1010 みいつと申します。
初めて書き込みさせていただきます。よろしくお願いいたします。

日本軍は高高度用の過給機としては排気タービン方式を本命視していたものの、排気タービン周りの補器類や排気経路での排ガス漏れなど多くの課題を抱え、実用化に手間取ったのだと認識していますが、

全ての気筒からの排気を利用する事にこだわらず、一部の気筒のみ使うという発想ではダメなのでしょうか。

例えば空冷18気筒エンジンの場合、機体側面に左右5本ずつ10本の推力式単排気管を並べるものとし、
下部8気筒分だけの排気でタービンを回すとすれば、
気筒数を限定した分だけタービン出力は弱くなるものの、求められる耐熱・対圧力といった技術的ハードルは下がると思うのですが。

各排気管の排気抵抗に差が生じて各気筒の出力にムラが生じ、
それが異常振動の発生につながるなどの重大な問題が発生するのでしょうか。

皆様、以上よろしくお願いいたします。
みいつ

  1. 小生の知識に間違いが無ければ、ニッケル等の耐熱材料の不足が開発失敗の第1の理由です。従って、気筒数には関係ないと思います。また、なんでもかんでも高性能を要求する当時の軍人が、中途半端なことでは承服しなかったと思います。
    UK

  2. ご質問のことから、それならば全気筒をいくつかのグループに割ってそれぞれ小型の排気タービンを回す排気タービン複数装備法い思いが至りますが、「複数の小型の排気タービンは一つの大型排気タービンに比較して効率が悪い」といわれています。
    さらにその複数小型排気タービンから一部を廃した形がご質問の想定なのですから、これはやはりパワーが出なさすぎるのではないでしょうか。


  3. 実用化までこぎつけた5式戦キ100II型と100式司偵キ46IV型搭載のハ112-II-ルは、中間冷却器を排し吸気系統を簡易化しています。ハ211-III-ル搭載のキ83も同様にする予定でした。これは「技術的ハードルを下げた」ととらえることはできませんか?
    特にキ46IVは中間冷却器のかわりに水メタ噴射があります。
    超音速

  4. 質問者です。
    皆さん、ご回答ありがとうございます。いずれも大変勉強になります。

    >>UKさん、

    ニッケルの件ですが、耐熱合金が必要なのは変わらないとしても、
    排気タービンの機能を縮小した事により、耐熱の問題も若干緩和されるのではないか、
    少しでも稼働率や整備性が上がるのではないかと考えた次第でありました。言葉足らずで大変申し訳ありません。
    当事の軍人の問題ですが、これは考えてませんでした。ぜひ参考にさせていただきます。


    >>片さん

    大変参考になりました。
    片さんの説明を読んでいてふと思ったのですが、

    あえてタービンの小型化を考えないというのは無茶な考えでしょうか。というのも、
    排気タービン機は、中・低高度ではブースト過剰のためウェイストゲートより排気が何割か捨てられてしまいますが、
    もともとタービン行きの排ガス量の少ない今回の場合では、中・低高度では捨てられる排気が減少する分、
    その高度域ではかえって過給効率が上昇するという事はないでしょうか?
    (ただし過給効率が上がったとしても、タービン行き排ガス量が絶対的に少ないので過給能力はもちろん低下。)


    >>超音速さん

    今回の発想ですが、
    高高度性能に関して、P-47等のような純然たる排気タービンの搭載がベストだとわかっていても、
    材料/技術の両面において排気タービンの実用化に苦慮する日本が、
    とりあえず能力が限定的でも即戦力として使える簡略型の排気タービンを作ろうとしたらどうなるのか、
    ・・・という考えですので、例に挙げてくださったインタークーラーなし簡略版とは
    形は違えど同じコンセプトという事なのでしょう。

    質問部分で例に挙げたような排気分割方式では、エンジン下部以外の気筒の排気はそのまま外に排出されてしまうので、
    排ガスの経路が単純化されること、推力式排気管による加速・整流・冷却空気吸出し効果などが利点になるのではないかと思っております。
    逆にデメリットは排気タービンの吸気量の絶対的な不足ですね。
    みいつ

  5. おもしろいアイデアですね。

    ただ、そこまで排気タービンにこだわる理由があんまりなさそうな気がするんですよ。
    排気タービンを多用したのは米陸軍機ぐらいで、他は機械式多段過給で間に合っていたのではないでしょうか。
    じゃま

  6. 蛇足ながら2.の片さんに補足。自動車で言うツインターボ、つまり小型のタービンふたつに分ける方式は配置上の都合のほか慣性モーメントの小さい小型タービンを回すことでターボラグを小さくしたいという目的から採用されます。大型ひとつより小型複数が効率で劣るというのは、タービン/コンプレッサーはハウジング内壁との隙間から圧力が漏れ出すことにより損失が発生しますが、これが小型になるほど損失の割合が大きくなるのです。近年ではターボラグの問題はミスファイアシステムというデバイスで解決しています。
    >あえてタービンの小型化を考えないというのは無茶な考えでしょうか。
    タービンの大きさを変えずに排気利用は半分になるということですか?それだとターボラグの問題はそのままですね。
    >排気タービン機は、中・低高度ではブースト過剰のためウェイストゲートより排気が何割か捨てられてしまいますが、もともとタービン行きの排ガス量の少ない今回の場合では、中・低高度では捨てられる排気が減少する分、その高度域ではかえって過給効率が上昇するという事はないでしょうか?
    機械式過給器も全開高度以下では過剰な圧縮空気をブローオフバルブで捨てていますので、全開高度以外では過給効率が悪いというのはどの過給方式でも同じことです。
    質問者様のイメージでは、吸気が足りなくなる高高度ではどうするのかがわかりませんが、たぶん排気タービンの能力で足りない分は後段の機械式過給器を2速・3速に増速して補うということでしょうか?メリットがあるとするなら従来型よりは過給器駆動のための馬力損失が減るかな?というところだと思います。
    あともしかして誤解しているかもしれないのですが、排気タービンを経た排気ガスは推力に利用できないわけではありません。コンベアB36では排気ガスは2段式タービンを通過した後、可変面積式ノズルによってさらに推力として利用しています。
    高度なシステムに挑戦してうまくいかないから従来型と組み合わせて実用化を優先するというのはよくある方向性ではあります。このシステムは高度な技術が実用化するまでの中継ぎとして役立つ場合もありますが、悪くすると中途半端という立場になるのです。
    以上長文失礼しました。

    超音速

  7. 一部の気筒だけ背圧が大きいために不均衡回転になってしまうのではないか、ということはやはり思います。
    こうしたことを提案されたらおそらく当時の人もそう思ったでしょうし、そこで基礎的にさかのぼって実験を行わなければならなかったでしょう。
    当時の技術者たちの反省の多くは、基礎的な実験に費やす時間がなかったことで占められています。排気タービン回りついても同様です。
    その時間があるのなら、排ガスの圧力抜けのシールに使ってもよいのかもしれません。

    >6でじゃまさんが指摘しておられることにも一理あって、日本の航空発動機の高高度性能向上は、
    「フルカン継手」→「排気タービン」→「機械式多段過給機」
    というふうに開発の軸が推移しています。
    フルカン継手がうまく進展しなかったので排気タービンに手をつけてみたけれど、やっぱり機械式に中心を置く方向で行こう、と方針が変わっていたのです。



  8. 質問者です。

    >>機械式過給器も全開高度以下では過剰な圧縮空気をブローオフバルブで捨てていますので、
     全開高度以外では過給効率が悪いというのはどの過給方式でも同じことです。

    ・・・そうでしたorz
    中高度での過給効果は、エンジン側の2つの過給能力のピーク(1段2速過給器)を埋めてくれるぐらいでしょう。

    それから気筒背圧の問題ですが、
    タービン行き気筒の背圧は、ウェイストゲートからの排気の放出比率によって飛行中に大きく変わりますね。
    それこそウェイストゲートで分けられて捨てられる排気の放出口をかなり絞れば改善はされるでしょうが、
    求められる耐熱性/耐圧力性が増大するので耐熱材料の節約というメリットが消し飛ぶし、
    それに加えて単排気管部分の排気出口も絞って背圧を調整しないといけない等、
    一般的な排気タービンを開発する以上に余計な研究を要する可能性が大きいですね。
    普通に機械式多段過給機に取り組んだほうがよいという考えにも頷けます。


    皆さん、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
    大変勉強になりました。
    みいつ

  9.  下側とか上側とか、星形エンジンの取り付け位置でグループ分けして、そのグループごとに排気を利用するかどうかで考えるから気筒ごとの背圧の違いがバランスを崩してしまうのなら、いっそエンジンの前列と後列で分けたほうが良いのでは?

     もっとも、そこまでやるくらいなら全気筒の排気をタービンに回して、気筒〜タービン間で排気を冷却したほうがよほどマシなエンジンになると思いますが・・・
    おうる

  10. なるほど、それも面白いですね。
    やるとしたら前列を推力式排気管、後列を排気タービン接続といったところでしょうか。

    まあ、面白いのと役に立つかは別ですが、そこからまた別の発想が生まれるかもしれません。
    みいつ

  11. 日本の排気タービン試作で不具合が多発したのは代用材料が原因ではありません。
    試作タービンは代用材料を使っていないからです。

    BUN

  12. 1の追加です。
    航空機の2051を参照願います。
    理論がどうだ、法律がどうだ等のことはどうでも良い。ともかく、実際に、あるいは大(多)量に製造しようとしたら、材料がなかった。設備もなかった。
    また、御質問の場合、使う軍人にそんな低性能では駄目といわれればそれまで。ともかく、スピードは出せ、旋回性は良好、航続距離は長い等々の要求が厳しすぎる。

    UK

  13.  単排気管だって一部は集合になってるし、それ以前の集合管は気筒ごとに排気口までの距離はバラバラですし、吸気だって不均衡なんですから、排気タービンの有無で背圧が違う程度の差は他の差異の中に埋没して少し振動が多い程度の話になるかと。
     問題は排気を半分しか使わなくても、必要とされる配管は殆ど変わらないという点です。タービンの出力が略半分で場所や重量は全部使うのとあまり変わらないのではやるだけ無駄なのではないでしょうか。
    >8
     大抵の機械式過給器では吸気は基本的に捨ててません。スロットルバルブの開度で吸気圧をコントロールします。

    SUDO

  14. >12 実際に大量生産していないし、代用材料も使っていないものについて何をおっしゃるんですか。
    BUN

  15. 14>>を主として、他の回答者にも。
    質問は、一部の気筒の排気を利用するのみでは駄目だったのかです。
    小生はその回答をしています。
    重ねて説明(回答)しますが、全部利用であろうが、一部利用であろうが、ともかく排気加給機を大量生産する以前の問題として、(当時の我国の技術水準、資源等を考えれば当然のことですが)そのための資材、材料、設備が無く、さらには開発や製造に従事する人も充分にはいなかったことです。なお、小生は、代用材料の使用については何も言っていません。また、実用化の遅れについて説明しています。
    また、開発の遅れ、実用化の遅れ等については、排気加給機のみならず殆ど全てにいえます。
    UK

  16. 13.>大抵の機械式過給器では吸気は基本的に捨ててません。スロットルバルブの開度で吸気圧をコントロールします。
    違うんですか?確かに過給器より上流に気化器が配置される場合はわかるんですけど、過去ログ航空機1876・2267・3554等には余剰の空気は捨てているとの記述があるのですが。
    改めて過去ログを見ると6.でブローオフバルブと書いたのはリリーフバルブのが適当でしたね。それはともかく私基本を誤解してるんでしょうか?

    超音速

  17. >16
     リリーフバルブは備えてますよ。溢れちゃったら捨てるけど、溢れないようにスロットルで制限するのが基本なんです。
    SUDO

  18. 理解しました。急に出力を下げたときに作動するんですね。
    超音速

  19. 皆さんの意見を拝読させて頂きました。
    どうしても排気を推力式排気管とターボに分けたいなら、
    排気はターボをメインに接続して、一部を整流用に回すぐらいが丁度いいかもしれませんね。
    まともなターボを作れるのなら、の話ですが。

    みいつ

  20. 補足です、整流というのは機体回りの乱流発生抑制、
    例えば5式戦の機首整形のような考え方です。
    5
    みいつ


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