト後退ストローク長が長めに設計されている。"
    と分析しています。すなわち、ボルトの後退速度が速くハンマーに激突する衝撃が強い為、
    この部位のスプリングを耐久性が望める撚り線スプリングにしたものと判断したそうです。

    〜?誉

  8. >papanambu様、他皆様
     未知、初見の話し満載でありがとうございます。聞いてみて良かった。

    >イスラエル IMI GALIL に於いてもハンマースプリングのみ、より線スプリング(〜?誉様)
     ガリル開発時、イスラエルの工業力はまだ低く、レシーバー部はフィンランドのヴァルメを範に採り、初期生産分もフィンランドからの輸入(製造は高精度で有名なサコー)でした。撚り線スプリングは、その時から規格化され続いているのではないでしょうか?

    >ボルトの後退速度が速くハンマーに激突する衝撃が強い為
     こちらも「GUN」誌の続きですが、多くの自動ライフルは、尾筒部にバッファー(緩衝器)を備えています。後退してきたボルトorボルトキャリアーは、緩衝バネの付いたバッファーにぶつかって止まり、復座していくことでレシーバーにかかる負担を減らし、射手の見かけの反動も和らげます。

     しかしAKは、構造の簡素化のためかこれがなく、ボルトキャリアーはハンマーを蹴り倒した後レシーバー後端にガツンと激突して止まるそうです。射撃の度にこれを繰り返していては、レシーバーの耐久性上良いわけがない、というのが同誌の解説でしたが、実際のところはどうなのでしょう?
    NG151/20

  9. 池田正二氏の論文を拝見しました。
    前半は応力の計算方法の説明で、後半の解説では“同じバネ定数の場合はせん断応力が小さくできる”とありますね。
    ですから折れ難い(&へたり難い)と考えて良いと思います。

    しかしそもそも単線ばねでも発生応力が許容応力より小さければ、設計的には無限寿命を持っている筈です。
    それなのに何故トラブルが起きたのか?―――と考えると『品質管理が不十分だった』のかと思います。

    ですから設計的にはOKの筈でも『ある確率で折損は起きる』ことを見越した構造だったのでしょう。

    例えば発動機のバルブスプリングも昔は大小2個を備えておりましたが、
    品質管理が進歩した現在ではシングルスプリングが主流になっているかと思います。

    この場合も本来の機能は発揮できないが、決定的な破損は起きずに修理工場までは辿り付ける
    ―――と云う思想に基く構成になっています。

    ハンマースプリングに関しても元々打撃力等には余裕を持っていると考えられますので(自分が設計するなら当然!)、
    1/3のバネ線が切れたところでたちまち撃発不能になることは無いかと思います。

    なお疲労破壊(折損)は発生応力/許容応力の比率(安全率)と頻度で決まって来ます。
    応力は速度には関係無く変位で決まりますし、寿命は作動する頻度で決まります。

    その両方が大きい状態で使われるのは撃発と復座スプリング程度でしょうから、
    余程特殊な構造でなければ他のスプリングが破損するとは考え難いですね。。。
    papanambu

  10. papanambu様、ご返答ありがとうございます。
    私の場合、バネの特性を考えるよりAK47の部品構成をよく調べてから
    考えたほうがよさそうです。
    日本軍の実情からこの問題をたどると本題から外れますね。
    陣徒しん


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