1532 ドイツのフォッケウルフFw190戦闘機A型は、優れた中高度戦闘機でありましたが、主に空冷エンジン冷却を強制冷却ファンに頼りすぎた設計のため、高高度においては複列星形エンジンの後列の過熱が原因で、性能の低下が著しかったそうです。
ひるがえってわが国には強制冷却ファンを装備した機体として局地戦闘機雷電がありますが、火星エンジン冷却の不備によって高高度性能の低下をきたしたという話は寡聞にして聞いたことがありません。両者のどこが違ったのでしょうか?
備後ピート

  1. 高高度でエンジン性能が低下する最大の原因は、BMW801の過給機の2速全開高度が5000m前後に設定されているからだと思いますが、
    冷却に関してはFw190では強制冷却ファンを装備する代わりにカウルフラップを省略しているのが関係してるんでしょうかね。
    みいつ

  2. Fw190Aが、エンジン冷却の不備によって高高度性能の低下をきたしたという話は寡聞にして聞いたことがありません。
    差し支えなければソースを教えてください。
    試作〜極初期型でエンジン過熱の問題があったのは聞いています。

    例によって世傑Fw190から引用
    「過給器用空気吸入口はカウリングの内側にあるのがFw190の基本構造だが、防塵を要する砂漠地帯ではそれをふさぎ、外部側方にフィルター付き吸入口を設けた。吸入空気圧が高いので、全開高度以上ではエンジン出力が向上したという。」

    原因はここにあると思います。
    超音速

  3. 「フォッケウルフFw190 その開発と戦歴」より、エンジン過熱に関する部分だけまとめてみました。

    (7ページ)
    Fw190の試作機はBMW139の後列シリンダーが過熱し易いというような幾つかの問題を抱えていたが
    (中略)
    幸いにBMW139搭載機の第一回初飛行以前に新型のBMW801のベンチテストを終えていた。
    新型エンジンは馬力が向上したほか過熱が抑えられ、(中略)
    初めの頃はBMW801エンジンでも過熱の問題はあったがBMW139程ではなく、許容範囲に抑えられた。

    (31ページ)
    飛行テスト用3号機“V5”は、BMW801Cが搭載され、それに合わせて胴体も改修された。操縦席の位置を後にずらした事で操縦士が50度の気温に耐えねばならないという事は無くなった。
    (中略)
    BMW801Cは、前のBMW139より強力で作動が確実なので信頼できたが、冷却についてはやはり難点があった。

    (36ページ)
    Fw190の先行量産機による試験飛行が推進されたが、(中略)最初の一週間はエンジン関係に起こるべき問題が全て噴出し、BMW801はある時は過熱状態で飛行を中断し、ある時は火を噴き出して緊急着陸する有様だった。この慢性的ともいえる障害に加えて、コマンドゲレーテの不備によるプロペラピッチ変更角の不具合、それに起因する振動によるガソリン・オイルの循環停止などが重なった。

    (中略)
    後々まで問題を引きずったのは、やはりBMW801の後列シリンダーの冷却不足の問題であった。この冷却不足は実戦に投入されてからも1年ぐらいはFw190の唯一の弱点とされたのである

    (53ページ)
    Fw190A-1の搭乗は事故と隣りあわせで順調な滑り出しとはいえなかった。
    BMW801にしろコマンドゲレートにしろ故障が多く、特にエンジンの過熱は日常茶飯事といってもいい位だった。過熱問題が完全に解決されるのは半年後に現れるFw190A-4になってからである。

    (157ページ)A-1〜A-3型について第26戦闘航空団がまとめた1942年6月1日付報告書

    15.油漏れのするエンジンを交換した際に判明した事は、かつて潤滑油の冷却問題に関し出された試験結果が、未だに考慮されていないという事実である

    16.(前略)エンジン故障の総数57件のうち51件はBMW801Cによるもので、6件のみがBMW801Dによるものである。(中略)第8、第9気筒の改修により冷却問題は著しく改善された(以下略)

    (160ページ)
    Fw190A-5型が実戦部隊に配備されるようになってからはパイロットからの不満は幾つかの細かい点を除いて無くなった。


    なんか一部の記述が矛盾してるような気もしますが・・ 参考になれば幸いです。
    みいつ

  4. Fw190の最初の試作機はダクト式プロペラスピナーで機首を絞り強制冷却ファンで補う設計になっています。
    (結局、ダクト式スピナーは冷却不足が判明してすぐ廃止されましたけど)
    これは機首を延長して絞り強制冷却ファンで補う雷電にも通じる部分が確かに感じられますが、
    雷電については詳しくありませんのでFw190についてだけ書かせていただきました

    BMW139やBMW801の比較的初期の型で、実戦投入後もしばらく(半年か1年くらい)は後列シリンダーの過熱に悩まされた事は確実なようですが
    それが高高度性能にどの程度の影響を与えたかまではわかりませんでした。
    ですが、それも最終的には改善されて問題ないレベルになっているようにみえます。
    みいつ

  5. みいつ様。

    フォッケウルフ戦闘機の高高度性能の低下に関しては、古いサンケイブックス(赤本)「Me(Bfでないところが懐かしいなあ)109」にメッサーシュミットはG6型で開発の頂点に達しているにも関わらず、後続のフォッケウルフ戦闘機が高度6500メートル以上での性能の低下が顕著で、これを補完するため対高高度重爆用に終戦までG10型、14型、K型と生産を続けなければならなかった云々の記事があった(何分古い話なので間違っていたらごめんなさい)と思います。

    また松本零士氏戦場まんがのザ・コクピット「成層圏気流」の中でも空冷のフォッケウルフ戦闘機は高高度性能が低下するので、それを成層圏の単独哨戒機任務にあてるのは「馬に乗った騎士を海で戦わせるようなものだ」という主人公エアハルト・ラインダースの言があります。

    いずれにしても古い話なので、近年の研究では否定されているのかも知れませんがその当時は一種の通説でした。

    一応ソースを求められましたので証文の出し遅れの感はありますが、遅ればせながら記しておきます。

    備後ピート

  6. そりゃあ過給機+フルカンのメッサーと2速全開高度がおよそ5000mのフォッケでは高高度性能に差が出るのは当然かと・・
    みいつ


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