1227 零戦の32型と52型は、21型より翼の横幅が短くなっていますが、その形状はストンと切り落としたような32型、丸みを帯びた52型とそれぞれ異なります。
生産性は32型の方が良さそうに見えますが、この形状の違いによって、飛行性や操縦性などにどのような違いがあるのでしょうか。
ザックリジャパン

  1. 五二型の主翼と思われているものは、実は三二型の主翼の完成形で、二二型が試作される以前に承認図が通っているものです。二二型という応急改造型が間に入るので複雑に思えますが、単純に折畳部を切り落とした形態から、折畳機構を最初から持たず翼端を円く整形したタイプへと段階的に進んだ、ということです。
    切り落とし型では母艦への着艦時などに悪影響が出るとの懸念があり、元々不要な折畳機構も省略できるので、飛行性能、生産性ともに五二型タイプの方が良好です。
    BUN

  2. もしガダルカナル戦が無く「二号零戦問題」が発生しなければ昭和17年冬頃にはA6M3は「五二型タイプの主翼」に変わっていた、ということです。型式がどうなっていたかは何とも言えませんが、そこまで話は進んでいたのです。
    BUN

  3. 謎なのは、アメリカが戦中戦後から軒並み、翼端・プロペラ端を揚抗比も失速特性も落ちそうな切り落としの角型にした事です。
    英国に見られる切り落とし翼なら、それらのペナルティを踏まえた上で
    低空でのロール率(スピットファイア)なり英空母の低い天井に合わせる(コルセア)と理由がはっきりしてるのですが。
    にも。

  4. 若干の悪影響があることは確認されているんです。むかしNHKのドキュメンタリーでもやっていたように、切り落しタイプよりも円い翼端の方が空力的には良好なデータが取れていたんですね。
    これは一般的な角型と円い整形翼端とどちらが良いかというより、もともと長かった翼端をバッサリ切ったことの功罪といった問題だと考えるべきでしょうね。
    BUN

  5. B-24もB-29もB-36も翼端丸めてますね。大型機で翼端切り落としてるのはダグラス。
    切り落とし翼端のメリットはエルロンが翼端側迄あるのでロールの反応が良くなる事でしょうか。
    スピットファイアの換装翼端を米流にアレンジしたとも云えるチップタンクをエド・ハイネマンはロール特性が悪くなると嫌っていたそうですが
    縦横比初め翼の設計全体で揚抗比が上がるよう設計すれなら、
    翼端に関しては渦が大きくなるペナルティは在ってもロールが俊敏になる切り落としがいいというのがダグラスの考え方でしょうか。
    にも。

  6. BUN様、ありがとうございました。
    プラモを見つめつつ、ボンヤリと抱き続けてきた疑問が解消できました。
    ザックリジャパン

  7. 余談でしょうから申し訳ないですが・・・
    32型ですが切り落としたとかの表現は適切でないと私は考える訳です。
    勿論空力的には低い事は解ってはいたが、角形の中でも技術者なりに空力的に最良を求めた翼端形状としたと、私は現物を見て考えてしまいます。
    32型の程度の良い現物翼端を見る機会がありましたら、是非溶接ライン等を見て下されば、技術者なりの努力が見え、切り落としたとの表現は使えなくなるかと思う訳です。

    しかし残念ながら主翼全体で考えれば、切り落としたとの表現になっても致し方ないのかな?とも考え、黙ってしまう話ですので失礼しました。
    A6M232

  8. いや、よく判ります。Bf109の前期型であれNA-73→P-51であれ、いやグラマンもダグラスも、何の藝も無く「切り落とした」角型の翼端にしてるわけがない、と謙虚に考えれば推察されますから。
    にも。

  9. A6M232様 にも様
    私はわかりやすい表現として、「ストンと切り落とした『ような』」と記載しただけです。
    その形状を採用した技術者を揶揄する意志は毛頭ありませんし、そのような記述をした覚えもありません。
    言葉一つ一つの大切さは理解しているつもりですが、私に先達への敬意がないかのごとき話の持っていき様は不本意です。
    ザックリジャパン

  10. 短縮された部分の整形が丁寧に行われているのでただ切り落した訳ではない、とのA6M232さんのご意見はよくわかるのですけれども、「切る」という表現は海軍航空本部が「翼端ヲ切リ」といったように使っているので、言い直す必要はないように思います。

    整形しても中途半端な形なので、最終的には外翼を再設計するという計画の下で「切る」と表現されているのでしょう。「翼端ヲ切リ」と書かれた文書の日付は17年6月19日ですが、この頃には再設計の作業が始まっているのです。
    t
    BUN

  11. ザックリジャパン様、全く持って申し訳ありません。
    BUNさんが仰る通り一次資料にも書かれていることですから、私の思いが先行しただけの考えで書いてしまった事に反省しております。
    私はザックリジャパン様に対してでなく、言葉の表現との現物に対してで意見したつもりでしたが、不本意とのご意見で全くの配慮がないことに気づいてしまった訳でして、今更ながらすいませんでした。

    BUNさん、的確な解説を感謝いたします。
    何時も勉強させて頂いております、今回もありがとうございました。
    A6M232

  12. A6M232様
    こちらこそきつい言い方をしてしまい、申し訳ありませんでした。
    初めて作ったミリタリープラモデルが零戦32型で、以来、同型は私のお気に入りです。
    そんな機体に関する新たな知見・知識を得られたことは、私にとっての喜びです。
    ありがとうございました。
    ザックリジャパン

  13. ザックリジャパン様、ありがとうございます。
    言い方が申し訳ないですが、私も勉強になりましたので感謝致します。
    三二型はガダルで戦った搭乗員様が大好きで、航続問題も前進基地ができたから問題なかったと直接聞いています。
    馬力向上・横転性能に惚れ込んでいたようです。
    NHKのドキュメンタリー番組で取材を受けその話を強調したのに、その部分をカットされ、欠陥ありきで番組が構成されたと大変憤慨していた姿が未だに忘れません。
    そのような訳もありまして、自分勝手な思いが先行した書き込みをしてしまった事をお詫び致します。
    A6M232

  14. 少々出遅れました。
    32型の操縦性については過去のAnsQでも、捩り下げを無視して翼端切断(もどき)をやったために、高迎角飛行時の翼端失速しやすく不意自転に陥りやすくなるのではとの指摘がされていますが、もう少し掘り下げてみたいと思います。
    零戦の捩り下げは、普通の捩り下げの他に空力的な捩り下げと分類されるキャンバーの増加がなされています。

    通常の捩り下げは、片翼の中央附近(3m)から翼端(6m)迄の範囲でサイン曲線状に2度30分まで捩り下げている。(参考;九六艦戦は、外翼内端から2度40分)
    キャンバーの増加は翼端付近に行い(範囲未詳)、コード長の2%から3%まで徐々に増加させている。

    大まかに翼端切断による損失を見積ると、通常の捩り下げで25分弱、キャンバー増加はほぼ全滅。  キャンバー効果の捩り下げ角度への換算がどうなるかは分からないが、設計者の常識として僅か10分の効果ならキャンバー増加対策を追加実施しないのも常識。
    そういうわけで全体としての損失は、通常の捩り下げの損失の2倍は見積れるように思う。
    結論として、操縦者が気付く程度の不意自転の悪化傾向があったと思うのだがどうだろうか。

    如風

  15. 14は背景を語らなかったため、コメントしずらいものにしてしまいました。 また本意と若干違うことにもなっていますので、補足します。

    プラントルの揚力線理論を使い、零戦の主翼をテーパ比0.5の台形翼と近似して考えれば、最も失速しやすいのは翼幅方向に約50%の位置です。
    ところで、プラントルの理論では翼端での翼下面から翼上面への流体輸送を考えていない(自由渦の向きを、上流の流れの向きに一致させている)ので、翼端部の翼上面流線の縮流加速が考慮されず、翼端部の局所揚力係数が0に収束する。
    一方で実験的には、下面から上面への流体輸送の影響が半翼幅の95〜100%で顕著となり翼端の局所揚力係数が有限値になるため、翼端で失速しやすい傾向が強い。
    このような実験結果は、例えばプラントル、ティーチェンス「航空流体力学」1929年には記載されいる。 そういうわけで堀越氏は零戦計画時にはこのようなことを文献あるいは自社の模型試験でかなり具体的に知っていて、零戦では翼端附近に特化した翼端失速対策の必要性を感じて翼端付近のキャンバー増大対策を追加したのではないか。
    これを14の前段に書くべきでした。 
    むしろ14では、32型での翼端500o切断のために翼端付近でのキャンバー増加対策が無駄になったことの損失が大きいのではと言うことを強調すべきでした。

    如風

  16. >7.〜13.
    「切り落とし」の表現をどう思うか語り合うのは、とても楽しいことだと思いますが、人によって感じ方もそれぞれ違うでしょうから、物理現象とは分けておいたほうがいいと思います。

    >14.
    >零戦の捩り下げは、普通の捩り下げの他に空力的な捩り下げと分類されるキャンバーの増加

    これは、三二型のことでしょうか。

    >大まかに翼端切断による損失を見積ると、通常の捩り下げで25分弱、キャンバー増加はほぼ全滅

    「損失」とは何の損失でしょうか。
    「25分弱」「全滅」とはどういった現象を指しているのでしょうか。

    >キャンバー効果の捩り下げ角度への換算がどうなるかは分からないが、設計者の常識として僅か10分の効果ならキャンバー増加対策を追加実施しないのも常識

    「わからないが、常識」とは。もう少し説明ねがいます。

    >通常の捩り下げの損失の2倍は見積れる

    何を、何で割り算すると「2」になるのでしょうか。

    >15.

    >零戦の主翼をテーパ比0.5の台形翼と近似して

    この「零戦」は三二型のことでしょうか。

    >プラントルの理論では翼端での翼下面から翼上面への流体輸送を考えていない(自由渦の向きを、上流の流れの向きに一致させている)

    これは違うと思います。ここで述べられている自由渦とは、束縛渦のことですか。
    翼端渦についてですか。

    >翼端の局所揚力係数が有限値になるため、翼端で失速しやすい傾向が強い

    そんな因果関係はないと思います。


    兼務

  17. 兼務さん16にお答えします。 私の文、確かに意味が曖昧な部分がいろいろありますね。 お尋ねの最後の部分で、論理ミスしたみたいです。

    >>14.
    >>零戦の捩り下げは、普通の捩り下げの他に空力的な捩り下げと分類されるキャンバーの増加

    >これは、三二型のことでしょうか。

    単に零戦と書いたのは、翼の切断前の原型となったA6M2のつもりでした。


    >>大まかに翼端切断による損失を見積ると、通常の捩り下げで25分弱、キャンバー増加はほぼ全滅

    >「損失」とは何の損失でしょうか。

    「損失」とは、曖昧でした。済みませんでした。 翼端切断で生じる新たな翼端における捩り下げ角が小さくなる、その減少代の意味でした。
    なお以下の確認をしていく過程で、私の捩り下げについての全般的理解を前以てまとめておきます。
     
    翼にとっては抗力の小ささが重要で、プラントルの揚力線理論以来最小抗力の翼は楕円翼と分かってきました。この翼は局所翼弦長に比例した循環を持ち、翼幅方向に局所揚力係数、局所抗力係数が一定という特徴を持っています。
    ところで楕円翼の翼幅方向の失速しやすさはどの位置でも同等ですから、戦闘機の様に高迎角で運用する機会の多い機体では、不意自転を避ける意味では好ましくなく、日本では若干の誘導抗力の増大を忍んで翼幅のかなり長い範囲に捩り下げを行い翼根失速特性になるようにすることを意図した対策が取られるようになりました。
    その後、構造が簡単になる利点からテーパー翼が好まれるようになりましたが、実用的テーパー翼の場合翼幅方向の真ん中附近で失速しやすくなるので、翼根失速特性を持たせるために長い範囲で行う捩り下げの最大角が、楕円翼の場合よりも大きくなることになりました。
    零戦の初期設計において、恐らく堀越氏は純テーパー翼のこのような特性を嫌って、翼端付近に放物線で丸みを形成して楕円翼に近い揚力分布をもたせることで、捩り下げの最大角を少々減少させて、抗力も少々減少させたと考えています。 この先は15.で書いたことにつながると思います。

    >>「25分弱」「全滅」とはどういった現象を指しているのでしょうか。

    「25分弱」は、捩り下げが96艦戦と同様の翼幅方向に線形の捩り下げがなされていたら、翼端切断後の翼端での捩り下げ角の減少が25分と言うことによります。 しかしA6M2のサイン曲線状の捩り下げがその翼幅範囲で、最大捩り下げ角*sinθで表されるとしたときのθの範囲を知りませんでしたので、0〜60°程度かと想像して「25分弱」と書いたのが実情です。 もしご存知ならご教授頂ければ幸いです。
    「全滅」の意味は、A6M2の翼端附近に施されたキャンバーの増加は、15の実験例からみてA6M2翼から切断された翼端の丸みを持たせて整形した部分の範囲に収まると考えてのものです。 しかしながら、製作図等による証拠はありません。


    >>キャンバー効果の捩り下げ角度への換算がどうなるかは分からないが、設計者の常識として僅か10分の効果ならキャンバー増加対策を追加実施しないのも常識

    >「わからないが、常識」とは。もう少し説明ねがいます。

    これについては、薄翼理論で取り扱えそうですが数年前に斜め読みした程度であり、キャンバーラインの数式も入手できない状況です。直観では1°内外の効果がありそうだと思います。
    一方10分程度の効果なら、制造誤差のノイズも心配される程度と思われるので表記となったのが実情です。

    >>通常の捩り下げの損失の2倍は見積れる

    >何を、何で割り算すると「2」になるのでしょうか。

    翼の切断により少なくなった、最大捩り下げ角は、通常の捩り下げ角25分弱とキャンバーの増加が期待できなくなったことの合算で、(少なくとも)通常の捩り下げ角25分弱の2倍の50分弱程度には見積れるだろう、と言ういみでしたが、(少なくとも)を付け加えなかった思いを15で補足したつもりです。

    >>15.

    >>零戦の主翼をテーパ比0.5の台形翼と近似して

    >この「零戦」は三二型のことでしょうか。

    本来14の前段の大まかな説明として書くつもりのもので、本人としては五二型まで含めた全ての主翼のつもりでした。 ”台形翼と近似した”ので、イメージされるものは、三二型が適切とも思います。  不正確ですみません。

    >>プラントルの理論では翼端での翼下面から翼上面への流体輸送を考えていない(自由渦の向きを、上流の流れの向きに一致させている)

    >これは違うと思います。ここで述べられている自由渦とは、束縛渦のことですか。翼端渦についてですか。

    ご指摘ご尤もです。 括弧内に第一に書くべきは、プラントル理論では翼弦長を翼端の局所揚力係数が有限値になるため、翼端で失速しやすい傾向が強い
    無限に小さくモデル化しているため、実機で有限な翼弦長の範囲で翼下面から翼上面に流入した流体が翼上面から翼下面に自由に流れることが禁止されていることをモデル化できていないことでした。

    自由渦は後縁渦で翼端渦を含むとお答えすればよいでしょうか。


    >>翼端の局所揚力係数が有限値になるため、翼端で失速しやすい傾向が強い

    >そんな因果関係はないと思います。

    ご尤もです。翼端失速傾向を持つためには、局所揚力係数が他の部分よりも大きい必要があります。 ここで、楕円翼や翼端に丸みを持たせたテーパ翼を検討していなかったことで、チェックの機会を逸し論理の混乱がありました。どうもこちらの方が翼端失速しやすそうで翼端に特化したキャンバー増大策が必要ということになりそうで、A6M1の設計は尤もだということなのでしょうね。 
    御指摘ありがとうございました。 
     
    なおテーパ比0.5程度の台形翼では、矩形翼に比べ翼端付近で翼端に向かっての循環の減少率が大きく翼端渦が強いため、上面への流量輸送を考慮した場合に余裕で失速の心配がないほどでもないように思います。
    更に、三二型は翼を新たに設計してないために翼端で翼厚が厚く、どちらかと言えば下面から上面に流れる流れが個体壁から剥離しにくいから、角の位置で
    積極的に剥離させる工夫があればなと思いました。
    如風

  18. 17.の誤記訂正

    プラントルの理論では・・・・に対するお問い合わせへの返事部分

    ×プラントルの理論では翼弦長を「翼端の・・・・翼端で失速傾向が強い」
    〇 (上記の括弧内を削除し、次の文に繋いでください。)
     プラントルの理論では翼弦長を無限に小さくモデル化しているため
    如風

  19. >矩形翼に比べ翼端付近で翼端に向かっての循環の減少率が大きく翼端渦が強い

    逆では?
    兼務

  20. >19
    体調を崩し、3日ほど寝込んでしまいました。遅くなりました。

    ここでも拘束渦と自由渦の区別を曖昧にしていました。

    「矩形翼に比べ翼端付近で翼端に向かっての拘束渦の循環の減少率が大きく翼端付近の自由渦が強い」の意味で書いております。 

    そのような意味ですから、後段の文章に素直に繋がると思います。


    以上、このAnsQの話題の検討としては大失敗でした。お詫びします。 
    なお零戦一一型の翼端附近のキャンバーの工夫の部分だけは、余談とし使えそうだと思います。

    フォローありがとうございました。
    如風


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