502 世界で唯一、実戦で運用された帝国海軍の酸素魚雷に対して、なんら文句を言うつもりはありませんが、1)なぜ、他国で酸素に代わる酸化剤が開発されなかったのか?という疑問と2)なぜ、戦後に有名な酸素魚雷の直系の子孫の名前が挙げられないのかを疑問に思っております。

1)例えば笑気などは、危険な酸素の代わりに、スペースシップ1〜2や、多くのアマチュアのハイブリッド・ロケットの酸化剤に安全に使われていますし、戦前や戦中にも海外で笑気魚雷の特許が申請されております。空気と酸素の他に、安全で高性能な酸化剤を使用した魚雷はなぜ活躍しなかったのでしょうか?

2)ナチスドイツ敗戦の後には、例えばXXI型UボートやV2ロケットや後退翼ジェット機など、その技術は勝戦国に直接引き継がれていますが、帝国海軍の酸素魚雷の後継機については、全く耳にしません。モノプロペラントのMk48魚雷やType 53 魚雷から、シュクバルのような魚雷と呼べないものまで開発が進んでおりますが、酸化剤に酸素を使った魚雷は、今はどのようになっているのでしょうか?

ロケットの世界では、もう人間を載せることは無くなりましたが、依然、液酸液水ロケットが保守本流を占めておりますので、どうして魚雷には酸素を使わなくなってしまったのか、その技術的(軍事的?)背景(原因?)を教えて頂ければ幸いに存じます。何卒宜しくお願い申し上げます。

豪腕少年タイフーン

  1.  笑気ガスでは窒素が排ガスとして出てしまうので、それではあまり意味がありません。ドイツの戦闘機のように周辺の大気から酸素を吸って、足りない分を補填するなら酸素ボンベ抱えてくより安全ですから笑気ガスの意味もありますが、最初から全部ボンベで持ってくとなると笑気ガスをわざわざ作ってもあまり利点は無いでしょう。
     また旧ソ連ではいくつか酸素魚雷が作られてるようです。
    http://www.navweaps.com/Weapons/WTRussian_post-WWII.htm
     また現代では使われてないのは、酸素魚雷というか空気魚雷は気室という高圧タンクが必要だからです。これは特殊鋼で製造する必要があるので価格や生産性が非常に悪いのです。いわゆるワルタータービン等の過酸化水素水ならば性能的には大差ない魚雷を高圧タンクなしで作れます。こうなったら酸素魚雷に拘る必要はないでしょう。
    SUDO

  2. 現代では、硝酸プロピレンを主成分としたオットー燃料もあります。
    これを使った魚雷は高性能な上、安全で取り扱いも簡便だそうです。
    ロケットのように液酸を使えるならともかく、高圧ボンベに詰めた酸素では勝負にならないのではないでしょうか。
    はち

  3. SUDO様、はち様、迅速かつ的確なご回答を頂き、誠に有難うございました。

    自分で書いておきながら、Type 53-65K long-range oxygen homing torpedoがありましたね。でも酸素魚雷は輸出用で、自国用は一液式だそうですので、米国のMk-48を含めて、モノプロペラントの燃料の配合や触媒などに、多くの機密が隠されているのではないかと想像させられます。一昔前には、深々度用に水圧とは無関係な電動魚雷の時代になるはずで、Mk48は最後の燃焼式エンジンの魚雷になるだろうとの解説をみましたが、ADCAP以降もまだ同じモノプロペラントの長魚雷が活躍していますね。ちゃんと公表されないでしょうが、89式魚雷の後継機がどのようなエンジンになるのか、とても興味があります。人間の乗るそうりゅう型潜水艦のAIP(回天も?)には酸素を使用し、AUVの多くは電動なのが、魚雷と逆な感じがして面白いです。これから世界中で、いつまで燃焼式の魚雷が使い続けられるのか、是非知りたいところです。これからも海軍の戦域が沿岸に限定され続けるようになると、冷戦期の予想がどんどん外れるかもしれません。

    せっかくの帝国海軍の酸素魚雷に、ホーミング機能を付加して、信管を改良できていれば、その性能を航続距離よりも、雷速に振り向けることができたのではないかと、残念ですが、当時の日本の技術ではとっても無理だったのでしょう。タービン式の53-65K程度の魚雷なら、今の日本では町工場でも簡単に作れるのにと、空想しております。

    重ねて、ご教授をいただき、誠に有難うございました。
    豪腕少年タイフーン

  4. >その性能を航続距離よりも、雷速に振り向けることができたのでは
    魚雷の雷速には50kt付近に大きな壁が有り、第二次大戦中では50kt代前半が最速だった筈です。
    93式等の酸素魚雷は、当時最速級の雷速と最長の射程を両立していたといって間違いないでしょう。
    きっど

  5. きっど様

    なるほど、雷速も射程も理想的性能の達成を両立していたとすると、戦訓から(素人でも数十キロ先の数十分前から動き回っている目標に当てること自体がムチャだと思いますが)不必要だった長い射程の代わりには、史実のとおりに、弾頭重量を増加させるか、ホーミング機能を人間にさせるしか、なかったわけですね。

    ご指摘、ありがとうございました。
    豪腕少年タイフーン


Back