155 みなさん、こんにちは。
いつも楽しく拝見させていただいております。
さて、一点疑問があり、皆さんのご意見を拝聴いたしたく書き込ませていただきました。
光人社 NF文庫 ”知って驚く飛行機の話”(飯山幸伸氏 著)においてP-51の性能についての章があります。
概要としては、「P-51の高性能の源は層流翼ではなく、ラジエーターの搭載位置にある」というものなのです。そこから一部引用いたしますと、
「エンジンやオイルの熱を奪った後の排気がはき出されるのだが、これがほかの液冷エンジンと比べると、無視できないくらいの推力を生み出していたというのである。」
「それがムスタングの場合、冷却系の排気まで推力として活用・・・今に伝えられる効果は、排気のシャッターを開いている場合と閉じているときでは、時速にして五十キロほども差があったとさえ言われている。」
(以上、原文のまま)

いったいどういう理屈で、機体内に取り入れた走行風(とは自動車の場合ですね、飛行機の場合はなんと呼ぶのでしょう?)が推力に変わるのか、私には理解できないのです。
「ラジエーターやオイル・クーラーを通過した空気は高温になるから」と読み取れるような文章も見られますが、およそ1000℃にも達するエンジンの燃焼ガスの排気を推力に利用したところで、最高速は10〜20キロ程度しか向上しないようですが、おそらく100℃(現代の自動車で110℃程度)を大きく上回らない冷却水を冷やした空気がそんなに大きなエネルギーを持つものなのでしょうか。
ちなみに、シャッター開閉のどちらの状態が高速なのかの記述はありませんでした。文章を素直に読むと、シャッター開時の方が高速となるように推測できますが、私には単なるシャッター開閉による空気抵抗の変化による最高速度の増減に思えてしますのですが、皆さんはいかがお考えでしょうか?

しかさ

  1.  過去ログより。
     http://www.warbirds.jp/ansq/1/A2000820.html
    T216

  2. まずは過去ログとWikiの検索くらいしましょうね。
    「メルディス効果」について調べると良いかも。
    あと、世界の傑作機No102「スピットファイア」で鳥養氏がマスタングとスピットのラジエータ比較をされてます。名文と思いますよ。
    通りすがり

  3. T216さん、通りすがりさん、回答ありがとうございました。
    過去ログの件、先に調べてみるべきでした。
    おかげさまで、なんとなくですが納得することが出来ました。
    ありがとうござました。


    しかさ

  4. ネットで入手できますので、興味のある方は読んでみられては?
    "Cooling of Aircraft Engines with special reference to Ethylene Glycol Radiators enclosed in Ducts"

    F. W. Meredith, B.A.
    ARC/R&M-1683
    14th August, 1935
    http://aerade.cranfield.ac.uk/ara/arc/rm/1683.pdf

    P51のmeredith effectsに関する解析
    Lednicer, D. and Gilchrist, I., "A Retrospective: Computational
    Aerodynamics Analysis Methods Applied to the P-51 Mustang," AIAA paper
    91-3288, September 1991.




  5. い さん
    大変興味深い情報ありがとございました。
    AIAA paperの方は、時間を見つけて入手してみようと思います。

    ARC/R&M-1683の方は、実に興味深く読ませていただきました(まだ斜め読みですが)。
    浅学ゆえ、実際の数値を算出してみるのは困難そうですが、その他の文章は、特にS6Bの翼表面冷却(と訳せばよいのでしょうか?)を否定している件など、回顧録や歴史書ではなく、まさにその当時の技術文章なので、ちょっと背筋がゾワゾワとするほど興奮しました。
    心より感謝です!!
    しかさ

  6. Wikiで、「原子力飛行機」を検索してみてください。
    外気を取り入れ、ダクト内の炉心で加熱(=炉心の冷却)して噴出することによる「原子力エンジン」の試作実物の写真があります。
    要は、この「炉心」を熱源としてラジエータコアに置き換えたものがマスタングに代表されるような「ダクトラジエータ」効果です。
    推力はゼロに近いとも言われますが、逆に、冷却器の抵抗をゼロ近く(プラスの推力がある、と言う説もある)できるというひとつの傍証です。


    2.の通りすがり

  7. >6.
    ネタですが、そのエンヂンを積んだ究極の馬鹿兵器「無人巡航爆撃機プルート」ってのがありましたな。
    一次冷却エアで放射能撒き散らし放題に敵国の上空をマッハ3の高速でほぼ無限に飛び続けてソニックブームでも損害与えまくり、その上、水爆弾頭を最大24個も積んで落とし放題。撃墜したらその機体自体がぶっ壊れ原子炉になって降ってくるという迷惑兵器。
    開発中止になったのが人類にとって幸福だったけど、その理由が、「放射線で制御が効かなくなる恐れが大きい」っていうんだから、あめりかじんのアホアホしさ丸出しですな。
    チャチャ入れ

  8. これですなー
    http://pixiv.cc/janome-gotyou/
    >7.

  9. つまり、ガスの燃焼であろうが、ラジエーターの冷却であろうが、はたまた原子炉であろうが、とにかく熱いもので空気を膨張させて噴き出せば推進力になる・・・という理解でよいでしょうかね。
    勉強になりました。
    しかさ

  10. >9.
    大まかにはその理解で良いと思います。ただし、マスタングのラジエータの場合は推力がプラスに出ていたのか、ラジエータコアの抵抗をキャンセルする程度だったのか(これでも偉大な効果なのですが)が未だに議論になっているわけですね。
    あと、層流翼の効果についても、世界の傑作機No102「スピットファイア」で鳥養氏がマスタングとスピットファイアの比較をされてます。これ1冊で、しかさサンの疑問の大部分が解消されると思います。ちょっと高価に感じるかもしれませんが、お勧めできますよ。
    2.の通りすがり

  11. >>「それがムスタングの場合、冷却系の排気まで推力として活用・・・今に伝えられる効果は、排気のシャッターを開いている場合と閉じているときでは、時速にして五十キロほども差があったとさえ言われている。」

     ほとんど同じ表現の解説を丸メカニックNo10(1978年)の内藤一郎先生の記事で読んだことがあります。
     P-51のラジエターの開口度と最高速度の関係について、元ネタはこれでしょうか?

    Army Air Forces Material Command
    Flight Section
    Wright Field, Dayton, Ohio
    18 May 1943

    Pursuit Single Engine P-51B-1-NA AAF No. 43-12093

    Preliminary high speed and climb performance tests
    http://www.wwiiaircraftperformance.org/mustang/mustangtest.html

    ラジエターの排気フラップを少し開いた状態で最高速度を得ているのですが、閉状態に比べエンジンの出力も少し大きくなっているので、最大出力発揮のために冷却空気流量の確保が必要という見方もできますが、、、、、

    一般論として、ラジエターダクトの吸気口からの吸い込み流量が不足すると吸気口に衝突した空気の行き場がなくなりますので抵抗が増えます。

    ラジエターの熱交換のないコールド状態の試験ですが、吸気量と抵抗の関係については、NACAのレポートにいろいろな試験結果の比較が出ています。

    NACA Wartime Report L-438、L-115,L-407
    NASA TN D-8206 (Appendix A)
    (上記のレポートはここから入手できると思いますhttp://aerade.cranfield.ac.uk/reports.html)




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