1512 三菱の瑞星1X型の離昇馬力について調べているのですが情報の精査で行き詰ったのでここで質問いたします。よろしくお願い申し上げます。
開発に関与した深尾淳二氏は「瑞星10型870馬力(深尾技術回想70年)」「瑞星10型780馬力(往事茫茫)」とそれぞれ紹介しております。(10型となっておりますが文脈上試作ではなく11型を指しているものと思われます。そう信じたいです。)当該書籍は活版印刷のためハンの並べ損ないを疑い、念のため松岡久光氏の「みつびし航空エンジン物語」を確認すると「瑞星11〜14型850馬力、15型940馬力」とあるではないですか。そこで私はネットで検索をかけました。まずWikipediaでは松岡氏のデータを使用しているため一致しました。次に三菱重工の公式サイトでは900PS(約890馬力)として紹介されていました。最後にこのサイトにたどり着いたわけですが、ここの資料では「瑞星11型870馬力、12、13型780馬力、14型850馬力、15型940馬力」と各資料バラバラの数値を提示するという事態であります。最も信頼できるであろう前田教授の著書は未入手なので決定打に欠けるのが情けない所ではありますが、少なくともこれだけの誤差があるわけです。
長々と書きましたが、つまるところ私の目的は皆様がお持ちの情報とその裏付けとなる書籍をお教えいただきたくここに投稿したのです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。長文失礼いたしました。
大良

  1. 質問No.1511.1で、エンジン関係の回答で根拠としたのは「松岡久光著『三菱航空エンジン史 - 大正六年より終戦まで』三樹書房、2005年9月10日初版」です。著者が参考とした文献には、前田氏著書の他、三菱重工業の社史関係3書と質問者様出典の深尾氏2著書も挙げられています。
    それによれば
    11型、850馬力/2540回転
    12型、780馬力/2540回転
    13型、1080馬力/2700回転
    14型 (ハ26I)、850馬力/2650回転
    15型 (ハ26II)、940馬力/2650回転
    とされています。
    DDかず

  2. 一〇型、二〇型というのはそうした型式が存在するのではなく一〇番台、二〇番台各型式の総称です。
    BUN

  3. 瑞星には一四型、一五型はありません。
    これは陸海軍の統一名称を定めた際に陸軍の九九式九〇〇馬力発動機(ハ二六)一型、二型に振られた番号でハ三一の型式であって瑞星のものではないのです。

    九九式九〇〇馬力発動機は基本的に瑞星一二型/一三型と同様な一型(三菱社内名称「A14」すなわち瑞星です。)と扇車系が小さい二型(三菱社内名称「A14低圧」瑞星一一型)とがあります。
    各出版物の要目はこれらの離昇馬力、公称馬力 常用馬力を雑多に拾っていますから質問に上がっているどの出版物の記述もよく検討して間違いを排除しなければなりません。

    A14とA14低圧の性能を大まかに掴みたいならば、ネット上でならアジア歴史センターのリファレンスNo.でC01004800800(一型 瑞星一二/一三型に相当) C01004892100(二型 瑞星一一型に相当)C16120616100(一型と二型を併記した要目表)があります。
    BUN

  4. >1 DDかず様
    早速のご返答ありがとうございます。10年の間に資料がすげ替えられたのですね…。今度入手しようと思います。紹介してくださりありがとうございました。
    大良

  5. > B U N 様
    思い違いをしておりました。お教えくださりありがとうございました。
    大良

  6. >3 B U N 様
    瑞星14、15型が別物であったとは存じませんでした。またその資料をお教えくださりありがとうございました。早速アジア歴史センターのサイトで拝見してまいりました。衝程や気筒径は瑞星と同じであったようですが姉妹機とみて良いものなのでしょうか。と言いますのも、みつびし航空エンジン物語94ページにおいて「『金星』と違ってあらかじめ陸海軍の了承を取っていたので試作機完成以前にハー26、瑞星10型の呼称が与えられた」と、瑞星そのものに陸海がそれぞれ名付けた風に書かれているのです。また深尾淳二氏の自書に記されている瑞星の総生産台数と松岡氏の(残念ながらアテにならない)資料に記されている瑞星11〜13、21、ハ26(瑞星14、15)の生産台数を合計しますと、これがピタリ合致するのです。これを踏まえるとどうやら少なくとも深尾自身はハ26を瑞星一派として数えているようなのですがBUN様はこのことについてどういうお考えでいらっしゃいますか?
    大良

  7. それら出版物は当てにしないほうが得策です。
    戦後の出版物はたとえ深尾さんのご親族が書かれたものであってとしても、要目が正しい資料に依っているとは限りません。
    深尾さんの考え方は出版物の資料には反映されていませんし、参考にもなりません。

    ネットでは見られませんが、手もとにある陸軍航空本部「航空兵器略号一覧表」にはそのように記載されています。
    ハ二六一型、二型と瑞星一二/一三型、瑞星一一型は基本的に同じものなのです。
    BUN

  8. >7 B U N様
    ハ26と瑞星が基本的に同じと言うことで安心しました。丁寧に解説していただきありがとうございました。これで次のステップに移ることができます。(といいましても火星が待ち受けているわけですが…。)
    やはり言い伝えでしか語ることのできないデータの信頼は紙でもってしても怪しいのですね。ある程度のところで折り合いつけてしまうのが賢いのかもしれません。せっかくの探求心を無駄にするようでもったいない気もしますが。今回はご親切に助けてくださり本当にありがとうございました。

    これは蛇足ですが、深尾本に関して言えば、一般に入手可能な本は深尾が書き遺した原稿(この原稿群は文字がびっしり細かく書いてあって読み応え十分です。)をきりはりしただけのものですので彼のうろ覚えと偏見と自慢話にさえ気を付ければ当時の状況と心情を結構正確に知ることができますよ。
    大良

  9. 個人の回想は概ねそうした要素が入り込みます。
    書き残された数値にも書き手の意思が反映されているものがあるのです。
    ただ、それを悪く言っても始まりませんし、読み手の姿勢としてもあまり感心しませんので、そういう傾向のあるものとして受け止めるしかないでしょう。
    BUN


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