1082 大戦中の航空機用エンジンの中間冷却機付き二段二束過給機について興味を持っています。その代表例としてまずP&WのR2800ダブル・ワスプについて以下の基本的なこと知りたいと思います。
1、一段目二段目の作動領域(高度)はどのようになっているのか。
2、代表例としてF4U1Dコルセアの過給機に至る吸気システムレイアウトはどのようになっているのか。
機体のエンジン吸気取り入れ口及びエンジンまでのダクト・レイアウト、中間冷却器冷却風取り入れ口及び冷却機までのダクト・レイアウト、オイルクーラー冷却風取り入れ口、中間冷却器装備位置等・・・。
よろしくお願いいたします。
飛行機猫

  1. 1段目は高度に関係なく常時作動。
    2段目は機種、飛行条件によって異なりますが、概ね15000ft以上で1速、20000ft以上で2速です。

    詳しくは"f4u super charger"で画像ググって下さい。エンジン フライト チャートと吸気システムが見つかります。
    三角野郎

  2. 三角野郎様 早速回答有り難うございます。
    @作動領域よくわかりました。これでは20000ft以上の高空ではたとえ誉搭載の4式戦や紫電改でも空戦が不利になることが良くわかりました。しかし低空では2段目の過給機や中間冷却機はデッドウェイトになりますので、低空ではやはり日本機の方が有利かなと思います。
    A2段2速過給機技術は日本ではあまり注目されていないように思いますが、P51A→P51B、スピットファイアmk5→mk9、Fw190D→Ta152Hなどに見るように高空での特に最高速度性能の向上に顕著な効果がある技術のようにも思えます。なぜ日本はこの技術にもう少し注力しなかったのだろうかとも思います。ターボ過給よりも技術難易度は低いのではないかとも思います。何がネックだったのでしょうか。
    B一段フルカン継手の過給機搭載の飛燕が比較的航空性能が良かったこと、一段二速過給機付きのFw190Aよりも一段フルカン継手付きのMe109の方が航空性能が良かったこともエンジンの本体の技術ではなくて、過給機の技術によるものだということでしょうか。
    C日本にも2段過給機付きの試作エンジンがいくつかありますが、中間冷却器の搭載をどのように考えていたのかも興味深いところです。またTa152Hに中間冷却機は搭載されていたのかも興味深いところです。
    DF4Uの過給システムはググっていますが、まだ良いものが見つかりません。もう一頑張りしてみます。
    有り難うございました。

    飛行機猫

  3. 誤記訂正 誤 航空性能→ 正 高空性能
    飛行機猫

  4. >>A「2段2速過給機技術は日本ではあまり注目されていないように思いますが、(中略)なぜ日本はこの技術にもう少し注力しなかったのだろうか」
    自分も似たような疑問を持ちまして、以前ここで質問をしたことがあります。
    そして次のような回答を得ました。
    『「フルカン継手」→「排気タービン」→「機械式多段過給機」というふうに開発の軸が推移しています。
    フルカン継手がうまく進展しなかったので排気タービンに手をつけてみたけれど、やっぱり機械式に中心を置く方向で行こう、と方針が変わっていたのです。」』
    (以上、引用終わり。回答してくれた皆様方、改めて感謝致します)

    >>C
    日本のターボ搭載機なんかは、中間冷却機を搭載せず水メタ噴射装置で代用なんてものもありますね。
    他は知りません、ごめんなさい^^;

    Ta152H-1の場合、ウィキペディアには「エンジンはJumo213EB」とありますが、
    自分が持っている本(※)には「Jumo213E-1」とあります。
    どちらが正しいのかは知りませんが、いずれにしてもアフタークーラーが搭載されていたのだろうと思います。
    参考までに、過去ログです。http://www.warbirds.jp/ansq/11/A2002942.html


    (※:フラッペ&ローラン著「フォッケウルフFw190 その開発と戦歴」日本語訳 451ページ)
    みいつ

  5. みいつさん
    貴重な情報有り難うございます。
    @日本の過給機開発の流れが良くわかりました。1段2速過給機の実用化の後、フルカンに行ってしまったのがちょっと道を誤ったのでしょうか?正攻法で2段2速過給機へ向かうべきだった?結局終戦までにフルカン継手駆動過給機はハ40系(アツタ系)のものしか実用化できなかった?のですから、もっと早く見切りをつけておくべきだったのではないか・・・などとも思いました。(フルカン式は終戦まで開発をしていたようです。例 震電)
    A排気タービンは大戦中はアメリカしか実用化できなかった技術で、特に耐熱材料技術と資源の問題がありますので、当時の日本には無理な技術だったと思います。
    BTa152Hの例などを見ても離昇1700ps程度のエンジンに2段3速過給機を組み合わせることで、あれだけの高空性能が実現できるのですから、日本も手堅くこちらの道を進んでおればと思いました。(もっともドイツもフルカンと、ターボの試行錯誤の末たどり着いた技術ですが・・・)
    C2段2速方式のメリットは、機体設計に与える影響がターボ過給より少ないという点にあるのではないでしょうか。たとえば2段2速過給機付き(w/水冷式中間冷却機)のマーリン60系列はP51Bに大幅な性能向上をもたらしましたが、機体側の改修は、2段過給機の増設に伴うエンジン全長増加分をクリアするために機首部を数10センチ延長することと、水冷インタークーラーの放熱用に、ラジエター部を大型化するだけで済んでいます。P51A→P51Bの機体側の変化はそれだけです。これがターボ過給にするとそうは行かないわけです。
    Dそれからしますと烈風改などもターボ過給器ではなくてTa152Hと同程度の2段2速ないしは3速過給機を搭載しておれば、最小の機体改修で、高空性能はターボに多少劣ったとしても、かなりの高空性能を持った機体になったのではないかと・・・妄想したりもいたします。
    ETa152Hはおっしゃるように水冷式インタークーラーを搭載しているようですね。過給機は機械式の2段3速のようですね。過去ログにあったモデルアート社のTa152の解説本(野原茂氏著)のP103にJumo213Eの冷却液循環システム図がありますが、過去ログでは6の箱型気流冷却機がインタークーラではないかとされていますが、3の熱交換器がそれである可能性もあるのではないかと思います。どうでしょうか。それにしてもエンジン冷却とオイル冷却とインタークーラー放熱を機首の環状ラジエター部だけで全て行う設計は優れていると思いました。しかしJumo213Eは過給機が横置きですから、それを2段式にするとその部分の幅が増えてしまうのではないかと・・・。その辺りがどうなっているのかも興味深いところです。
    ずいぶんと無駄話をしました。楽しい情報をありがとうございました。
    飛行機猫

  6. 間違いました。Jumo213Eの冷却液循環システム図の中の3がインタークーラーである可能性があるとしましたが、正確には水冷式インタークーラー放熱用熱交換器である可能性があるということです。でもよく考えてみますとこれはオイル冷却用の熱交換器である可能性もあるような。するとやはり6の箱型気流冷却機がインタークーラーということなのでしょう。すみません。
    飛行機猫

  7. 日本やドイツの事は分りませんが、コルセアのエンジン・チャートはこちら
    http://i285.photobucket.com/albums/ll68/Kristoff777/WEp2.png

    吸気システム図はこちらです。
    http://i119.photobucket.com/albums/o152/formicarufa/f4u-4inductionsystem800X600.jpg
    http://i119.photobucket.com/albums/o152/formicarufa/indsys.jpg
    三角野郎

  8. 三角野郎さん
    @貴重な資料有り難うございます。私もググってみたのですが、良いものが見つかりませんでしたので、大変感謝です。初めてコルセアと言いますか、R−2800ダブル・ワスプの二段二速過給システムの構成が分かりました。空冷インタークーラーが左右二つあるのですね。翼付け根の開口部がエンジン吸気、インタークーラー冷却風、そしておそらくオイルクーラー冷却風の全てを取り入れていることも分かりました。
    Aシステム的には一段過給機(副過給機)/インタークーラー/気化器/二段過給器(主過給機)/エンジン吸気管という構成のようですね。ただ低空で副過給機が作動していない時は、副過給機とインタークーラーをバイパスするような仕掛けもあるような記述がありますね。かなり複雑なシステムのようです。
    Bググっている最中にマーリン60系のカッタウェイ図を入手しました。こちらの方は気化器/一段過給機/過給機ハウジング水冷による予備冷却/二段過給器/水冷インタークーラー/エンジン吸気管というシステム構成で、コルセアのものとはかなり異なっていました。バイパス系も持っていないようですが、水冷インタークーラー(エンジン後部、過給機上部に搭載)も含めて非常にコンパクトにまとまっている印象を受けました。P51Bの成功に寄与したことが良くわかります。
    C同じシステムを搭載したF6Fなどは技術的には平凡な機体に見られることがあるようですが、ことエンジン技術に関しては、一段二速過給機しか持たない同時代の疾風や紫電改、烈風、などを凌いでいたことがあらためて良くわかりました。やはり今もそうですが当時も米国の航空用エンジン技術は大したものだと思いました。
    色々と有り難うございました。
    飛行機猫

  9. B多段過給器でいちばんむずかしいのは中間冷却器なんですよ。

    ああいう熱交換器はすごくかさばるし、重い。
    コンパクトにまとめて機体に収めるのはとてもむずかしい。

    熱交換器は地味な分野ですけど、ちゃんとやらないと。

    だから日本はダメなんで、三式戦が半田付けに泣かされたとか、
    そんなレベルで多段過給なんかできるわけがないと思います。
    じゃま

  10. じゃまさん
    応答有り難うございます。
    @中間冷却器の技術は少なくとも当時は意外と難しかったのですね。確かに中間冷却器は戦時中は実用化できませんでしたし、試作機に関しても、中間冷却器を搭載して飛行までこぎつけた機体として可能性があるのは、手元の資料をざっとめくった限りではki74,ki83あたりでしょうか。それも簡単な透視図にそれらしきものが書かれているということで、計画だけなのか実機に搭載されていたのかはわかりません。ただki83は量産型は、中間冷却器は省略して、水メタ噴射で吸気冷却を行うものにしたとの記述もありますので、中間冷却器はあまり期待していなかったのかもしれません。ki46IVも同様に、世界の傑作器には水メタ噴射で中間冷却器を廃止して軽量簡素化を図ったとありました。みいつさんが御指摘されていたように、吸気冷却は差し当たり水メタ噴射の方向に流れたように見えますね。
    Aコルセアの空冷式中間冷却器もとてもうまくまとめられているように見えますが、マーリン60系の水冷中間冷却器は、いっそうコンパクトで優れた設計に思えます。方やこのようなものを、何千機も生産し、方や飛燕の冷却器の半田ずけに泣かされるということでは、勝負あったということでしょうか。エンジンの本体以上に補機類の技術水準にも大きなギャップがあったのかもしれませんね。
    飛行機猫


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