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1930年代後半の米軍の双発爆撃機コンペ参加機で、実用化された3機種 NA-40(B-25)、DB7(A-20)、M167(A-22)で最初に採用されたのがNA-40、そして米軍の作戦高度の変化等で採用になったのがDB7ですが、DB7が採用になったのはDB7が前輪式でM-167が尾輪式だからと言うのは本当でしょうか?本当だとしたら米軍が前輪式に拘ったのは何故でしょうか?あとA-20は、機内で搭乗者の往き来は出来たのでしょうか? まさのり |
- 最初に採用されたのはDB7(ダグラス7B)です。
3機種はいずれもR-1830ツインワスプ双発ですが、ダグラス7Bはこのなかで一番翼面積が小さく軽いので最も高性能、初飛行も一番早かったのです。
なので「作戦高度の変化」ではないと思います。
ちなみにA-20は席間の移動はできません。後々、この点は乗員に不評だったそうです。
ノースアメリカンNA40は最初の時点でツインワスプ双発ですが翼面積が大きいのでアンダーパワーで、先行するダグラスと性能差は明らかでした。
この時期の米陸軍航空隊(USAAC)は立て続けに提案要求を出し、その都度仕様をアップデートしています。
性能強化のためエンジンをR-2600ダブルワスプに換装したNA40Bをテストし、同機をベースに設計したNA62が次の提案要求に提出され、これが採用されB-25となる、という経緯です。
M167(マーチン167)は初飛行が最も遅く、やはり性能もダグラスに劣っていました。
初飛行前にフランスが採用しているのですが、フランスの要求のほうを積極的に聞いているように見えてしまい、USAACからは評価が下げられたという説が世傑に書かれております。
後に英軍がメリーランドとして採用し、R-2600に換装したのがバルチモアですね。
これは尾輪式です。フランスはDB7もM167も採用しましたが、降着装置の違いについては特にコメントはなかったそうです。
不採用となったステアマンX100(XA-21)も尾輪式でした。初飛行はダグラスとほぼ同時期ですが、性能不足は明らかでした。
色々調べると、採用不採用の理由は主に性能と引き渡し時期であって、降着装置の違いは直接関係しないと思います。
超音速
- ご存知のとおり、前輪式のメリットは離着陸時の安全性です。飛行機が大型・高速化してくると高翼面荷重となるし、夜間の離着陸もあると考えると、前輪式のメリットは大きくなります。
デメリットは前輪があるぶん重くなるのと、未舗装滑走路では前輪をとられる危険があるという点です。尾輪式のほうがやや離陸距離が短くなります。
本格的な採用は民間機ではDC-4E(深山の原型ですね)、軍用機ではDB7とされています。なのでダグラスは先駆者ということになります。
USAAC側の、前輪式推進論者のような人物がベンジャミン・ケルシー(Benjamin S Kelsey)です。
USAACの戦闘機開発プロジェクトのチーフといった立場で、デイトンのライトフィールドを拠点として様々な試作機を飛ばすテストパイロットです。
最も経験豊富なテストパイロットで、高学歴のインテリというのもあって、XP-38を飛ばしていた時点で中尉なのですが「近頃の将軍より権威があった」と関係者に回想されています。
なのでUSAACでは前輪式推進論は一定の権威があって、少なくとも双発以上の大型機は前輪式を普及させる方向性だったのでしょう。
しかしこれをメーカー側がどの程度本気で受け取るかはメーカーによって違ってくるようです。
B-25・B-26と競合したダグラスB-23は尾輪式です。改良元のB-18から変えなかったのです。DB7で前輪式を採用して成功したのに不思議なものです。
ビーチXA-38などは、後の時期で比較的大型機ですが尾輪式です。
超音速
- 超音速さん早速の回答ありがとうございます。この3機種で最初に採用されたのがDB7だったのですね。
私はDB7とM167は不採用の為海外に販路を求めたのか?と思っていました。サイズ的にミッチェル、ボストン/ハボック、メリーランド/バルチモアは違うので
個人サイトでの3機種の比較ですとメリーランドが一番軽快らしいです。(笑)航続距離も長いみたいだし。
個人的には、私はこの3機種の中では、アメリカで作ったハンプデン爆撃機のようなメリーランド/バルチモアが好きです。
あと余談ですが英国の双発機、4発機は殆どが尾輪式ですね。
まさのり
- 訂正します。
1.のR-2600ダブルワスプ→R-2600ツインサイクロン
超音速
- 便乗質問です。
A-20 を調べて見つけたのですが、銃手区画に非常用操縦装置があります。
銃手は操縦訓練も受けることになると思いますが、どれくらいの技量が必要だったのでしょうか?
A-20A Gunners Compartment
https://paulbudzik.com/models/amt-a20-Havoc/a-20-havoc-tech-manual-info/A-20%20Havoc%20Gunners%20Compartment%20Details.pdf
百九
>5.のURLを訂正します。
https://paulbudzik.com/models/amt-a20-Havoc/amt-a20-havoc-build-pg2.html
百九
- 因みにその個人サイトにあった各数値の比較です。
翼面荷重の逆数(大きいほど軽快)
メリーランド:72 マローダー:44
ボストン:35 インベーダー:40
NA40:63
バルチモア:44
ミッチェル:36
JU88:64
ブレニム:67
九十九式双軽:59
モスキート:51
だそうです。
速度は3機種の中で圧倒的にボストン
まさのり
- 調子に乗って力強さ、馬力荷重の逆数(大きいほど逞しい)
上昇力などに反映される
メリーランド:0.3 マローダー:0.26
ボストン:0.26 インベーダー:0.32
NA40:0.25
バルチモア:0.31
ミッチェル:0.21
JU88:0.32
ブレニム:0.28
九十九式双軽:0.34
モスキート:0.42
これはモスキートが断トツ
まさのり
- >5.6.
百九様、興味深い資料をありがとうございます。資料はA-20Aですが、Cまでは副操縦装置がついてるようです。回転砲塔がつくG型以降や夜戦型になるとどうでしょうかね?
前も見えないし計器盤もありませんし本当に非常用ですね。
1711でも言及しましたが九四水偵にも偵察席に副操縦装置がついていました。A-20ガンナーの状況については存じませんが、九四水偵の偵察員の回想によると、「後席の操縦装置の意味はつまびらかではないが、何百浬もの訓練飛行の帰途、基地が望見できる空域に入ると操縦員に休んでもらい、操縦交代をして偵察員も多少の操縦訓練らしきものをしたこともあった。操縦員がよろこんで身体を乗り出してあちこち見ていた」(丸メカから)
超音速
- >3.7.8.
まさのり様はおそらく、その個人サイトとやらを全面的に信じてるわけではないのでしょう。あえて(笑)と付け加えているぐらいですし。
逆数にする必要があるのかわかりませんが、7.の数値は10トン当たりの翼面積ということですかね。
だとすると「ボストン:35」の数値はおかしいです。ボストン(DB7)の翼面積は43.5m^2ですから、重量が12トンぐらいで計算されてることになる。
これはボストン(R-1830双発)ではなくA-20G(R-2600双発)の最大離陸重量です。他機が全備重量なのに、もっと重い最大離陸重量で計算されてるようです。
同時期のボストンで比べるなら6.8トンで計算すべきでしょう。
ボストンもメリーランドも運動性は良好と評価されてます。
超音速
- 超音速様、面白い話を有難うございます。
パイロットもひと時気晴らしが出来ると言う事ですね。
百九
- >10 そうですね。こういう数値は使用環境、使用目的で無意味になりますから(苦笑)
ただ偶然とは言え、メリーランドはフランス人好みの機体なんだなぁ とか思ったりもするわけです(笑)
イギリスもメリーランド/バルチモアを欧州イントルーダー任務には、使用しなかったし
南ア等の英連邦には供与したが、ソ連にはA-20を送っってますし適材適所ですね。
まさのり
- 余談ですが、バルチモアも副操縦装置が機首の爆撃手席についていたという情報が「蛇の目の花園」に載っていました。曲面ガラスで視界が歪むので着陸しにくかったとのこと。
超音速
- >13 バルチモアにも付いてたとはビックリです。
「操縦したんかい!」と突っ込みたくなりますね(笑)
まさのり
- ちなみにバルチモアの爆撃手席の操縦桿は「サイドスティック」です。片手じゃ重いでしょうに。
同格の軽爆としてロッキード・ヴェンチュラもありますね。翼面積・重量はバルチモアとほぼ同じ。エンジンはR-2800で強力そうですが、運動性・操縦性が悪いらしくRAFからすると明らかにボストンIIIより劣るようです。スペック上は悪い性能に見えませんが、5人乗りで少し重いのかもしれません。
同じような機体でもそれぞれ性格があって使われ方もそれぞれ違うということがわかって、調べていくととても面白かったです。
面白いテーマを上げて頂き感謝します。
超音速