1598 「飛行機模型製作の教科書-タ〇ヤ1/48傑作機シリーズの世界『レシプロ戦闘機』」の中の三式戦闘機の作例(作:林哲平氏)で、「あくまで1説」として機体内部色は「明灰白色」というのが紹介されていました。

従来は川崎製戦闘機の機体内部色は黄緑7号の変色したもの(塗装色としてはダークイエロー=サンディブラウン)とされていて、林氏も「どちらも正解」としています。まあ、要するにモデルビルダーの好きに作ればいいわけですが、こだわってしまうのが私の性。

明灰白色説の出どころを調べてみると、川崎重工で復元された三式戦闘機II型改あたりに行き着くみたいです。しかし本家本元の復元でも三菱重工による零戦のように、明らかな間違いが見られるのは世の常。

私個人としてはコクピット内や主車輪収納庫内なら明灰白色(時間とともに黄変)もアリとも思うのですが、タイヤホイールやタイヤフォーク部まで銀色でなく明灰白色というのはいささか…。私の単なるマニアックなこだわりと言えばそれまでですが、旧日本軍機の塗粧については、今までもこの板で数々の御慧示をいただいてきたので、あえて質問するしだいです。
備後ピート

  1. 飛燕の機内色ですが、私が知る限りでは灰藍色→灰緑色→黄緑7号という変化をしているもので、明灰白色(模型で言う「明灰白色」はクレオス35番のことで、これは零戦の色ですから、現実の塗料でいうと海軍のJ3灰色に当たると思います)はなかったんじゃないかな、と思います。

    また、灰緑色で塗装されていた時期は部隊配備後に風防内に黒か黒藍色、灰藍色あたりの防眩色を塗っているものもあるようです。

    「灰藍色→灰緑色」の切り替わりの時期はちょっと知らないのですが「灰緑色→黄緑7号」の時期はS19年後期で、プロペラの塗り分けが異なるので案外簡単に見分けが付きます。
    これは各所の塗装を黄緑7号にして、使用する塗料の種類を絞る動きです。

    一方で、S19年後期-S20年初頭には陸海軍の塗料を統合する動きが実を結び、陸海軍共通規格の航格8609が制定されました。
    これによって陸軍の灰緑色は海軍のJ3灰色(文書内では『2-6』)に統合されています。
    これは、日本全体の塗料生産のために、陸海軍で共通の規格にした動きです。

    この航格8609による統合が飛燕の初期-中期の灰緑色塗装と混ざり、「明灰白色(J3灰色)」という説を作ったのだと思います。
    時系列的には黄緑7号への統合のほうが航格8609より早いので、J3灰色は補修などの例外以外では考えづらいかな、というのが私の考えです。

    ちなみに、各務原の機体の青みがかった灰色は空自で展示されていた時代に塗られたもので、レストア時には機内に黄緑7号が確認されたようです。

    陸軍灰緑色の状態のいいサンプルは「96式小航空写真機」で検索するとwet wingさんのサイトで状態のいいものを見られますのでおすすめです。

    歴史群像太平洋戦史シリーズ「三式戦「飛燕」・五式戦」に更に詳しく整理された情報がありますので、そちらの本もおすすめです。
    Shusui

  2. 備後ピートさんが「タイヤホイールやタイヤフォーク部まで銀色であるべき」と思われる理由としてはどのようなものがあるのでしょうか。


  3. 1.>Shusui様。早々の解答どうもありがとうございます。「三式戦「飛燕」・五式戦」は以前所有していたのですが、一昨年の引っ越しの際泣く泣く処分してしまいました。時系列的には本の出版より機体の復元の方が後なので、しかも最後期の二型改ですからそちらの方が新しい考証なのではと思ったしだいです。

    2.>片様。理由ですが質問文にも書きましたがあくまで私の意見(先入観?)なので…。日本軍用機のプラモを数々作ってきた身としては、三菱系の黒色脚柱を除いては脚柱及びタイヤホイールは銀色無塗装というのしか見たことがないからです。飛燕の製作は川崎1社ですから銀色塗装と明灰白色塗装が併存するのも考えづらい…。と思って手元の資料を見ていたら震電のタイヤフォークは黒色塗装になってるや。あくまでも抵抗するぞ。「日本陸軍機の脚柱及びタイヤホイール」と改めさせていただきます。


    備後ピート

  4. 脚柱の材質は何でしょうか。
    鋼だとしたら、無塗装では錆びませんか。


  5. そりゃあ、機体下面の銀色塗装と同じく透明な防錆塗装が上からされているのでは…?
    備後ピート

  6. なぜ透明だと?
    そのような塗装様式がどこかに存在していたのならよいのですが、存在してません。

    日本海軍機の尾脚などのマグネシウム合金部品は、銀色で塗られています。
    現存する実物(未補修)を見ても、それが明らかです。
    そして、それは海軍の工作法として明文化されています。
    つまり、日本海軍機では、マグネシウム合金には銀色で塗るというルールが存在していました。また、鋼部品の場合には、黒色で塗るというルールが存在していました。

    日本陸軍機の場合、銀色塗料だったり、灰緑色塗料でそれが行われています。
    修復前の実物を見ても、それはやはり明らかなのです。


  7. 世傑No.17の野原茂さんの解説では主脚柱は銀色となってました。
    備後ピートさんが「脚柱及びタイヤホイールは銀色無塗装というのしか見たことがない」というのは昔はこれが定説だったからでしょうね。
    超音速

  8. 6.>片様。日本軍機の塗粧については最新第一人者と尊敬する片様がおっしゃることなので間違いはないと思います。また勉強になりました。

    ただ悔しいので私の誤解の元になった日本陸海軍機7機種、積みプラの中から引っ張り出して調べてみました(最後の抵抗?バンザイ突撃?)。

    【三菱】零戦54型:フォーク黒色、ホイール銀色
        百式防空戦:脚柱銀色、ホイール銀色

    【中島】呑龍II型:フォーク銀色、ホイール銀色、アクチュエーター銀色

    【愛知】流星改:脚柱黒色、ホイール銀色、アクチュエーター黒色

    【川崎】九九双軽:脚柱銀色、ホイール銀色、アクチェーター灰緑色
        飛燕1型丙:脚柱銀色、ホイール銀色
        屠龍丁型:脚柱銀色、ホイール銀色又は灰緑色、アクチュエーター黒色(以上いずれも組立説明書指示色)

    しかしマグネシウムの上から銀色を塗ってたとは…。(散兵戦の花と散っちまいましたね。)


    備後ピート

  9. 三式戦のホイールのカバーは何個か当時の塗装のままの実物をみましたが、銀色ではなかったです。

    備後ピートさんのそうしたのは模型の組立説明書からですか?

    組立説明書も模型雑誌の記事も、何かを見て引用したり、あるいは、正しい何かを見れずに誤解したまま、書かれています。
    根拠となる「何か」こそが重要なのだと思うんですね。


    そこで、本来典拠とされるべきなのは、実物資料といわゆる一次資料としての文書資料なのですが、三式戦の場合、機体を何色でどのように塗ったのかを規定した陸軍の一次資料は発見されていません。
    ですので、それがどのようなものだったのか、概略だけでも推理しようとしたのが、学研『三式戦「飛燕」・五式戦』の塗装についての記事です。
    この記事のために様々写真資料を見つめてみて、機体外面がデュラルプラット無塗装の銀色であっても、脚庫内や脚扉内側は機体内面と同様に灰緑色で塗装されているのは間違いないと思いました。かがみがはらの二型17号機はこれを裏付けるものです。したがいまして、「時系列的には本の出版より機体の復元の方が後なので」というような時系列は考えて頂く必要はありません。




  10. 片さん、老婆心ながら「かかみがはら」"Kakamigahara" です。私のような近隣の愛知県人でも読みを間違えている場合が多いのですけどね
    DDかず

  11. 「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」なのです。


  12. 一般的な地名ではなく、当該機体が置かれている施設名のことなのです。


  13.  恐れながら、漢字表記か平仮名表記かということではなく、各務原は「かがみがはらの二型17号機」のように「かがみはら」と濁るのではなく、「かかみがはら」と静音で読むということを指摘されているのではと思っています。
     各務支考は「かがみ」と読みますので、そのことを知った時には驚いたのですが。
     
    hush

  14. すみません、こちらの打ちまちがいでした。
    「が」ではなく「か」ですね。


  15. ご指摘いただいたお二方、ありがとうございました。
    昔、高山本線をよく使ってましたので、頭の中では濁音で流れていたりするもので。


  16. 機体番号も判る飛燕1型の脚カバーの内側は黄緑7号かと思うほどの茶色系の灰色(勿論黄変かと)の上に銀色が塗られていました。
    反面飛燕の主輪とタイヤカバーを沢山見て来ましたが灰色でした。例外として灰藍色を恐らく左右の識別の為に色違いで運用していたと推測できる例を数件確認しています(これはかかみがはら飛燕17号機の翼端内部色の左右違いと合致する事です)
    余談で飛燕操縦席内の茶色系のプラモ塗装が広まった経緯は、飛燕17号が一般に公開され操縦席内の塗色が撮影できる時期の印象かと。この時期の操縦席内は米国規格の塗料のジンクロメートが塗られていた事が判っています。勿論、戦後の後塗りです。

    A6M232

  17. 識者の皆様、色々と有益なご意見ありがとうございました。このたびは新解釈の灰色系で製作してみたいと思います(結局タ〇ヤの1/48丁型とハ〇セガワの1/32丙型で悩んで両方買ってしまいました。やはり私は三式戦が好きw)。
    備後ピート


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