1080 航空機に関する知見は、同じ国のメーカー間で常に共有されてきたのでしょうか?

例えばアメリカで、
水平尾翼の位置について、ディープストール対策で上に逃がして、次に主翼より下に持って行って解決をはかったとの事ですが、
F−100、F−8、F11Fなどは、主翼よりやや低い位置に水平尾翼がありますよね。
しかしその後も、主翼より上に水平尾翼がある機体が続いていたのは、
"ディープストール対策には主翼より下に水平尾翼をもってくるといい"という知見が各メーカー間で共有されていなかったからなのかと思ったのですが、どうなのでしょうか?

他にも、ショックコーンやエリアルールなどの知見は、発見されてすぐに各メーカー間で情報を共有したのでしょうか?

各メーカー間での知見や情報の共有について、お詳しい方がおられましたら、どうぞご教授ください。
たーぼふぁん

  1. 質問の補足です。
    "しかしその後も、主翼より上に水平尾翼がある機体が続いていたのは”
    というのは、具体的には例えばF−4の事です。
    wikiのF−4の項目では、水平尾翼に下反角をつけて対応したという説明の後に、
    "その後の研究で、主翼を尾翼より上に配置すれば、ピッチアップは防止できる事が判明した"
    と書かれてあるのですが、その補足に"F−4より先行して開発・配備されているF−100戦闘機は主翼位置が尾翼より高く、前後に開発された多くの機体が悩まされたピッチアップの問題とは無縁であった"と書いてあるのですが、F−100の時点で分かっていた事なのに、"その後の研究"って一体・・・。

    これはノースアメリカンが他社に教えず、知見の共有がなされていなかったという事かな、と思い、質問させていただきました。

    (余談ですが、もし、ノースアメリカンが、判明した時点ですぐに他社と共有していれば、F−104なども低い位置に水平尾翼持ってきて、もっと良い戦闘機になったのでしょうか?)
    たーぼふぁん

  2. 1940年代末からNACAは超音速機の実験を進め、蓄積されたデータはとうぜん超音速機を開発する各メーカーに提供されます。代表的な例が1952年公表されたエリアルールです。
    ノースアメリカンF-100はピッチアップ問題はありませんでしたが、1954年ロールイナーシャカップリングという現象で墜落事故を起こしました。原因がわかり対策は垂直尾翼面積と強度とされると、ただちに全メーカーに設計見直しが要求されました。
    マクダネル機の特徴であるビーバーテイルは尾翼位置を後方に持っていって安定性を確保する手法であるのでロールイナーシャ問題に対しては有利であったのです。主車輪接地時の引き起こし角も大きく取れるという利点もあります。ロッキードF-104もビーバーテイルではないにしろやはり尾翼後端を排気口より後ろに張り出して少しでも空力中心を後方にしようとしてます。
    F-100の水平尾翼位置はYF-86Dの実験によって決められ、1952年にモックアップ審査に出されていますので各メーカーとも考えはあったはずですが、このように安定性のほうが重視されたのです。グラマンF11FはF-100より後発のものなので参考にしたのでしょう。リパブリックF-105・チャンスボートF8Uも同じですね。1952年時点でのロッキードの設計案L-242のなかにも、後のF-16のような主翼と水平尾翼が同じ高さに並んでいる構成がみられます。
    F-104が風洞テストでピッチアップ問題が起きたときは水平尾翼位置の変更という考えはすぐに浮かんだと思いますが、やはり前述の利点を捨てることになるので、試行錯誤の結果コンピューターによる操縦装置介入でのピッチアップ防止という策を取ります。最終的にはCL-1200ランサーで水平尾翼を下に移動してますね。
    F-4はF3Dから発展してきた物なので水平尾翼位置もそのまま引き継いだのですが、T字型尾翼としたF-101と形状が分かれたのは、翼面荷重の違いが関係するかもしれません。F3Dはエンジン問題で苦しみましたが、低翼面荷重が幸いしたのかピッチアップ問題はなかったようです。

    F-104の特長であるショックコーン付きインテークは「スカンクワークス最大の秘密」とされカバーで隠された写真が有名ですが、1954年に完成したXF-104の時にはまだついておらず1956年のYF-104Aになってから採用されます。ロッキードだけで秘密にしたわけではないのは同じく1956年初飛行のコンベアXB-58に最初からついていることからわかります。
    一方で、形になった技術はNACAなどを通して知ることができるものの、モノになるかわからない設計手法などは各社とも秘密にする傾向もあると思います。
    1952年のリパブリックF-105Aの計画書に描かれたイラストは、機首が丸みを帯びていてどう見ても超音速機らしくないため、自社の技術レベルを秘匿するためあえて不自然なイラストにしたのではという見方もできます。
    超音速

  3. 超音速さま>
    どうもありがとうございます!
    とても詳しく教えていただき感謝いたします!

    ご教授いただいた事について新たに質問があります。大変恐縮ですが宜しければお答えいただければありがたいです。

    @F−100で問題となったロールイナーシャカップリングの問題は、以降の戦闘機では一切問題とはならなっかたのでしょうか?

    A自社で開発した技術を各社で共有する際、開発したメーカーには何らかの利益がもたらされたのでしょうか?

    B現在のステルス技術に関しても、アメリカの軍用機メーカー各社の間で、同一水準の知見を共有していると考えてよいのでしょうか?

    (あと、すみません。誤字かと思われますが一応確認させてください。F3Dと書かれてあるのはF3Hの事ですよね?)
    たーぼふぁん

  4. F3D→F3H
    そうですね。失礼しました。

    超音速

  5. ロールイナーシャカップリングの対策としてF-100は垂直尾翼増積・主翼端を延長、他の機も同じく垂直尾翼増積・ベントラルフィン装着などが行われました。しかし以降は一切問題にならなかったというわけではなく、
    F-101は高いGをかけながらロールすると片翼が失速しロールが止まらなくなりロールイナーシャカップリングに陥る悪癖がありました。このため360度ロール禁止という操縦制限がかけられました。

    超音速


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