1399 大戦期の戦闘機の補助翼形状について質問です。
ここや詳しい人の話ではしばしば「零戦や隼の補助翼は幅が大きく、特に細長い」、これが高速時の操舵の重さに繋がるという話があります。たしかに迅速な横転を可能にする欧米機のものはどれも寸詰まりで幅の割に大翼弦の補助翼である印象を受けます。しかし一方でF6F-3などは折り畳み翼の関係上補助翼幅を大きく取れず大翼弦のものになり操舵が重いものとなった、など大翼弦のものは操舵が重いかの様な事例が見られます(F6Fは折り畳みのせいで操縦系統も複雑化し悪化したともありますが)。補助翼のアスペクト比は高速時の操舵性にどの様な影響を及ぼすのか改めて教えてください。翼型にもよるでしょうが、高速戦闘を行う戦闘機には同じ補助翼面積でもアスペクト比の大きいものより小さい方が好ましいのでしょうか。
パンジャンドラム

  1. いえ、主翼の大きさはマチマチなので主翼との対比で印象は変わる事と、形が必ずしも長方形ではなく歪なもので主翼の一部を為しているので私が各航空機の補助翼の絶対的なスケールを掴めていないだけなのかもしれません。確かに絶対的な面積では隼や零戦などは相当のものでしょう。あと鍾馗も意外に巨大です。
    ともかく面積一緒なら形状によって大きく差が出るという事はあるのでしょうか?
    パンジャンドラム

  2. フラップとの翼幅の取り合いの関係じゃないでしょうか。
    翼端近くは翼端渦で揚力係数が下がっているのでエルロンはなるべく長い幅を取りたいのですが、翼面荷重が大きかったり着陸/着艦速度を抑えたいとかでフラップの方に大きな幅を取られ、そのぶんエルロンが小幅になっているものと思います。

    高速での効きとか重さとかは、翼端形状との関係や断面形・構造、バランスタブやマスバランスの有無など色々関係してくるので一概には言えないです。
    超音速

  3. フラップとの兼ね合いは彗星やP-51もそうでしたよね。F6Fも確かにそうでした。大戦期の横転に優れるとされる機体のエルロンの多くは補助翼タブ無しでやれていますし必ずしも寸詰まりではないですね。高速における補助翼形状に関しては正解は存在しないという事でしょうかね。
    しかしモーメントを考えると補助翼を大翼弦とし幅を詰めた方が横転には有利ですかね。こちらは速度域に関わらない話だと思いますが。
    パンジャンドラム

  4. 異論があって当然のことを、2つ書いてみたい。 一つはエルロンの翼幅方向長さが長い場合の剛性不足?について、もう一つはベテランパイロットはエルロン操舵の重さを回避する技をもっていたらしいこと。

    (1) 剛性不足のためエルロンが捩れたり曲がったりする問題の解釈
     零戦の場合初期に補助翼回転―主翼捩れフラッターが発生し、主翼外板の増厚と補助翼のマスバランス(錘)の増加が図られた。
     しかしこのとき補助翼単独のフラッターは指摘されず、補助翼が羽布張りであるための剛性不足も指摘されていない。
     従って、零戦の場合には補助翼の剛性不足はあまり気にしなくてもよいのではないだろうか?

    (2) ベテランパイロットの補助翼操舵における重さ軽減術
     私には長年の不思議な補助翼操舵法があった。 硫黄島沖での坂井氏の射弾回避術。 左旋回中に90°バンクまで左ロールさせる部分だ。
     先行して方向舵ペダルを左に踏み右滑りさせ補助翼で左ロールさせ、次いで方向舵を左にぐいと踏んでから操縦桿を突っ込みながら左に倒す操作だ。
     注目すべきは、右滑りー左ロールを2セットやっていること。 古い自動車の運転法でダブルクラッチと言うのがあり、単にアクセルを踏めばいいはずのところを2回に分けてアクセルを踏む術があり、こっちは分かるが零戦は分からないままであった。 なお、左ロールに右滑りを先行させるのは、右滑り自体が左ロールモーメントを誘起するのでありがたいのであるが、2セットの理由が分からなかった。

     答えが分かったのは、次の文献のお蔭。
     「YS-11の方向舵(スプリングタブ)、島文雄、日本航空宇宙学会誌、第42巻第487号、1994年8月、P8〜11

     これは普通に読めば、お題に記載されているF6Fのスプリングタブがなんで凄いのかが分かる解説書で、零戦のバランスタブがなにか問題がないかを探すヒントにもなりそうな代物ですが、ここでの興味はそこではない。
     YS11の方向舵は横滑り状態では、操舵力が非線形的に低下する(原本第2図参照)と書いてあったのだ。
     この状態は補助翼では、左ロールを先行させれば方向舵の横滑り状態になり、操舵力の低下が期待されるわけです。その状態でロールの舵を大きく使えば、腕力で大きく引けると言う訳です
     但し、零戦に於いて引くのが難しい状況の舵角が、YS11において横滑りによって舵力が低下する舵角範囲と一致するかは不明です。 また非線形には舵を取られる等の感触の問題も伴います。

     しかしながら、坂井氏が急いでロールしたいときにわざわざ2セットに分けてロール操作をしているわけで、その理由としてはぴったりだと考えています。
     以上がベテランパイロットはロール操舵の操舵力低減術を持っている説です。零戦52型がバランスタブなしで特に現場から大きな不満もなかった理由にもなろうかと考えます。
    如風

  5. 超音速様、如風様回答ありがとうございます。

    私は以前とある零戦写真化にインスパイアされた事もあり、12m翼にバランスタブを持つ本来の初期型零戦(及び二一型後期型あるいは二二型)の運動性こそ完成形などと考え、バランスタブ付きの二二型などを信仰視するかの如き質問を立てた筈でしたが(過去ログが見つからない)、そのやり取り内で、艦載機たる零戦の12m翼時代には「低速と高速のヂレンマ」なるものが堀越技師はじめ開発陣の中で問題になっていた事を教わりました。どうやらバランスタブは本来必要ない低速時はむしろ補助翼の空力を歪ならしめ効きを阻害するだけの荷物であり、かといって低速時向けの大型補助翼は高速時に効き悪くバランスタブを外すとまともに操舵出来ない、すなわち低速では軽いがスカスカで高速ではカチカチで動かないものを強いらざるを得ないという件を知らされました。そこでヂレンマの解決に至ったのが補助翼内端を切断した三二型の補助翼で、バランスタブ撤去により低速時の効きは改善、高速時も受ける動圧の減少によりある程度動かせるようになったと大変会心の補助翼設計だったという回想でした。私はそこで見方が変わりました。
    そこで欧米機の様な寸詰まり型の補助翼アスペクト比にも更に何かロール性能において利点があったのか知りたくこの質問を立てた次第です。
    ですが今は面積の問題もある様に思えてはいますが、もう上げてしまったので「補助翼アスペクト比の妥当性とは何処にあるか?」を書きたいと思います。
    他の要素を均一化し平面形状のみで比較検討という論を寡聞にして知らないので。
    パンジャンドラム

  6. 誤字 書きたいと思いますではなく、聞きたいと思います、です。
    この点平面図を見ていて大きく細長いタイプの補助翼を持つ二式戦闘機鍾馗の高速時ロール性能は必ずしも欧米流に近しい形状の四式戦闘機疾風を上回るのか?など(米軍レポートの断片的情報を除き)ロール性能の具体値に乏しい日本陸軍機のロール性能の考察にも繋がる手掛かりになればと思う次第です。
    sage

  7. 上のHNはミスです。
    パンジャンドラム

  8. ジェット戦闘機・爆撃機のエルロンもあえて低アスペクト比にしてる様子はありませんね。
    エルロンもアスペクト比を小さくすると翼端渦が大きくなって効率が悪くなるので高速で有利というわけではないはずです。
    超音速

  9. そういえば黎明期から初期のジェット機は人力操舵でしたね。これで不都合に陥ったというのは聞きませんし、アスペクト比が小さい補助翼の機体の高速横転が良好に見えるのは単にフラップとの兼ね合いで補助翼の絶対的な大きさが小さいだけなんでしょうね。
    高翼面荷重機で高速戦闘機の疾風ならばバランスタブを装備しても何ら違和感はないのですが、陸軍は単発機の補助翼には特にタブを付けませんね。高速機が多いのに。一応隼は昇降舵にはスプリングタブが追加されたそうですが。
    パンジャンドラム

  10. 一式戦にスプリングタブですか。知りませんでした。スプリングタブのスプリングは、堀越技師の昇降舵の剛性低下法の効果をもっていますから、中島飛行機の技術者の心意気を感じる話ですね。

    話は本題の補助翼のアスペクト比問題に戻ります。
    話を単純化して、取り敢えずフラップとのトレードオフを一旦脇に置いて、先ずはどのような補助翼のヒンジ軸位置までの長さの主翼の翼弦長に対する比率が好まれるのかに絞ります。
    考慮すべき条件を、現状人力操舵であり、一般的に所要のロールモーメントが得にくい状況にあるものとします。
    この場合、ヒンジ軸までの長さを変えながら、単位翼幅当たりについて、操作力1sに得られる主翼の増加揚力の最大がどのようなヒンジ位置かを調べると取り敢えず答えにならないでしょうか。 (なお、各実験に於いて操縦桿のストロークエンドを所要ロールモーメントになるようリンク比を調整しておく必要はあると思いますが。)
    私はこの場合の答えは知りませんが、フラップとのトレードオフの考慮が必要ない水平尾翼は、このような考え方の結果なのだと思いますが如何でしょうか
    如風

  11. 隼の昇降舵のタブはトリムタブでは?
    超音速

  12. ツイッターのミリタリークラスタの不確認情報です。日本機でスプリングタブ装備機など寡聞にして知りませんから別のタブかもしれません。しかし隼にはトリムタブが無いため特攻訓練の際には必死に抑えて飛んだとの証言をどこかで見たのですが…。これもネットですが。
    また零戦や隼などの実機の補助翼形状が最適だったかは実機の外皮を取っ払って操縦桿のストロークや長さ、具体的なリンク機構の詳細な寸法形状・構成まで見ないとダメなのですね(そりゃ当たり前だったか…)。

    あとどうやらネットを漁りまくっていると、よく零戦のクソロールだの出典にされるNACAレポートナンバー868は実はエルロンをどうしたら操縦はどうなるかの研究だった事が分かりました。英語は壊滅している私ですがここに何かヒントがあるかもしれません。まだほとんど目を通していない状況ですが
    http://naca.central.cranfield.ac.uk/reports/1947/naca-report-868.pdf
    パンジャンドラム

  13. パンジャンドラムさんNACA Rep.868を、図面を頼りにしてさらっとながめてみました。 補助翼のアスペクト比そのものの研究は見つけきれませんでした。 もっと古い時代には、そのような研究はあるかもしれませんが。
    しかし、p165〜p166のFig46〜Fig47に各国の有名戦闘機のロール速度が機体速度によってどう変化するかを見るグラフがあります。ホッケヴルフは凄いですね。高速におけるP51も凄いですね。なお限界操舵力50ポンドのデータです。零戦は限界操舵力不明となっておりますから、グラフのなかで平行移動してyらなければなりません。(Fig46と47は同じデータを別の表示方法で整理しただけです。)

    ところで、ここでの主題に関したものがP200にみつかりました。Fig46,47の機体の補助翼の形状等のとりまとめ表なのです。その表のCa/Cの欄を見てください。有名戦闘機の全体の平均は、20%弱でおよそ似たような値に揃っているのが印象的です。
    如風

  14. 如風様、確かにそのページでは零戦は空欄となるもそれ以外は似たような値に収まっています。これが所謂オーソドックスな補助翼設計と強引に仮定した場合、零戦はやはりアスペクト比が少々大き過ぎる様な…。
    でもそれとは別に面積自体も過大なのですからやはり面積が大なだけの様な…、みたいな思考に陥っております(汗)
    同スケールのプラモデルで比較とか各補助翼面積・寸法形状とか分かればいいのですが生憎わたしには何も無いのです。

    そもそも零戦の主翼に仮に横転性能のそこそこ優れる、例えばFw190などの補助翼をやっつけで植えても、当然操縦系統のレシオが異なってくるわけですから剛性の問題は抜きにしてもまともな操舵になったかどうか…など
    高速戦闘に関して隼や零戦などのタイプの補助翼の設計はあれはあれで正当性があったかどうかは疑問があったわけですが、主翼艤装や装備品の件もあるとはいえP-63などはかなり細長のものですが米軍機では最も優秀な部類ですし。
    もう高速に関わらない話ですが、補助翼のかなりの内側ってモーメントの関係上そこまで役に立ったかどうかなども噴出してきました。翼端も渦流の関係で良くないとは超音速様に教えていただきましたが。
    パンジャンドラム

  15. ツイッターの話の根拠は知りませんけども、世傑に掲載された操縦系統図ではトリムホイールと操作ワイヤーも描かれてます。
    超音速

  16. そうでしたか。
    ところで補助翼にNACA推奨のスプリングタブを用いたら飛躍的に向上したなんて事例がF6F-5などであるあたり、スプリングタブやバランスタブの高速時効果とは相当のものだったのでしょうね。四式戦クラスの高速機にはあっても良かったかなと思います。日本機であと(非固定)タブが補助翼にあるのは月光や烈風ぐらいでしょうか…。高速戦闘を志向した陸軍はそのあたり一切聞きませんから、そもそもタブは補助翼に不要という考えだったのでしょうか?
    パンジャンドラム

  17. 1式戦のスプリングタブは、誤報のようですね。
    NACA TR868のFig46のように整理したグラフは、すごく色んなことが読み取れるグラフです。
    今飛行機を台風の様な一定方向からの強風を受けてフェザリングしている発電用2枚羽風車に見立てます。機体の主翼を風車の2枚羽フェザリングに対応して、機体の主翼は(操縦桿を前に押し込み)無揚力です。この時風車の羽根は回転しません。
    ついで、風車の羽根を可変ピッチ機構で5度傾けてやると羽根は回転を始め、ある一定回転になりました。これは羽根の回転のお蔭で風が羽根に対して無揚力状態で流入するようになったので、これ以上回転が増えなくなったためです。
    今度は羽根の傾きを3度に減らすと、羽根の回転速度は遅くなって風が、羽根が無揚力になる方向になった状態で一定回転に落ち着くのです。

    飛行機の場合には次のようになります。操縦桿をストロークエンドまで押したとき、主翼全体換算で5°の迎角(ここでは有効迎角としておきましょう)になったとき、機体はロールし、これに応じ翼に流れ込む流れで翼が無揚力になったときロール速度は一定値に落ち着くわけです。
    操縦桿を緩め、有効迎角3°にした場合はもう省略します。
    ここまでの説明は、いろいろな要因は無視していますか、根本的要因は正確に抑えている基本理論です。
    そこで、図46のグラフでかなり素直な特性のスピット(normal翼)についてついて説明しましょう。
    図46の縦軸Helix angleは図47のロール速度とは異なりますが、図47でA機のロール速度がB機のそれより大きいなら図46でもそのようになる性質があります。また図47のロール速度データから簡単に換算できます。 またHelix angleは近似的に上記の有効迎角と見做せるのです。
    従ってスピットの場合の左側の水平線は、この速度域では50Lbの操舵力で操縦桿のストロークエンド迄操作できるわけです。
    右側の右下がりの曲線は、50Lbの操舵力では操縦桿をストロークエンド迄操作できなったためです。操舵力は速度の2乗に比例する傾向があるので、かなり急激にHelix angle(≒有効迎角)が低下するのです。これが基本的グラフの見方です。
    基本以外については、例えばFw190には低速域ではリンク比を自動的に変えているかもしれない等を考える必要かあります。
    また、スピット(normal翼)の特性をFw190に近づける方法は、フラップ面積を増やし同時にうまく調整されたスプリングタブを使って操舵力軽減を図る必要があることが容易に言える。一方、スピットの翼端切り落としのデータもなかなかの改善ですが単なる切り落としだけではないように思う。
    ところで零戦については、フルストローク操舵可能な限界速度が160kt以下とは少々異常で、実験操舵力限界が50Lb 以下の可能性と着艦速度58ktとの仕様の可能性がある。  取り敢えずここまで。
    如風

  18. 関連する過去ログがありました。ご参考までに。
    http://www.warbirds.jp/ansqn/logs-prev/A001/A0004627.html
    超音速

  19. 超音速様有難うございます。(超音速さんには色々お世話になったので、私にはBUN様と同格あつかいです)過去ログは以前見た記憶がありますが、数値は全然忘れてました。零戦52型360°/約3秒は後程触れさせて頂きます。

    先ず17.の零戦の評価を取り消させてください。 F4F,F6Fもフルストローク操舵可能な限界速度は160mph以下で、陸戦に対して着艦速度は艦戦共通の制約だと考えるべきです。その上で、着艦速度の差に目を向ける手順でしょう。

    想像していたFw190の自動リンク比変更機構、Wikipediaで見ると本当にあったのですね、半分は他の要因だと考えていたので嬉しいことです。基本図形からの変化を探せば、何らかの工夫に行き当たる(ことも有る)。 図46形式のグラフはかなり強力な道具なのです。
     
    ただ図46は17.で説明した風車モデルから、最終到達ロール速度に達した実験データを纏めるのに適したものであることに注意してください。少なくとも2周目のデータがほしいのです。 もし、0〜45°あるいは0〜90°の期間の実験データが混じると、まだその機体の慣性モーメントに応じた加速途中のデータになります。従って機体の本来のロール速度を下回るデータになるのです。

    この点をを踏まえると、ヨーロッパ系の結果(高速度域のロール速度の低下が大きい)と日米機(一部例外あり)の高速度域のロール速度の低下が小さい、との差から日米機のロール速度は例えば0〜90°ロールの時間のデータだったのではないかと予想されます。4.項の舵の取られ現象を利用した説明になりますが、この先必要があるまで省略。(因みに、零戦は1回目官試乗で舵の取られ現象が指摘され若干修正された経緯があります。)

    零戦52型の1周旋回時間約3秒(120°/sec) 、計器速度180mphを仮定して図46にプロットすれば(計算は真速を使う)、なんとほぼFw190並になります。 しかし、ここで喜んではいけません。 3秒の場合、操舵力80Lb程度は使っているでしょうから、図46のデータと比べるには厳しく見積ればherix angleは1/1.6程度に減少させてプロットする必要があります。その場合P40並でF6Fは超えることになります。 さらに想像を拡げ、操舵力80Lbの場合ストロークエンドまで引けていれば、零戦52型のherix angleは1/1.4程度に見積もっても宵かもしれません。しかし前述のとおり、米軍機の実験データが低く評価される実験をしているかもしれないことは考慮しておく必要があるのです。
    結局今言えることは、各機体の実験条件を確かめて補正しつつ評価しなければならないと言うことです。 得られた数値が大きい場合にすぐにそれに飛びつくのは、控えなければならないと言うことです。 図46を提供してくれたパンジャンドラムさん有難う。 
    如風

  20. 図46とp200の一覧で勉強させて頂いたおかげで、補助翼をどのように装備すべきか、およそ見えてきました。
    オーソドックスなやり方を纏めます。
    (1) 翼の内端側に所要のフラップを配備します。
    (2) 翼の外端側にCa/C=0.2程度の補助翼をできるだけ幅広く配置します。
    (3) この場合、機体の速度が高いときには操作力不足になるので、フリーズ翼、バランスタブまたはスプリングタブの操作力低減装置で補うこと。
    (注) これで操舵力が不足する見通しなら、泣く泣くフラップの幅を縮める。

    これに関し、時代に先駆けた技術として、Fw190のリンク比自動変更装置、同じくFw190 の高速時にフラップも補助翼として使う機構、P38では油圧サーボシリンダで操作力を約1/6にしたことなどがあげられます。

    零戦におけるバランスタブは官給品のはずで、粘り強く実験して最良の調整を目指す部署がなかったことが52型に採用できなかった理由では?と思うのですが。
    如風

  21. 誤記訂正

    泣く泣く幅を縮めるのは、「フラップ」ではなく「補助翼」でした。
    如風

  22. 如風さんに望外の評価をいただき回答者冥利に尽きます。

    補足させていただきますと、日本機でも紫電改には腕比変更装置というものが実装されております。
    超音速

  23. あ、菊原技師の腕比変更装置ですね。 図46の特性からは、Fw190の腕比変更装置は、菊原技師の自動空戦フラップのような無段変速型に見えます。wikipediaの記述も無段変速ぽいのです。
    如風

  24. 要は補助翼の形状よりも操縦系統のレシオが操舵に効いてくる、そう私も思えてきました。
    低速ではめいいっぱい舵を動かせるようにし、高速では軽く動かせる様にする
    レシオをどっちにするかで決まって、それを変えられるFw190はまさに快作でしょうね
    Fw190の補助翼を零戦に乗っけても状況は好転しないでしょうが、Fw190の操縦系統ごと持ってきたらえらいグルングルン回る気がしますw(もちろん主翼剛性の範囲においてですが)
    そういえばネットの一般情報レベルの記述にすらありますものね。
    タンク技師は人間工学的観点から操縦に要する力を50ポンド以内に抑える事を前提に設計したと。
    パンジャンドラム

  25. 初めまして(普段はROM専です)。
    零戦三二型に関してオーストラリアで行われたテストレポートが以下のサイトあり、五二型はこれより若干劣る程度(外翼部への燃料タンク追加や20mm機銃の長銃身による重量増加のため)と考えられます。同グラフ中に記されたP-40やスピットファイアと比較すればおおよそどの程度かは把握できます。
    http://www.wwiiaircraftperformance.org/japan/RAAF_Hap_Trials.pdf
    また、一式戦のスプリングタブに関しては学研の一式戦本にも記述がありますが、引用されている当時の文献の記述から、はスプリングタブではなく操縦索にスプリングを入れただけにも読めます。個人的な心証としては、零戦の剛性低下と同様の働きを期待して操縦索にスプリングタブを入れただけではないかと・・・。
    隼0511

  26. 隼0511様、ありがとうございます。
    零戦三二型のロールレートの件は以前に拝見しています。低速時はかなり良好ですが中高速では必ずしもロールレートが高い部類ではないスピットファイア 通常翼に対しやや劣る程度というわけですので、まあ使えない事はないだろうぐらいの程度だと推察できます。実際にやや劣る五二型の米軍の調査(160ノットでFM-2と同等のロールレート、200ノットでF4U-1DおよびF6F-5と同等、IAS220mphでP-51と同等など)と何ら矛盾はありません。
    それっぽい事はここにありました。
    https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11177008091

    隼もいくらか優っているかもしれないでしょうがここでは一括りにしていましたね。ここは隼の鹵獲情報に乏しいため零戦に訂正するとして、やはり低速時傑出しつつ全速度域でもそれなりに高いロールレートを叩き出すFw190と零戦のつくりの違いにこそヒントがあったのではないか?と考えています
    零戦三二型よりFw190の方が幾分か翼幅が小さく回転上有利だとか、翼の剛性の件もあるでしょうが、「力を要する為横転が劣る(上記リンク内の米海軍レポート)という症状のそれには、どちらかというと回転モーメントやエルロンリバーサルより補助翼や操縦系統の方に理由があったのではないか、という次第です。

    パンジャンドラム

  27. あ、私の質問の根底となる疑問を回答者様方に明白化していませんでした。
    私がこの質問に至った疑問とは「零戦が補助翼操作に大きな要する力のため200ノット以上では劣る」といった現状が、本当に史実の零戦という機体でなし得る最大限最善の努力を払いそして結果を出せていたのか?、というものです。
    私には、実はあれはまだ過渡期にあったのもので、必ずしも横転性能発揮の最適解に達していたか?必ずしも零戦の主翼の出し得る最良のロールレートを発揮できていたか?は大きく疑問符が私の中でついています。
    「操作は相変わらず軽く何の手応えもない」ならばエルロンリバーサルですから諦めようがありますが、「重くて動かせない」というなら操縦桿がフルストロークまで操作が叶うならば本来もっと発揮できたロールレートがあるはずなのではないかと。
    そこで補助翼は本当に最適解に達していたか、操縦系統の洗練など何らなされていたかなど、確認したかったわけです。

    パンジャンドラム

  28. 連投すみません、私がそうとする根拠はまさにBf109とFw190との関係性です。
    Bf109も高速では著しくロールレートが低下します。Fw190の様に優れた補助翼設計とリンク機構で解決した事例がある以上、零戦が出来るだけの洗練を以てあの結果ならば「仕方あるまい」に止まりますが、零戦のロールレート改善に設計努力の余地が大いに残されていてあの結果ならば手離しで擁護できるものではありません。
    翼型・補助翼形状・操縦系統などに○○の洗練が加えられていた、などの情報を本音では期待しているのですが、一見では何らの工夫も見られないしむしろ形状に至っては異端な形相です。
    欧米機に低速と高速の補助翼の効きを両立している機体がある以上、零戦の補助翼まわりの設計は失敗だったのでしょうか。多少ヤワな設計とはいえ、補助翼や操縦系統がそれを最大限に行かせて横転を発揮出来ていたとは思えないのです。
    もっともそれは補助翼形状ではなく操縦系統のレシオが大きいのではないかと言うところで決着しかかっていますが(零戦の補助翼面積とは関係あっても補助翼形状との関係性は何ら見つけられない)
    翼型もオーソドックスなものでしょうし。
    パンジャンドラム

  29. 零戦52型の操縦桿の操舵力80Lb を仮定したのは大間違いだったです。RAAFの計測で確かに限界操舵力50Lbでほぼ360°/約3秒は可能ですね。と言うことはパンジャンドラムさんの言う通り、ロール試験で限界操舵50Lbを指定することは人間工学的にも妥当だと納得です。

    補助翼の着艦速度問題を大まかに考えました。 取り敢えず狙うのは、操縦桿を一杯まで引ける限界の機体速度(V限)を高速に移したい。そうすれば仮想敵機より速くロールできる、としておこう。限界速度はロール速度のグラフでピークの速度に一致する。 また、操舵力は単純に機体速度の2乗に比例するものとする。

    この時、着陸(着艦)速度(V着)の問題を取り上げる。零戦ではおよそ(V限)/(V着)=2.7程度のようだからこの値を取り敢えず使おう。すると限界速度の操舵力50Lbに対し、着陸速度ではストローク一杯まで操舵しても約1/7の7Lbの操舵力しかいらなくなる。 この程度が、「舵がふらふらで気持ち悪い」と言われない限界としよう。
    この状態で、仮にバランスタブを追加して全ての速度域で操舵力を1/2にできたとしよう。 しかし限界速度が1.4倍に増加して芽出度し芽出度しとはならない。 着陸時のフルストローク操舵力まで1/2の3.5Lbになって「舵がふらふらで気持ち悪い」となって困ることになる。 この問題の解決は、紫電改方式でよさそうに思う。着陸時のフラップ操作の前にリンク比を切替え操舵力を重くしてやれば良い。

    日、米のF6Fまでの艦戦では、その一方だけがこの問題を直接に解決しているわけではないので両者普通であったと見ればよいのでは?
    如風

  30. >>27,28
    零戦二一型の一部や二二型の補助翼バランスタブ、三二型・五二型での主翼幅と補助翼幅双方の短縮、といったように高速時のロール性能向上への意識は間違いなくあったものの、発着艦に重要な低速時のロール性能との兼ね合いのために限界があった、というのが実状ではないでしょうか。もちろん、紫電系列のような腕比変更装置やスピットファイアで行われたような補助翼の金属化でさらなる向上を図れた可能性もありますが、零戦にそうした努力を向けるよりも次世代機の開発が優先されたと。

    また、出典を忘れてしましたが、零戦の「翼弦方向に短く、翼幅方向に長い」補助翼は三菱製の機体ではスタンダードなものであり、戦闘機・陸攻を問わず類似した設計です(確か、翼幅方向の補助翼長さも翼幅との比で決定されていたはず)。F6Fなどに見られる「翼弦方向に長く、翼幅方向に短い」補助翼ではロール時に主翼に加わる捩り応力がより大きくなりますから、軽量構造指向の日本機には適した構造だったのではないでしょうか。
    隼0511

  31. 追記。Bf-109とFw-190のロール性能に関してですが、補助翼設計やリンク機構だけでなく、世傑のBf-109で考察されているように「Bf-109の主翼が極めて捩れやすい構造であった」という事にも注目する必要があると思われます。
    Bf-109の主翼は単桁構造で、試作機〜B型までは翼内には武装もラジエーターもないシンプルなものですが、C型で翼内機銃追加、E型でのラジエーター移設によって主翼構造が切り欠きだらけになり、E型ではかなり主翼の捩れ剛性が低下していた可能性が高いです。主翼を大幅に改設計したF型以降、Bf-109が翼内武装を廃している(ガンポッドはありますが)のは多少なりともこの欠点を改善しようとした結果かと。
    隼0511

  32. 隼0511さん、歴史的事実の知識に疎いので私ですので、事実で流れを固めてくれてありがとうございます。
    如風

  33. 特に零戦補助翼のCa/C≒0.15程度の理由が、主翼本体の剛性とは確かに余裕がない、納得です。、
    如風

  34. 隼0511様、理論立てた考察ありがとうございます。たしかにオーソドックスなテーパー翼の零戦では翼端に行くほど翼は細く薄くなる…故に補助翼はなるべく全幅に渡って配置した方が好結果だったのかもしれません。しかし雷電では小翼面積の小さな寸詰まりのものにとって代わられていますので、剛性の範囲においては雷電の様な形状に至ったのかもしれません。零戦の主桁自体は設計時の過荷重あるいは全備重量に対し12.6G(安全荷重7Gに対応)まで対応していますが、モノコック構造は桁構造+外板で強度・剛性を達成しますから、外板の強度不足とのトレードだとしたら悔やまれるばかりです。
    航空機の外板は卓球のピンポン球みたいなもので、ペラペラの板でも曲げればせめてもの強度を受け持ってくれるだろうという設計です。特に前縁から最大圧板までの曲げ部分だけでかなり剛性を得られますからね。ここらへん、改良された0.7mm厚のものが設計初期段階に至っていればまた違った改良のされ方があったかもしれません。
    パンジャンドラム

  35. 誤字、最大圧位置です。
    零戦の軽量化による剛性への弊害というのは、設計時から分かりきっていた桁の細さではなく外板の厚み不足だと思います。外板のあんな複雑な曲面形状の強度計算なんて無理でしょうから、0.5mmで安全というのは何ら根拠があって導き出されたものではなく、いつかのタイミングで0.6mmになり、そして五二型甲で0.7mmに増厚されるに至りましたからね。
    零戦が五二甲以降の剛性があれば、寸詰まりな補助翼を翼端に配置できたかもしれませんね。一号零戦は折り畳みの関係上翼端配置は無理ですが。
    パンジャンドラム

  36. >>32、33
    ありがとうございます。

    >>34、35
    確かに、やろうと思えばどこかのタイミングで高速時のロールに適した補助翼への改設計というのは技術的には可能であったと思います。
    ただ、問題は零戦は三二型以降は「雷電や紫電の実戦配備までの繋ぎ」といった位置付けであり、小規模なマイナーチェンジだけを繰り返しているので、そうした改設計を取り入れようという方向に進まなかったのでしょうね・・・。
    隼0511


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