780 質問775に関連してふと疑念が生じたので質問します。

零戦六〇型は特攻機仕様ということについてですが、これらの六〇型が開発された時期には日本海軍は実質太平洋上の制空権を失っており、米海軍機動部隊は日本近海で跳梁していたころと思います。

もしこれに特攻攻撃をかけるとすれば25番に加えて重い統一型増槽2本も吊るした形態では巡航速度や飛行性能に悪影響があるのではないでしょうか?
日本近海の機動部隊に対する片道特攻攻撃では胴体内燃料だけで十分ではないでしょうか?

あるいは攻撃が「空振り」に終わる事態を想定して復路の燃料も必要とされたのでしょうか?

それとも(単座機では航法がかなり苦しいでしょうが)より遠くのテニアンやウルシーなどへの基地攻撃も想定されていたのでしょうか?
備後ピート

  1. > 攻撃が「空振り」に終わる事態を想定して復路の燃料も必要とされたのでしょうか?
     特攻第1号とされている関大尉の部隊すら、最初は敵艦隊を発見できずに引き返しているんですが…。

    > 25番に加えて重い統一型増槽2本も吊るした形態では巡航速度や飛行性能に悪影響があるのではないでしょうか?
     悪影響がないわけがありませんが、マリアナでは五二型系列より非力な二一型の爆戦型が二五番と増槽を2本装備して空母から出撃していますし、レイテでも五二型系列の爆戦が空母から出撃していますので、実用上問題はなかったのでしょう。
     そもそも、敵艦隊を発見したら増槽は捨てますし。 
    T216

  2. 実例として翼下増槽懸吊で出撃したマリアナ沖海戦での三航戦戦爆隊は、敵までの距離400qで発進するという戦索に従っています。
    この場合、航続力=攻撃半径というものではなく、天候などの条件によっても変わりますが、実用上の攻撃半径は航続力の3割程度と考えられています。少なくとも1200km程度の航続力を与えておかなければならないわけです。
    しかしながら、増槽懸吊無い場合、25番爆装の零戦二一型の航続力は560qとなり、1200km程度の航続力を持たそうとするなら6番爆装となってしまいます。そこで翼下への増槽懸吊が必要となってくるわけです。
    零戦戦爆の翼下増槽懸吊は当初は改造によって行われたのですが、これを機体本来の機能として取り込もうとされます。
    こうした経緯が結果として生産機の上に現れて来たのが20年3月頃であるわけです。

    この時期は天号作戦が想定され、実行に移されようとしていた頃であり、九州南端から沖縄本島までの距離を攻撃距離内に収めようとするならば、マリアナ沖海戦当時の想定400qを大幅に上回った700q程度で考えなければならなくなっています。



  3. あ、ごめんなさい、まちがえた。
    マリアナ沖の想定攻撃半径400「浬」、25番爆装零戦二一型の航続力560「浬」、6番爆装で1200km「浬」でした。
    天号作戦の想定攻撃距離はマリアナ沖とほぼ同等ということですね。
    いずれにせよ、翼下懸吊が必要です。
    もうひとついえば、防弾タンク化した場合、攻撃可能距離はこれ以下となってしまうわけで、零戦は防弾タンク装備もままならない状況になってしまっていたのです。

    これは零戦の例ではありませんが、昭和20年2月に航空本部が試算を出した各機種の特攻機としての爆装と航続力の関係を示した一覧表では、彗星三三型は爆装「80番×1」の場合、航続力1000浬とされつつも、さらに両翼下へ爆弾を吊って「80番×1及び25番×2」とした爆装第二も想定されており、この場合は航続力300qとされています。そんなことまで考えられていたのです。



  4. 最後の「航続力300q」も「浬」です。すみません。


  5. もうひとつつけ加えておくならば・・・・・・能力的に「必要」であったからといって、必ずしも翼下懸吊が行われてされていたわけではない、ということですね。
    まあ、そういうことなのです。


  6. 零戦六二型には翼下の増槽懸吊機構がありません。
    翼下に増槽を吊っている機体があったとしても、それは他の型式と同じように後から改造されたものです。
    他の型式と同じですから「六〇型は・・・」というお話自体が成り立ちません。

    工場完成時から翼下懸吊架が設けられるようになるのは終戦直前です。
    BUN

  7. 中島製六二型の5月完成機に造り付けの翼下懸吊架が確認できるので、翼下増槽懸吊自体は少なくともこのちょっと前から実施されてたのではないかと思います。
    終戦直前の7月完成機で確認できるのは50番爆装ですね。

    いずれにしても、六〇型=翼下懸吊架装備ではなく、零戦各型を通して順次改良されていった諸点のひとつです。


  8. といいつつ、あれ?
    すみません、見間違えでした。

    翼下増槽懸吊架も確認できるのは7月完成機からでした。
    ・・・・・・まったくもって、やれやれですね。



Back