1595 零戦などに見られる、前縁がクランク型になっているラダーに関する質問です。

十二試艦戦の初期の試作機などはラダー前縁がまっすぐ切られているような形ですが、正式採用される頃にはクランク状の輪郭になっています。

十二試艦戦の写真を追っていくと【直線→直線+腕付きマスバランス→クランク状】と変化しているようです。
クランク状にして蝶番の前方に重錘を付け、なおかつ蝶番前方側の舵面が空力的にラダーの動作を補助するための形状ではないのかと思うのですが、このような設計をなんと呼べばいいのかがわからず、調べあぐねています。

クランク状のラダー形状に関する私の推測があっているのか、またこのような設計に名称があるのならば日本語、外国語問わず、どのように呼ばれているものなのかご教示頂けましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。
Shusui

  1. 過去質問1389が似た内容だったのですが現在見られないので、回答を再掲します。

    動翼翼端部分が前に突き出して逆L字型になっているのはホーンバランスといい、突き出しが中程の部分にあってトの字型になっているのはバランスウェイト、またはマスバランスといいます。
    ホーンバランスは操舵力を軽減するためのもので、バランスウェイトは高速飛行時のフラッターを防止するためのものです。
    ホーンバランス内部にバランスウェイトが内蔵されてる場合もあります。

    これらがない場合もあって回転軸そのものが後ろに位置していたり、バランスタブやスプリングタブで操舵力の対処をしていたり、動翼の構造や翼断面形を工夫していたり色々な解決法がとられています。
    超音速

  2. >>超音速さん
    ありがとうございます。
    ホーンバランスとマスバランスの機能は全く別のものなんですね。
    考えてみれば零戦はフラッター対策としてエルロンにマスバランスをつけているので、注意深く推察すれば機能が異なることは分かりそうな所でしたね…。
    調べるべきワードを教えていただけましたので、より詳しい事は自分で調べてみようと思います。

    過去に類似質問があるにもかかわらず、ご丁寧に教えていただきありがとうございました。
    Shusui

  3. 追記
    バランスウェイトは胴体内に内蔵している場合もあります。
    超音速

  4. 英語だと aerodynamic balance
    日本語では 空力バランス、古い本では平衡部(舵軸の前側)と書いてある事もあります

    日本航空技術協会 飛行力学の実際より
    http://warbirds.sakura.ne.jp/BBS/gazo2/img/4693.jpg
    http://warbirds.sakura.ne.jp/BBS/gazo2/img/4692.jpg
    http://warbirds.sakura.ne.jp/BBS/gazo2/img/4691.jpg

    舵の後縁形状を工夫するタイプもあります、P-51は補助翼で採用していたようです
    http://warbirds.sakura.ne.jp/BBS/gazo2/img/4689.jpg
    http://warbirds.sakura.ne.jp/BBS/gazo2/img/4690.jpg
    http://warbirds.sakura.ne.jp/BBS/gazo2/img/4688.jpg
    ガス欠

  5. ガス欠さん、資料の提供ありがとうございます。
    著作権の問題が起きないか心配ではありますが。

    舵の後縁を数ミリ程度膨らませるのは、戦前からよく知られていた手法です。
    羽布張りの舵面だと高速でへこんでしまうので、それを見込んだ形状にしておくのです。
    金属張りにするのが理想ですが、そうすると重くなりますので。
    超音速

  6. 興味を持った人には是非読んでほしい内容だったので、つい手がすべってしまいました

    後縁が厚いといえばキ94のTH翼(後縁に前縁半径を持つ翼)が想起されます
    層流翼の発展型で操舵力を軽くするという目的ではないですが
    昭和54年にNASAが日本で行ったスーパークリティカル翼の特許申請を、このTH翼が跳ね返したそうです
    F7UやF11も衝撃波対策に後縁をスッパ切った翼型を採用していますね
    ガス欠

  7. >>超音速さん
    >>ガス欠さん

    ご丁寧にありがとうございます。
    動翼設計は主翼とはまた違った趣があって非常に面白いですね。
    人間工学と空気力学を結ぶ部位なので、空気力学的な有利不利と人間の折り合いが興味深いです。
    このあたり、おそらくフライバイワイヤを採用している機体だともっと空力的な都合に合わせていると思うので、そういった観点で見ると見慣れた機体も違った楽しさがありそうです。

    「飛行力学の実際」は検索してみたところプレミアはついているものの97年にも新本版が出ているようなので、読める機会を探してみます。
    Shusui

  8. ベベル型後縁の引用は酣灯社の 飛行機の安定と操縦性 という別の本です

    NACAによるP-51のレポート
    https://ufdc.ufl.edu/AA00006253/00001/1j
    ページをめくると断面図やグラフも見られます
    ガス欠

  9. 失礼しましたP-51のレポート(1943/12)はこっちでした
    https://apps.dtic.mil/dtic/tr/fulltext/u2/b804604.pdf
    20ページ以降に図があります
    ガス欠

  10. >>ガス欠さん
    ありがとうございます。
    こちらも時間はかかりますが、読んでみようと思います。
    Shusui


Back