737 高々度飛行向けのプロペラのデザインの基本的な考え方やその変遷についてお教えください。
把握している資料にムラがあるのはご勘弁いただきたいのですが、
ワピチ/PV3はどうも通常の木製2翅のようですが、カプロニCa.161やブリストル138Aは特製の木製4翅、Ju86P/Pは通常のもの(?)、ウェリントンVIは金属の可変4翅に見えます。ほとんどが失敗に終わった各国の与圧コクピット式高々度迎撃機ではあまり特別なことはしていないように思われますし、狙いとする最高高度が下がるからには当然かもしれませんが、大戦後半に活躍した高々度で高速が出せる機種についても、プロペラについての特記はあまり見かけたことがありません。
固定か可変か、狙う高度や速度にもよるのでしょうが、基本的なところをお教えください。

  1. 過去に似た質問がありましたが現在見られないようです。

    高高度向けのプロペラは一般的に広い翅面積が必要になります。実験機では直径を大きく取っていることが多いと思いますが、既存機の改造機では幅広の翅を使用するか、翅枚数を増やします。
    大戦後半の、全開高度が7000〜8000mに引き上げられた機種もプロペラは必ず上記の措置が取られているはずです。
    プロペラがそのままだと出力を増加しても推力に十分変換できません。
    超音速

  2. ありがとうございます。より大きい翅面積が原則、了解いたしました。
    速度、ピッチその他の諸要因との関係等含めて、もう少し詳しくお教えいただけないでしょうか?

    たとえばブリストル138Aは約4mの4翅木製固定でペガサスPE.6S 500hpに対応していますが、似たような高度を目指したスピットファイアMk.VIはマーリン47 1,100hpに対して3mぐらいでしょうか、の4翅です。果たして馬力を吸収できたのでしょうか?


  3. ブリストル138は200キロ以下、スピットは600キロ以上でしたね。同じ高高度でも性能発揮する速度域がそれだけ違えばプロペラも違うものになります。

    プロペラは大直径であれば推力発生に有利ではありますが、同じ出力なら大直径ほど低速向け、小直径なら高速向けという傾向があります。前者を極端にするとヘリコプターで後者はターボファンになると例えればわかりやすいでしょう。

    ブリストル138の巨大なプロペラは「高高度低速域でしか性能を発揮できない」と思われます。低高度域では翅面積が大きすぎでアンダーパワーとなり、空気の薄い成層圏まで上がってようやく本来の回転数で回せたのではないでしょうか。

    エンジンの全開高度は十分でも翅面積の足りないプロペラで高高度まで昇ったとすると、空気が薄くなると定速プロペラはピッチを深くして馬力を吸収しようとします。しかし各高度速度域でもっとも効率の良いピッチ角がありますのでピッチが深くなりすぎて十分推力は増えません。

    超音速

  4. 再度のご回答ありがとうございます。多少わかってきたような気がしております。比較的高速高々度の場合は、そこそこの高度の高速の場合と同じように、「羽根角を深くしても追いつかない」のが制限になる、また、枚数や幅、先端速度の限界等も、過去のたくさんのコメントの通りと。
    ただ・・・根源的な勘違いをしている気がしているのですが・・・考えるほど、高々度低速飛行がどういう状態なのかわからなくなってきてしまいました。


    1)各高度における失速速度は、空気密度の低下に反比例して高くなる。グラフなら右肩上がり。
    2)高度が高くなるにつれ、a)エンジン出力 b)プロペラが吸収できる出力 3)プロペラ先端の速度と当該高度の音速の差 がそれぞれ小さくなっていく(理想的には少なくともabは揃うとよい、パワーゆとりがあるのならabcが揃うと良い)ので、到達できる速度が(2速全開高度=通常表記される最高速度が出る高度に比べて)下がっていく。グラフなら右肩下がり。
    3) (1)と(2) の線が交わる高度が上昇限度になる。

    と、とりあえず理解しました。
    スピットMk.VIならば、着速135km/hが、たとえば空気密度が約1/4になる12000mでは約480km/hになる。最高速650km/h @7000mぐらいが、12000mだと、480km/h前後に下がってしまい、結果、狙いの14000mには届かなかった・・・。仮にエンジン出力が足りていても、プロペラが吸収できる出力が足りず・・・

    が、最高速200km/h、到達高度15000m(空気密度1/6)の138Aについて同じ考えをすると、離陸時には大きく高ピッチのプロペラが失速しないようにエンジンを絞ってゆるゆると加速し(シュナイダー杯機のように)て離陸、2速全開は10000mあたりでしょうか、で、200km/h、それ以上昇るにつれ、過給が追いつかなくなること、与圧服に回す馬力が増大することから馬力が下がって行き、プロペラにはゆとりがあっても昇れなくなる・・・のだろうと思うのですが、

    おかしなことに、空気密度1/6の高度15000mにおける失速速度が地上における失速速度の6倍だとすると、たとえばそれぞれ、180km/hと30km/hのような変な数値になってしまいます。

    何度も恐縮ですが、私の考えのどこが間違っているのかご教示いただけないでしょうか?



  5. ブリストル138のプロペラは低ピッチ固定ではないですか?
    超音速

  6. 空気密度と失速速度を正比例させて計算しているようですが疑問があります。
    失速速度は指示大気速度(IAS)でならばどの高度でも変わりませんが、高度12000mでのIASは真大気速度(TAS)の1/2ぐらいを表示するはずです。
    したがって失速速度130キロぐらいのスピットは高度12000mでは失速速度260キロになるでしょう。
    超音速

  7. >>空気が薄くなると定速プロペラはピッチを深くして馬力を吸収しようとします。
    >>低高度域では翅面積が大きすぎでアンダーパワーとなり、空気の薄い成層圏まで上がってようやく本来の回転数で回せたのではないでしょうか。

    から類推して高ピッチ固定と考えたのですが、違うのでしょうか?
    解説いただけると幸甚です。


  8. うーん自身の書き伝える能力の不足を実感しております。
    レス3の4段落目(エンジンの全開高度は十分でも翅面積の足りないプロペラで・・・)はスピットVIのプロペラが従来のままだったらというような仮定で読んでください。定速プロペラの話ですので。
    低速域でしか使わないブリストル138のプロペラは低ピッチ固定になっているはずです。それでも低高度でこのプロペラを回すには馬力が不足であると書いたつもりです。
    超音速

  9. >4
     機体が空気の流れから受ける力を表すファクターに、(1/2)ρv^2で示される動圧が有ります。(ρ:空気密度、v:対気速度)
    揚力=(1/2)ρv^2ClSの式を見れば判るように、速度・高度(空気密度)が異なっても動圧が同じならば、機体は気流から同じ様な力を受け同じ様な挙動を示します。(Cl:揚力係数、S:翼面積)
    その典型がレス>6で触れられている失速速度で、高度が変化しても動圧の基づいて示される指示対気速度(IAS)での失速速度は変わりません。
    ですからパイロットは、真対気速度(TAS)でなく対気速度計の示すIASを頼りに飛行機を飛ばします。
    (1/2)ρv^2の式から、大気密度が1/4の場合は速度2倍で、大気密度が1/6の場合は速度√6≒2.45倍で、同様な飛行状態となる事が判ります。
    もちろん同様といっても、高度や速度によって変化するエンジン出力や空気の圧縮性など他のファクターによる影響や制約を受けます。
    プロペラについても、主翼と同様に動圧が同じならば同様な飛行状態(勿論周速度も考慮して)という話も出来ると思いますが、
    同じ吸収馬力に対して発生する推力は(プロペラ効率が一定としても)基本的に飛行速度に反比例します。
    グリーネマイヤ智久

  10. >8 何度も恐縮です。138Aの馬力とペラサイズの兼ね合いから、低ピッチという理解でよいでしょうか。
    もしもっと馬力があれば、あるいは2翅で同径、4翅でも直径小ならばやや高めのピッチが適する、と。

    >9 ご指摘ありがとうございます。速度の自乗を勘案すると138Aの失速速度は80km/h程度になりそうですから、現実的ではあります。また
    >動圧が同じならば、機体は気流から同じ様な力を受け同じ様な挙動を示します。
    このコメントもありがとうございます。高度それ自体にとらわれすぎる必要はないのですね。


  11. >もしもっと馬力があれば、あるいは2翅で同径、4翅でも直径小ならばやや高めのピッチが適する、と。
    その理解でよいと思います。もっと高速の機体にしたい場合にはそうなるでしょう、
    超音速


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