297 初めて質問します。もしかりに、九七戦の後継機に審査する時、キの43が試されて、初期の評価では採用しない見込みとなりましたが、この時かりに、零戦が出て行ったら、やはり不採用となる評価だったでしょうか。
M

  1.  キ四十三について、不採用となる見込みだった事は一度もありません。
    ノモンハン事件後の武装強化と性能向上を目的とした改造作業が行われていただけで、試作の方向性としては明野飛行学校の意見に従って武装強化と高速化を狙い、機関砲搭載と二速過給器装備のハ一〇五への換装(ほぼ二型の仕様)へと向かっています。

     零戦がこれにとって代れるかを考えると、武装面では同等(陸軍では20ミリ機銃の入手が困難なので代替策が必要)ですが、発動機を零戦三二型と同等の栄二〇型に置き換える必要があります。
     そうでなければ参謀本部から遠距離戦闘機要求が出る昭和15年秋までの展開では土俵に上がれませんから、キ四十三と大して条件が変わらないことになります。

     そして、もし、万が一、零戦を陸軍で採用していたら、昭和16年4月の下川大尉の空中分解事故の原因究明とその対策に陸軍も巻き込まれることになり、昭和16年12月の開戦までに「陸軍零戦」は海軍に続いて改造作業中、という最悪の事態を迎える可能性があります。陸軍の南方侵攻作戦が計画通りに実施できないということです。

    BUN

  2.  陸軍は、キ21にしてもキ27にしても、増加試作で様々な要素を投げ込み、最初の原型とはまるで異なる形にまでこしらえあげたのち、採用、多量生産に持ち込んでいます。発動機の換装などにとどまらず、速度や運動性と関係がある主翼面積の変更なども普通にあり得ることでした。そうしたことも「その機種をどの方向に育て上げるか」という用兵側の方針如何だったわけですが。
     キ43も試作1号機以降、胴体を変更し、主翼を変更し、発動機を変更して、用兵側の要求との摺り合わせが行われています。
     この時期の陸軍機の試作は、「使える・使えない」の二択ではなく、「使えるところまでもってゆく」ものだったのです。


  3. >1

    「キ四十三について、不採用となる見込みだった事は一度もありません」
    また、ほかでは相手にされない珍説を。

    対米戦の可能性が具体化し、南方戦用に、キ48あるいはキ46よりはマシではという程度で、埃をかぶっていた機体を再検討してみただけの話をまあ。
    birds

  4. 仮にキ43が絶望視されていたのだとしたら、中島は15年度に入った頃から次期軽戦キ62の設計をいち早く始めるべきでしたが、実際にその時期に行われているのはキ43IIの研究着手なんです。キ43は速度向上を条件に続行されていたのです。


  5. ある本に「埃をかぶっていた」と書かれているのは飛行実験部に今川中佐が着任した14年12月の様子。参謀本部が南方侵攻用に遠距離戦闘機を要求したのはそれから1年弱も後のことです。それを混同しては駄目です。
    そして14年末から翌年にかけて、機体の改造と発動機換装で試作機は出入りが激しく埃を被るような暇は全くありません。試作機各機の改造作業の様子も当時航空技術研究所にあった木村昇中佐が詳細にノートを残しています。
    機体の改造と武装強化、発動機換装といった盛りだくさんのメニューをこなしていた昭和14年末から15年秋までのキ43試作機の審査状況は既に明らかになっているのです。

    BUN

  6. 皆様、いろいろと回答ありがとうございます。

    1>もし、万が一、零戦を陸軍で採用していたら、〜「陸軍零戦」は

    この場合、名称は零式戦闘機となっていたんでしょうか。どのように考えられるのでしょうか。
    M

  7. 陸軍は実際に海軍の艦上機を採用したことがあります。
    一三式艦上攻撃機ですが、この時は陸軍独自の八七式軽爆撃機の名称が与えられています。
    BUN

  8. 零式戦闘機と百式戦闘機、零式戦闘機と一式戦闘機がほとんど同じ形で共存したとしたらややこしかったかもしれませんね。
    スタン

  9. >8

    大戦中期に応急的に海軍機を陸軍に融通するのならともかく、仮にもっと早い時期から零戦を陸軍で採用する動きに向かうのだとしたら、採用されるものは零戦二一型そのもの、三二型そのものではなく、陸軍用に艤装その他を改めたものになっていたはずです。発動機ひとつとっても、栄一二型とハ25でさえ別物、栄二一型とハ115では全長が根本的に違っていたのですから。

    現実にこれにあたる例として、九七司偵と九八陸偵がありますが、九八陸偵は陸軍型をそのまま海軍で使うのではなく、陸軍の中古機であったとしてもいったんメーカーである三菱まで戻して修正作業を行う必要がありました。

    こうした場合、海軍型と陸軍型では名称上の区別をつけてやった方がややこしくないというものです。



  10. ご指摘ありがとうございます。「ややこしい」という表現はよけいでした。海軍と陸軍の作戦地域が近い場合、基地で観測員が帰還してきた戦闘機を見て機首が黒いので零戦です。斑迷彩なので百戦です。というふうに報告することになったのかと想像してしまいました。
    スタン

  11. 陸海軍機の区別はそれほどでもなく、敵か味方かの区別だけが重要だったといってもよい感じです。
    支那事変勃発直後など、内陸に派遣される海軍機に対しわざと陸軍機と同じような迷彩色で塗装させ、それをもって味方識別とすることが規定されていたりもしたようです。



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