1464 J3K・J6K陣風についていくつか疑問点があり、質問させていただきたく思います。

【1】
光人社NF文庫「幻の戦闘機(著:碇義朗)」によれば、『J3は「J」の記号が示すように、防空のための迎撃戦闘機であり』との記述があるのですが、wikipediaでは遠距離侵攻用戦闘機(高々度進攻戦闘機)と記述されています。
防空のための迎撃戦闘機としての役割を期待されたのはJ6Kになってからであり、J3の段階では陸上運用の遠距離戦闘機ではないのかと思うのですが、どうなのでしょうか?
また、十七試陸戦/十八試甲戦の要求仕様を見たことはないのですが、雰囲気はキ61-IIに求められた武装強化と航続距離の延長に似ていると感じる点があり、想定していた運用にも興味があります。

【2】
資料によって記述がまちまちなのでちょっと怪しいのですが、武装の変遷について質問があります。
当初、十七試陸戦として計画が始まった際の武装案は【機首13.2mm x2、翼内20mm x4(富福技師の射撃兵装図によれば、二号機銃と十八試二〇粍機銃の混載?)】かと思うのですが、時折見かける【機首13.2mm x2、翼内30mm x2】というのはいつ頃から追加された(もしくは当初から武装案は2つあった?)のでしょうか。

【3】
また、J6Kとなった後、翼内20mm機銃が片側2門であることが確認できるモックアップの写真が官の一次審査前日の19年6月1日に撮影されていますが、19年7月9日の写真では片側3門に増加しています。
6月29日には1号機完成期日が12月末に決定し、7月6日に社内審査、7月8日に開発中止、7月9日に写真撮影となっている事を鑑みると、おそらく官の一次審査で武装強化を言い渡されて急ピッチで機銃を増設したのか、あるいは機銃増設するもモックアップでは一旦4門のまま審査をうけ、【機首13.2mm x2、翼内20mm x6】にした状態で次の審査を受ける事になったのかと思うのですが、このあたりの詳しい事は判明しているのでしょうか。

【4】
書籍やサイトによっては最終時は20mm x6で13.2mmナシとなっている事があるのですが、これは誤りということでよろしいのでしょうか。
7月15日に撮影された、翼内機銃と機首が映るアングルでエンジンがむき出しになっている写真では13.2mmが見当たりませんので少々不安になっています。
設計段階で13.2mmのために主脚の位置まで変更しており、最終時に増設された20mmにも干渉しなさそうなので、単に分解手順によって先に取り外されたのか、あるいは見えづらいだけだと思うのですが……


質問ばかりで恐縮ですが、ご存じの方がいらっしゃいましたら教えて頂けますと幸いです。
Shusui


  1. 【4】少し検索して見ました、ご存知でしたらご容赦を。

    以下の信頼性がどれ程か知りませんが。

    [Kawanishi J6K Jinpu, Advanced Fighter-Interceptor of Japanese Navy ]
    https://www.sas1946.com/main/index.php?topic=46694.0

    戦争の流れは変わりつつあり、日本海軍の期待も、長距離攻撃戦闘機(tosen)のJ6K1は迎撃機(kyokusen)にならなければなりませんでした。

    [Kawanishi J6K Jinpu (Squall)]
    https://www.militaryfactory.com/aircraft/detail.asp?aircraft_id=1612

    元の提案されたフォームは、4 x 20mmタイプ99-2キャノンと2 x 13.2mmタイプ3重機関銃(HMG)を搭載していました。 2番目に提案されたフォームには、2 x 30mmタイプ5の大砲と2 x 13.2mmタイプ3のHMGが搭載されていました。 さらに別の(1944年の)兵器配列の改訂版には、6 x 20mm大砲のフルバッテリーが含まれていました。

    Armament
    PROPOSED #1:
    4 x 20mm Type 99-2 cannons
    2 x 13.2mm Type 3 Heavy Machine Guns (HMGs)
    PROPOSED #2:
    2 x 30mm Type 5 cannons
    2 x 13.2mm Type 3 HMGs
    PROPOSED #3:
    6 x 20mm 18-Shi 1-Gata cannons in wings (three per wing).

    ここは、参考にする程度と思います。
    http://www.historyofwar.org/articles/weapons_kawanishi_J6K.html

    百九

  2. 質問者の方は、海軍が性能標準で行っている、昭和18年のA戦闘機や甲戦闘機の定義はご覧になっているでしょうか。

    たとえば、以下のところで触れることが出来ます。
    http://www.warbirds.jp/truth/seinou.html


  3. >>百九さん
    情報ありがとうございます。
    いくつか見逃していた情報もあり、大変参考になりました。
    これらの情報によれば20x4+13.2x2と、30x2+13.2x2は初期案で、最終時は20x6のようですね。
    やはり、開発経緯などの詳細な話はもう少し欲しい所ですので、引き続き探してみたいと思います。


    >>片さん
    ありがとうございます。
    要求性能や仕様ばかり見ていて、性能標準については眼中にありませんでした。
    また、A戦B戦の詳しい類別はお恥ずかしながら知りませんでした。

    まだざっとしか目を通せていませんが、十八年の性能標準案と照らし合わせると、名前を上げていただいたA戦と甲戦よりも、むしろS14年の遠距離戦闘機とS18年の遠戦のほうが陣風の仕様に近いと感じてしまいました。
    (これは、私の知っている陣風が最終時モックアップ期の重武装のものしか知らない事も大きいと思います)
    一旦、J3KとJ6Kを分けて考えたほうが良さそうな雰囲気を感じましたので、そのように書いていきます。

    J3Kの開発開始時にはS17年ですからまだA戦B戦の分類ではなく、かと言ってS15年の性能標準案にある各種分類に則っているのかというと、それよりもS14年の遠距離戦闘機に近いものを感じます。
    S15年に遠距離戦闘機のポジションは戦闘機兼偵察機に移行したものと思うのですが、戦闘機兼偵察機は複座であることからも双発夜間戦闘機まっしぐらという印象で、それよりはやはりS14年性能標準案にある敵地上空の制空をする陸上運用の遠距離戦闘機であるかなと。
    私が似ていると感じる例に挙げたキ61-IIも含め、陸海軍ともに陸上基地からの長距離侵攻用に「航続距離に優れた対戦闘機戦が可能な20mmx4クラスの重武装戦闘機」を欲していたと見てもよろしいのでしょうか。
    (なんというか、実現不可能というかわりかし無茶苦茶な話だと思うのですが……)

    J6Kに関しては20mmx4+13.2x2であった時期から、陸海軍協同試作機種及要求性能標準でいうと遠戦の武装に則っているように見えます。
    【2】で質問した30mmx2の武装案に関しても遠戦の仕様にあり、ここから30mmx2、13.2mmx2の武装案になったのならばスッキリするのですが、全く自信がございません。

    先程、「むしろS14年の遠距離戦闘機とS18年の遠戦のほうが陣風の仕様に近いと感じ」と書きましたが、甲戦であることを考えると、この飛行機の正体がますます分からなくなったという手応えです。
    具体的に言えば、S14年の遠距離戦闘機に近い性質を持つJ3Kが復活してJ6Kとなってからも、S18年の遠戦に匹敵する重武装はそのままというのは、甲戦の主目的である対戦闘機戦闘には武装が過大に見えます。
    これは戦局的に「とにかく大型機の撃墜確率を上げるためならどんな飛行機も大火力にする」という、本土が爆撃の危機にさらされた国のよくやる流れでしか無く、機体としてはあくまでも一貫して甲戦だったのでしょうか。
    ここまで武装強化しても1945年5月の官民合同会議では二十試甲戦の対抗馬として話題に登りますし、J6は一貫して甲戦としての能力だけを求められていたのか気になります。

    機体からざっくりと逆算すれば、試製陣風に求められたのは「B-29を迎撃できて、護衛戦闘機に絡まれてもそこそこ戦える」というような性能であって、そのあたりを考え始めると甲戦・乙戦という視点に固執するのはあまり良くないのでしょうか。
    Shusui

  4. 20ミリ機銃4挺化は、たしかに、昭和17年の南東方面での先頭を通じて、B-17に対抗するためのものとして、可能ならば零戦や雷電などこれ以降の機材に対して行ないたいとして、方針化されたものです。
    「敵重爆への邀撃の際に無力ではない」というのは、甲乙を問わず、戦闘機なら当然兼ね備えているべきものだったわけです。

    だからといって、陣風のような甲戦闘機の主要任務が「爆撃機の撃墜」だったかというとそうではなく、「敵機、特に敵戦闘機の撃墜」であったわけです。

    末期には甲戦闘機の20ミリ機銃6挺化が、次の要求になってゆきます。これは、一発命中すれば大きな破壊を得られる20ミリ機銃の発射速度を上げるためだと思えばよいでしょう。つまり、対戦闘機戦闘に於いて有効なものだったのです。

    B-29に備えるための乙戦闘機は、誉2基装備の天雷、秋水、震電のような、極端で特異なものになってゆきます。



  5. >>片さん
    ありがとうございます。
    戦闘機の小さな分類以前に、戦闘機は敵航空機の任務遂行を妨げることが目的の兵器ですので、甲乙問わずに敵航空機の対処に有効な性能をもたせたかったというわけですね!
    そう考えれば、甲乙のような単座戦闘機系の類別は、他の遠戦や丙戦よりもお互いに近いところにあり、単座戦闘機の類別は任務よりも性能をどのように振り分けるか、という一種の傾向を示したものに近いのかなと思いました。

    また、一八試二〇粍や二号銃五型のテーマでもあった20mmクラスの大口径弾の投射量増加という点に関して、機銃性能だけではなく機銃の数そのものも増やしたということですね。
    これが陣風だけでなく甲戦全体の話となると、「あー、本当は中口径以上の機銃をいっぱい積みたかったんだろうなぁ」というような、なんとも言えない気持ちになりますね……。
    おそらく本土にいるからこそ、使用弾数や搭載機銃を増やしても兵站の負担が少なくて済むというような事情も絡んでくるのだと思いますが。
    乙戦闘機はたしかに突飛というか、1つでもモノになれば儲けものという雰囲気の機体が多いですね。
    こちらは30mm搭載機も多く、投射量よりも単発の破壊力を求めているような感があります。

    最初の質問で【4】として挙げた、最終状態での13.2mm機銃の有無に関してですが、風紋書林さんの同人誌に収録されている7月9日の写真に13.2mmが写っているのを確認しました。
    機種下面の空気取り入れ口との位置関係から、13.2mmの搭載場所は若干変更されているようですが、最終時にも13.2mmは搭載されていたようです。
    Shusui


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