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帝国陸海軍航空機のサブタイプ呼称の違いについて気になったので質問します。 海軍ではメインタイプの呼称に機体番号と発動機番号の二桁の数字を当て、サブタイプに甲乙丙丁の記号を当てていきます。陸軍では開発された順にI型、II型、III型と数字を当て、サブタイプに甲乙丙丁の記号を当てていきます。 このサブタイプの呼称、同じ甲乙丙丁の記号を使ってますが、内容は陸海軍で異なります。 海軍ではノーマーク→甲→乙→丙→…と振っていきます。 陸軍では甲→乙→丙→…と振っていきます。 同じサブタイプ丙型でも海軍では4番目、陸軍では3番目ということですね。しかも陸軍ではノーマークに当たる呼称が全くなく、2番目の乙型が登場してはじめてそれ以前の原型を甲型と呼称することになっています。 同じサブタイプ呼称で、同じ甲乙丙丁の記号を使いながら、何でこんなややこしい違いを持たせたのでしょうか?技術呼称だから部内で通用すればいいということで、後世の飛行機ファンへの配慮なんざ知ったこっちゃないということでしょうか? ファンはファンでもこんなことを気にするのは相当なマニア(少なからず狂的意味を含む)だからややこしくても説明しなくても分かるので、それはそれでいいのだということでしょうか? 備後ピート |
- なぜ、陸海軍で呼称を統一する必要があると考えられるのでしょうか。
発動機なら共通にする理由もあるでしょうが、航空機は別個に開発しているのですから、それこそ「技術呼称だから部内で通用すればいい」のではないでしょうかというのが、素人の考えです。
hush
- ややこしいと正確な記録が正しく伝わらないことを恐れるからです。
例えば飛燕は私の好きな機体ですが、かつては飛燕1型乙は誤って「飛燕1型改」と呼ばれていました。レベルの1/32のプラモキットや、「丸メカニック」の中ではそのように表示されています。
「改」呼称は「紫電改」のように海軍にはありますが、陸軍航空においてはサブタイプ呼称としては現在否定されています(不思議なことに同じ陸軍でも戦車にはありますね)。
後世の軍事史家も陸海軍の得意不得意があるでしょうから、陸軍機から類推して海軍機を述べたり、その逆な場合、齟齬が生じるのではないかと注意喚起を投じたつもりです。必ずしも陸海軍呼称の統一(それがいいとは思いますが)を声高に主張することが本意ではありません。
最後の一文はやや自虐的な意味で付けたので、これは無視していただいた方がよいかと…。
備後ピート
- >2
つまり、注意喚起であって、質問ではないということでしょうか。
hush
- 米陸軍航空隊と米海軍も同様統一されていなかったということも、それが統合されたのが飛行機ファンのためなどではなかったことも、よくご存知のはずと思います。
片
- うう…。見事に左右から十字砲火食らって、ざまぁかんかん…。
私としては陸海軍大臣次官通達、あるいは軍需省(商工省)大臣次官通達、各航空本部長令その他の何らかの呼称根拠が分かればと思っただけなのですが…。日本語って難しいですね。
備後ピート
- 「航空機名称付与様式」昭和一八年七月二十七日官房空機密第一四九七号
改正昭和一九年第二五四二号
後期域名称付与様式別紙ノ通定ム
(中略)
機体発動機ノ形式表示ノ数字二字及要スレバ甲乙丙・・・・・・ヲ附ス(十位ハ機体、一位ハ発動機、甲乙丙・・・ハ兵器ノ型ヲ示メス)
(後略)
通達に改正理由までは書かれていませんが、海軍がこの時定めた甲乙丙の名称が意味するものは、陸軍機の甲乙丙・・・・とは別の意味を持っていることは十分にわかります。
意味が異なるものを無理に揃える必要はない、ということでよいのでしょうか。
また、海軍ではこれまでにすでに数字二桁で名称を与えた機種型式が無数に存在しており、改めて、最初の方を「甲型」とするなら、これらをすべて改定しなければならなくなってしまいます。
片
- 海軍機も一型(陸海軍ともI、IIといったローマ数字ではなく漢数字の一型、二型が制式呼称です。)二型、三型といった名称を使っています。
例えば九六艦戦は一型(後の一号艦戦)、二型(一号艦戦に二十粍機銃装備)、三型(イスパノ発動機とモーターカノン装備)といった具合です。
当初は一号、二号の区分は別の機体が同じ年式を冠称した際に使われるものでしたが、その後に同じ機体の改造機にも使われるようになり、それが昭和16年4月1日の一式陸攻の採用から段階的に導入されます。
陸海軍ともに名称の振り方は、実はよく似ているのです。
また、甲乙丙といった追番は海軍の場合、昭和十九年秋ごろからようやく実際に使用し始めますが、これは一番目の改良型、二番目の改良型、といった意味ではなく、原則として兵装の違いを示すに過ぎません。
そして陸軍の甲乙丙も同様に、甲が古く乙がその改良型と言う訳でもありません。キ一〇二甲とキ一〇二乙のように現実には試作順序が逆転している場合すらあります。
だから、質問にあるような、
「同じサブタイプ丙型でも海軍では4番目、陸軍では3番目ということですね。」
とはなりません。それは自己流の解釈による勘違いです。
BUN
- BUN様、詳しい説明ありがとうございます。ただ1点だけ。プラモの世界では1/48飛燕を例にあげると、タ〇ヤでもハ〇ガワでも(I型丁は)型式名は日本語表記、英語表記ともローマ数字になってますが、間違いが未だ正されていないのでしょうか?
備後ピート
- プラモ基準で考えるのはいい加減にやめましょうよ。
BUN
- BUN様、表記がローマ数字なのは製品として輸出する場合に、諸外国になじみのない漢数字よりもローマ数字を優先させたものだと考えいたりました。それはさておき。
ガンプラに押されて存在感の薄いミリタリースケールモデラーの世界ですが、この道からミリタリーの世界に足を踏み入れる方も未だ少なくないと愚考いたします。
何より二次元専門の写真・文献野郎より三次元で対象を把握できるのはモデラー出身者の強みだと思います。私はこの面からのアプローチをやめるつもりはありませんし、わが流祖たるかの木村泰造氏の名に懸けてもBUN様のご忠告に唯々諾々と従うわけにはまいりません。
備後ピート
- 航空機の呼称と二次元、三次元は関係ありませんけど。
Uhu
- 今更ではありますが「飛燕1型改」は川崎で作られた諸元表に登場しています。
乙型最初期ロット(要は引き込み尾輪+武装12.7x4で、最初期に想定されていた飛燕の仕様)の諸元の右上に「本表ハ胴砲13φノ場合ヲ示ス。キ-61I改(胴砲20φ)ノ場合ハ重量340kg増トス」とある部分が元ネタになった物と思います。
(胴体砲が20mmなので、一型丁の事と思います)
つまり、陸軍機でも正式な名称ではなくとも「改」が必要に応じて使われている例があるのです。
他にも、屠龍のキ番号はキ45改ですね。
したがって、何かしらの意図があって陸海軍が別の呼称を採っていたという訳ではなく、陸海軍共に「甲乙丙」や「改」は分類の必要がある際に使用されるだけですが、運用の差によって意味に差が生まれたと考えても良いのではないでしょうか。
陸海軍ではキ番号に代表されるように命名法の違いもあるわけで、運用の差から同じ日本語である「甲乙丙」の用法にも差が表れるのかと思います。
Shusui
- 「飛燕1型改」とされる「飛燕」は陸軍による広報用の手段であり、生産会社の文書には登場し得ません。
「屠龍」とされる二式複戦は、公式には「キ45改」ではなく「キ45」です。
川崎の社内で使われていた「一型改」「キ45改」のような名称は、非公式な生産会社内での便宜上のものの過ぎません。
片