1134 アメリカ陸軍航空隊で、ドーントレスやヘルダイバーをA-24 A-25として採用しました件について、いくつか疑問がありますので質問させていただきます。

(1)書籍などでは、採用したものの効果的に用いる事なく持て余した、というような解説を見かけます。明確な意図があって採用を決めたはずと思うのですが、結果的に持て余す事になった理由はどのような事が挙げられますでしょうか?

(2)本来、近接支援を真剣に考えるべき陸軍が、自前で急降下爆撃機の開発調達をしていなかったのは何故なのでしょうか?

ご回答よろしくお願いいたします。
たーぼふぁん

  1. BUN氏のいろいろクドい話が復旧しました。御覧くださいhttp://stanza-citta.com/bun/2008/06/05/84 http://stanza-citta.com/bun/2008/06/06/85
    にも。

  2. まず(2)から:
    1、朝鮮戦争終結以降はおろか、ベトナム戦争のころまで、空軍と海軍・海兵隊とでは、近接航空支援の定義というかコンセプト(ドクトリンというほどの大げさでなさそうですが)の理解が曖昧なままでした。BUNさまの第一次大戦の例に習えば、Royal Flying Corps(英国飛行隊)がそのコンセプトを明確に区別していた、trench strafing(塹壕掃射?)とground strafing(地上掃射?)の違いによるのでしょうか?

    2、近接支援にtightly structual approachで取り組んだ空軍のコンセプトは、阻止攻撃も含む後者に近く、CASは火砲の代替ではなく、補完するものとした。CASの攻撃範囲を最前線の千ヤード以内に入らないものとしていました。しかしこのコンセプトにより、前線から数十キロにもおよぶ空軍の行動範囲をカバーするためには、合同作戦センター(JOC)と、空軍戦術センター(TACC)の密接な共同作業と、前線の戦術航空管制班(TACP)や上空のT6などの管制指揮機とのスムーズな連絡確保が必須でした。理想的な状況でも、緊急時の戦術航空管制班の攻撃要請から、実際の爆弾投下まで40分かかったそうです。

    3、それに対して、上陸部隊支援任務を反映している米海軍・海兵隊のCASのコンセプトは前者に近く、火砲の代替と見ていました。艦砲射撃を除いて、海兵隊はその背後に重砲部隊の支援を持っていないからです。地形などで艦砲射撃が制約された場合に、海軍・海兵隊のCASの攻撃機は、空飛ぶ「重砲」として使用され、最前線部隊から200m〜50mの目標にも攻撃を加えていました。それを可能とするには、操縦技能を習得するのはもちろんですが、戦後は、最初の2年間の航空要員は、泥んこ海兵として、みっちりシゴかれています。

    4、1920年代と1930年代に行われた陸軍航空隊と海軍・海兵隊の航空攻撃の実験により、両者はそれぞれの航空支援のコンセプトを固めていき、また、それに沿った機種を開発していきました。陸軍航空隊の方は、A-12シュライク、A-17、A-20ハボック、A-26インベーダーなどの、軽量、重武装の一連の攻撃機を開発していきました。つまり、陸軍には、急降下爆撃機を開発する意思も必要性も全くなかったのです。


    (1)にもどります:
    どうして、効果的に用いることができなかったかの答えは、米陸軍航空隊と海軍・海兵隊とが、それぞれ異なったCASのコンセプトに固執し続けたのとは別にして、実際にもっとも重大な点は、単に通信の問題だったのです。

    1、陸軍航空隊では、2年間の泥まみれの訓練の有無のせいか、無線通信の規律が無視される事態があまりにも多かったのです。

    2、陸軍の管制指揮官の使える無線機のチャンネルは普通は4(時に8)チャンネルに対して、海軍のVHF通信機は12〜20チャンネルに加えてguard(緊急用?)であり、両者の間に基本的な不具合があったのです。

    3、近場の空母や前線基地から離陸する海軍・海兵隊機には、十分な搭載量と滞空時間が保証されていました。しかしながら、遠くの安全な基地から離陸する陸軍航空隊機には、僅かなペイロードを落とす時間が少なく、空軍の空中管制機は、燃料切れ寸前のF-80を優先するために、ただでも交信困難な無線により、海軍・海兵隊のどっさり搭載した攻撃機にスタンバイさせたままになることも、少なくなかったようです。

    4、航続距離の問題で、せっかくのB-26インベーダーが橋を落とすのを命じられ、滞空時間に余裕のあるB-29は、target of opportunityで、単機でトラックからバイクまで追いかけるという、コントみたいな実例もありました。

    5、机上の理屈では、米陸軍航空隊のCASに対するコンセプトがいくら正しくても、肝心の無線機による連絡手段が輻輳により障害されると、折角の攻撃機を「効果的に用いる事なく持て余した」のは、当然だと言えるでしょう。今のスマートフォンしか知らない方には、軍用のVHF通信機のチャンネル数を増やすのにが、どのくらい大変だったかなど、想像もつかないでしょうね。きっちりと構築したシステムは、一ヶ所が崩れると、使い物にならなかったようです。対してガダルカナルから経験を積んでいた、海軍・海兵隊のコンセプトの方が、近接支援においても、阻止攻撃(Cherokee)においても、秀才が考えた陸軍のコンセプトを凌駕していたようです。たぶんスカイレーダーから始まる多くの海軍攻撃機や戦闘爆撃機が空軍にも採用されたも、お題の攻撃機たちを効果的に使うことができなかった後遺症でしょうか?
    若旦那

  3. 欧州戦線を念頭に導入された陸軍版急降下爆撃機と太平洋戦域の海兵隊とを同列に比べることはできませんし、むしろ合理的にCASを実施したのは陸軍航空隊の方です。ガダルカナルからタラワの戦いで海兵隊機、海軍機の評価は極めて低いのです。
    BUN

  4. にも。さま、若旦那さま、BUNさま
    皆様どうもありがとうございます!

    ご紹介いただきました『いろいろクドい話』の記事、大変興味深く拝読させていただきました。
    なるほど、第二次大戦前半の様相を見て急降下爆撃機調達の検討を始めたのですか。
    ちょうど海軍機で良いものがあったからそれを調達したという事ですね、納得です。

    (1)に関しては、若旦那さまのご回答によりますと、陸軍の用いた通信システムに問題があったというお話ですね。
    チャンネル数のお話とか大変興味深く拝読させていただきました。
    では、A-24 A-25に限ったお話だと、どうでしょうか?
    資料によると、A-24 A-25は実戦に積極的に投入されていないようなのです。
    という事は、この二機種に関して何かその理由があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
    例えば、戦闘爆撃機が思いのほか役に立ったから要らなくなったとか、そういう事なのでしょうか?


    >BUNさま

    >むしろ合理的にCASを実施したのは陸軍航空隊の方です。
    という事は、実際には陸軍のドーントレスもそれなりに有用であったと解すべきなのでしょうか?
    たーぼふぁん

  5. 1、BUNさまの仰せのごとく、欧州と太平洋では、シアターの規模も地勢も全く桁違い(イタリア戦線だけなら東アジアに似ている?)ですので、同列に比べることができないのは、当然だと存じます。そして、WW1とWW2ほどは違っていなくても、大きく変化したあの時代、比較するバトルの年時も勘案する必要があると思います。エッセクス級もミッドウェー級も、硫黄島や沖縄からベトナムまで、あんな使い方をされるとは、思ってもみなかったことでしょう。

    2、海軍・海兵隊について(彼らの名誉のために):
    1942年からのガダルカナルでは、ボイントン大佐のVMF-214ブラックシープで有名ですが、ろくに空母も安全な飛行場も練度の高い飛行隊もなく、まともなCASは絶対に不可能でした。1943年のタラワでは、地上と空中の両方に配置された指揮管制将校による方式が始まり、やっと海軍と海兵隊が共同CASシステムをスタートさせ、改良・強化を重ねました。しかしながら、まだそのころの米海軍は、自分の空母を護るのが精一杯で、CASに専念する余裕などなかったのです。海軍・海兵隊の地対空無線通信の装備が改良されて、地上部隊指揮官が自分でCASを呼ぶことができるようになり、陸軍の歩兵から「Okinawa Sweetheart」と賞されたのは、1945年の沖縄戦になってからです。朝鮮戦争の初期ですら、まだ通信が主要な問題として残っており、1950年8月には、海軍のCASソーティーの30%が、地上と連絡できなかったそうです。海兵隊のCASシステムがほぼ完成したとされるのは、同年11月からの第一海兵師団が興南まで整然と撤退した長津湖の戦いでしょうか。半島西部で崩壊し敗走する第八軍(地上の航空管制装備は遺棄)をほったらかしにして、英空母も含めた全空母5隻をかき集めて、悪天候をついて全力で成功させたCASの最初の典型例でしょう。

    3、米陸軍航空隊について、3点ほど:
    北ヨーロッパを横切った連合軍のドライブにおける、アングロ・アメリカン戦闘爆撃機と地上部隊とは、極めて有効に共同しましたし、イタリア作戦では、小型観測機による空中連絡将校が採用されました。しかしながら、いくら英国の基地が飽和していたとは言え、もっとCASがしっかりしてさえいれば(タラ・レバ)、D-Day初日の惨劇はかなり避けられたのではないかとの批判があります。また、せっかく海軍と同様の空冷のP-47によるCASが成功した実績があったのに、地上からの小火器の弾丸でも停止する液冷のP-51を残したのは、多くのパイロットから嫌がられたそうです。空冷のコルセアやスカイレーダーでさえ、滑油系統への被弾を防ぐためだけに装甲が追加されたり、英国海軍も空冷に切り替えたのに、です。また、急降下爆撃機による地上攻撃については「"dive bomber" vulnerable」で検索してみてください。かなり昔から、危惧の意見が沢山でてきていました。分厚い装甲や頑丈なブンカーを、大型爆弾を搭載した急降下爆撃機で潰した成功例は、どのくらいあるのでしょうか?
    若旦那

  6. 第二次大戦時の米陸軍航空軍は戦闘機など装備していませんよ。装備しているのは追撃機です。
    以下、BUN氏の記事を敷衍すると
    1.第一次世界大戦で米陸軍は敵前線を攻撃する機体の必要性を知った。
    2.陸軍が麾下航空隊の攻撃機に要求する任務は敵前線の攻撃である。
    3.しかしその陸軍航空隊内部では敵前線への攻撃は損害多く効果少ない、一方で敵後方への攻撃は効果多く損害少ないのでこれを攻撃機の任務とすべきと考えていたが、陸軍本体からの要請と相反するため内部での非公式な意見に留まった。
    4.結果、米陸軍航空隊→航空軍の攻撃機には、陸軍本体の要求である前線攻撃に応じた安価だが低性能の単発機と、航空軍が本来必要だと判断する後方攻撃用の高性能だが高価な双発機とが、Aナンバーのカテゴリーの中で一緒くたに混在してしまう。
    5.スペイン内戦や大戦初期の戦訓で、陸軍本体が攻撃機に求める前線攻撃という任務は追撃機でも十分に果たせる事が判った。
    6.追撃機と攻撃機を統一すれば両者を同じ機材で賄えそして、我の劣勢時には全力で空中の敵機を追撃し、我の優勢時には全力で地上の目標を攻撃する、と限られた戦力を柔軟に効率的に使える。
    にも。

  7. 7.戦後米陸軍航空軍は独立し米空軍となる際に追撃機と攻撃機とを統合して戦闘機というカテゴリーを制定した。戦闘機の「戦闘」とは空対空戦闘と空対地戦闘の両方を指し、米空軍の「戦闘機」とはこの両方の用途に向けた機体を包摂する概念である。
    8.新カテゴリー「戦闘機」を手にした戦術空軍に於いても、前線への攻撃は非効率だが後方への攻撃こそが効果的で之を任務とすべきとする考え方が支配的になる。威力の大き過ぎる核兵器がそれを更に加速した。SBの嫡子とも謂うべき高速爆撃機F-105、戦略爆撃機すら務めたF-111、襲撃機を廃止し、前線戦闘機を核兵器による対地攻撃を行う戦闘爆撃機に替えたフルチチョフの軍制改革。
    にも。

  8. 質問者がバルティー・ベンジャスに言及してないのが不思議です。この機体への評価に答えが出てるのに。
    さて、シンプルで扱い易いドーントレスと、独ソの戦闘機と同等のエンジンと爆弾槽など複雑大重量なヘルダイバーやベンジャスが
    陸軍航空軍にとって同じ価値があるとは思えません。
    近接支援の前線での管制指揮機にテキサン練習機を使っていたという記載が、為されました。ドーントレスも同様の用途に適合し得ると思いませんか?
    にも。

  9. 前線偵察、観測、航空に限らない近接支援の指揮管制、目標にマーカーを撃ち込む等の手段で嚮導、連絡や軽輸送、などの任務を低コストでこなせる汎用機ドーントレスに対し
    ベンジャスやヘルダイバーIIは低性能で無駄に複雑な戦闘機(攻撃機+追撃機)でしかないのです。
    にも。

  10. 質問者の方。お忙しいなら年明けに答えてください。
    この質問を立てる前にバルティー・ベンジャス(A-31,A-35)への米軍の評価は参照、いや意識しましたか?
    そもそもベンジャスというヘルダイバーIIと全く同級の機体が、ヘルダイバーとドーントレスを併せたよりも沢山、陸軍航空隊に採用された事を知っていますか?
    にも。

  11. 若旦那さま
    にも。さま
    詳しい解説どうもありがとうございます!

    >この質問を立てる前にバルティー・ベンジャス(A-31,A-35)への米軍の評価は参照、いや意識しましたか?
    意識しておりません。

    >そもそもベンジャスというヘルダイバーIIと全く同級の機体が、ヘルダイバーとドーントレスを併せたよりも沢山、陸軍航空隊に採用された事を知っていますか?
    A-31という存在自体は知っておりますが、採用数やその他の具体的な事は認識しておりません。

    そもそも本質問の要点は、かなり平たくして言えば
    "海軍機から転用した急降下爆撃機って、どうだったの?"
    "どうして自前じゃなくて、海軍機から転用する事になったの?"
    という事ですので、この要点に当たるA-24 A-25を取り上げた次第です。
    たーぼふぁん

  12. >質問者、>4.>11.
    質問者に質問します。米陸軍の主な任務は海外への展開です。ではどうして米陸軍は日本陸軍の様に自前の空母や潜水艦を開発せず、海軍に任せているのですか?答えてください!

    私は>10.で>質問者の方。お忙しいなら年明けに答えてください。と述べました。
    挙げたBUN氏の論考も読まず、wikipedia日本語版程度であっても当時どんな爆撃機が試作計画されていたか調べもせず、自分で自分が何を書いているのか理解していない「質問」を書き散らす、質問者様。
    俺こそ年末で忙しいんだ!
    にも。

  13. にも。さま

    当たり前の事ですが、AnsQに寄せられた質問に対して回答をしなければならない義務が、にも。さまに課せられているわけではないのですね。

    つまり、お忙しかったり、質問の内容がお気に召さなかったりするのでしたら、にも。さまがコメントをなさらなければいいだけの話なのですね。

    >俺こそ年末で忙しいんだ!
    質問がお気に召さない上に、さらに年末でお忙しい中、それでも尚コメントしていただきまして、むしろ頭の下がる思いです。

    場が荒れる事は不本意ですので、この場への私の書き込みはこれで終了といたします。
    たーぼふぁん

  14. 貴方が出した質問への答えを、貴方自身で書いてみてください、年明けで宜しいですから。質問を立てた以上、それは義務です。
    にも。

  15. いまさらですが、

    急降下爆撃機の欠点は他の方が指摘されてるとおりですが、
    WWII後半になってからはロケット弾、とくに5インチHVARが威力・精度両面で評価が高かったため、急降下爆撃が不要になっていったのだと思います。
    超音速

  16. 私がブログに書いた内容はご質問にはあまり関係が無いように思います。

    回答としては「米陸軍はJu87の活躍を見てから同じような機種を導入しようとしたから」で済むでしょう。
    BUN

  17. 「質問の答えを質問者自身で答えろ、それが貴方の義務だ」
    などという事はありませんのでスルーしても逃げた事にはならないと考えます。
    第三者より

  18. >17はターボファンさんへの発言です。
    第三者より

  19. >12
    >14
    ここにそんな義務は存在しません。
    忙しいとかほざくんだったらここにチマチマ書いてんじゃないよ。
    雇われ管理人@力の2号

  20. 議論ボードにスレを立てましたhttp://www.warbirds.jp/BBS/c-board/c-board.cgi?cmd=ntr;tree=4789;id=タイトルは「近接航空支援を忌避する空軍、空軍に近接支援をさせようとする地上軍(と政治)」
    にも。

  21. >16 かなり荒れているようですが、失礼します。

    質問者が知りたかったのは、BUNさまが明答された、なぜ急降下爆撃機を採用したか?以外にも、十分な航空優勢をもちながら、なぜそれらの急降下爆撃機が活躍することなく「持て余すことになった」のか?から、何らかの理由で、活躍することができなかったのか?や、何らかの理由で、活躍する必要がなくなったのか?などではないでしょうか。小生もぜひ知りたいので、宜しくお願い申し上げます。

    D-dayの前に、もしアシカ作戦が実行されていれば、上陸するブリテン島南岸のトーチカや砲座や戦車などにむかって、Ju87の大群が襲いかかって大活躍をしたのではと空想しております。
    佐久間多聞

  22. >21.
    私は>1.でBUN氏の記事を紹介しました、其処に答えが書かれています。お読みに為られましたか?
    私はBUN氏の記事を踏まえ>6.〜>10.及び>20.のリンク先で私なりの解釈と要約を行いました。ご覧になりましたか?

    WWIIに参戦し米陸軍航空軍が再軍備する時点で、地上軍前線の敵軍に攻撃を行う機種には二つの選択肢が在りました。
    1.1920年代以来、陸軍本体が麾下の航空隊→航空軍に装備させていた(しかし航空隊内部では内心忌避していた)「安価で低性能」な(概ね単発複座の)攻撃専任機。
    2.大戦初期の戦訓で見出された、空中の敵機を追いかけて撃墜する事を任務とする機種(航空軍では「追撃機」と呼称)に、敵地上軍(先ず敵地上軍前線)への攻撃をも兼任させる。
    参戦・再軍備の過程で、後者がより効率的だと判断されたので前者を切り捨てた。以上。

    BUN氏の記事を挙げたものに限らず通読すれば、当時の当事者がどのような理路でそう判断したか理解出来ると思うのですが、貴方方は違うのでしょうか。
    にも。

  23. 15.でロケット弾についてだけ書きましたが、もう少し詳しく書きます。
    世傑#40から抜粋
    「陸軍はドーントレスを普通の攻撃機として使った。陸軍航空隊にはほかに優秀な攻撃機もあった関係で、本機に特別に適した攻撃法をあまり研究しなかったようで、陸軍のパイロットの間には急降下爆撃をさげすむ風潮さえあったのである。」
    世傑では「地味な活躍」と評されておりますが、A-24は太平洋戦域のほかは北アフリカ戦域で地上攻撃に使用されてますので、少なくともA-24に関しては持て余したとか積極的に実戦に投入されなかったということは無いです。
    地中海戦域ではA-36が急降下爆撃を行なっているので、この時点で急降下爆撃そのものは否定されてないのですが、問題は鈍重な単発複座機であるところの急降下爆撃機の存在価値であると思います。
    航空優勢があったとしても地上攻撃は対空火器の脅威が大きいので高速が必要なのと、機銃掃射が意外と重要な攻撃手段であるため、低速で固定武装が中途半端な急降下爆撃機は戦闘爆撃機に劣るのです。。
    また、双発爆撃機は中高度からノルデン照準器で正確な爆撃をすることが可能です。戦略爆撃よりも低い高度で投下するからです。中高度は高射機関砲が射程外となり、88mmなどの高射砲の脅威は残るが双発なら生残性が高い。
    水平爆撃でも大戦終盤には命中率がかなり上がってくるため、急降下爆撃機の大型爆弾を正確に投下可能という唯一の利点は価値を失うのです。
    P-38とP-47ははあまり急降下爆撃には適していませんので、別の爆撃法がとられました。
    P-38はノルデン照準器つき爆撃手席を設置したドループスヌート機が作られ、これを先導機として編隊水平爆撃ができます。爆撃機の不足を補うことができるので重宝されたようです。
    P-47は、低高度からの緩降下爆撃やツリートップ・レイドと呼ばれる超低空攻撃に切り替えられ、これが成功します。
    このように米陸軍航空隊では大戦中盤以降、地上作戦において急降下爆撃機の出る幕は無くなっていったのです。
    しかしながら単発複座の攻撃機という点では、ソ連のIl-2・ドイツのJu-87が終戦まで使われたのであり、防弾を強化するとか作戦・戦法を工夫するとかすれば活躍の余地はあったんではないかという気もします。FAC機として使えば活躍できたはずという、にも。さんの主張もわかります。ただしこれらは結局「IF」にしかすぎないのですけども。
    超音速

  24. 地上や水上の目標を攻撃する任務を、空中の敵機の追撃を任務とする機体に兼任させるか、専任の対地(対艦)攻撃機を開発すべきかは、その国がその時点で使える航空・兵器技術や、その機体の運用条件によって異なり、それぞれ個別に検討しなければいけません。
    ですから、より根本的な法則として、軍事に携わる各部門がどのような組織利害を持つ傾向にあるかを、踏まえなければいけないのです。

    「空軍は近接航空支援を忌避する」

    ・敵陣地への航空攻撃は効果が少なく損害が極めて大きい。
    ・敵後方への航空攻撃は効果が大きく損害が比較的小さい。
    ・攻撃機は砲兵の代用品ではない。
    ・攻撃機は砲兵の射程距離外でこそ活躍すべきである。
    ・攻撃機は敵後方の兵員の殺傷に最も適している。
    ・重要目標は移動する予備軍、砲兵の隊列、補給部隊、通信拠点などである。
    ・攻撃機の最も有効な用法は敵戦線の後方で実施される航空阻止攻撃である。
    ・航空兵力の用法は敵前線への分散投入ではなく敵戦線後方の適時、適所への大量集中投入が最も望ましい。

    >1.で挙げた、米陸軍航空隊→航空軍に於ける「攻撃機」(Aナンバー)の変遷の理由を考察した記事でBUN氏は、「空軍」が自身の戦果を最大化し、損害を最小化し、そして自身の「作戦の自由」を確保するには、敵前線での攻撃任務には成る可く関わらない、限られた資源は敵後方への攻撃に最大限投入する、之が「空軍」の組織利害だと論証しました。そして之は対立する二番目の法則を導き出します。

    「地上軍、或は政治(文民・文官)は、空軍に近接航空支援をさせようとする」

    私は之の二つを、国や時代を問わない空軍と近接航空支援についての一般則だと考えます。
    にも。

  25. P-40を再空冷化せず撃たれ弱い液冷の儘にしたとか、そしてP-47の胴体を再設計せず複雑高価な排気タービン過給器を付けた儘にしたとか、或は空軍独立後ですが朝鮮で撃たれ弱いP-51を投入したとか、米陸軍航空軍の追撃攻撃機(戦闘爆撃機)はおしなべて対地攻撃任務に最適化されておらず無駄が多い、その点Fw190やF4U→AUコルセア、或はADスカイレーダーは無駄無く対地攻撃に最適化されているとは多くの人が思う印象ですが、此処で空軍の組織利害を考えましょう。

    「空軍は近接航空支援を忌避する」

    航空軍の対地攻撃任務に当たる追撃機が、追撃の際には有効だが攻撃の際には不要邪魔な装備を付けて供給され続けるのには、近接航空支援から何時でも逃げてやるという「空軍」の意思が在るのかもしれません。
    ドループスヌートによる嚮導を受けるならP-47等もターボの効く中高度から水平爆撃する阻止攻撃機に成り得ます、ベトナムでF-105がRB-66に嚮導され水平爆撃を行った様に。空軍にとっては、其の方が余程、低空に降り地上の前線部隊の指示する目標を攻撃させられるよりも正しい、P-47の使い方なのです。
    況て、安価で小型だが飛行性能が低く敵機から近接航空支援から逃げる事が出来ない専任の攻撃機は、空軍の組織利害にとって最も忌むべきものです。例え其の方が近接航空支援に有効であっても、空軍はそんな機体を装備したくないのです。

    「地上軍、或は政治(文民・文官)は、空軍に近接航空支援をさせようとする」

    二番目の法則の出番です。
    にも。


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