578 「武器」の疑問かやや微妙なのですが、砲弾の運動に関する疑問です。

ヴェルヌの『月世界へ行く』など大型の砲が出てくるSF小説などで「砲弾を軽量化すれば大気圏突破もできる」というような理論が見受けられますが、これの根拠は何なのでしょうか?
(ロケットの場合は推進剤を自分で持っているので余計な重さをつけたくないというのは分かるのですが…)

運動エネルギーは確かに「質量×速度^2」ですが、火薬を使う砲なら特殊な構造にしない限り砲弾はその爆風の速度を超えられないし、むしろ軽い方が空気抵抗の影響を受けて減速しやすいので「コストと砲の大型化を許すならイリジウムやオスミニウムのような高密度金属を使ったり、質量に比べ表面積の小さくなる相似拡大をして『砲弾を重く』して空気抵抗を突破する」方が逆に大気圏離脱しやすくなる気がするのですが…
レサ

  1. WWI時のドイツ戦艦の主砲だった30cm砲は、WWII時には沿岸砲として使われました。
    射程を伸ばすために使われた砲弾は、細長くして空気抵抗を減らすとともに、初速を速くするため約400kg→250kgと 軽量化されました。
    これで初速は850m/s→1120m/sとなり、最大射程は39500m→51400mにまで伸びました。
    なお、射程最大となる仰角は49.1度。空気抵抗の少ない高高度を長く飛ばすことで飛距離を得ます。

    超音速

  2. 余談ですが、Wikipedia「多薬室砲」のページには、宇宙空間に物資を打ち上げるマスドライバーとして多薬室砲を使う構想があったことが書かれていますね。
    超音速

  3.  砲は砲弾を加速させる装置で、エネルギー源として火薬の燃焼ガス圧を使っています(ほかの方法もありますがここでは割愛します)。

     火薬を燃焼させて発生したガスの圧力で砲弾を押して加速するのです。

     砲弾が砲口に到達するまでに砲弾がどれだけ加速できるか?は、砲身の長さと燃焼ガスのエネルギーに比例するわけですが、砲弾が重ければ重いほど慣性抵抗も大きくなるのでエネルギーも多く必要になります。逆に砲弾が軽ければ軽いほど、少ないエネルギーでより加速させることができることになります。
     同じ砲弾でもエネルギー量(つまりエネルギー源となる火薬の量)が多くすれば加速度も高めることは可能ですが、そうすると砲自体や砲弾にかかる負荷も大きくなって砲や砲弾が破壊されてしまう危険性が出てくるので限界があります。

     砲や砲弾が破壊されないギリギリのエネルギー量で、可能な限り速度を稼ごうとしたら砲弾を軽量化する他なくなります(多薬室砲も解決法の一つですが実用化には至ってません・・・高低圧砲は大雑把には同じと考えていいのかな?)。

     飛翔中の砲弾の減速を防ぐために質量を重くしたほうが・・・というご意見ですが、いったん加速した状態からの減速対策としては一理あるのですが、減速を開始する前の速度まで加速できるかどうかという点が見落とされているように思われます。

     また、「火薬を使う砲なら特殊な構造にしない限り砲弾はその爆風の速度を超えられない」は間違いです。
     砲口初速が音速を超えている砲は数多くありますが、装薬(砲弾を打ち出すための火薬)の燃焼速度は音速より速くありません。燃焼速度が音速より高くなると衝撃波が生じ、砲弾が砲口から飛び出す前に砲と砲弾を破壊してしまうのです。
     装薬はむしろ燃焼速度を適切に抑えることが課題になります。
    おうる

  4. 理屈で考えるなら、質問者さんの考えはある意味正解だと思いますよ。

    1)砲口をでる前
    燃焼ガスの温度を上げて/分子量を下げてやれば、かなりの初速アップが期待できます。つまり、人間の工夫と努力次第で重量級の砲弾も扱える可能性があるわけです。
    2)砲口をでた後
    瞬間々々の空気抵抗についても、砲弾が重ければ重いほど、運動エネルギーを減少させる割合が小さい。なおかつ、気体抵抗を減少させるのは難しい(液体の抵抗なら上手く減少させている例がありますね)。

    ただ難があるとすれば、砲弾を軽くする≒初速が速くなると(確かに爆風の速度が上限ですね)、大気圏を突破できると仮定した場合「空気抵抗」にさらされる時間も短くなることくらいでしょうか。
    つまり砲弾が軽いと、空気抵抗による減速率大ですが、初速が速く&減速時間が短くなる、結果的に残速も速くなる可能性もある訳です。

    いうなれば、「薄い鉄板」と「分厚い紙束」、貫くのはどちらが容易か?という問題と同じようなもので、実際に実験なり計算なりをしてみないと、砲弾を軽くする方がよいのか/重くする方がよいのかの結論は出ないはずです。

    太助

  5. 現実として月世界へ届く砲弾は、物理学上の要求値=地球脱出速度(第2地球速度)秒速約11km/sにより、
    二つの理由で実現不可能です。


    ☆初速実現不可能。
    数百年前人類が火薬を実用利用はじめてから今日までに実現出来た砲弾初速は最高で約2km/s です。
    又、将来 夢の砲と期待されているレールガン(電磁砲)でさえ現在の実験室レベルで約3km/s 前後です。
    地球脱出に必要な11km/sの1/3にも達することが出来ていません。


    ☆耐熱材で実現不可能
    仮に初速11km/sが実現できたとして地上より発射した場合、大気との摩擦熱及び進行方向空気断熱圧縮で
    3000℃前後の温度となりますが、通常の鉄鋼材では当然耐えられません。
    現在これに耐える宇宙船用耐熱材は存在するも初速11km/sの砲発射衝撃に耐えるものではありません。

    通常、惑星間ロケットは打ち上げ初速3km/s位で地上よりゆっくり上昇しながら徐々に加速し
    第1地球速度秒速約8km/sを得て地球周回軌道に入り、何週かして第2地球速度秒速約11km/sまで加速してから
    地球より旅立ちます。 そういう芸当は単純な砲発射弾丸では無理なことであります。

    軌跡の発動機?誉


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