1320 重い戦闘機が降下するのが速いのは、その重さを支える機体強度が強いから、降下速度の上限が大きいということなのでしょうか?
デスコン

  1.  あとエンジンが大きくて馬力が強いからというのもありそうですね。
     
    hush

  2. これは裏返して考えて、あえて軽い機体を作っているものは機体強度を削ってその分軽くしているからだ、としてみると良いのかも、ですね。


  3. 必要な機体強度を実行可能な範囲に治めるには空気力学の知見を適切に適用するのが不可欠という原則は、降下速度を早くする際にも変わりません。

    スピットファイヤの翼型は翼厚が薄く翼の最厚位置が前の方にあるという「一見古い」翼型ですが、衝撃波発生速度を遅く出来
    巡航速度での抵抗そして翼内容積で勝るが衝撃波を発生させやすい層流翼を装備したノースアメリカン・マスタングより、降下速度で勝ります。
    そのノースアメリカンもセイバーで本格的にジェット機に挑む際に翼平面形を後退翼にするだけでなく
    層流翼ではない、スピットに倣った衝撃波発生の遅い一見古い翼型を採用したのです。

    水平尾翼は超音速流の中では水平安定板全体を動かさないと効かないとか、
    同じく超音速流の中では断面積は胴体の其だけではなく翼の其も合算しないと実際を反映しないとか、


    にも。

  4. 自分が見ていた記事だと、重いから速いという事しか書かれていなく、なぜそうなるのか疑問に思っていたのですが、解消出来ました。
    更に、翼の形が影響するというのも勉強になりました。
    回答有り難うございます。
    デスコン

  5. 高い急降下速度に対応するには機体強度もそうですが剛性も必要になってきます。
    強度と剛性は別物というのはご存知ですね?
    急降下で遷音速に達したときに、圧縮性により発生するバフェットを抑えるためです。
    機体をコンパクトにまとめると剛性確保しやすいので、小さな機体は軽くても高い急降下速度を発揮できたりしますね。
    また機体よりプロペラが先に音速に近づきますんで、プロペラブレードもちゃんと遷音速に対応した剛性・翼型のものを装備する必要があります。

    超音速

  6. 反対にP-38などは重くて急降下ですぐ加速するのに、制限速度は低く抑えられたりしました。
    これは初期型でバフェット発生問題に悩まされたためです。
    超音速

  7. 超音速様<<
    強度は壊れないようにする力、剛性は形を維持する力だと考えています。
    つまりP-38は初期型から剛性を向上させることで、バフェットを発生しにくく改良されたということですね。

    UK様<<
    はい、重い機体にはその機体を浮かせる為の浮力が必要で、浮力と自重によるせん断力は重い機体ほど大きくなると考えていますので、降下でもその機体の強度を生かせると思っています。
    寡聞にして、具体的な数値や力などは分からないのですが、機体の引き上げは機体に最も負担がかかる行動だと思っています。
    デスコン

  8. 修正
    降下で加わる空気抵抗に対してもその機体の強度を生かせると思っています。
    デスコン

  9. にも。さんの回答に補足。ご存知でしたら失礼ですが、空気の圧縮性の影響について説明します。

    まず、音速の速さは気温によって変化します。
    物体表面を流れる空気は圧力の高い所と低い所ができます。断熱圧縮によって圧力が高い所は温度上昇で音速が速くなり、逆に圧力が低いと音速が遅くなります。
    このため、直線翼機の場合マッハ0.7ぐらいから、圧力の高い所と低い所の境界で衝撃波が発生。これが圧縮衝撃波です。これが現れてくる速度域を遷音速といいます。
    圧縮衝撃波は空気の流れを乱し、乱れた空気が機体表面や尾翼を叩いて振動させます。これが遷音速バフェットです。

    圧縮性の影響を遅らせるには後退翼が有名ですが、直線翼機でも薄翼を使うことで対処できます。
    にも。さんの言及するスピットの件がそうです。極端なのがF-104の主翼ですね。
    高速に対応したプロペラブレードというのが翼厚比数%ほどの薄翼ブレードでして、これで先端速度マッハ1近くまで衝撃失速せずに推力を発生できます。

    P-38は意外と厚翼でして、マッハ0.67でバフェットを発生し、さらに0.74以上になるとタックアンダーという機首が上がらなくなる現象が起きていました。タックアンダーとは圧縮性の影響による風圧中心の後退および、水平尾翼への吹き下ろしが弱くなることによる機首下げモーメントが発生することです。
    最初水平尾翼のフラッターが疑われたため外板を厚板にしたり(剛性を上げた)、外部マスバランスを追加したりしたのですが、バフェット対策になったのがコクピットナセルと主翼前縁の取り付け部分に追加したフィレットです。翼胴干渉によって圧縮性の影響を早く起こしバフェットの原因となっていたので翼胴取り付け部を整形したのです。

    タックアンダーを解決したのがのちに装備したダイブフラップです。
    同じく意外と厚翼のF8Fもマッハ0.7程度でタックアンダーを起こしていたため、似たようなダイブリカバリーフラップというものを装備しました。
    一見過速を抑えるダイブブレーキに見えますが、これは翼断面型のカンバーを変えるような効果をもっており、翼上下面の空気の流れを変え、圧縮衝撃波の発生を悪影響の無い方向へもっていくことができるのです。
    超音速

  10. 勉強になります。ありがとうございます。
    デスコン

  11. 構造の話に移ります。

    バフェットによって主翼・尾翼が振動するとフラッターと呼ばれる現象になります。
    フラッターを抑えるため剛性を高めるのです。
    零戦は外板を厚板にするなどして剛性を高め、急降下制限速度を上げていき最終的に740km/hまで可能になりました。

    高速に対応するには主翼のねじれ剛性も必要でして、スピットの主翼は主桁とその前方の外板でD型のトーションボックスを構成し、薄翼でありながら高いねじれ剛性を確保しています。
    Bf109の主翼は意外とこの点であまりいい構造ではないそうです。
    ねじれ剛性が高いとフラッターも起きにくく、また高速になるとエルロンリバーサルという現象が起きてくるのですが、これも抑えられます。

    Fw190や鍾馗のように短い主翼・アスペクト比の小さい主翼も相対的に剛性が高くなり高速時に有利ですね。
    超音速

  12. どうも有難う御座いました。
    UK

  13. ありがとうございました。
    デスコン

  14. 重い戦闘機の代表のようなF6FとF4Uですが、両機とも耐荷重強度は十分確保しているものの、急降下制限速度はバフェットが激しくなるため700キロ台半ばに抑えられ、計画値の800km/h超を達成できませんでした。
    後期型では尾部などが強化されようやく800キロ弱まで出せるようになります。

    急降下で遷音速まで出すには、耐荷重強度とは違った方向の構造設計と、しかるべき空力設計が必要なわけです。

    長文になってしまい後悔してますが言いたいことはくみとって頂けたかなと思います。

    超音速

  15. とても分かりやすかったです。
    有り難う御座いました。
    デスコン

  16. >超音速様 私は一知半解なので超音速様が詳しく書いてくれたおかげで非常に助かりました。

    付記すると、スピットの主翼は最大翼厚部が翼弦の前縁から25%と之だけでも前の方に在るのですが
    主桁は発動機の防火壁に合わせ最大翼厚部より前の前縁20%の位置にあります。
    Bf109の主桁は前年から40%と最大翼厚部より大幅に後ろにある上に
    主脚を収納するために大きく切り欠かれトーションボックスとしての体をなしてないそうです。

    にも。

  17. 構造強度の問題も重要ですが、降下時の加速の良さという点で考えるなら2乗3乗の法則が適用されると思います。

    すなわち相似形を保ったまま機体サイズを大型化すれば、その2乗に比例して機体表面積が大きくなり抵抗が増すが、それ以上に機体重量が3乗に比例して重くなるので、トータルで見ると降下時の加速が速くなるという事です。

    相似形でなくても、基本的に大型化するほど降下時の加速は速くなる傾向があると思います。
    みいつ

  18. 多くの回答、有り難うございます。
    デスコン


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