518 以前、英国のウィンザー城を見に行った際、寺内寿一元帥の軍刀が展示されていたのを最近になって思い出したのですが、元帥ともなるとかなりの銘のあるものだろうに、全く手入れもされずに錆が浮いていたのが屈辱的に印象に残りました。

先の大戦では何十万という日本刀が軍刀として戦地にもって行かれて失われたこととでしょう。そのほとんどは美術的価値のない昭和刀だったのでしょうが、戦地で失われた刀で名の伝わっているようなものはあったのでしょうか。

国宝重文クラスはさすがに無かったと思いますが、現代なら特別重要刀剣指定されるような、あるいは「刀剣研究のうえであの刀が戦争で失われたのは返す返すも惜しまれる」というような刀はあったのでしょうか。あるいは大戦中に貴重な刀剣が大量に失われて刀剣研究の歴史にぽっかり穴が開いたというようなことは起きなかったのでしょうか。
物知らず

  1. 戦地で失われた訳でもなければ、刀ですらありませんが、天下三槍の一つの御手杵は、東京大空襲により失われています。
    空襲や戦後の混乱などを含めれば、相当な数の名刀が失われているとみて間違いないのでは?
    きっど

  2. きっどさん、ありがとうございました。三名槍のひとつが空襲で失われていたとは知りませんでした。
    物知らず

  3. 戦後の刀狩りで失われた方が遙かに多かったのです。
    東京で接収された刀を「おわい船」に積んで東京湾に何度も捨てに行った話が残っています。
    赤羽に集積された廃棄される刀から選別して外した金無垢目抜き・鎺がバケツに2杯有ったそうです。
    金無垢目抜き・鎺は余程の刀でないと付けません、どれほどの刀が失われた事か....
    GHQに刀の所持許可を認めさせるために2万振りの軍刀をお土産用に贈った話もあります。
    poran

  4. 文字化けしてしまったようで申し訳ありません。
    「はばき」です。
    poran

  5. >物知らず様
    母方の祖父は商船のオフィサーでしたが、幕府直参の家系に伝わった日本刀の一番良いものを持ち込んで沈めてしまいました。流石に重文クラスではなかったと思いますが、残った刀が戦後に数百万で売れたそうなので、沈んだものは現代の販売価格で数千万円クラスのものだったのではないかと想像します。
    同じような事例はたぶん他にもあったでしょう。

    いわゆる「戦後の刀狩り」では、GHQの提出命令に対して所有者の出し渋りがあり、すぐに「美術価値のある刀」は登録の上所有を認められた経緯があります。
    こうして残った刀は所轄警察署の許可証が付けられ、これが現代でも刀とセットで持たなければならない銃砲刀類登録許可証となります。

    ただし実際の運用には温度差があったようで、父片の祖父は商業高校の校長だったため、程度の悪いものですが古刀だったので「先生、これは残した方が良いですよ」とかなんとか警察から言われて残したとの逸話が残っています。

    ご参考までに。

    いぎし ちじ

  6. この「美術価値」を占領軍に認めさせるのが大変だったのです。
    米軍は刀と言えば「切り込み」を考えて廃棄するのが当然と思っていましたから。

    前記の軍刀と共に小道具を相当GHQの担当者に贈っています。
    民間では「出さないと米軍のレーダーで見つかる」等の流言も広がり相当の刀が提出されました。
    一部の警察では所有者の名前を付けて保管した物も有ったようですが殆どは無記名でした。
    悩んだ末に国宝を折って警察に自首した所有者も居ました。

    ※この米軍との交渉をした私の師匠から伺った話です。


    poran

  7. >poran様

    もちろん本間順治氏のご苦労と功績は存じております。
    いぎし ちじ

  8.  とある鍛冶屋さんの話ですが、戦後に進駐軍に目をつけられて没収されるのを恐れ、どうせ取り上げられるくらいならと自発的に包丁や鉈といった生活用品に打ち直してくれるよう依頼してくる客が多かったそうです。
     量産された軍刀が多かったのですが、その中には銘のある刀もあったそうです。

     蛇足ですが・・・その鍛冶屋さんは、いい機会だからと思い立ち、銘のある伝来の刀と比較的新しい軍刀を持ち出し、近所の竹やぶで試し斬りをして比べてみたそうです。
     その結果、切れ味は新しい軍刀のほうが明らかに優れていたそうです。
     新しい軍刀は切れ味が良いが折れやすく、古い刀は折れないが切れ味は軍刀に比べて劣り、曲がりやすかったのだそうです。
     製作時期の製鋼技術の違いが使われた鋼の質の差となって切れ味の違いが出たのだろうと、その鍛冶屋さんは考察していました。(その考察を根拠に、日本刀に玉鋼を使いたがるのは単なる「信仰」であって合理性は無いとも考察されていました。)
    おうる

  9. 皆様、ご回答ありがとうございました。戦地で失われるよりGHQによる刀狩の方が影響が大きかったとは目から鱗でした。


    物知らず


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