77 素人質問です。世界の傑作機シリーズNo131、P−38を見て理解出来なかったのですが、ロール性能が悪いと旋回性能が生かせないてか書いてありますが、旋回性能とロールの関連性とは?あとここで書いてある旋回とは、どういう飛行機動?じぶんは、旋回と言うと宙返りくらいしか思いつかないもので
まさのり

  1. 旋回というと水平面での旋回を思い浮かべますが・・
    とおり

  2. >1のとおりさんの説明で十分かも知れませんが、一応基本的な話を。

     航空機が左右に旋回する場合には、垂直尾翼のラダーを使い、旋回する方向に機首を向けますが、それだけで旋回しているわけではありません。時速500キロで北に向かっている航空機が機首を10度右(東)方向に向けたとしても、それによって発生する東に向かうエンジンの推力はわずかで、それだけでは航空機は慣性の法則に従い機首をやや右に曲げた状態でそのまま北にむかって進み続けます。

     このやり方でも、航空機はじりじりと北北東、北東、東北東と進路を変えていくでしょうが真東に向かって飛ぶようになるためにはかなりの時間がかかります(最初期の航空機にはこういうタイプが多く、そのような航空機が旋回するのは極めて困難な事業でした)。

     それでは通常の航空機はどうやって旋回するのかというと、主翼が発生する揚力のを利用するのです。北向きに飛んでいる航空機が東にいきたいと思ったときには主翼の補助翼を操作して機体を右(東)に傾けます。そうすると主翼が発生する揚力の一部は、機体を東方向に移動させる推力になります。この力はプロペラの方向をわずかに右(東)むきにしたことによって生じる推力よりずっと強力です。
     ただし主翼を傾ければ航空機を持ち上げる揚力はその分減少しますから、機体の高度は下がります。それを避けるためには主翼の迎え角を大きくして、揚力を増やさなければなりませんが、そうすると迎え角が大きくなった事によって抵抗が増大し航空機の速度が低下します。

     旋回性能は、高度を低下させずにどれだけの横向きの推力を発生させられるかで決まります(旋回性能といった場合旋回半径だけでなく旋回時の速度や一定時間あたりの変針角などが問題とされることもあり、それらを考慮すると問題はもっと複雑になりますが)。一般的にいえば主翼面積が大きいほど横向きの推力も大きくなるので旋回性能はあがります。またエンジンパワーに余力が大きいほど速度低下なしで迎え角を大きくできます。つまり、主翼面積が大きく、エンジンパワーが大きい航空機ほど旋回性能は高くなります。

     さてロール性能とは、一定時間内にどれだけ機体を傾けられるかという性能です。ロール性能が低い、つまり機体を傾けるのに時間がかかる航空機は、旋回のための横向きの推力を発生させるのに時間がかかることになります。

     したがって旋回性能は高いがロール性能が低い航空機は、ひとたび旋回姿勢に入れば小さな半径で旋回出来ますが、旋回を始めるまでに時間がかかり、逆にロール性能は高いが旋回性能は低い航空機は、すばやく旋回を開始できますが、旋回半径は大きくなります。

     一方向への旋回を続ける巴戦なら、原則として旋回性能の高い航空機が有利ですが、巴戦で旋回性能が高い航空機が旋回を開始した頃には、ロール性能が高い航空機はもうかなり旋回していている事になります。したがって、その時点では、旋回性能が低くともロール性能が高い航空機が有利であり、その後も同じ方向に旋回を続けると、ロール性能は低くとも旋回性能が高い航空機が次第に有利になっていく事になります。
     また小刻みに左右に蛇行するといった場合も、ロール性能が高い航空機の方が旋回性能が高い航空機よりも有利でよう。(なお、他にもロール性能が重要な機動は数多く存在します)
    カンタニャック

  3. カンタニャックさん、詳しい解説ありがとうございました。自分は旋回と言うと、宙返り等の垂直面の機動、左右の旋回は、自動車のような右回り左回りを考えていたので、ロールとの関連が今一つピンと来ませんでした。
    まさのり


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