1107 中島誉21型(ハ45・11/NK9H)の運転制限についての質問です。推論でも結構ですので色々御意見を承りたいと思います。

1、運転制限の内容は、以下のように最大ブースと圧と最高回転数を誉11型(ハ45・11NK9B)相当にするという理解でよいのでしょうか?
NK9H NK9B
離昇ps/rpm/mmhg/m 2000/3000/500/0 1800/2900/400/0
公称 1860/3000/350/1750 1650/2900/250/2000
公称 1620/3000/350/6100 1460/2900/250/5700
酣燈社 中島飛行機エンジン史より

2、それぞれの額面性能を保証するガソリン・オクタン価はいくらなのでしょうか。
3、以上はいつごろから、だれがどのような形(たとえば操縦者へのマニュアル指示のみor機構的な変更を含むもの・・・等)で実施・管理されたものなのでしょうか?
4、それはいついかなる対策によって解除されたものなのでしょうか。つまり終戦までに誉21型は運転制限が解除されて実戦に供されることはあったのでしょうか?


飛行機猫

  1. すみません。データがうまく表示されませんでしたので打ち直しました。
    NK9H
    離昇ps/rpm/mmhg/m 2000/3000/500/0
    公称ps/rpm/mmhg/m 1860/3000/350/1750
    公称ps/rpm/mmhg/m 1620/3000/350/6100

    NK9B
    離昇ps/rpm/mmhg/m 1800/2900/400/0
    公称ps/rpm/mmhg/m 1650/2900/250/2000
    公称ps/rpm/mmhg/m 1460/2900/250/5700

    酣燈社 中島飛行機エンジン史より

    飛行機猫

  2. オクタン価の問題じゃないんですよ。分溜性状の問題。
    「これから実戦なので戦時規格の航空91ではなく、航空92を供給してくれ」といった要求が出て来るのはこうした理由です。
    同じオクタン価だけれども92の方が高ブースト高回転で運転できたということです。

    BUN

  3. 2>
    通りすがりですが、BUN様に燃料の「分溜性状の問題」について、もう少し詳しく解説して頂けますと幸いです。
    ググってみたのですが、意外と分かりやすく解説した所がありませんでしたので。
    瀬戸の住人

  4. ガソリンの気化しやすさが違うので、気化しにくい燃料はオクタン価が高くても混合気分配が不均等になりやすく不具合が起きるということです。
    これは日本だけではなく戦時のアメリカの高オクタン価燃料でも発生しています。
    BUN

  5. 完全な横入りです。もし、質問が不適切なら削除してください。
    BUN様、ナチスドイツのC3燃料などかなり分溜性状が悪そうな気がするのですが、やはり燃料噴射が有効だったのでしょうか?どうか、無知な人間にご教授下さいませ。


  6. だいたいそんなものだと思います。誉は燃料噴射装置の追加で運転制限を解除する計画でしたから。
    BUN

  7. 皆様、特にBUN様コメントをありがとうございます。
    同一のオクタン価でも分流性状が違うと、気化しやすさが違うので、燃料の気筒分配特性が違ってきて、エンジンの出力性能をはじめ、エンジンの運転状態に様々な影響が出てくる。その通りだと思います。
     しかし何れにしましても、誉の出力低下問題を扱うには、まず誉11型、21型の上記のカタログ出力を保証する(オクタン価も含めて)燃料規格を確認しておく必要があるのではないかと思います。旧軍の燃料規格にどのようなものがあったのかは当方全く知識が無いのですが、たとえば航空91とか92と言うのがあったということですね。それであれば旧軍の燃料規格は何種類くらいあって、その中でどの規格の燃料がカタログ出力を保証する燃料なのか・・・、また他に併用が許可されていた燃料規格があるのか・・・(例えば高空91と92の併用が許可されていたとか・・・)その辺りの事情はどのようになっていたのか、ご存じであればご教唆くださればと思います。
    飛行機猫

  8. 誉に搭載が予定された低圧燃料噴射システムは確か過給機前に噴射するシングルポイント・インジェクションですね?それで私はマルチポイント・インジェクションならいざ知らず、どうしてシングル・ポイント・インジェクションが、燃料分配問題に有効なのか良く分かりませんでしたが、結局分溜性状の問題があったということなのですね・・・。
     というか結局誉は、14気筒の栄など従来のエンジンに比べて燃料分配特性が悪いと言うことか、もしくは燃料(空燃比)の気筒間ばらつきに対して、従来のエンジンに比べて高ブースト、高回転ですから、ノッキングに対するマージンが少ないと言うようなことがあったのかもしれませんですね。それで分溜性状の悪い燃料に対して敏感だったと・・・。
     それで結局は誉の運転制限は、分溜性状の悪い燃料に対する対策であって、その解除は、分溜性状の良い燃料を使用するか、低圧燃料噴射式の誉23型によるしかなかったと・・・そういうことになるのでしょうか・・・。
    飛行機猫

  9. 誉/ハ四十五は18年前半には+350mm、3000回転で回せています。
    18年後半の晩秋から冬に入ると水メタノール噴射が調整困難となって、運転制限が課せられるようになり、+250mm、2900回転を限度とされます。これは取説の類の文書が「このように使うこと」として回される形で行われています。
    この時期にすでに燃料噴射は翼車への噴射が行われようとしていましたが、実験でうまくいかず、いったん過給機手前の中央噴射で実験しなおすことになり、さらに再度翼車噴射に戻してこれをもって解決に至ろうとされています。要するに難航しています。


  10. BUN様、片様、ご教示ありがとうございます。

    結論めいた内容になりますが、誉の運転制限に関する問題は、単に燃料のオクタン価だけではなく、燃料の気化しやすさの違いによる混合気分配の問題に加えて、ノッキング対策に使っていた水メタノールが気温によって調整しにくい(これは氷結の問題でしょうか)点も関係する複雑な問題であり、誉用に開発されていた低圧燃料噴射装置も開発困難で戦局にほぼ間に合わなかったと言う認識でよろしいでしょうか。
    瀬戸の住人

  11. 片様コメントありがとうございます。
    今更ながらですが誉の運転制限をはじめ性能低下問題はややこしい問題ですね。
    @S18末辺りから運転制限が課せられたとのことですね。それからしますとki84装備の22戦隊の編成がS19初頭ですから、ki84は最初から運転制限下で実戦配備になったということですね。
    A先ほど学研の歴史群像太平洋戦史24巻 紫電改P170を見てみましたらS20、1月発行の試製紫電改操縦参考書に運転使用制限の項目があり以下記されていました。
    公称 30分以内2900rpm 250mmhg
    離昇 一分以内2900rpm 400mmhg
    既出の数値と微妙に違いますが、少なくともS20初頭までは運転制限が続いていたことがわかりました。それからしますとki84は少なくともS19年いっぱいは本領が発揮できなかったと・・・それがki84の意外な低評価に関係しているのかもしれないと思いました・・・。
    BまたP169には筒温上昇対策として3種の対策が記されていますので、この時点でもなお燃料分配問題は解決していなかったようですね。
    C水メタノール噴射システムの分配不良はいわゆるスリンガー噴射で解決を見たという記事をどこかで読んだ記憶があるのですが・・・どうでしょうか?しかし燃料分配不良は、なお残る・・・。
    飛行機猫

  12. 訂正です。
    BまたP169には筒温上昇対策として3種の燃料及び水メタノール分配対策が記されていますので、この時点でもなお分配問題は解決していなかったようですね。(内一つの対策はスリンガー噴射?)
    飛行機猫

  13. >11 19年3月、キ八十四を部隊に編成して外地に出すために、四式戦闘機として制式化するのと同時に正式な取説を作っているのですが、そこに「特に今後指示せらるる迄は「ハ45特」並(+250ミリ、2900回転)に制限使用す」と指示されています。
    もしろ22戦隊の編成に合せて明文化された感じです。


  14. 片様 ズバリの資料有り難うございます。結局運転制限は、マニュアル指示だと言うことですね。パイロットはちゃんと守れただろうか・・・。厳しい空戦の最中に規定が守れずエンジンを壊してしまうパイロットもいたかもしれないなと、ふと思いました。
     この後誉は、確か工場でシリンダーヘッド?吸気ポートの中子の型崩れが生じてポート形状の異常品が出荷されてしまいエンジン出力低下をさらに招くという不具合が発生するわけですね。だからそれからしますとS19年内は、離昇1800hpをさらに下回る誉21が市場と言いますか現地部隊に出回ってしまうということが、やっぱり実際に起きているわけですね。
    飛行機猫

  15. >9 それは水噴射の話ですね。スリンガーで翼車噴射を検討するのはもっと後、20年頃です。

    >14 誉の工作不良問題は生産が上がり始めた19年前半に発生していますが、これは多摩製作所と武蔵野製作所の合同による混乱と見て良いようで、急速に改善策が打たれ、19年6月の紫電に関する報告では誉の不具合は解決しつつある、とされています。これは2000馬力出るようになったという報告ではなく、初期不良が何とか落ち着いた、という意味です。
    BUN

  16. BUN様コメント有り難うございます。
    >9私がどうも燃料の翼車内噴射を水メタの翼車内噴射と取り違えていたようですね。よく読むと片様は燃料の翼車内噴射テストのことを言われていますね。それに対しBUN様の御指摘は燃料の翼車内噴射テストはS20ころからだという御指摘ですね。よく分かりました。ひょっとするとそれは低圧燃料噴射システムの噴射位置検討テストとして実施されたものなのかも・・・と思いましたがどうなのでしょうか。と言うのは気化器での翼車内噴射は難しいのではないかと思ったからです・・・。
    >14吸気ポートの型崩れ等は初期不具合で、それはS19半ばには改善されたと言うことですね。被害もあまり拡大せず済んだと言うことですね。よく分かりました。有り難うございます。
    飛行機猫

  17. 皆様色々と有り難うございます。誉の運転制限については、かなりのことが分かった気がして感謝しています。以下自分なりに学んだことをまとめてみました。裏付けになる資料の無い推論が多くありますが・・・一応今ある知見の範囲でまとめました。

    @誉は当初設計オクタン価100で開発が進められて、S16の初号機も100オクタンで離昇1800hp/350mmhg/2900rpmを達成した。
    Aその直後S16末の開戦と前後して、軍から設計オクタン価を91〜88として開発するように設計変更を求められた。
    Bこの設計オクタン価低減による出力低下を、水メタ噴射システム導入等により補い、誉11型で(おそらく)設計オクタン価92で1800hp/350mmhg/2900rpmを達成し、量産に入る。
    Cその後、同じ92オクタンで、ブースト圧を500mmhg、最高回転数3000rpmとして離昇2000hpを達成して、誉21型として量産(準備)に入る。
    Dしかしこの頃から出力増加によるノッキン・グマージンの減少、燃料流量増加、分溜性状の劣る燃料使用による燃料気化状態の悪化、ki84試作機等の飛行試験による拡大評価等によって燃料分配不良の問題が、筒温上昇の問題となって顕在化する。また同時に水メタの分配不良の問題も顕在化する。
    Eki84の量産、実戦配備直前のS18末に至って、ブースト、回転数を誉11(ハ45特?)相当とする運転制限処置が決定する。
    Fその後S19いっぱいを通して分配対策が検討されて、水メタの分配はスリンガー噴射によって対策のめどは一応立つが、燃料分配については抜本的な対策は立たず。運転制限も解除できず。(ただし前記S20初頭の紫電改の操縦参考書にあるようにいくつかの対策は施されて、離昇 一分以内2900rpm 400mmhg程度までの運転は許容されるまでに至る・・・。)
    G燃料分配の根本的な対策は、低圧燃料噴射式の誉23型で図る予定であったが、結局終戦までに部隊配備には至らなかった。(量産準備中?)
    なおS20に入っての気化器仕様での燃料分配対策で運転制限解除に至ったかはなお不明・・・。
    H戦後米国で100オクタン燃料使用でベンチ、飛行試験が実施される。設計オクタン価92を超える100オクタン燃料使用のため、燃料分配が多少悪くて、部分的にリーン気筒が生じても、ノッキングは抑制されて筒温上昇等の不具合は発生せず、カタログ値の2000hp/500mmhg/3000rpmでの運転がベンチ、飛行両試験で可能になり、680km/hr程度の速度性能を発揮した?ベンチでも離昇2000hpが実測されている。ただし手元の資料ではブースト、回転数は不明・・・。

    飛行機猫

  18.  真偽の程は、機械的知識がさっぱり無いので分からない上、すでに御存知かもしれませんが、以下の論文が燃料噴射と水・メタノール噴射について示唆しているかと思われます。なお、筆者の方は、当時の航空燃料の知識は充分では無いようです。なお、戦時中の日本における航空燃料、特に配合など、残念ながら私は目にした事が御座いません。

    「 三菱航空機発動機技術史
    −ルノーから三連星まで−
       第II部
    ガソリン噴射、水メタノール噴射技術の進化と三菱重工業
          坂上茂樹  」
    http://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/infolib/user_contents/kiyo/111C0000001-78.pdf



  19. 追伸
    ちなみに、アジア歴史資料センターに次の様な規格は載っていますが、

    昭和19年7月15日現在 10版 内令提要追録第17号原稿
    巻3/第17類 雑款
    【 レファレンスコード 】C13072032200
    http://www.jacar.go.jp/DAS/meta/image_C13072032200?IS_KIND=SimpleSummary&IS_TAG_S32=&IS_STYLE=default&IS_KEY_S1=%E8%88%AA%E7%A9%BA%E7%87%83%E6%96%99&IS_TAG_S1=InfoD&IS_LGC_S32=&

    では、実際どのように製造(配合)していたのかと云うと、私にはさっぱり分かりません。どなたか、御存知の方がいたなら、ご教示ください。



  20. 姫様資料を教えてくださってありがとうございます。
    >18の資料は私も存在は知っていましたが、学術的な本格的なもので私はまだ読めていません。趣味で楽しむのはちょっと重いかなという感じです。
    ただここで取り上げてくださっています三菱の燃料噴射システムは、ここでの話と関係するところがありますね。金星や火星に搭載されてS19?には完全に実用化されていたシステムです。特に金星(ハ112II)などはki100,ki46-3,空冷彗星などに搭載されて、大戦後期に最も信頼性の高い中出力エンジンとして評価されているものです。それでこの燃料噴射システムも(導入初期には不具合があったようですが)、最終的には信頼性の高いものとして評価しても良いのではないかと思います。重要なのはこのシステムは各気筒の吸気管内に燃料噴射するマルチポイント・インジェクションだということです。つまり燃料分配の問題をほぼ完全に解決できるシステムだと言うことです。その点では中島が開発中だったシングルポイントの?低圧燃料噴射システムよりより優れているということです。そういうシステムが片やS19初頭には実用に入っていながら、片や誉は終戦まで燃料分配問題が解決できなかったというのは、ちょっと残念な気がします・・・。誉にこの三菱のシステムを搭載するという英断はできなかったのだろうかと、つい夢想したくなります・・・。
    >19の資料はまだうまくアクセスできていません。私は燃料性状についてはオクタン価の違いくらいしか分かりませんので、きっと宝の持ち腐れになるかと・・・。ただオクタン価に関しましても、資料を見ますと例えばki84なども91,92,95,100オクタン等の燃料を用いた記事がでてきます。しかし通常ガソリン・エンジンでは、使用するオクタン価が異なれば、点火時期と燃料量(空燃比)を再適合しなくてはならないはずで・・・そのあたりをどう制御又運用していたのか・・・そのあたりもちょっと興味ある所です。でもそれはまた話が長くなりますので・・・また別の機会にと言うことになるかと思います。
    飛行機猫

  21. 「気化器」で気化するガソリンはほんの少しなんです。

    実験したことがありますが、気化器とエンジンを透明なビニールチューブでつなぐと、液体のガソリンがだらだら流れるのが見えます。

    気化器から各シリンダへ分岐するマニホールドに液体のガソリンを等分配するのはむずかしい。
    マニホールド内でもガソリンの蒸発がつづくので、長いマニホールドの方がたくさんのガソリンが蒸発し、短いほうは少なかったりする。

    点火するまでに蒸発しているガソリンの量はシリンダ毎に違ってくる。

    昔の航空エンジンは恐ろしいほど濃い空燃比で運転していますが、薄いシリンダでノッキングが起きるのを避けたかったんでしょう。

    燃料噴射にすると、よほどマシになりますが、なお不等分配の問題は残る。

    空気を等分配するのもむずかしいからです。
    吸気マニホールド毎に圧力損失が違うから、シリンダ毎に吸う空気量も違ってくる。

    だから、お金と工数が増えるのをガマンして燃料噴射にしても、そんなに変わらなかったりする。

    シリンダ間で出力が±30%くらい違うのも珍しくなかった。

    スカイライン2000GTに、燃料噴射の「GT-E」とツインキャブレターの「GT-X」
    が併売されていた時期がありましたけど、そんなことです。

    問題は、1980年代にようやく解決するのですが、それは流体の数値計算と、燃料噴射の制御プログラムがちゃんと書けるようになったからです。

    ただ、それ以前に混合気分配の問題を解決した例があります。

    1970年代以前の競技用自動車で、エンジンの吸気ファンネルが直列に並んでいるのを記憶されている方がいると思います。

    あれは、ひとつのシリンダーに気化器がひとつづつ付いているんです。

    V12のフォード・コスワースDFVなら12シリンダだから、気化器が12個ついている。
    アルファロメオでもフェラーリでもマトラでも。

    メカニックは悲鳴を上げていたでしょうけれど、それだけ不均等分配は深刻な問題だったわけです。

    航空エンジンでは、でかくなりすぎて無理ですかね。



    じゃま

  22. すみません、コスワースはV8、8シリンダーですね。
    じゃま

  23. じゃま様
     コメント有り難うございます。
     エンジンの気筒分配の問題は難しいですね。たとえ燃料を均等に各気筒に分配できたとしても、燃料の気化状態バラツキはどうなっているのか?その時の混合気温度バラツキはどうなっているのか?またそもそも各気筒の充填効率バラツキはどうなっているのか?こうなって来ますとわけが分からなくなります・・・。
     例えば二重星形空冷エンジンで言いますと、前列気筒と後列気筒で吸気管の長さがかなり異なっているわけです。すると吸気管の気柱振動の固有振動数が異なるわけで、各固有振動数の回転数辺りでは、前列気筒と後列気筒で充填効率にかなりの差が出るのではないか・・・などとも思ったりします・・・。まあ解放端に過給機がありますから、それで気柱振動の影響が少ないのかもしれませんが・・・どうなんでしょうか。それでやはりエンジンは、精密機械でありながら非常に雑駁なところがある・・・。だから理論どうりには行かなくて試行錯誤で開発を進めなくてはならないところがある・・・。そういうことになるのでしょうか。
     ネピア・セーバーなどは24気筒ですが、気化器は一つですね。これでよく気筒分配等を克服して、大戦中に実用までこぎ着けられたものだと今更ながらに思うのですが、燃料品質等を含む基礎工業力とエンジニアの粘り強さの勝利?と言うことなのでしょうか。
     誉21は設計オクタン価92の燃料で燃料分配不良/筒温上昇の不具合を起こしていたとしたら、工業製品としてはやはり未完成であったということになるかと思いますが・・・どうでしょうか?しかし当時の関係者の方々が、困難な状況の中で渾身の力で頑張ったと言うことも、また正確に記憶されなくてはならないことだと思います。
    飛行機猫

  24. 「気化器」で気化するガソリンはほんの少しなんです。

    実験したことがありますが、気化器とエンジンを透明なビニールチューブでつなぐと、液体のガソリンがだらだら流れるのが見えます。

    気化器から各シリンダへ分岐するマニホールドに液体のガソリンを等分配するのはむずかしい。
    マニホールド内でもガソリンの蒸発がつづくので、長いマニホールドの方がたくさんのガソリンが蒸発し、短いほうは少なかったりする。

    点火するまでに蒸発しているガソリンの量はシリンダ毎に違ってくる。

    昔の航空エンジンは恐ろしいほど濃い空燃比で運転していますが、薄いシリンダでノッキングが起きるのを避けたかったんでしょう。

    燃料噴射にすると、よほどマシになりますが、なお不等分配の問題は残る。

    空気を等分配するのもむずかしいからです。
    吸気マニホールド毎に圧力損失が違うから、シリンダ毎に吸う空気量も違ってくる。

    だから、お金と工数が増えるのをガマンして燃料噴射にしても、そんなに変わらなかったりする。

    シリンダ間で出力が±30%くらい違うのも珍しくなかった。

    スカイライン2000GTに、燃料噴射の「GT-E」とツインキャブレターの「GT-X」
    が併売されていた時期がありましたけど、そんなことです。

    問題は、1980年代にようやく解決するのですが、それは流体の数値計算と、燃料噴射の制御プログラムがちゃんと書けるようになったからです。

    ただ、それ以前に混合気分配の問題を解決した例があります。

    1970年代以前の競技用自動車で、エンジンの吸気ファンネルが直列に並んでいるのを記憶されている方がいると思います。

    あれは、ひとつのシリンダーに気化器がひとつづつ付いているんです。

    V12のフォード・コスワースDFVなら12シリンダだから、気化器が12個ついている。
    アルファロメオでもフェラーリでもマトラでも。

    メカニックは悲鳴を上げていたでしょうけれど、それだけ不均等分配は深刻な問題だったわけです。

    航空エンジンでは、でかくなりすぎて無理ですかね。



    じゃま

  25. イスパノスイザ12Yは隣り合った気筒二つ毎に気化器が割り当てられ、エンジン全体では6つの小さな気化器が装着されていますね>24.
    にも。

  26. 過去ログhttp://www.warbirds.jp/ansq/12/A2003579.html
    にも。

  27. 皆様コメント有り難うございます。
    誉21の運転制限の話が、燃料分配の話に発展しました。
    @戦時中の航空用エンジンの燃料システムとして燃料分配性能が一番優れているのは、やはりDB600系などに使用された、筒内直噴の燃料噴射システムということになるのでしょうか?ただ製造コストは一番かかります。戦時のエンジンには過剰品質とも思えなくはありません。だからドイツの開発者達はどういう考えで、このシステムをほとんど全ての主要エンジンに展開したのかは、ちょっと興味深いと思います。一方日本はそのシステムを2社でそれぞれライセンス生産しましたが、ハ40系とアツタ系のみの展開にしかなりませんでした。いったい投資した開発資源は何だったんだろうと・・・ちょっと思います。
    A自動車用エンジンも一般車は排ガス規制が厳しくなり、デジタル電子制御燃料噴射システムが一般化されるる1980代までは、コスト面から気化器が主流だったようですね。ただレース用エンジンは、60年代後期ころから機械式燃料噴射システムが導入され始めたようです。フォード・コスワースDFVも後期型は吸気管内噴射式の燃料噴射システムのようですね。(手元のタミヤ1/12ロータス49Bフォード(数十年未組立・・・)もちゃんと燃料噴射ポンプと吸気ファンネル下部にインジェクタがついていました・・・。)マルチポイントのデジタル燃料噴射システムが完備した現在は、それほどでもないでしょうが、イスパノスイザ12Y、誉21、DFVV8と言い気筒分配は誠に技術者泣かせだったということなのでしょう。
    飛行機猫


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