1334 第二次大戦の頃のイギリス、ソ連、イタリア、フランスは自力だとどれくらいのオクタン価の航空燃料を作れたのでしょうか?
ヘルにゃんこ

  1. 世傑WW2ヤコブレフ戦闘機から

    ソ連で生産されていたのはオクタン価78のB-78で(数字がオクタン価を示す)、開戦当時にはまだB-70やB-73も使われ、B-78の使用量は全体の49%にとどまっていたという。〜中略〜
    航空機用燃料も武器貸与法により大量に送られ、その大部分は99〜100のハイオク燃料だった。〜中略〜
    ソ連ではハイオク燃料をソ連製燃料に混ぜてオクタン価を高めるのにも使い、〜中略〜
    ソ連の統計でアメリカなどから供給されたのは全量の18.1%という数字もあるが、実際にはそれよりかなり多かったと思われる。
    超音速

  2. 英国は長く77で、のち87、開戦のころにアメリカから100が供給されるようになつたようです。


  3. シュナイダーカップに参加してた英仏伊は同じ時期に発動機高出力化のノウハウを磨いたのでだいたい同じか、英国が少し先んじてるのでは。
    米の英への100オクタン供給はBoB直前かそれよりも後だったのでは。
    にも。

  4. >3 主用燃料は77/87だったはずです。
    100オクタン供給の正確な時期をご存じならお知らせくださいな。


  5. 英軍への100オクタン供給の正確な時期は私も知りません。
    スピットファイア同様に、大陸に展開したハリケーンには供給されなかったが英本土のそれには供給された
    という話にはリアリティを感じますが、事実かどうか知りません。
    にも。

  6. >5 ご存じないのなら
    >>BoB直前かそれよりも後だったのでは。
    と、書かれるのは果たして適切でしょうか。

    月ごとの輸入量や、100オクタンへの切り替えの具体的な数値(何Sqが何年何月)等は把握しておりませんが、おおまかには、開戦の頃から輸入開始し、相当量の備蓄が出来てから100オクタンへの切り替えと理解しています。
    「BoB直前かそれよりも後」「大陸に展開したハリケーンには供給されなかったが英本土のそれには供給された」等はいずれも切り替えの話でしょう。



  7. 確かに、供給から切り替えの間には、必要量が備蓄されなければならないという重大なタイムラグが有ります。失礼しました
    思えば、嘗てのシュナイダーカップ等レースに参加した国々ならば
    レーサー向けの特殊燃料をごく少量なら供給出来そうですね、何処まで戦力に成るかは兎も角。

    英国が、限られた量だけ供給された100オクタンをソ連の様に混ぜて航空燃料多数の底上げに使うのではなく、
    本土から運用する機体に集中供給させたのは、
    フランスでの地上戦ではなく本土からの邀撃・爆撃で勝つという考えになるのでしょうか。

    にも。

  8. これも詳細は持ち合わせておりませんが。
    フランスで使わなかったのは、間に合わなかった、フランスは諦めた、その両方、ではないでしょうか。
    混ぜて底上げでなく分けたのは、第一線機は100オクタンとし、手持ちの87オクタンは第二線機で消費、ではないでしょうか。もっとも、第二線機も少なくとも一部は、大戦後半は100オクタンな気がします(マイルズ・モニターはR-2600ですが、この87オクタン仕様ってありますかね)。

    もちろん、航空機用ハイオクタン燃料については各国の政府のコントロールがあるわけですが、英米に関しては、戦前から、国策企業というより独立性の高い多国籍企業が市場を支配していたという点も、ソ連向き輸出とは異なる背景であるように思えます。
    ヘンドン航空ショウのプログラムから石油関係の公告を拾って見ると、
    1934
    シェル、ナショナルベンゼンミクスチャー、パロッツエチルペトロール(シュ杯燃料製造)、カーレスコーレン(石炭液化)
    1936
    シェル、モービル、エッソ(既におなじみのロゴ)、カストロール、カーレスコーレンとなります。地場が減って米2ブランドが入って来ています。
    従って、どこの国が自力で何オクタンを「作れたか」という原質問自体、英米についてはそもそもちょっと合っていないのかもしれません。


  9. 100オクタン超の高オクタン価ガソリン(アヴガス)はそれら英米系の一握り多国籍企業「だけ」が作れる特権材として戦前戦後を終始し、戦後ソ連で辛うじて100オクタン迄国産化出来たか出来ないかと理解してます。
    原質問は「米国と対立した場合に」を大前提としながら明言してないのですね。
    英国ならR-2600の87オクタン仕様が無くとも工夫して運用したと思います。挙げられたマイルズ・モニターは標的曳航機ですし
    にも。

  10. 戦後ソ連がパフォーマンスナンバー百何十と云った様なハイオクタンアヴガスを国産化してない(多分)とすれば航空発動機のタービンへの移行が見えたからで
    それは第二次世界大戦が数年遅れたらと仮定した場合にも当て嵌ります。
    多国籍石油企業とアメリカ政府がハイオク開発に注力したのは先ず戦前の民間航空向けという「平和な」用途で
    その投資の継続が開戦で切り替わって戦闘用航空機の高性能化に宛てられたが最初からそうではない。
    航空機の高性能化にオクタン価の継続した向上は絶対必須ではなく他の途があり現に戦後そうなった
    にも。

  11. 開戦で切り替わってでは無く、参戦した際の予定通り切り替えてですね。ハイオクへの投資であれ長距離民間旅客機への投資であれ、
    1920年代迄遡る軍による排気タービンの開発と軌を一にしたデュアルユースですから。
    その余波で米は航空用タービンエンジンに少し遅れを取り、
    遅れを取り返す投資をターボジェットに集中させたためターボプロップでは大きく英に遅れを取りました。
    にも。

  12. 100オクタン航空ガソリンがバトル・オブ・ブリテンで大規模に使用されるまでについて、調べてみました。ご参考までに・・・。

    【1926年】米国エチル社のエドガー博士がイソオクタンを発見(異説有り)
    【1930年】エドガー博士がオクタン価を提案
    【1931年】オクタン価・旧リサーチ法が完成(トルエン価の終焉)
    【1932年】オクタン価・モーター法が完成
    【1933年】米国材料試験協会ASTM、オクタン価・モーター法を採用
    【1935年】英国がオクタン価・モーター法を採用
    【193?年】蘭・英国シェル社が100オクタン航空ガソリンを開発(芳香族成分が非常に高いボルネオ産原油ベース)
    【193?年】英国空軍省が米国エッソ社の間で100オクタン航空ガソリン製造の秘密交渉を開始(シェル社の産油地、工場のみでは英空軍の必要量を賄えない為)
    【1938年】米国陸軍飛行隊が100オクタン航空ガソリンを正規使用開始(極秘事項)
    【193?年】英国空軍省と米国エッソ社の間で長期契約が締結
    【1939年】米国政府が戦時中立法を発動し、100オクタン航空ガソリンの輸出を禁止
    【193?年】米・英国政府の数ヶ月の交渉の末に妥協が成立し、英国への供給を再開(現金即時払い)

    参考にした書籍は以下です。

    「ガソリンの時代」熊崎 照(オイル・レポート社)
    「バトル・オブ・ブリテン」R.ハウ D.リチャーズ(新潮社)付属資料38〜39頁

    因みに、シェル社の100オクタン航空ガソリンですが、芳香族成分が非常に高いボルネオ産原油により(*)、優秀なオクタン価のベースガソリンを作り、それに高オクタン価配合剤(配合ガソリン)を加えて製造していました。その高オクタン価配合剤には、アメリカで製造した工業用イソオクタンが使われていました。
    (*)当時の高オクタン価ガソリン製造の主流は分解(クラッキング)法で、改質(リフォーミング)法は未だ確立されていなかった為、原油の性状(パラフィン成分が少なく芳香族成分の多い物が良い)がガソリンのオクタン価や収率に大きく影響しました。
    Luna

  13. 元質問者様、答えが出たようです。高オクタン価ガソリンを「自力で」得るには
    ・分解法で高オクタンのガソリンを作れる原油を採掘出来る油田を「自力で」管掌出来ているか
    若しくは
    ・改質法を確立させ、分解法では高オクタンを得られない原料からでも「自力で」高オクタン価ガソリンを作れるようにするか
    どうでしょうか。

    にも。

  14. 戦中に出版された本ですが、
    「航空燃料の化学」堀口 博(誠文堂新光社)昭和18年
    付録 各国航空機ガソリン規格一覽表
    http://iss.ndl.go.jp/books/R100000039-I001782875-00
    に、各国の航空機ガソリンの規格が70〜100オクタンまで、80種類ぐらい掲載されています。あくまで規格ですので、自力で作れたという意味とは異なりますが、幾らか参考になるのではないかと思います。
    以下にソ連(ソ連航空)の規格を書き出してみました。、

    90オクタン:カリンスク(アンチノック剤有り)
    87オクタン:バクー(アンチノック剤有り)
    80オクタン:グロツニー(アンチノック剤有り)
    74オクタン:カリンスク(アンチノック剤無し)
    72オクタン:バクー(アンチノック剤無し)
    70オクタン:グロツニー(アンチノック剤無し)

    アンチノック剤=四エチル鉛

    また、国会図書館デジタルコレクションには、以下の様な資料も有り、ソ連各地の原油の性状等が詳しく記載されています。
    極秘 ソ連研究資料. 第49号 ソ連邦石油業実態調査報告 昭和14年12月
    http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1114023

    Luna

  15. 【追記】
    分解(クラッキング)法による高オクタン価ガソリンの生産は、先ず、熱分解法によって、自動車用ガソリンで始まりましたが、熱分解ガソリンの品質では航空機に使用できず、航空機ではベースガソリンに第一次大戦の頃と変わらず直留ガソリンを使用し、それに高オクタン価配合剤とアンチノック剤を加える事によってオクタン価を上げるという手法がとられていました。1937年に高品質の高オクタン価ガソリンを製造できるフ−ドリー・プロセスと呼ばれる接触分解法が出現し、以降、高オクタン価航空ガソリン(ベースガソリン)製造の主流となりました。

    Luna


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