103 特に戦間期単発機における、機載無線についてお教えください。
フューリーからハリケーンでもHe51からBf109でもいいのですが、「両翼端と尾翼、操縦席後方を結ぶ空中線」から、「操縦席後方の支柱と尾翼を結ぶ空中線」に変化しています。

1 この変化は、周波数の変化によるものなのでしょうか、それとも、例えば半波長→1/4波長の変化によるものなのでしょうか?

2 当時のおおまかな波帯をお教えください。

3 、「両翼端と尾翼、操縦席後方を結ぶ空中線」では、「片翼端から空中での接続箇所を経て他翼端」までが空中線の実効長で、「空中での接続箇所から操縦席後方」は引き込み部分、「空中での接続箇所から尾翼」は通電しない単なる支持線と考えてよいものでしょうか?
はたの

  1. 2.おおまかな波帯(RAF限定で申し訳ないです)

    無線機TYPE :周波数
    R1082/T1083:111kHz-15MHz(初期のソードフィッシュ、ハンプトン等)
    R1116/T1115:142kHz-20MHz(1940以降のソードフィッシュ、ハンプトン等)
    R1155/T1154:HF l8.5-7.5MHz 7.5-3.0MHz MF 1,500-600kHz, 500-200kHz and 200-75kHz(ランカスター等の大型機)
    TR9D:4.3-6.6MHz(初期のスピットファイヤー、ハリケーン)

    フューリーの無線機が全然わからない。

    http://home.btconnect.com/gmb/airequip.htm
    jas1

  2. ありがとうございます。それだけ幅があるとなると、単純に半波長か1/4波長かという話ではなさそうですね・・・。

    空中線の張り方がこの時期に変わった理由についても引き続きご教示のほどお願いいたします。
    はたの

  3. 明快な回答にはなりませんのをお詫びしておきますが・・・・

    空中線展張の方式変化は、単純に使用周波数の違いかと思います。一般に、航空機や船舶など、空中線の展張に制限がある状況で使用する無線装置の場合、送信機側で使用周波数での空中線インピーダンスに整合を取ります。従って、中波帯まで含む周波数で運用する場合、相応に「長い」空中線でなければ、送信機側の整合回路での損失が大きくなり、実用的ではなくなります。
    1、で示される運用可能周波数を見れば判る通り、単座戦闘機では運用の範囲は短波帯のみに限定されています。この周波数ならば、数メートルの単線のみで同調が可能です。

    空中線長が半波長であるか、1/4波長であるかはこの際関係ありません。これが関係あるのは同調型アンテナの場合のみです。一般に航空機や船舶に搭載する短波無線装置では同調型アンテナは使われません。(これは現在でも同じです。)ですから、空中線長の違いは、単に整合が可能な周波数範囲の違い、と理解して宜しいのではないか、と考えます。

    参考までに船舶では中波帯を含む周波数を約6.3mの垂直ホイップ一本でカバーするのが現在の主流です。しかし、航空機ではこれはかなり難しく思えます。この違いは接地の差です。船舶の場合、海という良導体に浮かんでいるため、金属構造の船で有る限り、実用上接地抵抗がゼロとして扱えます。しかし、航空機では機体投影面積、機体容量に限界があるため、そのように扱うわけには行きません。従って相応に長い空中線が必要になります。
    大戦前の機体で、中波通信を行うために、アンテナ線リールを持つものなどがありますが、実質的にあれはアンテナでは無く、カウンターポイズ(疑似接地)として働いており、輻射は機体そのものから起きると考えた方が理論解析上都合の良い場合などがあったりします。

    あまり良い答えになっておりませんので、参考程度にお考えください。
    elebras

  4. 詳細にどうもありがとうございます。私の知識不足で完全に理解したとはいきませんが、何を調べればよいの指針として拝受いたします。
    はたの

  5. 遅レス&推測話ですが

    民間だと1920年代から1930年代にかけてが鉱石ラジオから真空管ラジオへの変遷期に当たるらしいです。
    鉱石ラジオはアンテナから受けた電波を電力として利用し、しかも増幅回路を持たないので長いアンテナが必要との事。
    このへんが関係してくるのかもしれないです。
    あくまでも推測ですが。
    jas1

  6. さらにありがとうございます。

    ついで・・・といっては失礼な表現になりますが、「線状」でない航空機の「空中線」の概略についてもご教示いただけないでしょうか? クニッケバインや夜戦用レーダーなどの特殊なものについては解説も見掛けるのですが、一般的なものがかえってよくわかりません。

    たとえば、流線型カバーのついたもの。たぶんADF用で、たぶん中には円筒形状(+時に円盤面に垂直な短い棒が円周上に並ぶ)のアンテナが入っていると思うのですが、いつごろ、どんな原理、中身は回転するのか・・・?
    たとえば、環状のループアンテナ。これこそ単なる同調型方向探知アンテナと解してよいのか。いつごろから使われたのか(地上局整備も関係するでしょうし)。ループは回転するのか、それとも首尾線に垂直まては平行に固定で飛行機の旋回によって変化する感度を拾うのか・・・?


    はたの

  7. 電波式の方向探知機は1920年代から1930年代にかけて各社で開発が始まり零戦でも採用されたクルシー式帰投装置なんかも1935年には雑誌記事にも載せらてています。
    http://www.flightglobal.com/pdfarchive/view/1935/1935%20-%200832.html

    主流になったのがBendix社の製品で軍民両方で使われたNM26を経てSCR-269という製品がWW2で米軍のB17やB24と言った重爆に搭載されました。
    NM26までは手動で環状のループアンテナを回し電波の最強感度または最弱感度(アンテナの特性上こっちの方が容易)を探すのですが
    SCR-269では自動でアンテナを回し最弱感度を探すようになり、これがADFの始まりと言っていいと思われます。
    ちなみに流線型カバーの中は以下のHPのカットビューの通り環状のアンテナで回転できます。
    http://website.lineone.net/~norman.groom/SCR269.htm

    ちなみに現在使われているADFのアンテナは固定されていてゴニオメータと呼ばれる物で装置の中に外界と同様の電磁界を再現し、
    ゴニオ回転子を回すことで機外のループ・アンテナを回して地上局の方向を測定するのと同じ効果があるとの事です。
    ↓船舶用のADFの説明ですが航空機用とまったく同じです。
    http://www.mod.go.jp/msdf/edcu/1mss/lecture/kouza/K-9.html

    jas1

  8. ありがとうございます。カバーの有無、ダイポール併用など、スッキリいたしました。
    はたの

  9. 以下の話は大雑把なものです。 接地型以外の空中線にはふれておりません。

    第一次世界大戦から第二次世界大戦の間における航空機無線の空中線の変化

    基礎1、電波が空中線から出るとはどういうことか。
        当時の航空機用空中線は接地型のため、送信機で作られた高周波エネルギーが「空中線」と「アース・接地」の間で放出されます。

    基礎2、周波数と波長
        300メーター割るMHzメガヘルツ(メガサイクル)、例:2メガサイクルは150メートル

    基礎3、接地型空中線の長さ。
        電気回路によって電線の物理的長さと電気的な長さを調整できます。 短い電線を電気的に長くできます。また空中線の長さは波長の1/2や1/4でもそれ以下でも使用できます。
    物理的な長さが足りなくて電気的に長くした場合は効率が低下しますが何もしない場合よりは良いです。

    基礎4、地上局及び海上(船舶)局の「空中線」と「アース・接地」
        電波を遠くまで飛ばすためには可能な範囲で空中線の地上高を高くします、アース・接地との接続は電気抵抗(接地抵抗)を十分に低くするために地面に銅板を埋め込んだり等のさまざまな方法がとられます。
    海上・船舶の場合は、周囲が水ですので接地抵抗が低いです。
    地上局でも岩山や砂漠地帯等の接地抵抗が大きい場所では「カウンターポイズ」と呼ばれる擬似接地線を張り、「アース・接地」の代用とします。
    アースに必要な電気容量(キャパシタンス)は周波数によってことなります、低い周波数ほど容量が必要となります。

    ここまでで理解して欲しいこと・電波を送信するには「空中線」と「アース・接地」が必要、擬似接地という手法があり周波数が低いほど接地容量が多く必要。

    飛行船・飛行機の局
    高度数百メートル以上を飛ぶ航空機では「空中線」の高さを気にする必要はありません、自身が高い所に居るからです。
    問題A、一方で「アース・接地」がありません、擬似接地の工夫をすることになります。
    問題B、空中線を長く張れない。機体が小さいからです。

    Aの解決方法、木製・鋼管羽布張りの飛行機の場合は操縦索(金属索)を擬似接地として使用しました。金属製の飛行機の場合は機体の金属部分を使用します。

    Bの解決方法、これは時代とともに変化しました。
    B−1、垂下空中線。 飛行船および複葉時代の初期や大型飛行機および中長波の場合には電線を垂下しました、日本では中長波で70メートル長で先端には500グラムから1キログラムの流線型鉛錘を取り付けてあります。
    電線は燐青銅製、巻き取り繰り出し装置付きです。長波用としては第二次世界大戦終了まで使われたようです。
    高速で飛行すると垂下線は後方へ流されますので、電波の飛ぶ方向に偏りが出ます。また戦闘機では空中戦時に空中線が絡んだり切断したりしました。


    B−2、固定空中線。 第一次世界大戦途中から採用されました。 長さを確保するために、
    両翼端から水平尾翼端を経て操縦席へ至るW型、
    両翼端から垂直尾翼へ集まり尾翼で給電されるV型、
    両翼端から張られ操縦席で給電される対称横架T型、
    機体前部から垂直尾翼上端へ至り中間で給電される対象縦架T型、
    操縦席から両翼端へ至る水平ダイポール型、
    等が工夫されました。これらは第一次世界大戦途中から第二次大戦直前まで使用されました。
    木製や鋼管羽布張り機は擬似接地の問題がついてくることに留意してください。また固定式でも張り方により電波の飛ぶ方向に偏りが生じます。


    B−3、固定空中線。第二次世界大戦中、電気技術の発達に伴って短い空中線でも実用上十分な効率が得られるようになった、使用周波数の短波から超短波への移行により波長が短くなった、全金属製機体の採用で擬似接地が楽になった(接地容量が増えた)、速度向上のための抵抗低減要求などから、
    操縦席から尾翼上端へ至る水平空中線型、
    へと至りました。

    宇品トンツー

  10. ありがとうございます。こうした概論を拝見できるとたいへん勉強になります。理由もお示しくださり、本当にありがとうございました。
    はたの


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