751 プロペラ効率について質問します。天山と彩雲、疾風と5式戦にみられるように地上とのクリアランスと対馬力重量とプロペラ強度が許すならば、大直径3枚プロペラの方が小直径4枚プロペラよりプロペラ効率が良いと理解していいのでしょうか?
そんな簡単なものじゃないプロペラ効率についてはほかのファクターがあるというならば、分かりやすく教えてください。
備後ピート

  1. 以前737でも回答したんですが、
    直径・翅数のほか翅面積・翅形状・ピッチ角などの選択は、高高度か低高度か、高速域か低速域かそれぞれの飛行状態で有利不利がありますので簡単に正解が出るものではないです。

    艦攻のような大型大重量の機体に加速力・上昇力を与えるためには低中速域で効率の良い大直径プロペラが必要になります。F6F・F4U・P47などの4m級プロペラの戦闘機(ここでは大ペラ組と呼びましょう)は、艦攻なみの爆弾搭載量を誇っており、大ペラの真価はここにあると思っています。
    当然脚が長くなるので重量が増し、脚を収容する翼内に大きなスペースを取り、燃料タンクなどの配置が苦しくなります。大ペラ組は胴体内に大容量タンクを置き翼内タンクを小型あるいは不要にしています。つまりもとから大型の機体を許容する設計方針でないと大直径プロペラは装備できません。翼内タンクが小さい方が被弾時に有利という面もあります。
    F4Uは逆ガル翼で脚を短くし、F6Fは後方折りたたみ、P47は伸縮オレオと長い脚をどうにか収容してますが、大ペラのため地上姿勢で重心が高くなりその分相対的にトレッド幅が狭いという共通の弱点をもっており(大雑把に言ってペラ径以上のトレッド幅が必要)このため着陸事故やグラウンドループも多いようです。もっとも米国はこれを欠点とは見なしていないようですが。

    小直径ペラは低中速で効率が悪いですが、3mペラの疾風・スピット・Bf109などの小ペラ組は機体が小型軽量にまとまっていることで小直径の不利を最小限に抑えているようです。米国もF8Fでは一回り小さなプロペラとし機体も小型にしました。

    戦闘機は水平最高速度以上の速度で飛ぶ状況があります。離脱・追跡などでの高速パワーダイブ時には800キロ以上まで加速が必要になります。艦攻は当然このような性能は不要です。
    このような高速域ではブレード先端が遷音速に達しブレードが長いほど根元やハブに大きな負荷がかかります。大径3翅なら3本でこの負荷を受け入れなければなりませんが、小径4翅ならより小さな負荷を4本で受け入れればよいことになります。小直径が高速で有利なのはこのためです。
    米国はこの点、高速域でも対応できる大ペラを製作する技術で先行したのだと思います。

    超音速

  2. 超音速様、分かりやすい解説をありがとうございます。

    世傑の「4式戦闘機 疾風」に「多少プロペラの効率が落ちても重量を軽減したい〜」の記載があり、大直径のプロペラでも3枚であれば重量はそう変わらないのではないかと思い質問した次第です。

    「重量」を単に大直径プロペラのみならず脚や機体の重量を含めたものと読み解くものと理解しました。

    備後ピート

  3. 四式戦のプロペラのことでしたら、ちょっと一言。
    世傑に書かれている「3m」のものは極初期だけで、この3000ミリ4翅というのは、3000ミリ3翅のキ四十四の基礎設計をできるだけそのままにキ八十四を作り上げてしまおうという意図からのものではなかったかと想像しています。

    しかしながら、結局、直径がこれよりも拡大され、ピッチ可変域もローピッチ側に設定し直されたものが生産機となっています。ほかでも設計が色々と変わって来ていますし、我慢する必要もなくなったのでしょう。

    ずっとのちに高高度化が企画された時には、さらなるプロペラ直径の大幅拡大と、これに見合う脚柱延長がプランされています。まさに、どういった状況で用いるかによって変わる部分なのです。


  4. 自己ツッコミします。
    1の回答に大ペラ組は皆トレッドが狭いような内容に書いてあるんですが、P47は他2機種よりずっと広いトレッドです。F6F・F4Uは主翼折り畳みするため仕方なかったんでしょうね。
    疾風のプロペラについては初耳でした。世傑の図で計ってみたらクリアランスは38〜40cmくらいあって、紫電改と同じ3.3mのものをつけても余裕はありそうですね。
    片様ご教示感謝します。
    超音速

  5. 四式戦は3500ミリというサブタイプも計画されてます。
    最終的にはキ一一七としてプロペラ直径を3600ミリにまで拡大しようとしてるんですよ。



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