230  堀越技師設計の戦闘機について質問します。堀越技師が設計した戦闘機、零戦、雷電、烈風(いずれも単発、単座)は他の単発、単座戦闘機と比べると異なる共通した特徴があると思います。
 それは垂直尾翼の形状です。ほとんどの(全てとは言いませんが)他の戦闘機が胴体尾端の上から下までが垂直尾翼であるのに対して堀越技師が設計した戦闘機では垂直尾翼が下まで行っていません。むしろ胴体が尾端まで行って、その上に垂直尾翼が乗っているというような印象です。何故、堀越技師は、このような形状を選んだのでしょうか。
二一斎

  1. 垂直尾翼が下までくるかどうかは艦上機か陸上機かでおおむね決まるように思います。艦上機を保有していたのは日米英ぐらいしかないので絶対条件ではありませんが、艦上機として設計された戦闘機に限ればラダーが胴体の上にあります。これは三点着地による衝撃回避のためではないかと思われます。三菱機の場合、尾輪を最後部に持ってくる設計になっています。グラマン機やコルセアは尾部を着艦フックの収納部として設計しています。地上機である雷電もラダーが下まできていませんが、これが堀越技師の一貫した設計思想で胴体を翼断面形状で構成することが最高としたためと思われます。逆に陸上戦闘機で胴体の上にラダー乗るタイプは紫電、雷電、イタリアのマッキ機など少数派になります。
    リム

  2. 思想という程のものでもなさそうです。
    陸軍のキ43も同じような尾部を持っています。
    BUN

  3. もう少し視野を広げればこのような形態を採用していない艦上機は歴史的にはむしろ多数派で、逆に大型機まで範囲を広げると陸上機でも少数派ではないことがわかります。そして零戦類似の尾部を持つ機体の共通項はモノコック構造です。
    堀越二郎氏の思想というよりも、全金属製モノコック構造の丸断面の胴体を採用した場合、こうした形態に持ち込むことが自然だったからなのでしょう。
    BUN

  4. 着艦する際、着艦フックを使うかどうかで尾部構造は違うのではないでしょうか。フワリと着艦できた複葉機時代のことは全く考えていませんでした。天山、流星改、彩雲が艦上機でありながらラダ−が下まできているのは説明できませんが、充分な強度があったのでしょう。
    リム

  5. 着艦フックは複葉時代の艦上機から装着されています。
    また零戦にしても尾部は取り外しても構わない構造のコーン状の一つのカバーに過ぎませんから着艦フック関係の機体強度にこの部分の形状が貢献しているとは考えれらないでしょう。
    BUN

  6. 紫電をラダーが胴体の上に乗る代表、紫電改を下まである代表として見ると陸上機の尾翼周りの優劣比較がある程度できるのではないでしょうか。陸上戦闘機は制約条件が無ければラダーは下までくるのが有効なのだと思います。陸上機を艦上機化した例はシーファイア、シーハリケーンなどあまたありますが、単純に着艦フックを付ければ出来るわけでなく紫電改の艦上機化でも後部胴体の補強がなされたと世傑には書いてありました。
    >4の天山にはラダーの下に尾輪収納部がありました。>1の胴体の上にラダーの乗る例にフィアット戦闘機、九七戦、ポリカリポフIー16などの有名機がありました。
    リム

  7. 戦闘機、急降下爆撃機などで必要となる錐もみ脱出性能については、錐もみ状態での垂直尾翼の有効面積(近似的には胴体軸に対して下60度から空気が流入した場合のに水平尾翼の陰にならない部分の大きさ)が重要となります。
    胴体、垂直尾翼を一体とするデザインでは水平尾翼から下に垂直尾翼と方向舵が露出するので、錐もみ状態での回復コントロールに有利なデザインです。
    「飛行力学の実際」(内藤子生)という本に錐もみ脱出特性判定表というチャートが記載されていますが、A5M4、D3A2は最低限、A6A5は十分、Ki-84は満足という評価になっています。このA5からA6への錐もみ脱出特性の改善は、水平尾翼と垂直尾翼の相対位置をずらすことにより実現されているようです。



  8. A5M4は96式4号艦上戦闘機、D3A2は99式艦上爆撃機、A6A5はA6M5零式艦上戦闘機の誤記のようで愛知の戦闘機ではありません。開戦68年も経つと略符号では一部のミリタリーマニヤにしか通じないのではないでしょうか。
    アラサーチャー

  9. ご指摘の通りです、原典は海軍の機体記号でしたのでそのまま 転記したつもりでしたが、A6A5はA6M5 零戦5*型の間違いです。
    D3A2は愛知99式艦上爆撃機です。三菱製ではありませんが、円錐型胴体の後部に独立した垂直尾翼ののっている例として引用いたしました。
    ki-84中島四式戦闘機「疾風」は機体後部と垂直尾翼が一体で、水平尾翼下まで垂直尾翼舵面が伸びている例として引用いたしました。
    本題に戻って、
    胴体後部を扁平にして垂直尾翼容積の足しにするというデザインは小型機によく見られますが、円形断面と独立した垂直尾翼の組み合わせにくらべ強度上のデメリット、重量上のメリットは如何ほどのものなのでしょうか?



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