1315 第2次大戦中のイギリス軍用機に12.7o機銃装備がほとんどないのは何故でしょう?
レンドリース機には全部ついているのに、自国製機はスピットEウィングのみです。
特にランカスターの防御機銃は終戦まで7.7oオンリーで、12.7oになるのは戦後のリンカーンからです。
色々理由はあるんでしょうが、他国がみんな12.7o級をそろえているのにイギリス機だけが装備しないのはどうしても不思議です。
イギリス軍が12.7oについてどう考えていたか知りたいです。
酔来亭天福

  1.  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88
     こちらの記述によるとランカスターは12.7mm機関銃を搭載しています。と同時に、搭載に当たって、また、搭載後も、いろいろと問題があったことも記されています。
     戦闘機については、20mm機関銃が使えたので、12.7mmでは威力不足と推測されたのではないかと愚考しております。
     
    hush

  2. せっかく新式の7.7mm(同じ7.7mmでもルイスやウィッカースと新式ブローニングではだいぶ違います)に更新したのにほどほどにしか通用しないとは困った、どうせ再更新の手間が掛かるならドイツ機に射程において優って撃ち勝てる20mmが理想だし戦前から用意していたから慣れてるし、20mmが積めない場合は7.7mm複数で置き換えよう、セットでついてくる場合には12.7mmでもいいけれど。
    という感じであったと私は解しております。
    12.7mmを積極的に選ぶ理由がなかった、と。




  3. hushさん、六さん、回答ありがとうございます。
    おかげさまでランカスター用12.7mm銃塔の開発経緯がわかりました。

    戦闘機に関しては、お二方にご意見頂いてすいませんが、いまだ納得に至ってません。
    必要があったからEウィングが作られたはずなんで、20mmがあるから12.7mmは要らなかったというのでは説明しきれない気がするのです。

    1.でご紹介のローズターレットの記事によれば、1942年には現場から要望されていたが、手続きに手間取り、銃塔開発に時間がかかり、さらに生産量も少ないという事情が重なって1944年後半にようやく使われだしたということです。
    爆撃隊が早くから要望していたのなら、撃つ対象は同じドイツ軍機のはずですので、戦闘機隊も早くから12.7mmが欲しかったんじゃないかと想像できます。

    Eウィングが使われ出すのは1944年ごろですが、ローズターレットのように完成に時間がかかったと仮定を立てたほうがまだ納得できる気がします。

    レンドリース機の12.7oを使った感想とか、Eウィング完成までの内部事情がわかればいいんですが。
    酔来亭天福

  4. すこし目をすがめて、遠くから眺めてみてはいかがでしょうか。

    撃つ対象は、英戦闘機にとっては敵爆撃機、英爆撃機にとっては敵戦闘機であって、同じではありません。
    WW2以前、戦闘機の武装と言えば7.7mmでした。WW2後は20〜30mmです。WW2・朝鮮戦争を挟む約10年、15年は、この変化の過程です。
    12.7mm級という「中途半端な」口径は、限られた過渡期にだけ見られるということもできます。

    戦間期のRAFの戦闘機は、《ゾーンファイター》と《インターセプター》の二本立てですが、どちらも、同級機銃を複数備える(さらに編隊の)爆撃機に撃ち負けるのではないかと、7.7mmx2の不足は課題となっています。これがグラジエーターを経て多銃主義になります。
    これとは別に、WW1ツェッペリン体験からか、強力な武装を備える第三の戦闘機は、重量過大、故障頻出、弾数の少なさによる失敗続きにもかかわらずくり返し計画され、試作されています。英空軍が関心を持ったのは20mm、37mm、40mmといった砲であって、12.7mm級ではありません。RAFは「空中戦艦」に恋した空軍なのです。
    この第三の戦闘機は、WW2開戦時には、ホワールウインドとデファイアントという形で存在していました。
    固定砲装備の単座戦闘機《キャノンファイター》をこの時点では双発で作らざるを得なかったのはエンジンの問題であって、20mmx4を敵爆撃機に向けられればどっちでもよいのです。
    デファフイアントは銃砲塔装備戦闘機の過渡的な答え(7.7mm多銃におけるグラジエーターのような)であって、「より本格的な」20mm砲塔装備の多発機も計画されています。

    計画段階のタイフーンは7.7mmx12ですが、やがてキャノンファイター構想を飲み込むことになります。タイフーンの開発遅れのため、スピット・ハリケーンで20mm装備が実現したと考えるとよいのではないでしょうか。スピットC/Eウイングも基本構想は20mmx4ですよね。

    7.7mm多銃は重量と投射量において好ましいものでしたし、焼夷徹甲弾で威力不足は補われるはずでした。
    でもやっぱり破壊力不足で20mmを急ぎます。
    装備してみると、判っていた弾数不足と故障に悩まされます。バーダーらが批判していますよね。
    重さもひどいものです。
    その妥協案が、Bや、C/Eの混載でしょう。
    が、グリフォンスピットやタイフーンでは20mmx4になるので、混載はあくまで過渡的なものでしょう。
    これはF4Fが12.7mmx4かx6かで迷ったのに対し、馬力にゆとりがあるF6Fは12.7mmx6あるいは20mmx4であるのと同様と捉えることができます。

    こうした中、12.7mmの出る幕はほとんどないように思われます。
    ロールスロイスの12.7mmはヒスパノと米ブローニング12.7mmが使える目処が立つと中止されています。
    ウィッカースの12.7mmは、12.7mmなら重いけどブロがマシ、でも同じヴッカースなら7.7mmのが軽くて発射速度速くていいや、と航空機用としては見捨てられています。
    馬力にゆとりがある場合、よい20mmがあれば12.7mmに出る幕はありません。マシだとされたプローニング12.7mmですが、本体だけの比較だと、ヒスパノIIの6割、Vの7割の重さがあるんです。なのに威力はガタ落ちで故障がちです。
    大戦中は12.7mmを主用した米軍も戦後はヒスパノあるいはマウザー系20mmに切り替えていっていますよね。

    なお、爆撃機の銃手にとっては、ドイツ戦闘機と撃ち合える12.7mmは歓迎すべき装備でした。
    が、同じ射界、同じ射撃時間を得るためには重くなります。銃同士の比較の他に、銃架・銃座ぶんも加わりますから。
    重くなれば遅くなり、敵地を飛行する時間が長くなります。
    さもなくば燃料か爆弾を減らすことになります。10回で済んだはずの出撃が11回になるかもしれません。7.7mm装備で10回と、12.7mm装備で11回と、悩むところです。
    機長あるいはそれ以上の幹部からしたら、12.7mmは単純にありがたい装備ではなく、いろんなトレードオフを必要とする難題なわけです。


  5. 六さん、再度の回答ありがとうございます。

    戦闘機の武装は20mm×4が最適とされたものの、スピットには文字通り荷が重いし主翼に出っ張りがたくさんできるしで余り適してないようですからね。
    つまりEウィングは必要だから作ったというより妥協の産物、あるいは小型版20mm砲の生産が進むまでのつなぎということなんですかね。

    六さんからの情報をもとに自分でも調べたところ、
    もともと地対空用としてビッカース12.7mmが使われていたが、これは威力がブローニングより小さかった。そのためロールスロイスが新しく航空用12.7mmを設計したが開発がうまく進まなかったので、結局はブローニングを使うことになった。
    戦争末期になってようやく12.7mmを使い出すのはどうもこんな内部事情があったっぽいですね。

    こう考えると納得いきます。
    あらためて回答ありがとうございました。
    酔来亭天福

  6. ご納得のあとに恐縮ですが・・・

    知る限り、ヒスパノII(50kg)からV(42kg)以上の小型化は試みていないと思います。
    Eウイングの混載仕様は、タイフーンが遅れた上に高空で使えず、テンペスト配備までスピットを使い続けなくてはならなかったから、でしょう。
    機体の更新のほうが、機銃の更新より基本的には楽なはずです。
    空軍省が望む機銃を運べる戦闘機を考えるのが基本であって、その戦闘機にあった機銃の混載の工夫は次善三善でしょう。

    同じ何ミリといっても実物はかなり多様です。
    各機銃の本体重量、弾頭重量、初速、発射速度、弾薬重量を比較してはいかがでしょう。
    使い分けと射程の差(有効射撃時間に利く)は後で考えるとして、とりあえず10秒ぶんの弾薬を積むと合計何kgになるか。
    ブローニングM2はエリコンFFより本体が重いわけです。

    ランカスターでいえば、7.7mmから12.7mmに積み替えたいと思うのは、漠然としたものではなく、切実な理由あってこそではないでしょうか? 銃座は無視して仮に本体と弾薬だけを仮に同じ重量に制限して比較した際、撃てる方向の数や、投射量はどうなるでしょうか。
    ローズタレット装備計画でも三種類の混載ですよね。

    7.7mmではどうしてもダメな理由がまずあって、
    ではナニカとなった際に、ヒスパノは防御銃として装備できる箇所に限りがあり、ビッカースとロールスはお蔵入り、ブロM2しか選択肢がない、のでは?

    そして42年というと、なんてことはない、ドイツを爆撃し始めた最初の年ですよね。
    でもじゃあなぜ、前方は7.7mmx2でよかったのでしょうね。


  7.  スピットファイアのEウィングへの12.7o搭載は、、今ひとつ信頼性に欠けた20mmのバックアップとして搭載されていた7.7o機銃が、大戦中期以降威力不足が指摘されるようになったことへの対処です。これを受けて、1944年時期には援英機用としてかなりの数が入っていて、余剰が生じていたブローニングの12.7oを搭載することが決定された、と言う経緯があります。
    大塚好古

  8.  Cウィングの時点でスピットファイアは20mm4挺装備が可能ですが、当時の機銃の信頼性問題と、重量及び抵抗増による性能低下を問題視する意見があったことから、20o機銃2門と、そのバックアップとなる7.7o機銃4門装備が一般化したという経緯も、念頭に置いておかれると良いと思います。
    大塚好古

  9. 大塚好古さん、回答ありがとうございます。本も書いてる専門家の人に回答もらえて感激です!

    おかげさまで、知りたかったEウィングの開発経緯がわかりました。
    あと、恥ずかしい話イギリスはブローニングM2をライセンス生産したと思ってたんです。アメリカ産をそのまま使ったんですね。
    7.7oの威力不足が指摘されるようになったのが大戦中期以降なんですか。他国よりずいぶん遅い印象です。

    六さんが何度も書かれてるタイフーン・テンペストの配備遅れも関係してくるのだという話もようやく飲み込めたところです。

    回答していただけた皆様に感謝です。

    酔来亭天福


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