22  流星は爆弾投下後は戦闘機として空戦ができるよう開発された。古い本
にはそのように書かれているものがあります。最近のものではそのような
記述ありませんが、流星は爆弾投下後に空戦に参加するよう開発されたの
でしょうか。くわしい方教えてください。
らいおん

  1. 十六試艦爆への性能要求の根拠となったのは昭和16年のマル5計画用「航空機種及性能標準」ですが、これは内容が伝わって残っていません。
    しかし、その内容策定の過程である13年9月横空の性能標準案、14年2月軍令部案、15年7月の軍令部修正第一案は一貫して艦爆に求められるべき特性として「1)急降下爆撃容易なること 2)下記性能満足の上は極力格闘戦性能の向上をはかること」としています。
    この要求項目は、観測機としての艦上複座戦闘機が、艦爆という機種の出現以来試製されなくなったことと関係あるように思います。すなわち、艦爆には艦上観測機として運用できることが求められていたはず、ということです。観測機には、敵戦闘機による妨害を空戦で排除しながら任務にあたることが想定されていました。



  2. 便乗質問ですが、以前流星は零戦32型と互角の空戦性能があったときいていますが、本当に流星にそんな性能があったんでしょうか
    ザンクロ

  3. 「古い本」のソースを示していただかないと、どのような経緯での情報か判りかねます。「零戦32型と同様の空戦性能」も併せて、特定的にそのような記述があって信頼性があるものなら、かなり希少な資料と思います。

    一般論的には、"片"さんの言われるとおりと思います。世傑の旧版(か、あるいは丸メカニック)に、彗星の搭乗員の手記として、「偶々予備機で出撃したため前方機銃がなかったので、空戦ができず惜しかった」という記述がありましたし、世傑の最新刊(#130)の九九艦爆の搭乗員の手記にもハッキリと、「空戦の訓練をした」と明記されています。

    むしろ、艦爆に積極的に補助戦闘機の役割を課してしたのは米海軍です。これも世傑の最新刊(#130)を参照ください。

    尚、爆弾または魚雷を積んで降爆/雷撃後に戦闘機として機能する、「戦闘爆撃機」として明確に要求されたのは、陸軍のキ119です。これも検索してみてください。Wikiで一発で出ます。

    以上、ご参考までに。
    TOSHI!!

  4. 真珠湾攻撃のときに、奇襲なら雷撃機から、強襲なら艦爆から突撃を行う、というプランだったように、艦爆というのは防御されている敵空母上空に突っ込んでゆく必要のある機種です。艦爆の空戦能力とは、任務達成のため、あるいは投弾後の脱出のために排除しなければならない敵邀撃機を振り払うためのものです。いずれにしても、積極的に敵機に空戦を仕掛けていくという類ではありません。

    上の方が陸軍のキ119をあげられていますが、川崎で転換生産中の四式重爆が本土決戦時には発動機供給困難になるだろうことを考えて、これを単発化することを構想したというのがそもそもの開発目的です。なので、魚雷懸吊可能という条件がつけられています。したがって、この機種も積極空戦を行うためのものでは本来ない、と考えた方がよさそうです。


  5. キ119は戦闘爆撃機で・・というお馴染みの解説の元は土井武夫さんが書かれた回想です。それが引用を繰り返して広まっているんですが、原文をよく読めば、本機は特攻専用機ではないことを強調したいという御本人の思いと、その概要はいわばキ67の単発仕様で、海軍の艦爆と同じようなコンセプトの飛行機だと説明されていることがわかります。特に陸軍独自の新しい機種として開発された機体ではないんです。
    BUN

  6.  >3 世傑の最新刊(#130) 同じ記事の中にハーミス攻撃後の九九艦爆部隊がスピットファイアと空戦したとの記述がありますが、実際にはこの時の敵機はフェアリーフルマーであり、なおかつ九九艦爆側は大損害を受けています。
     また流星の部隊ははじめから、艦爆、艦攻とに分けられて訓練されており、ただでさえ少ない訓練時間/燃料では空戦訓練までは行う余裕は無いでしょう、ハード的に兼用可能だとしてもパイロットの技量が伴わなければ絵に描いた餅に過ぎません。
    マーニー

  7. >6
    これは96艦爆時代から術科年報で言われていることですね。
    艦爆搭乗員はただでさ多くの任務をこなさねばならないのに、空中戦の技量まで習得できない、と。
    BUN

  8.  ご回答をくださった方々ありがとうございます。爆弾・魚雷投下後に
    積極的に空戦をしなければいけない理由がわかりませんでしたが、観測
    機と使用するときは自力で敵戦闘機に対抗しなければいけない。疑問が
    解決いたしました。

    らいおん

  9. >1
    >昭和16年のマル5計画用「航空機種及性能標準」ですが、これは内容が伝わって残っていません。

    ちょっと思い出して、資料を探したら、主な要求は次のとおり、という記述を見つけました。

    昭和16年、「実計」によって16試艦上攻撃機の要求は、
    1.1機種で艦攻、艦爆をかね、水平爆撃、急降下爆撃、雷撃が可能であること。
    2.爆弾は800kg×1、250kg×2、60kg×6のいずれも装備でき、250Kg×2装備時の最大速度300Kt<556km/h>以上。
    3.航続距離は正規1,000nm<1,852Km>以上、過荷重で1,800nm<3,300km>以上。
    4.武装は20mm固定2門、13mm旋回1丁。
    5.零戦に匹敵する運動性。
    6.構造は研朗で整備が簡単、工作容易、量産に適すること。
    (以上1.〜6.は手元資料ママ、<>内は筆者による補追と思われます)

    これが何らかの一次資料に基づいたものであるならば、5.で「零戦に匹敵する運動性」が要求されていたことになります。(「空戦性能」ではありません)

    ただし、手元資料は孫引きくらいになりそうだし、悪名高い「ハインケル式楕円翼」を持った一号機が作図されている資料なので、ご判断は各位にお任せしたいと思います。

    情報ソース:航空情報別冊「太平洋戦争 日本海軍機」昭和51年9月5日再販 P73 解説:横森周信氏 (ちなみに、初版は昭和47年1月20日です)

    TOSHI!!

  10. 十六試艦攻への運動性要求の基準とされているのは、異機種の零戦ではなく、同機種の九九艦爆ではないでしょうか。


  11. >10
    >同機種の九九艦爆ではないでしょうか

    提示した資料の原文ママなので、記述としては零戦がFACTです。
    記述そのものがイカサマだという根拠は、持ち合わせておりません。以上、ご参考まで。
    TOSHI!!

  12. きっと、もうちょっと何冊か本を読まれると、違ったことが書いてあると思いますよ。


  13. >12
    >違ったことが書いてあると思いますよ

    「違ったことが書いてある」であろう本を、「何冊か」"具体的に"ご指摘いただけると助かります。
    「昭和16年のマル5計画用「航空機種及性能標準」ですが、これは内容が伝わって残っていない」とのことですので。もう少し精進したく思います。

    TOSHI!!

  14. そうですね。
    『日本航空機総集』や『日本軍用機航空戦全史』は基本図書といっても良いと思います。
    もちろん、古すぎる記述などもありますが、情報の精度を吟味する最初の足がかりとするにはちょうど良い書物だと思います。


  15. >14
    ご教授ありがとうございました。
    近年のマニア本は多数所蔵しているのですが、一次資料に近いものが少ないので、もう少し勉強してみます。
    TOSHI!!

  16. >14
    漸く『日本航空機総集』VOL.2(愛知・空技廠編)を入手した(VOL.6、8除く)ので早速照会してみたところ、P104の記述に、

    8.空戦性能は九九式艦爆に匹敵する運動性以上であること
    (他項目は略)

    とありました。入手したのは1981年12月20日付の改定新版なので当方が根拠にした資料(航空情報別冊「太平洋戦争 日本海軍機」)より新しく、他の記述も似通っているため、改定時に訂正されたのではないかと思います。
    小池繁夫氏の画集「フライング・カラーズ2」の藤田勝啓氏の解説にも「運動性は零戦に匹敵することが求められた」旨の記述がありましたが、初期の資料の引用孫引きがあるようにも感じられます。
    ご教授、ありがとうございました。

    TOSHI!!

  17. いえ、日本航空機総集の記述はもっと古く、むしろこちらが原型に近いものなのですが、どこかで変形して伝わってしまったのが零戦説なんです。


  18. >17.
    >日本航空機総集の記述はもっと古く、むしろこちらが原型に近いもの

    そうでしたか。最近になって発掘された資料と、一次資料に近いものとを比較して、真贋を確認する眼力を養うよう精進しなければなりませんね。
    流星も、一時は原型が「ハインケル式楕円翼」とされていた時期があったし、晴嵐のフロートが緊急時には飛行中に投下可能とされていたこともありましたし。
    かなり遅くなったのに御手数をいただいてのご指摘、ありがとうございました。

    TOSHI!!

  19. その後、複数の資料で、「空戦性能は”九九式艦爆”に匹敵する運動性以上であること」とされているのを確認しました。
    蛇足ながら、以下に挙げておきます。

    @:別冊航空情報 「日本海軍制式機大鑑」P218(秋元実)
    A:流星戦記(総空の碧血碑、海軍攻撃第五飛行隊史話)P20(設計主任者 尾崎紀男氏の手記より)

    以上、ご参考までに。
    TOSHI!!


Back