1382 大日本帝国海軍の航空機の開発に関する考え方について教えてください。

本命視していたエンジンの開発が遅延し、ひとまず保険のエンジンで機体の開発を始めなければならない事態になったと仮定します。
その保険のエンジンが本命のエンジンよりも重く、燃費も悪かった場合、機体の設計に対する要求はどのようになるのでしょうか。

例えば、以下の3つのようなやり方があるのではないかと考えております。
@本命のエンジンに適した機体として設計する。保険のエンジンに対して機体規模が過少となることによる弊害には目をつぶる。
A保険のエンジンに適した機体として設計する。本命のエンジンに対して機体規模が過大となることによる弊害には目をつぶる。
B本命エンジンの開発完了まで機体の開発を延期するので、仮定した状況には陥らない。

冷泉

  1. > 〜ならない事態になったと仮定します。

    という仮定の話よりも、実例で話をした方がよいように思います。

    比較的近い例は零戦ではないでしょうか?
    十二試艦戦での、栄と瑞星の候補としての入れ替わり課程と、それによって機体側の設計にどう影響が出ているかを調べられたらよいのではないかと思います。

    あるいは、彩雲、烈風の低圧燃料噴射装置装備型の位置づけなどでもよいかもしれません。


  2. 質問を読むと機体の設計がゼロから始まると考えられているように見えます。
    計画要求書が交付される時点では機体規模は決まっていますし、兵装、燃料搭載量も決まっています。
    それに対応できる発動機が候補に挙げられるのです。
    どんな形態で、概ねどんな大きさでどの程度の性能の機体を作るという点は計画要求書交付、すなわち試作発注以前にほぼ決まっていて、そこから既に研究されている候補となる発動機を指定します。
    候補AまたはBを使って自由に設計せよ、というものではなく、候補Aがダメなら、候補Bで補えるように初めから計画されているのです。
    BUN

  3. エンジンの選定というものは、設計者が勝手に選んではならないものです。
    機体以上に航空エンジンの生産は政策として確立されていなければなりません。
    軍用機の設計が複数社間の競争試作という形を取っていた時代には「候補」という形もあり得ましたが、その後に一社への試作発注が常態となると発動機の選定はほぼ一種に狭められるようになります。
    機体がどうであるかよりも、エンジンをこれからどれだけ生産するかという問題の方がはるかに重要なのです。
    BUN

  4. 片様、BUN様
    ご教授いただきありがとうございます。
    早速、十二試艦戦について調べてまいりました。

    十二試艦上戦闘機計画要求書案議事摘要を読むと、航続力、着速、最高速度の関係についての記載が多く、また具体的にありました。つまり計画要求書が作成される段階でエンジンの燃費、重量、直径について目安があり、それに適合するものなければ候補にならないわけですね。
    (栄への期待の高さを見ると、栄をたたき台に計画要求書が作成されたようにも思えます。)
    また栄と瑞星についても、栄がやや勝るがほぼ同等のエンジンとみなされているように読めました。十二試艦戦では「栄がダメなら、瑞星で補えるように」なっていたということでしょうか。

    瑞星→栄の換装に伴う機体への影響についてですが、カウリング周りの改設計以外では影響が出ていないのではないでしょうか。三菱の主張の通り、A6M1が270knを超えていたのであれば、まさに栄がダメでも瑞星で補えたことを示しているように思えます。

    彩雲、烈風についてはもう少し調べてみようと思います。

    冷泉

  5. 瑞星は、出力的には栄のワンランク下。けれど、小直径とすることで空力的なメリットを得ようという発動機です。
    栄で計画した十二試艦戦が瑞星に変更になっても、カウリングや胴体は絞られたりせずに、将来に実現するだろう栄の完成に備えて、栄想定のまま作られています。


  6. つまり、

    ○本命のエンジンに適した機体として設計する。保険のエンジンに対して機体規模が過大となることによる弊害には目をつぶる。

    というのが、十二試艦戦の場合です。



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