1511 九七式重爆をベースにした一○○式輸送機二型は、ハ102瑞星エンジンを搭載して470km/hとベースの九七式重爆二型と同等の高性能です。
ハ101火星エンジンに比べて馬力がそこまで落ちたのにスピードが変わらないのには、瑞星エンジンがコンパクトで優秀だったことと合わせて何が支配的要因なのでしょうか。一見して銃座の有無とかは分かりますが、翼型などは変更されているのでしょうか等、細部の仕様の違いも特筆していただけると幸いです。
げしゅたぽ

  1. エンジンの全開高度の違いが要因として大きいのではないでしょうか。ハ101の2速4000メートルに対してハ102は2速5800メートルですので、100式輸送機のほうがより高い高度での速度性能であるのは間違いないと思われます。
    その他の要因は胴体自体が異なるので一概に比較はできませんが、ノーズやドーサルがすっきりしているので、その意味では抵抗が低そうです。また一般的には低翼よりも中翼のほうが空力的に洗練されていると言えますが、97式重爆撃機も同程度の上反角が付いていますので、この二者の場合はあまり変わらないかもしれません。
    DDかず

  2. エンジンナセルが細いことによる空気抵抗の違いもありそうですね。
    超音速

  3. みつびし飛行機物語(アテネ書房)によれば
    「中翼式から低翼式に改め、外翼内に燃料タンクを増設したほかは、ほとんど97重爆のままであった」
    とありますが、胴体は別物です
    図面で見ると胴体幅が若干増してます(97重爆1.5mに対し図面計測で1.7mぐらい)
    その分、フラップのない中央翼の翼幅が伸びますが低翼化で上反角も増えた(7度から図面計測で約9度)ので全幅(22.5m/22.6m)は10cm増に留まったようです
    主翼面積は 69.6m^2と70.08m^2 で百式輸送機が0.48m^2大きい
    さて、双発機としては左右のプロペラ軸を近づけて片発飛行に備えたいところですが
    百式輸送機は97重爆に比べ約20cmペラ軸が離れてしまいました、ペラ軸から胴体側面までの距離はほぼ同じです
    プロペラ直径は 3.4mと3.26m なので百式2型輸送機の方がペラ軸を寄せる余地がありながら胴体との距離を離している事になります
    これはエンジンナセルと胴体の干渉抵抗において有利になります(ナセルは主脚格納部でもあるので勝手に位置をズラせないですから当然の結果ではあるのですが)
    さらにナセルの太さから来る胴体との干渉抵抗でも百式2型輸送機の方が有利だと言えます
    そのほか、97式2型重爆はハ101で太くなったエンジンナセルにタイヤを完全格納(扉付き)したのに対し、百式2型輸送機はハ102の細いナセルのためタイヤの一部が露出しています
    胴体尾部は狭い射角の遠隔機銃を持つ97重爆に対し、百式輸送機は零戦のように点に‪帰結しています
    また百式は昭和19年製造分から部分木製化(尾翼、補助翼、フラップ、翼端)を受けたようです

    渡辺敏久氏の寄稿「MC-20と私」によれば
    「この機種については97重爆と全く同じものだぐらいに考えている人が多いようであるが、構造上はともかくとして、飛行した感じでは兄貴と異なり安定性も操縦性も全くお上品な妹である」
    「また輸送飛行中は、(先発した)DC-3型や中攻などは後から行ってすぐ追い越してしまったくらい巡航速度が速く、当時として2型は高速輸送機であった」
    と書かれています
    一方、設計者の小沢久之丞氏は設計者の証言上巻で
    「必要な場合にはいつでも客、貨物、燃料(航続3千キロ分)を満載して飛んでもらう事を希望していたが、一部の人たちがこの状態を過荷重状態と呼んだため、強度上、操縦上、何か特別の注意でも払わねばならぬと思われたためか、十分この状態が利用されなかった。このことは、まことに残念であった」
    と書いています

    参照した図面
    航空ファンILLUSTRATED NO.40 日本陸軍機
    みつびし飛行機物語
    設計者の証言 上巻
    精密図面を読む【4】

    図面を見比べたい人はこちらを
    https://www.the-blueprints.com/blueprints/ww2planes/ww2-mitsubishi/64032/view/mitsubishi_ki-21_iia_sally/

    https://www.the-blueprints.com/blueprints/ww2planes/ww2-mitsubishi/91493/view/mitsubishi_ki-57_ii_topsy/

    他機の図面も見られます
    https://www.the-blueprints.com/blueprints/ww2planes/
    ガス欠

  4. キ五十七II 470km/h /5800m
    キ二十一II 478km/h /4400m

    DDかずさんんがおっしゃるように、計測高度に違いがあります。
    速度を比較するときには、その速度がどの高度で出されているかも比較する必要があります。


  5. ※1 4
    計測高度が分からなかったので高度の違いを入れませんでしたが、高度差を考慮に入れると、九七式の高度に合わせれば、空気の密度が高いため一○○式の速度が落ち、少し九七式重爆が有利になりますね。逆に一○○式の高度に合わせて、どうなるかまでは分かりませんが。たしかにフェアではない比較でした。
    ※2 ナセルは、同社開発の同エンジンの一○○式司令部偵察機の、フィードバックが期待でありますね。元のエンジンに拍車をかけて大きいナセルの九七式重爆のものよりも、無駄のない形です。
    ※3 詳細な解説大変ありがとうございます。
    なるほど胴体は必ずしも点で帰結しているのと銃座がないが、必ず抵抗減少というわけではなく、幅を拡大しているのですか。それを補って余りあるナセルの小型化と離れたことでの干渉抵抗の軽減ということなのですね。
    双発機の干渉抵抗という観点は完全に盲点でした。

    同時に、機首アウトラインや細胴化に貢献しない、双発爆撃機に重いが小馬力の液冷エンジンは少々腐っていないかという考えは一挙に消えました。

    げしゅたぽ

  6. 高度5800M→4400Mに下がると、計算上は470キロ→433キロに低下です。
    超音速

  7. >6
    そのデータをキ二十一Iの、
     432km/h 4000m(1080馬力双発)
    と見比べるてみると・・・・・・。
    案外、機体側の違いは影響してないみたいですね。


  8. 皆さんありがとうございました。そこまで違いは無いですね。
    九七式重爆一型に対して、やや胴体が太くなった分を、瑞星エンジンのコンパクトさが吸収してくれた、程度ですね。
    そして何よりの高速化は高空性能のあるエンジンで高空を飛ぶ事なのですね。
    小手先の洗練云々よりこっちの方が支配的なぐらいに数字に空気密度が影響を及ぼすということが、よくわかりました。
    げしゅたぽ


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