1344 主として太平洋戦争中の日本機で、同一の機体(エンジン)で燃料オクタン価を変えて運転するケースがあったと伝えられています。(例1 彩雲に高オクタン燃料と低オクタン燃料を別々のタンクに入れて、飛行状況によって、切り替えて飛行した。例2 紫電改に、100オクタン燃料を使用すると、飛行性能が向上した)これらはおそらくそういう事実があったものと思います。
 しかしそこで疑問なのは、自動車などでもそうですが、レギュラー指定の車に、ハイオクを入れてもエンジン出力も燃費も何も変わらないように、航空機でも同じだったのではないかと思うのです。それは高オクタン価燃料は、ノッキングを抑制するためのもので、もともとレギュラーでノッキングが起こらないように点火時期等が適合されているエンジンにハイオクを入れても、ノッキングが起きないと言うことでは何も変わらないと言うことになるからです。ハイオクを入れてエンジン出力や燃費を向上させるには、まずは点火時期を再適合(一般に進角側へ再適合)する必要があります。
 ならば大戦中の航空機も飛行中などに燃料オクタン価を切り替える場合、点火時期等の切り替え装置が付いていたのかどうか、あるいは考えずらいことですが他の手段で対応していたのか、その辺りを御存知の方がおられましたら、お教えいただければと思います。宜しくお願いいたします。
飛行機猫

  1. 1201番のスレッドの続きというわけですね。

    とりあえず1183番はお読みになられましたか?
    超音速

  2. 超音速様 早速の応答有難うございます。
    1、1201番の続きのようなスレッドですみません。どうもこの件は釈然としないのでつい話をぶり返すようなスレッドを立ててしまいました。
    2、と言いますのが、もし点火時期等一切変更なく、燃料だけハイオクに代えて飛行性能が向上したとするならば、それは大変なことだと思ったからです。つまりそれではハイオクを使用して性能が向上したと言うよりも、レギュラー使用時に既に微細なノックなどの異常燃焼が起こっていたのが、ハイオク使用によって燃焼が正常に戻ってエンジンが快調になったと言うことではないかと・・・だからその状態でレギュラーを使用すると、ピストンやプラグ溶損などのエンジン損傷がいつ起きてもおかしくない状態で運転することになるのではないかと思ったのです。でもいくら戦時中とは言え、そこまで荒っぽい運転をするだろうかと・・・そんな運転をメーカーや開発サイドが認めるだろうかとも・・・思ったのです。それでちょっとこの件はハッキリさせたいなと思ったしだいです。
    2、しかし1183番を読み直し、超音速様によると当時のエンジンは固定進角とのこと・・・。これも一寸驚きでした。私などは、自動車用の電子制御式点火システムしか知らないもので、それからすると、点火時期は、エンジン回転数/ブースト圧マップ上で、運転状態に応じて、最適値が与えられるものと・・・それがまず頭にありました。それで昔の機械式点火システムと言うと、回転数方向をガバナーなどで、ブースト圧方向をダイアフラムなどで制御して運転しているものと、漠然と思っていました。しかしそれが当時の航空用エンジンは固定進角と言うことになると、エンジンと言うものはそれ程ラフな運転にも耐えうるものなのかと・・・ちょっと私の既成概念が打ち砕かれた感じです。
    3、しかし何れにせよハイオクを入れて、そのままでエンジン性能が上がると言うのは、レギュラーでかなり無理な運転をしているか、点火時期の切り替えをやっているか何れかしか考えられない気がするのです・・・。当時のエンジンは固定進角でアイドルから、全開、最高回転数域まで運転できるくらいですから、レギュラーでも、少々ノッキングを起こしながらも、そこそこ回せる???と言うことなのでしょうか。ウーン増々わからなくなりました。
    飛行機猫

  3. 1183で「一般的には固定進角」と書いたのは、地上でのみ調整可で飛行中はできないといったものも含んでいます。
    ビル・ガンストン氏の著書での「ときには点火時期制御をもつものがあり」という記述を根拠にしています。
    あとこのような過去ログもあります。
    http://www.warbirds.jp/ansq/1/A2000904.html
    超音速

  4. 少し点火時期にこだわりすぎていませんか?
    ノッキングは点火時期だけでなく、空燃比、回転数、スロットル開度、過給圧、筒温など、様々な要素が絡みます。

    もちろん高オクタン燃料向けの発動機に、設計値より低いオクタン価の燃料を入れれば設計した性能は出せませんが、飛べない訳ではありません。(程度問題はありますが)

    フェリー飛行など、最初から最高出力が不要と判っていれば、低オクタン燃料を入れると共に地上で点火時期調整もあるでしょう。

    昭和時代のキャブ付きの自動車は、無理にアクセルを踏むと軽くノッキングする位がベストな調整でした。
    あとはアクセルワークとギアチェンジでノッキングさせない様に走ったものです。
    それに比べて航空機は負荷変動率が低い上、自動車より多数のパラメタを自分で調整できます。
    出力低下を甘受すれば、最近のエンジンより融通が効くかもしれません。

    自動車と航空機のエンジンは比較できませんが、私も愛車で灯油50%ミックスして走った事すらあります。
    点火時期などイジらなくても、アクセルワークで何とかなりましたよ。
    わんける

  5. 超音速様、ワンケル様 色々と御教唆有難うございました。

    1、皆さんが言われるように、例1ような場合は、オクタン価にあわせて固定進角値(初期進角値)を地上整備員が調整すれば、両オクタン燃料に対応可能かもしれませんね。単純な話しでした。
    2、点火時期にこだわる件ですが、次のように考えています。
    この問題は、まず低オクタン燃料で進角等が適合されたエンジンに、高オクタン燃料を入れて、出力向上を図るにはどうすれば良いかと言う所から始まっています。それには一般的には点火進角を再適合するしかないと・・・そう言うことになります。空燃比を変えても出力アップにはならないわけです。
    3、しかしそれで、固定進角ならばなおさらですが、進角値は全運転領域(全ブースト、回転数領域)高オクタン用に再適合されてしまうわけです。するとそこに例2の彩雲のように低オクタン燃料を使うと、当然多くの運転領域でノッキングが発生する可能性が出て来るわけです。それには進角値を機上で切り替えると言う選択肢がまずあると思います。しかし部分負荷域については、ワンケルさんが言われるように、ミックスチュア・コントロール・レバーを使って空燃比をおそらく濃くすることによって、ノッキングを抑制する余地はあると思います。と言うのは部分負荷域は、出力よりも燃費を優先させるためにかなり薄い空燃比適合をしているはずだからです。だから濃くする余地がある。(しかし全開域は、出力に最適化するために既に濃く適合しているはずで、濃くする余地は無く、濃くすると出力も落ちる・・・)例2の彩雲などもそうしていたのかもしれません。(それで勿論その場合は、低オクタン燃料では全開域は仕えない、部分負荷域のみ・・・つまり巡航時のみの使用となります。)
    4、確かにワンケルさんがおっしゃる様に、ガソリン・エンジンは、指定されたよりも低オクタン燃料を使ってもそこそこ回るほどの冗長性を持っているかもしれませんね。今回改めてそのことを思わされました。しかしそうして車に乗ってみて、そこそこ走れたと言うことと、それを工学的に品質保証すると言うことは別の問題かと。やはりオクタン価を変えて信頼性を保証するには、ベンチで全運転領域でのノック発生の有無の調査(ノックには可聴ノックだけではなくて、微細な非可聴ノックもあります・・・)、エンジン各部の測温、側圧によるエンジン負荷の調査・・・あるいは場合によっては、ベンチ耐久試験とその後のエンジンの分解調査が必要かと・・・。エンジンにとってオクタン価が変わり進角値が変わると言うのは、燃焼状態が変わると言うことですから・・・そう簡単なことではなくて・・・信頼性を保証しようとすれば、大げさかもしれませんが・・・やっぱりこのくらいやらないといけないかなと・・・思ったりしています。
    5、大戦中はいざ知らず、現代の感覚で行きますと、ユーザーがレギュラー仕様車にハイオクを入れて、勝手に進角を進めて、パワーが出ましたと喜んでいたとするならば、エンジニアや整備の方は腰を抜かすのではないでしょうか???まあ戦時中はそれだけ燃料事情が厳しく、やむにやまれない中での対応だったと言うことでもあるかと思います・・・。
    飛行機猫


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