490 「その他」の欄に書き込もうか迷ったのですが…よく航空戦記のフィクション・ノンフィクション物を読んでて急降下についての表現で「突っ込みがきく」というのと「急降下制限速度が高い」という表現が出てくるのですが、この2つは=(イコール)と思っていいのでしょうか?
私はビミョーに違う気がするのですが…。
この私の疑問について、識者の皆様わかり易く教えてください。
備後ピート

  1.  「突っ込みがいい」等の表現で「急降下時の加速が速い」という時に使われる方もおられるように思います。
    T216

  2. 設計上は、一般に運用限界速度(Vmo)の高い機体は形状抵抗が少なく、運用速度が高い分、出力の大きな推進装置を持つと考えられます。翼型・出力・形状抵抗・加速性・操縦特性などの差異によって、操縦上の体感は、さまざまに表現されるのでしょう。
    機体のシリーズでも、繊細な差異を耳にします。たとえば、Vmoがさほど高くなかった零戦でも、21型の優秀性を語る人は多いように感じます。劣速をカバーできるほどの優れた操縦性に負うところ大、と言えるでしょう。
    32型、続く22型など、翼端を50センチずつ詰めた機体は「直援に出ても突込みが利かず、助けられる命も、みすみす見逃したこと再三だった」と,
    硫黄島から、最後の一式陸攻で脱出したパイロットから聞きました。たしか坂井氏の著書にも登場した陸攻です。ただし「ヒヨコの陸攻屋だったので、館山までの航法をアドヴァイスした。あれは坂井じゃなくてオレだ」と怒っていました。ともかく、高速での押さえ込みが人力を凌駕するもので、押さえきれなかったらしいのです。翼端の捻り下げを詰めた分、ピッチアップモーメントが増大するのに、水平安定板の取り付け角を修正しなかったためでしょう。
    操縦性など物理的に語られるものと、操縦性を反映した操舵の容易さの度合いを体感で表現したものとでは、言い回しが異なる、ということです。

    前立腺隊じっちゃマン

  3. 老婆心ながら、設計急降下速度(Vd)を、急降下操作の指標と勘違いしている方もあるかと不安になりましたので補足します。
    Vdは、構造破壊に至らないように定める設計強度のための概念で、それを目指して突っ込む、なんて速度ではありません。機体姿勢・マヌーバーにかかわらず、Vmoを守らなければなりません。
    そもそも、設計運動速度(Va)を超えて過度な操舵で高Gを入れた場合、突風加重倍数を超えるタービュランスに遭遇した場合には、強度は保障されません。おおもとには、安全率という、すべての予想負荷の何倍まで耐えられるか、という係数がありますけど。零戦以前は2、零戦以降1,8というのは有名な話です。現今の飛行機は1,5で設計されています。

    前立腺隊じっちゃマン


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