643  ナチス時代のドイツ将校は階級を問わず公式な場や正装をした肖像写真まで帽子を傾けてかぶっているものが大半のようですが黙認されていたのでしょうか?
 戦争経験者が過半数の時代に作られた映画「アフリカの星」の中には士官候補生が上官に帽子を正しくかぶれと注意されるシーンがあります。
規律の厳しい軍隊で将校は正装の軍帽を傾けてかぶっても良いという規定があったとは思えませんが、将官クラスでもハイドリッヒやデーニッツ等多くが傾けてかぶっていますし、一般の将校たちも叙勲の場やヒトラーの前でも帽子を傾けています。(チェックした有名な将校の中ではガーランドの傾け方が1番急角度?)
トロッター

  1.  帽子を斜めに被ることを阿弥陀被りと申しますが、これは洒落者のすることでありました。特にイギリス海軍で艦隊司令長官まで勤めたビーティーが有名で、彼は、阿弥陀被りどころか、変形制服に、ポケットに手を突っ込んだ姿でも有名でした。これは、国王ジョージ5世の前でも同様で、下の動画で確認できます(22秒あたりから)。
     https://www.youtube.com/watch?v=dThRP8LXaFY
     もっとも、上記の動画でそのような格好をしていたのはビーティーぐらいで、さすがに他の士官はきちんとしております。
     ただ、阿弥陀被りを流行らせたのは、ジョージ5世の長男で、後にエドワード8世となったウェールズ公(この名で戦艦の名になっています)だろうと思います。即位後、未亡人との結婚を選び、王位を捨ててウィンザー公となったことで有名ですが、一代の洒落者として知られていました。したがって、普段着であるセーターを着てゴルフをすれば、セーターがゴルフ・ウェアになり、泥除けのためにズボンの裾を折り曲げると、ダブルのズボンが流行るというぐらいです。その彼が、海軍士官でもあったので、ビーティーの影響を受けたのかもしれませんが、阿弥陀被りをしているとなれば(もっとも、下の写真のように幼少時からそうだったようですが)、誰も彼もが帽子を斜めにしたのです(私の父親の戦前の写真もそうでした)。
     https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/e0/Edward_VIII_boy.jpg
     https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/e/ef/A022344.jpg
     そして、そのヨーク公が来日した時に、間近で見て影響を受けたのが、高崎正光(兵46)中佐です。おそらく、旧日本海軍で唯一であったと思いますが、彼は阿弥陀被りで現役を通し抜いたそうです。
     また、ウィンザー公はナチスと親密な関係を築いており、ウィンザー家はドイツ系でもあったので(ジョージ1世などは英語が話せず、ドイツ語で会話していたぐらいです)、当時のドイツ人にとって近しい存在でした。したがって、第2次大戦前のドイツ人も、洒落者であろうがなかろうが、阿弥陀に帽子を被っていたと思います。そして、軍の高級将校、特に帝政ドイツ時代に士官になった者達は、貴族の出ですから、自由な人が多く、洒落者は阿弥陀被りが普通だったと思います。しかも、ヒトラーは、軍人としては陸軍伍長であったに過ぎませんから、多少の遠慮はあったようで、阿弥陀被りぐらいに目くじらをたてることはなかったと思っています。もっとも、ゲーリングをはじめとして、ヒトラーの周囲には変な人が多かったので、彼も気にしなかっただけだとも思いますが。
     ただし、これは高級将校の場合です。たとえば、旧日本海軍でも、航海中、司令官や艦長は椅子に座って、頬杖をついているのに、参謀長、副長以下は後方に直立しているというのが普通だったようです。したがって、一介の空軍大尉に過ぎないマルセイユが阿弥陀被りをしているというのは、軍律違反でしょう。
     もっとも、彼の場合は、「腕の太さほどもある軍規違反履歴書」を持ってきたと書かれるほどの問題児であり、阿弥陀被りぐらいは当然だったのでしょうが、実際にそうしていたかどうかは存じません(当然、していたとは思いますが)。ただ、「アフリカの星」でマルセイユ役をしたヨアヒム・ハンセンは、彼の性格を描くに当たって、阿弥陀被りを上手に使い、その後、ハンセンのトレード・マークになっておりますので、マルセイユといえば阿弥陀被りというのは、そちらの影響もあったのかもしれません。
     したがって、回答は、誰もが普通にそうしていたので、軍隊でも高級将校の場合は黙認されていたということになります。
     
    hush

  2.  ジョージ1世は、多少は英語を話せたようです。ただし、不充分だったので、閣僚とはフランス語で意思疎通を行っていたそうです。
     なお、ジョージ1世の時代はハンノヴァー王朝ですが、御先祖ということで。
     どうでもよい訂正ですいません。
     
    hush

  3. 関係のないツッコミを。
    阿弥陀かぶりとは帽子を後方へ傾けるかぶり方のようです。
    正面から見たときに帽子のつばの裏側が阿弥陀様の後光に見えるからだそうで。
    シロ−

  4. >3
     ありがとうございます。
     数十年来間違って覚えておりました。
     たしかに、そうしないと光背のようには見えないですね。
     
    hush


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